「旅をしたい、か」
昼間にナルトが山中いのに連れられて現れ、そしてワシに言った将来の目標に、ワシは執務室で紫煙を吹かしながら夜の月を眺め物思いに耽っていた。
「やれやれ、流石の猿もナルトの将来の夢にたいしては何も言えなかったようだな」
「扉間さま、そう悠長な事を言って良いのですか」
目の前に置かれたソファーでは2代目様が苦笑しながら腕を組んでおり、それに対面する形でダンゾウがしかめっ面を晒している。
「……別にナルトがそうしたいというのを止めるつもりは無い。というより、どちらかと言うと学者や研究者としてのミナトに似ているように見えたからのう」
「それは、否定はしないが」
「ナルトの父親で、猿の後任か。直接は知らんが、あの穢土転生の研究レポートや、他の遺跡に関する研究資料を幾つか見たが、確かにそちら方面にも秀でた忍だったようだな」
そうだ、ミナトはとても素晴らしい後継だった。人徳も、忍としても。
「……ある意味で、ナルトはワシにとって孫のようなものじゃ、できるなら、孫のやりたいことに口を出したりしたくないし、むしろ手伝いをしてやるくらいは……とは思う」
「だがナルトは木の葉にとって重要な人柱力だ、おいそれと旅なんかさせられない……『暁』のこともあるしな」
「『暁』……あぁ、お前ら二人がやらかしたうちはの生き残りが潜入している組織のことか」
2代目様の一言にワシら二人は揃って何も言えない。事実その通りだからだ。
「どうやら暁は尾獣を狙っているらしい。今すぐにどうこうという話ではないそうですが」
「ふむ、人柱力を狙う犯罪組織、か。嫌な予感しか無いな」
「平和な世の中ならともかく、そうなるとナルトを外に出すのは簡単ではないだろうな」
何せ相手の狙いが尾獣だというのなら、必然的にナルトは標的ということになる。そんなナルトを外に出すのは自ら敵に奪ってくれというようなものだ。
「ナルト本人も将来的な話と言っておったし、今は力をつけるというのも理解しているようだからのう」
「といっても、ナルトが真に使えている術は変化と影分身のみだ、風遁の性質変化も、ようやく身に付けられるかというところ……木の葉は昔から風遁使いが少ないからな」
ワシのような例外はともかく、扉間様の言うとおり、木の葉は元々うちはの写輪眼や日向の白眼のような瞳術や猪鹿蝶の秘伝忍術といった特殊な術を使う人間が多く集まっている。そのため性質変化も多種多様なわけだが、どうにも風遁だけは昔から数が少ない。
「……」
「?どうしたヒルゼン、なにやら困ったような表情をして」
「いや、なに、思えばワシはナルトの事を、知っているようで何も知らなかったと思い知らされただけよ」
2代目様が言っていた未来の事をナルトは話してくれなかった。好きなこともやりたいことも、大人としては一番近くにいた筈なのに何も知らなかった。ナルトが人柱力としてどう思っていることすらも。
というより、ナルトはワシに何も話そうとしてなかった。
「……もしかすると、ワシ、ナルトから信頼されてないのか?」
「「」」
ワシのその言葉に、扉間さまもダンゾウも何も言わなかった。
「……ヒルゼン、儂から言えるのは一言だけだ……むしろナルトから信頼されるようなことを何かしてきたのか?」
2代目様のお言葉に、ワシは何も言えなかった。
「まぁ猿の立場もわからないわけではない。火影としての立場と、親の立場を両立するのはワシも兄者も苦労した。それに加えてナルトは人柱力だ、簡単には動けないのも仕方ないとはいえる。せめて、最初からナルトを四代目の実子として公表していたのなら、まだ幾らかマシになったのかもしれんがな」
「……そう、だったのですかな」
「絶対ではないが、少なくとも、『人柱力にさせられた普通の子供』と、『火影である親が我が子に暴れる九尾を封印した』という二つなら、まだ四代目が九尾の暴走の責任を取ったという側面も見せられたであろうな」
「ですが二代目様、その場合ナルトは普通ではいられなかったでしょうな。ミナトにしろクシナにしろ、身寄りは居りませんので、最悪、暗部として生きていた可能性も否定はできない」
2代目様の言葉も、ダンゾウの言葉も理解できる。むしろ、いままでそうならなかったほうが奇跡だというくらいだ。
「……そういえばダンゾウ、ナルトの口座を勝手にやらかした下手人、結局はどうなった」
ふと思い出すようにダンゾウに問うと、ダンゾウの表情が少し曇った。
「結論から言おう、確かにナルトの口座を荒らした証拠は見つかった。が、どういうわけか犯人に紐付く証拠が一切上がっておらん」
「……どういうことだ?」
「情報部、暗部のそれぞれでナルトの口座の入金履歴や出金履歴を全て確認した。それによると確かにナルトの口座にヒルゼンが入金した記録が、ヒルゼンが入金した機械そのものの入金記録に残っていた。が、どういうわけかそれがナルトの口座のある銀行の記録に反映されず、別の何者かの口座の記録に迂回反映されていた」
「……つまり、ナルトに入金したはずの金が、何者かによって別の口座に送られたということか?」
「その通りだ。加えてその何者かは入金された直後に全額引き落とし、さらには口座をまるで本来無かったというように消滅させていた」
その言葉の意味にワシも、そして言ったダンゾウ本人も苦々しい表情にかわる。
