ここ最近のナルトの朝は早い。日の出の少し前に起床すると、外をランニングするようになった。
今日はあの小娘の家からスタートし、川辺までの往復一時間コースだ。
「ハッ、ハッ!!」
といってもただのランニングではなく、チャクラを足に集中させ、放出することで脚力で蹴るのではなく、チャクラの勢いで走るランニングだ。
もともとナルトは細かいチャクラの制御が苦手な部類だ、それは元々のチャクラが人より多いのと、九尾であるワシが存在することで還元されるチャクラが膨大すぎたからだ。
だから迫害されてきた頃から少しずつ自分のチャクラを小分けにして使う修行を行ってきたが、今のランニングはそれを実戦運用するための修行でもあった。
『頑張れよナルト、これができれば壁を走ったり水面を走ることも訳がない』
「って、簡単に言うけど九喇嘛、結構難しいんだけどこれ」
『そりゃそうだ。チャクラを放出することで足の蹴りの代わりとし、逆の足でチャクラで吸着することで転んだり吹き飛んだりしないようにする。これを無意識でやるにはとことん根気が必要だ』
とはいえこれが出きるようになればチャクラのコントロールは身に付けたもほぼ同然だ。そうなれば練習している螺旋丸の土台とはなるだろう。
『ほれ、あと30分気張って走れ。でないとあの小娘が起きてきてシャワーで鉢合わせだぞ』
「それは勘弁願いたいってばよ~!!」
頑張ってあの小娘の家に向かって踵を返すナルトだが、ワシは既に知っている。ナルトが出発する直前に小娘が起きてナルトの事を見ていたことも。
(こりゃ、朝から一悶着ありそうだ)
ワシの予想は外れず、ランニングでクタクタになったナルトを小娘がシャワーに連れていき、そこで自分も一緒に入ろうとするのをナルトが止めようとする珍事件が起こり、小娘の父親はただただニコニコと笑って小娘に味方していた。
(九喇嘛、絶対に分かってて何も言わなかったろ!!)
(ケッ、役得だと思えば良かろうが。何よりも親公認だ、良かったな、その歳で番ができるぞ)
結局ナルトは押しと理論武装に負けて小娘に洗われていた。女はこういうときは無類の強さを発揮することを、これからもナルトは教え込まれていくだろう。
ランニングから戻って小娘に洗われたナルトが次にすることは、朝食の手伝いだった。里の警備の関係上という理由もあって、あの小さなアパートの一室からこの小娘含む三つの家をローテーションで泊まっているナルトは、一宿一飯の恩義と言わんばかりに朝食作りや掃除など、できる限りの雑用をやっていた。
「ぐぬぬ……意外とナルトの家事スキルが高すぎる……」
(まぁそりゃ、前世では独身貴族で、ナルトになってからも原作とは違って可能な限り自炊自活はしてたからな)
小娘はナルトの料理に敗北感を持っているようだが、事実朝からテキパキと卵焼きをせっせと作っている姿はかなりしっかりとしていて、充分に主菜となるものになっていた。
「こりゃ、いのも負けていられないね」
「しかも味付けも絶妙なのが悔しい……」
「ナルトくん、本当にうちの子にならない?いのもその気みたいだし」
「お母さん!?」
「いやいや、流石に勘弁してくださいってばよ」
なんとも団欒とした食卓だが、その光景に一番喜んでいるのは、誰よりもナルト自身だったのを、ワシは理解してる。
いつも孤独で誰とも会話できず、ただただ作業のように飯を食べてた頃の空しさを知っている。それと比べれば擬似的とはいえ家族のように迎えられて一緒に食卓を囲んでいる今が、ナルトにとっては何にも代えがたい幸福なんだと。
朝食を食べればアカデミーの時間だが……意外とナルトは真面目にやればしっかりと勉強できる人間だ。
事実、ナルトはアカデミーで教えられた内容は常に家に戻れば復習し、分からなければ担任のイルカに良く聞きに行ってた。
「ナルト、最近いのと一緒に来てるようだが何かあったのか?」
今日も同じで、イルカに質問しに行ったナルトはそんなことを聞かれた。
「あー、イルカ先生も知ってると思うけど、九尾とか四代目の件とか色々な理由で、猪鹿蝶の家で過ごしてるの」
「そういえばそうだった……ん?まさか」
「……どういうわけか、いののスキンシップが強すぎるんだってばよ」
どんよりとした雰囲気でナルトが言えば、イルカはキョトンとしながらゆっくりと笑った。
「なんだ、そういうことか。ナルト、お前も意外と隅に置けないな」
「意外とって、どういうことだってばよ」
「だってお前、放課後たまに図書室に隠ってたと思ったら、ヒナタと良く一緒に勉強したり、おすすめの本を紹介しあってたろ。ヒナタのやつ、お前に紹介された本全て買ってるの見たことあるし、惚れられてるだろ多分」
「え、ちょ、イルカ先生、なんでその事を」
慌てるナルトだったが、イルカは笑顔でからかうままだ。
「ナルト、これでもオレは里の中忍だぞ?気配を消して探るのは忍の基本だ」
「出歯亀は探るって言わないってばよ!!」
