「いたか?」
「いいや。その様子だとそっちも収穫ナシみたいだね……」
三沢と遊奈は同時に首を振った。その横ではツァンが凄まじい形相で爪を噛んでいる。
明日香の悲鳴から15分、周辺を探し回ってもその姿は見えなかった。
「どうして……どうしてボクじゃなくて明日香なの……どうして明日香を
ガチ! とツァンの歯が音を立てる。
「って、先輩それ以上爪噛んじゃダメっす! ストップ!」
ツァンの指を見た遊奈が慌てて止めた。彼女の爪には、もう噛み切るところなど残っていなかった。
「……明日香……」
十代は彼らしくもなく、顔に影を落としている。彼の足元では、翔と隼人がこの世の終わりのような顔で座り込んでいた。
それを見たツァンが、声を荒らげる。
「アンタ達の
その矛先が自分に向くとは思っていなかったのか、隼人が体を跳ねさせた。
そのまま、後ろに倒れてゆく。
「う、うわああぁぁぁー!…………」
壁に空いた大穴へ、転がりながら消えてゆく隼人。
「隼人!」
「あっ、アニキ待ってよー!」
十代と翔が隼人を助けようと後を追う。
「…………これは、扉か?」
「そうっぽいね……
一方で、その場に残っていた三沢と遊奈は大穴を見て呟いた。たしかに2人の言う通り、突然開いた穴などではなく内開きの扉のようだ。
「何にせよ、残ってるのはここしかないでしょ。お喋りしてる暇があったら行くわよ」
そんな2人の間を割って、ツァンが扉に入った。
5拍ほど置いて、三沢が問う。
「彼女は?」
「……僕の、友達」
返答を聞いた彼は「ははは」と笑い、
「やっぱりか」
「な、何だよその意味ありげな微笑みは」
「なんでもないさ。それより、君はどうする? 少なくともここで突っ立っていては解決しないが」
「…………入るしかないかなー……遊城もディレ先輩も行っちゃったし……」
遊奈は扉の中を見る。まるで、地獄に繋がっていそうな深い闇の底を。
「……放っとけないかな」
穴に入り階段を下る遊奈に向かって、三沢が問いかける。
「それは、十代達か? それとも、あの先輩のことか?」
少し間があって、遊奈は答えた。
「両方?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
完全な暗闇を懐中電灯で切り取りながら進むことおよそ1分、遊奈と三沢は開けた場所に出た。
その中心で、ツァンが何やら叫んでいる。
「アンタの相手はボクだって言ってんのよ!聞こえないの!?」
「聞こえていないのは貴様だろう、子娘。俺は、遊城十代としかデュエルをするつもりはない」
対して、相手であろう大男はツァンに見向きもしない。仮面の下に潜むその目はまっすぐに十代を見ていた。仮面のレンズ越しにでも察せるほどの殺気をもって。
大男の背後の棺には明日香が納められている。気絶させられているのか、自分で動く様子がない。
「だから先輩、俺がデュエルするって言ってんじゃん!」
「もしもアンタが負けたらどうすんのよ! それで明日香が帰ってこなかったらどうするの!? あのクソ男はボクが殺す!」
「俺は遊城十代としかデュエルをするつもりはない」
「そんなの認めないわよ! アンタはボクが殺すの!」
「しつこいぞ、子娘。俺は遊城十代としかデュエルをするつもりはない」
状況はどうやらこの無限ループらしい。遊奈は大きなため息とともに、ツァンの肩を叩いた。
「先輩、お気持ちはお察しします。凄まじくよくわかります。でも、ここは遊城に任せてやってください。このままじゃ話が進みません」
「名指しよ!?
