うずまきクシナ、そう名乗った人物に俺は一応の聞き覚えがあった。
昔、母さんが生きていた頃に何度か聞かされたことのある名前で、母さんが現役の頃のくノ一では母さんと一二を争う後方支援専門の忍であり、既に死んだ人間であると。
「あら、お茶ありがとう」
冷蔵庫から麦茶を出して渡せばそう言い、明らかに生きたような動きで困惑する。ナルトから生き返ったなんて聞いてはいたが、まさにそうとしか思えない細やかな動きだ。
「ふふ、死んだ人間がこう動いてて不思議かしら?」
「それは……」
「否定はしないわ。実際、正確には私は生き返った訳じゃなくて死体として動くゾンビみたいなものだもの」
そう言って目の前の女性が腕を見せれば、そこには明らかに人の体ではあり得ない何かしらが皮膚となっていた。
あきらかに禁じられた術、そう俺でもわかった。
「あんまりおすすめしないわ。私も本来ならこうして蘇るなんて受け入れないもの、でも」
「……ナルトがいたから?」
「そうよ」
彼女はニコリと笑って答え、そして俺の顔を見ると少しだけ吹き出した。
「なにがおかしい」
「いえ、まるでフガクさんそっくりだと思って。あの人、かなり不器用で口下手だったし、昔の若い頃にそっくりね」
「……」
「ちなみに、ミコトとフガクさんは両想いだったけど、フガクさんが何時まで経っても告白しないんで、私とミナトがそれぞれ世話を焼いたのよね~」
まさかの両親の馴れ初めに何と言ったら言いか分からなくなるが、次の瞬間、彼女の顔が少し寂しいものに変わった。
「だからね、貴方にこれを渡すのは、親友であった私の役目だと思うの」
そう言って懐から出したものに、俺は驚愕した。
「写輪眼……」
「ミコトとフガクさんのものよ。それぞれ万華鏡になってる」
二つの液体に満たされたカプセルに入れられた眼球は、見間違うわけがなかった。
「なんで、なんで死んだアンタがそれを持ってる」
「それを話すには里と、うちはと、そして貴方のお兄さんの真実を話す必要がある」
「兄さんの?」
訳が分からない俺に、クシナさんはそれでも聞くか、と問いかけるので、俺は少し迷ったが頷く。
「まず大前提として、あなたのお兄さん、うちはイタチがうちは一族を滅ぼしたのは彼個人の凶行じゃない。ある意味仕組まれ、ある意味自然に、起きるべくして起きたことよ」
「……どういう意味だ?」
「サスケくん、うちはが木の葉の里でどんな役割をしていたかは知ってる?」
その問いに首を横に振ると、彼女は丁寧に教え始める。
「うちはの役割は警務部隊……いわゆる里の中の治安維持や犯罪者の取締をしていたわ。当時のトップであったフガクさんはある意味、火影と同じぐらいの重要な幹部であったわ」
「それは、だが、それとなにが関係する?」
「その役割ゆえに、うちはは里の人間や上層部から嫌われ始めた。その傾向は昔から少なからずあったみたいだけど、それが顕著になったのは九尾の暴走事件からよ」
曰く、かつてのうちはマダラはその写輪眼によって九尾を操り初代火影と対等以上に渡り合ったという。
それにより木の葉において九尾の封印は絶対の絶対と考えられており、暴走など一切許さないと言わんばかりの厳重体制でもあったという。
「それなのに九尾は暴走し里に甚大な被害を与えた。里の人間はこう考えたわ、『うちはの人間が九尾を暴走させたのではないか』と」
「そんな馬鹿な!!」
「実際、暴走させた犯人を直接見た夫のミナトは、その人間が仮面をつけていたことと、写輪眼を持っていたと私に話したけど、その事を他の人間に伝える前にミナトも私も死んだから伝えなかった。だからこそ、三代目様も噂を止めようがなかったそうよ」
まさかの言葉に俺は驚く。
「九尾の暴走の真実はこれについてはどうでもいいから、今は置いておくわ。問題は、うちは一族がその噂によって迫害され始めたことよ」
「迫害されたって、うちはの人間がそんなことをするわけが」
「そうね。うちは一族にとっても、うちはマダラのトラウマがあるから九尾をどうこうしようって考える人間は殆どいなかったらしいし、そんなことができる実力者も居なかったから事実無根だと否定していた。けど、迫害された人間が、迫害してきてる人間に対して怨みや憎悪を抱かないって思う?」
その問いは間違いなくそう思わないと断言できる。
