チョウジとの組手から数日経ち、あと二週間もすればアカデミーの卒業試験という日に、オレは三代目のじいちゃんから珍しく呼び出されていた。
「ナルト、お前を呼んだ理由は他でもない。お前に一人、紹介したい人物がいる」
まさか三代目のじいちゃんがそんなことを言うとは思わず首を傾げていたが、瞬間、オレの中の九喇嘛が反応した。
『このチャクラ……まさか』
「九喇嘛?」
そう思った瞬間、目の前に一人の男性が忽然と現れる。
「フム、コヤツが当代の九尾の器か、しかもその歳で既に和解しとるとは思いもしなかったわ」
『やはり貴様か、
九喇嘛が叫んだ扉間という、その名前が示す意味にすぐに気付いたオレは、その顔が生きてる人間のそれじゃなく、死んだ人間の目……つまり
「『穢土転生』……それも、二代目火影を呼び出したってばよ、じいちゃん!?」
まさかの現実に三代目のじいちゃんも若干表情が悪い。というか、
「いくら父ちゃんが残したレポートがあったからとはいえ、じいちゃんはそんなこと、しないと思ってたってばよ」
別に『穢土転生』そのものを嫌悪するつもりはない。確かに、やりようによっては有用だと思うけども、まさかじいちゃん本人が自分の師である二代目火影をそうするなんて、
「それとも、そこで隠れてる目隠しのじいちゃんの入れ知恵かってばよ!!」
「ふむ、儂にも気付いていたか。いや、九尾のチャクラの影響か?」
火影室の横にあるドアから現れた男……木の葉の裏を仕切る暗部『根』の長であるダンゾウが感心したようにこちらを観察している。
「ナルト、といったか。勘違いさせるつもりはないが、猿もダンゾウも、最初は儂をこうやって長々と『穢土転生』するつもりはなかった。儂と兄者を『穢土転生』し、問題なく呼び出せればそれで終わり、数日程度で解除するつもりだった。お前の父が残した、あの興味深く良い着眼点をしたレポートを読んでな」
だが、と二代目火影はため息をついた。
「残念ながら呼び出せたのは儂一人……兄者は既に別の人間によって『穢土転生』されていることが発覚した」
「発覚って、どうやって!!」
「儂は兄者のチャクラを長年見てきた。ゆえに兄者特有の特殊なチャクラを感知できてしまった。ただそれだけのことよ」
その一言は自らが弟だからという強い根拠があった。
「ゆえに、兄者を『穢土転生』したものをこの手で倒すこと、そして『穢土転生』された兄者を封印、または解除するまでの間、儂はこの木の葉の里の暗部として所属し、お前の師匠として少しばかり協力してやるという契約を結んだ」
「それって、つまり?」
「お前が使う『影分身』と、お前の父親の使っていた『飛雷神』は儂が考案した術だ、そのやり方と使い方を、儂自ら教え込んでやると言っているのだ」
まさかすぎる発言に驚くが、同時に疑問に思った。
「けど、初代火影を封印するって、そんなことできる封印術の使い手なんて、この里に居たってばよ?」
「……ナルトの指摘ももっとも、今現在の忍で、残念ながら封印術に長けた、それも影クラスを封じれる立ち回りができる忍は居ないと言う他ない」
「儂も猿同様様々な術は使えるが、残念ながら兄者を封印できるほどの封印術は使えん。猿に関してはお前の父親が九尾を封印したときに使用したものがあるそうだが、そんな自爆技を簡単に使わせるわけにはいくまい」
二代目火影の視線に三代目のじいちゃんの表情が少し曇る。
「だがあくまでもそれは、
なんとも不自然なところをダンゾウが強調したと思った瞬間、オレの中の九喇嘛が笑った。
『なるほど、懐かしいチャクラを
その意味にわけが分からず頭が困惑していたとき、オレが入ってきたドアが音を立てて開く。
「ナルト……」
たった一言、その一言にオレは、頭を殴られた衝撃を受けた気分になった。振り返れば、そこにはかつてじいちゃんのアルバムで見た、そして前世で見た覚えのありすぎる、流れるように綺麗な緋色のような赤く長い髪をたなびかせた……
「母ちゃん……?」
うずまきクシナ、見間違うはずの絶対ない、死んだはずのナルトの母親が、目の前に、穢土転生として立っていた。
「クシナの穢土転生体に組み込んだ命令札には、
ダンゾウがばつが悪そうに答える。が、オレにはそんなこと、どうでもよかった。
「ナルト、まだまだ子供だけど、ちゃんと成長して、大きくなって……私、これほど嬉しいことはないってばね」
「母ちゃん……」
優しく抱き締めるその手は、穢土転生ゆえに温かさはなかったけど、今まで感じることができなかった温もりや、愛を感じた。
「ずっと見てきた。あなたがいつも耐えてきたこと、一人でずっと努力してきたこと、そして、ずっと苦しんできたこと」
「……」
「まぁその件については、あとで三代目様とダンゾウ様と、
涙が溢れていた。オレからも、母ちゃんからも、揃って流れていた。
「ナルト、これからはずっと一緒よ」
「母ちゃん……かぁちゃん……」
いつの間にか三代目のじいちゃんも、ダンゾウも、二代目火影もその場から居なくなっていた。