「遊城のデッキにメタ張るのは並のデッキにメタ張る3倍は面倒です。あと、遊城のデッキを完全に封殺するようなデッキなら先輩のデッキも完全に封殺されます」
「でも……」
「遊城の強さは保証します。俺はこいつが負けるところ見たことないです」
「………………………」
日本刀のようなツァンの視線が遊奈の目を貫く。それでも遊奈は目を離さなかった。
「…………あの赤いのが負けたら、クソ男と赤いのといっしょにアンタも殺してやる」
「……あ、はい」
少し後悔した遊奈だった。彼女なら実行に移しかねない……というか、ほぼ確実に実行するだろう。
「……遊城、天上院さんのためにも、俺の命のためにも、絶対勝てよ……」
「当たり前だろ! 友達を2人も失うわけにはいかないぜ!」
十代はデュエルディスクにデッキをセットし、ディスクを展開する。
「俺は、闇のデュエリスト、タイタン。遊城十代、貴様の魂、闇のデュエルで狩らせてもらおう……デュエルだァ!」
タイタンと名乗った大男が自身のデュエルディスクを展開すると同時に、黒い霧が周囲に立ち込めた。
「待って! 今何って……」
ツァンが割り込もうとするが、タイタンは遮るように手をかざす。
手にしているのは、不気味なオブジェ。
「「「「!!!」」」」
遊奈達に衝撃が走った。天地が逆転したピラミッドの中心に眼の紋章。おそらくその名は、
「千年…………パズル……?」
「ほう……知っていたか、小僧。いかにも、これは千年パズル。闇のデュエルにて、敗者の魂を封印する道具だ」
遊奈の呟きに、タイタンが千年パズルを揺らす。
「あまり、見つめすぎるなよ……魂を、吸い取られるぞ」
「「ひっ……」」
遊奈の隣で、翔と隼人が息を呑んだ。
彼らの反応に、タイタンは満足そうに微笑んで言った。
「それでは、デュエルを始めよう……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「先行は俺がもらおう。メインフェイズ、モンスターをセットし……手札からモンスターカード、《ジェネラルデーモン》を捨てて効果を発動するゥ。デッキからフィールド魔法《
フィールドが、不気味な祭殿へと変化する。
「このカードは地獄の一丁目。《デーモン》が効果によって破壊された場合、そのモンスター未満のレベルを持つ《デーモン》を手札に加えることができる。ターンエンドだ」
タイタン LP4000 手札3
セットモンスター1
万魔殿ー悪魔の巣窟ー(フィールド魔法)
「俺のターン、ドロー」
十代は動きを止め、タイタンを見る。
不気味なまでに静かな初動だった。相手のデッキが《デーモン》だということ以外はまだ謎のまま、十代も相手を計りかねているのだろう。
「……《
黒い霧を突き破り、鮮烈な
「バトルーー」
「バカ!」
そのままフェイズ移行をしようとした十代を、ツァンの声が止めた。十代は「なんだよ」とツァンを睨む。
「まずその魔法カードと罠カードを全部伏せなさい。バトルフェイズはそれからよ」
「なっ、なんでだよ!」
「い・い・か・ら」
「おっ、おう…………」
おそらく全力で睨まれたのだろう。十代はカードを3枚セットしてからフェイズを移した。
「バトルフェイズ! 《E・HERO スパークマン》でセットモンスターを攻撃!」
《スパークマン》はピンと伸ばした人差し指をセットモンスターに向ける。
「“スパーク……フラッシュ”!!」
電光が一閃、セットモンスターを貫く。
くるりと反転したカードの下に潜んでいたのは、気味の悪い笑顔を浮かべる壺……
「リバースモンスター、《メタモルポッド》の効果が発動するゥ。お互いに手札を全て捨て、デッキからカードを5枚ドローだ」
タイタンと十代、お互いに残された手札が全て吹き飛んだ。
「うげっ!! 《メタモルポッド》!?」
「ホラ見なさい。そのセットカード、全部墓地に行ってたのよ?」
「…………………………」
凄まじい形相のツァンを見た十代が凍りつく。
「後ろの小娘のおかげで助かったようだなァ、遊城十代。だが、俺の手札から墓地へ送られた《トリック・デーモン》の効果が発動するゥ! デッキから《迅雷の魔王-スカル・デーモン》を手札に加える」
「なら、俺だって墓地へ送られた《E・HEROシャドー・ミスト》の効果を発動するぜ! デッキから《E・HEROエアーマン》を手札に加える!」
「ほう……貴様も似たようなカードを持っていたか。さて、今は貴様のターンだぞ、遊城十代。する事がないなら、さっさとターンを終了しろゥ……」
「ターンエンド、だ」
タイタン LP4000 手札6
セットカード1
万魔殿ー悪魔の巣窟ー(フィールド魔法)
遊城十代 LP4000 手札6
E・HEROスパークマン Atk1600
セットカード3
「俺のターン……ドロー」
タイタンの周囲を、黒い霧が不気味に蠢く。
「……メインフェイズ、手札から《ダーク・グレファー》の効果を発動するゥ。手札のレベル8闇属性モンスター、《戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン》を捨てて《ダーク・グレファー》を特殊召喚。さらに《ダーク・グレファー》のもう一つの効果を発動ゥ。手札の闇属性モンスター、《迅雷の魔王-スカル・デーモン》を捨ててデッキから闇属性モンスター、《トリック・デーモン》を墓地へ送る。《トリック・デーモン》が墓地に送られた場合の効果は先刻も発動した通りだ……デッキから《デーモンの将星》を手札に加える。《ダーク・グレファー》をリリースし、《デーモンの将星》をアドバンス召喚! 《デーモンの将星》はアドバンス召喚に成功した時、墓地からレベル6の《デーモン》を守備表示で特殊召喚できるゥ……地獄より来たれ、《迅雷の魔王-スカル・デーモン》!」
