Fragile Stream   作:Yuki_Mar12

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 ひょっとすると、警察官たちは、近隣住民の苦情でもあって、応じる形でやってきたのかも知れないと、しずくには思われた。彼等は両手を腰にやり、呆れた風の表情で、「もう暗いから、花火なんてやめて、お家に帰りなさい」、と言った。

 

 ――しずくは、警察官の姿を認めると、反射的に危機を感じ、顔を見られまいと俯けた。ボケッとしていたら、怪しまれ、尋問され、菊花学園で行方不明になった児童だと判明することになるだろう。それはバッドエンドだった。訓練された警察官の内の一人は、だが、しずくのその所作を不審がるように、さりげなく注視していたのである。

 

「別にここで花火やるのは、おれたちの自由だろう」

 

 高橋がキツい口調で主張した。法に触れていなければ、誰かに迷惑をかけているわけでもなく、彼は堂々としていた。彼の主張に、あきらたちはその通りだと同調した。しずくだけは、目立つまいと沈黙していた。

 

 だが、警察官は一切動じなかった。

 

「キミたちのためを思って言っている。もう夜の十一時だ。いくら夏休みだからって、こんな遅くまで出歩くべきではない」

 

「学校のクラスの担任でもないのに、干渉してくんなよ」、と高橋

 

「確かにわたしたちは君らを教育する立場にない。だが、治安が乱れれば、鎮めなければいけないだろう。近隣の人から苦情が来てるんだ。不良が花火していて、火事になったら怖いって」

 

「それ、偏見」、とあきら。

 

「つべこべ言わないで解散しろ」

 

 警察官は高圧的に言った。

 

「お前ら、何で来てる? まぁいい。従わないのなら、パトカーで連れていく」

 

 そして、一人の警察官が高橋の腕を取り、しかし高橋は敵意に満ちて、激しく振り払おうとし、彼等は互いに取っ組み合いを始めた。あきらを始めとして、その他の者は、おとなしく連れていかれ、パトカーに乗せられた。

 

 少し離れていたしずくのところに、遅れて警察官がやって来、「さぁ、君も来るんだ」、と言って、パトカーの方に促した。

 

 そのすぐ後、警察官は「?」と渋面になり、しずくの面差しをジロジロ執拗に観察した。

 

 そして彼は、腰の無線機を取り、口にやった。

 

「本部、及び、周辺各局。先頃手配のあった菊花学園の行方不明児童と思しき対象を発見しました。長い髪、水色のジャージ、低身長。特徴は合致しています」

 

 無線機への発言の後、ノイズまじりで聞き取りにくい応答が聞こえた。警察官は「了解しました」と返した。

 

 ――菊花学園の名が口にされた時、しずくはドキッとし、瞬間的に、この後の、きっとそうなるだろう展開が予知され、意気阻喪するようだった。

 

 高橋はまだ抵抗していたが、あきらやしずくをパトカーに乗せ終えた警察官が支援に加わると、あっという間に彼は取り押さえられ、拘束された状態で連れてこられた。

 

 二台のパトカーにしずくたちは収容され、高橋たちは、警察署まで運ばれ、そこであるいは善意によって、あるいは陰湿に、説き伏せられ、悩ましい時間を過ごすことになるだろう。しずくも彼等の一味ではあったが、彼女には別件があり、彼女においては、高橋たちのもとに帰ることは恐らくないだろうと予感された。

 

 しずくは、素行が荒いが、毎日額に汗して働き、友達を手厚く養う高橋に敬意があったし、更に言えば、いっしょに過ごすことで、少し好きになったところがあった。あきらだって、見た目はけばけばしいけれど、姉貴分として、慕い、頼っていた。

 

 しずくはきっと、彼等の輪から引き離され、本来いるべき場所に送還されるだろう。彼女の大胆なる試みは、失敗に終わり、その償いが、施設では待ち受けていることだろう。

 

 夜道を走るパトカーに揺られるしずくは、虚しい気持ちだった。切実な意志や強い衝動や純真な憧れで真摯に試みても、どこにも行けないし、辿り着けもしない、そんな不自由な人生は、ゴミ箱にクシャクシャに丸めて捨ててしまいたかった。

 

 

 

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