「そこに当時の木の葉の裏の闇とか、思惑とかいろいろ絡むわけなんだけど、結果としてうちは一族は里に対してクーデターを仕掛けようと考え始めた」
「クーデター!?」
「当然フガクさんは考え直すようにクーデター派を宥めたそうだけど、それで言うことを聞くほどうちはは素直じゃないでしょ?」
頑固すぎる一族だもの、と呆れるように呟くクシナさんに俺は否定できなかった。
「それを止めるように動いたのは、いわゆる里の体制派側の人間だったうちはシスイくんと、あなたのお兄さんのうちはイタチくんだった。けど、詳細は省くけどシスイくんは殺され、イタチくんはうちはを全滅させることでしか止められないと、そう動くしかなかった」
「そんな……」
「イタチくんは木の葉を守るために、あえて一族皆殺しの汚名を被り、そして抜け忍として、実の弟に殺されることで貴方を木の葉の英雄の一人として貴方が認められるようにと動いている。少なくとも、私は三代目様からそう伺っているわ」
まさかの事実に、俺は怒り以上に動揺しかなかった。
「また同時に、イタチくんは表向きは抜け忍として、裏では木の葉を守る潜入スパイとして活動しているそうよ」
「兄さん……」
「そしてこの目は、クーデターを起こしたうちは一族の眼を奪われないように、そして裏で写輪眼を研究するためのサンプルとして保管されていたものを、私が保管していた人間から返却して貰ったものよ」
そう締めた彼女の言葉に、俺は自然と涙が出た。
「兄さんは……俺を邪魔者だと思ってたんじゃなかったのか」
「いいえ、うちはほど身内や家族に甘い一族は居ないわ。彼もフガクさん同様、不器用だけど貴方をしっかりと愛しているわ」
「兄さん……っ!!」
不器用すぎる兄の真実を知り、俺は涙が止まらなかった。同時に自分が兄に守られていた存在だと気付き、その不器用すぎる愛への怒りなのか、嬉しさなのか、そんな分からない感情がごちゃ混ぜになって爆発した。
「サスケくん、あなた……」
顔をあげ、クシナさんの一言で俺自身気づいた。俺の両目が普通のそれではなく、『写輪眼』を開眼したのだと。
「サスケくん、1つだけ忠告しておくわ」
そして意を決するように彼女は俺に言った。
「貴方はおそらく、いずれミコトやフガクさんのように『万華鏡写輪眼』を開眼するかもしれない。けどそれは、親しい人との別れを意味することでもある」
「親しい人との別れ……」
「それが貴方の手によるものなのか、そうでないのかは別として、どうしたってイタチくんと貴方はぶつかるでしょう。いえ、貴方の事だから自分からぶつかりに行くのかもしれない」
その一言を呟き、
「けど忘れてはだめよ。貴方はイタチくんから愛されている。その形の終わりがどうなるかは分からないけど、その事実が消えることは一切ないわ」
「……わかりました」
そうして彼女は立ち上がり部屋を出ようとしてふと立ち止まる。
「もし貴方がイタチくんを救って、万華鏡を開眼したのならば、両親の眼を移植することをおすすめするわ。開眼したそのままの眼だと、最悪失明するわ」
だからしっかりと保管してなさい、そう言って彼女は俺の家から消えていった。
「……聞いてたんだろ、ナルト」
暫くしてから、俺がそう言うとナルトは罰の悪そうな表情で顔を出す。
「……悪い、盗み聞きするような真似して」
「いや、それは構わない」
俺はそう言って少し考え、
「ナルト」
「なんだ?」
「俺はイタチを倒す、それだけを目標に今まで生きてきた。多分、それが変わることはない」
だが、
「変わらないが、倒して、あの馬鹿兄貴をどんな手を使ってでも里に連れ帰る」
「……」
「そして、俺が火影になる。兄さんを殺した英雄としてじゃなく、うちはの英雄としてじゃなく、俺個人の意思で里のトップになる」
だから、と俺はナルトに決意の表明として写輪眼を見せる。
「ナルト、そのための手伝いをしてくれ。いつか俺が火影になったときの右腕としてな」
「右腕って、オレ、そんな頭良くねぇぞ?」
「知ってるよ、ウスラトンカチ」
苦笑いしながら答えるナルトに、俺は自然とそう答えていた。
ナルト班のメンバーは
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原作通り
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オリジナル