「出歯亀じゃない、不純異性交遊をしてないか確認していただけだ」
堂々と開き直るイルカ先生に呆れるワシだったが、ナルトは不敵にニヤリと笑う。
「……ところでイルカ先生、この前ってば××ってお店の前で女の人に絡まれて鼻の下伸ばしてたよな?」
「……えっと、ナルト?」
「しかもすんごいデレッデレで情けない表情をしてた写真がここに」
「ちょ、待て、待ってくれナルト、いや、ナルトさん?」
「ちょっと三代目のじいちゃんにこれ渡してきて……」
「ナルト、俺が悪かった、勘弁してくれ」
完全敗北したイルカは土下座で謝っていた。
「まったく、人でからかうとろくなことにならないってばよ」
「まさか生徒にその通りにさせられるとは思ってなかったよ……ていうか、その時の時間帯夜だった筈なんだが、なんでナルトはそんな写真を持ってるんだ?」
「一楽でラーメン食べて、家帰るのに変化の術で女性に変装してたらたまたま遠目から見つけて、小型の使い捨てカメラで撮影しただけだってばよ」
「ナルト、お前は変化の術に関してはクラスで一番だもんな」
「……これ使わないと、買い物もマトモにできなかったからってばよ。死活問題ってやつだってばよ」
文字通り死ぬ気で覚えた、そう遠い目をして空を見上げるナルトに、イルカも何も言えなかった。
「……ところでナルト、いのとヒナタどっちが好みだ」
「あ、そういえばこの後三代目のじいちゃんから呼ばれてて……」
「申し訳ありませんでした、勘弁してください」
意外とイルカも懲りない人間だった。
「来たかナルト……ん?なんだイルカも一緒だったか」
放課後、本当に三代目の爺に呼ばれていたナルトは、イルカに連れられて演習場まで来ていた。
「えぇ、今日もナルトから色々と質問されまして」
「ホッホッホ、ナルトはマメだからの、イルカには苦労をかける」
「いえ、そんなことは(写真、絶対に渡すなよ)」
「イルカ先生の教え方がうまいからだってばよ(分かってるから、二度とからかわないでくれってばよ)」
イルカとナルトが視線だけで会話してるのに気付かない三代目の爺は、振り返って影分身を3体生み出す。
「ナルト、お前も影分身を作れ。同数じゃぞ」
「おっす!!」
そうして慣れた手付きで影分身を作ると、ナルトと三代目の爺は組手を始めた。
「ホッホッホ、少しずつ影分身を生かした組手ができるようになってきたの」
「そう言ってるけど、こっちの打撃まったく当たらないってばよ!!」
「チャクラ量は九尾の下駄があるからともかく、流石に下忍にもなってない子童に組手で負けるようでは、火影の名を名乗れないからのぉ」
流石に爺の方が実力が何十枚も上手だ。ナルトも持ち前のチャクラ量と体力で食らいつくが、本気すら出してない爺の攻撃すら回避できない。
「ところでナルト、お前性質変化の特訓はしてるのか?」
「一応、どの性質変化なのかは分かったってばよ」
「ほう、どれじゃ」
「風」
組手しながらの会話に、三代目の爺はなにかを閃いてニヤリと笑う。
「では影分身の応用を少し見せてやろう」
そう言って爺は印を結ぶと、また新たに影分身を生み出す。
「ナルト、この分身にクナイを投げてみよ」
「えっと、それじゃあ遠慮なく!!」
そうしてナルトが投げたクナイが分身に刺さった瞬間、まるで爆風のような風圧がナルトを襲った。
「『風遁・影分身の術』じゃ。クナイや手裏剣などの突き刺さる攻撃に対し、刺した部分から強力な風圧と、今回は手加減してやらなかったが、本来なら風の槍が生み出されて直線上の的に貫通して突き刺さる技じゃ」
「す、すげぇ」
「これが火遁なら組技状態で爆破、雷遁なら斬ってくる相手を感電させたりと、影分身だけでも性質変化を組み込むことでいろんなことができるようになるわけじゃ」
流石に水と岩はそれ単体の分身術があるから意味はないがの、と教える爺のそれは、まだまだ老骨のそれだったが、少なくとも四代目やクシナの知る全盛期に少しずつ近づいていた。
「ナルト、螺旋丸も覚えたいだろうが、まずは性質変化を習得してみよ。それだけでも戦いかたのバリエーションも増えるし、なにより風の性質変化は乱戦は当然、一対一の戦いや情報伝達にも役立つ優れた汎用性のあるもの、お前の影分身と組み合わせれば充分に武器になる」
「おっす!!」
「それでは今日はここまで……帰ってしっかりと鍛練を積むのじゃぞ」
そう言って去っていく爺に、ナルトは少しだけ嬉しそうにしていたのをワシは見逃さなかった。
穢土転生(味方)にさせるなら
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千手柱間
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千手扉間
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うずまきクシナ