「つまり、今回の一件は里内部かつ、里の金融情報に詳しい人間の犯行だと?」
「間違いなくな。それも、架空口座を当たり前のように作り出し、自由に消すことができるやつだ。ここまでくると並みの忍ではまず不可能であり、チャクラ通信技術に精通した技術者でしかあり得ん。少なくとも、ワシや『根』の忍でもそれを行うのは絶対に不可能だ」
「そこまでか」
ワシも今回の件で里の金融関係の人間……口座を作るための関連書類や設備調整、さらには個人口座と本店記録を結ぶチャクラ通信関連の技術者に話を聞いたが、他人の口座への入金記録を別の口座に移すなど普通はできるわけがなく、やろうとすればそれはつまりチャクラ通信への異常介入ということで、そうなったらすぐに分かるように設定されているためできなきいそうだ。一部の例外を除けば。
「一部の例外だと?」
「罪を犯した人間の保釈金支払いや、慰謝料や罰則金の徴収の場合は適用されないそうじゃ。とはいえ、ナルトがそうなったわけではないため対象外、ついでにそういったものの場合は木の葉の資金関連の特別口座とやらに送られる上に、その口座も警備の関係で火影並びに秘書のチャクラ、網膜、指紋、声帯、暗証番号で管理されておるし、それに繋がる唯一の部屋も、入らぬ限り暗証番号を思い出せぬように記憶封印される結界も張られておるから、基本的に外部介入されることは絶対にあり得ない」
「まさに徹底に徹底されたセキュリティだな。ワシの死後にそんなものが開発されておったとは」
2代目様が呆れたように感心してるが、問題はそこではない。
「こうなると犯人を捕まえるのはほぼ不可能、か」
「それこそ、研究者であり技術者でもあり、木の葉の事にも詳しい大蛇丸ですら、これを突破することも、今回の事件のように口座を勝手に作ったり消したりなんても不可能であろう」
さてどうしたものか、ワシら三人は頭を抱えていると、部屋にシカクが入ってきた。
「お取り込み中申し訳ございません、少しお耳に入れたいことが」
「ふむ、どうした急に」
「ナルトの口座の事件、可能性の段階ですが方法がわかったかもしれません」
シカクの言葉にワシは眼を見開いた。
「丁度その話をしていたところだが、その可能性とは?」
「はい。といっても気付いたのはナルトやシカマルたちなんですがね、そのチャクラ通信技術を開発した人間が怪しいのではないか、と」
曰く、たまたま双六をナルト、いの、シカマル、チョウジの四人でやっていたとき、こういう遊戯だと開発した人間が裏ワザとか知ってそうだ、と何の気なしにチョウジが呟いたそうだ。
「裏ワザ……」
「私も最初は子供の発想だと笑って聞いてたんですがね、いのがそれを聞いてナルトの口座介入も、そういった『開発者しかわからない、ないし、開発者しか知り得ない特殊なシステム』が隠れていたのではないか、と」
ワシらは知る由もなかったが、その発言で転生ゆえに『バックドア』という技術知識を知っていたナルト、そして天才的な頭脳を持つシカマルの二人が考察し、さらにその場に居合わせたシカクの知識によって、その可能性があることを確信したそうだ。
「なるほど、まさしく『
「確かにその方法ならば、開発者ゆえに気付かれない特殊なシステムであり、口座を勝手にどうこうするのも容易、か」
「シカク、開発者の所在は」
「すぐに調べました。が、既に故人であり身寄りもなく、かつ引き継ぎされた人間もいのいちが既に本人に許可を取ったうえで調べたところ知りませんでした」
それでは意味がないのでは、そう思おうとした瞬間にすぐに気付く。
「……そうか、穢土転生」
「なるほど、死した人間を甦らせる術である穢土転生であれば、間接的にそれを知ることもできる、か」
「恐らく本当に甦らせられるか、そして操れるかの実験も込めてであろうな。儂もこのようなことを考えるなど思いもしなんだ」
なるほど、こうなると確かにミナトの研究資料はある意味正鵠を射ていたというわけか。
「シカク、すぐに情報部に里内部の口座チャクラ通信のシステムを新規のものに差し替えるように通達せよ」
「すでにいのいちが事にあたっています。とはいえ里内部のチャクラ通信技術の総転換となると、最低でも1ヶ月はかかる見込みだそうです」
「暗部関連の技術者も貸し出す。一週間……いや、二週間で終わらせろ。事は大規模テロに相当すると心得ろ」
ダンゾウの言葉を受けてシカクは頷いてすぐに出ていく。それと同時に、失礼します、という声とともに一人の男が入ってきた。
「ふむ、ミズキか、珍しいな」
それはアカデミーの教員であるミズキだった。
「今回はお願いしたいことがあって参りました」
「……なにか問題でもあったか?」
「いえ、問題がないから問題というか、ゆえにお願いに参ったというか」
歯切れの悪いミズキの言葉に先を促せば
「来週の卒業試験、可能であれば内容を追加したいのです。具体的には、スリーマンセルによる特別試験を」
その言葉の意味にワシもその場にいた全員が眼を見開くのだった。
ナルト班のメンバーは
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原作通り
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オリジナル