Fragile Stream   作:Yuki_Mar12

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 パトカーに乗せられたしずくたちは、警察署まで連れていかれ、そこで個々に身元や持ち物など確認され、事情聴取を受けた。高橋たちは、界隈では名の通った不良であり、補導されたことが複数回に渡るので、その辺の手続きは、ある意味ではサッと済み、けれど、やはり従順でなかったので、大なり小なり、当人と警察官の間で諍いが起こった。高橋も、あきらも、その他の者たちも、警察官に対してよく思っておらず、執拗に頑なで、反抗的だった。それは、だけど子供っぽいようで、同時に何か切々たるものが感じられ、高橋たちには、高橋たちなりの筋の通った価値観があって、警察という組織は、それにそぐわないようだった。

 

 

 

 高橋たちは、一つのコミュニティであり、高橋の部屋は、集会所だった。彼等はもともと同じ高校の、偏差値の低いクラスの同級生であり、そこで相互の結び付きが出来た。成功と栄達を夢見、劣った敗北者への侮蔑を貪欲に目指す者たちが激しく競争する社会の縮図である学校で、彼等は、自覚された『劣等生』として、自然と絆を強めた。彼等はそれぞれ家庭に小さくない不満があり、それは、親の無関心であったり、親の過度の理想の押し付けであったり、経済的に困窮していることによる親のネグレクトであったりした。彼等は家庭に対して失望し、憤り、冷淡に背を向けるようになった。学校でのいい成績や、有名大学への進学や、社会的成功に彼等はまじめに取り組むことが出来ず、そういったことより、彼等にとって緊要で切実だったのは、自分が安んじてそこにいられる居場所の希求と確保と保持だった。(高橋は、親が一人の上、多忙で子に無関心になりがちで、そこに失望した。あきらは、姉が複数おり、彼女等が才知に恵まれたのに対して恵まれなかったので、姉妹間の競争に負け、家庭内で差別され、自然と隔心が生じた。)

 

 学生の身分では埒が明かないと思った高橋は、思い切って中退して就職し、職人の徒弟になった。他の者はアルバイトして生活費の足しにした。高橋が大黒柱となって、小規模だが、コミュニティが成立した。

 

 

 

 成功者しか人権がないと思わせるこの偏狭さで凝り固まった社会なぞ守る役割にある警察が、劣等生である高橋たちの意に染まないのは自明のことだった。彼等は譲歩せず、あるいは野蛮に、あるいは果敢に公権力に歯向かい、社会的公正性の名のもとに下される断罪と軽侮に抗った。

 

 だが、勢力で言えば、高橋たちは弱小であり、警察は強大だった。力と力のぶつかり合いでどちらが制するのかは、火を見るよりも明らかであり、到頭、彼等は意気を挫かれることになった。

 

 親を呼ぶと警察官がしかつめらしく言うと、高橋たちは瞬時にシュンとなり、それまでの気勢が嘘のようになくなった。彼等はあくまでまだ子供に過ぎなかった。彼等がどれだけ金銭を稼いで自立してみても、すぐ後ろには家庭があり、彼等の素行の影響が波及して崩壊しかねなかった。

 

 彼等がとりわけ嫌がったのは、自立してもはや用がないとしたはずの家庭と、補導がきっかけでまた関係性が発生してしまうことだった。それは彼等の若いプライドが許さなかった。高橋は、多忙で疲弊している親の情けない泣き顔が想像されたし、あきらにおいては、親の冷え切った面持ちと、優等生の姉たちの嘲りと蔑みがまざまざと目に浮かんだ。

 

 

 

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