闇のデュエル。タイタンの言葉が正しければ、敗者は魂を封印される……つまりは、命を落とすということだ。そんな状況で、タイタンは一片の恐れもなくプレイングを続けていた。自分の腕に絶対の自身を持っているのか……それを証明するかのように、タイタンのデッキは好調に回転していた。
「まだ動けないこともないが……バトルフェイズだァ! 《デーモンの将星》で《スパークマン》を攻撃するゥ……“雷迎滅波”ァ!」
紫の電光が一閃、《スパークマン》はその威力に破壊された。
十代LP4000→3100
「く…………っ!」
ダメージを受けた十代は両手をクロスさせて踏み止まる。
「さあ……
タイタンは千年パズルを掲げ、ゆらりゆらりと揺らす。
十代の体に、異変が起こった。
肉体の一部が、黒い霧に覆われる。
「うわっ、何すんだよ!」
十代は自身にまとわりつく霧を腕で振り払おうとし、
その腕がないことに気付いた。
「なっ……!?」
右手首から肩にかけての腕が消失し、右手だけが宙に浮いている。
すこし遅れて、遊奈達もそれを確認したのだろう。
「「「……!」」」
三沢や遊奈、ツァンは息を呑み、
「あ、アニキ!」
「十代!」
翔と隼人は顔を青くして叫んだ。
「これは闇のデュエルだ、遊城十代……
「くっ……言われなくても、勝ってやるぜ! 《スパークマン》が破壊されたとき、罠発動、《ヒーロー・シグナル》! デッキからレベル4以下のエレメンタルヒーローを特殊召喚する! 俺はレベル4、《E・HEROブレイズマン》を特殊召喚! 《ブレイズマン》の効果発動! このカードの召喚、特殊召喚に成功した場合、デッキから《融合》魔法カード1枚を手札に加えるぜ!」
カッ!と、黒い霧のスクリーンに「H」の文字が切り抜かれたサーチライトが浮かぶ。「ハッ!」という凛々しい声とともに降り立ったのは、燃え盛る
「タダでは死なぬ、か……面白い、それでこそデュエリストだ…………メインフェイズ2、フム……カードを2枚伏せ、ターンエンド」
タイタン LP4000 手札2
デーモンの将星 Atk2500
迅雷の魔王-スカル・デーモン Def1200
セットカード2
万魔殿ー悪魔の巣窟ー(フィールド魔法)
遊城十代 LP3100 手札7
E・HEROブレイズマン Atk1200
セットカード2
「俺のターン、ドロー!」
自分の身体が消えてゆく。普通の神経なら気が狂ってもおかしくない状況だが、十代の姿からはむしろポジティブなオーラが感じられる。
「行くぜタイタン、今度はこっちの番だ!」
思わず、遊奈と三沢が笑みをこぼす。
「はは、何があっても遊城は遊城だな」
「ああ。あの調子なら大丈夫だろう。どんなデュエルも楽しむ、それが十代だからな」
「アンタ達、この状況でよくヘラヘラしてられるわね……」
ギラ、とツァンの視線が三沢と遊奈を刺す。2人の笑みは引き攣った苦笑いに変わった。
「俺は手札から、《沼地の魔神王》を捨てて効果を発動するぜ! デッキから、《融合》魔法カードを手札に加える! 手札から魔法カード、《戦士の生還》! 墓地の《E・HERO スパークマン》を手札に戻すぜ! そして魔法カード、《融合》!手札の《E・HERO スパークマン》と《E・HERO エッジマン》で融合召喚、現れろ、《E・HERO プラズマヴァイスマン》!」
黒い霧を払って現れたのは、金色の鎧とアームを装着したヒーローだ。
しかし、
「……ぬ、させんぞ!罠カード《奈落の落とし穴》ァ! 《プラズマヴァイスマン》を破壊し、除外するゥ!」
着地の寸前、足下の地面が大口を開けた。奈落の底から伸びた手が《プラズマヴァイスマン》の足を掴み、穴の中に引きずりこむ。
「……く、だけどこのままじゃ終わらないぜ! もういっちょ、魔法カード《融合》! 手札の《E・HERO バーストレディ》と《E・HERO クレイマン》を融合! 《E・HERO ランパートガンナー》!」
今度は、重装甲を身につけたヒーローが重い足音を立てながら現れる。十代の前に陣取ると、盾を構えて防御の姿勢をとった。
「バトルフェイズ!」
「……なに?」
十代のフィールドには守備表示の《ランパートガンナー》のみ。攻撃可能なモンスターは存在していないはずだが、十代はバトルフェイズへの移行を宣言した。タイタンは怪訝な表情を浮かべる。
「《ランパートガンナー》の特殊能力さ。このカードが表側守備表示で存在する場合、与えるダメージが半分になる代わりに相手に
「……ッ!」
「いくぜ、《ランパートガンナー》! タイタンに直接攻撃! “ランパート・ショット”!」
《ランパートガンナー》の右腕部分、腕と一体化したマシンガンが火を噴いた。その弾丸は《デーモンの将星》と《スカル・デーモン》の防御をすり抜け、タイタンに着弾する。
「ぬうぅぅぅぅぅ……ッ!」
タイタンLP4000→3000
タイタンの周囲に浮かぶ、黒い霧が蠢いた。
「……おい、お前!」
十代は驚いた顔で叫ぶ。
タイタンの身体の一部、黒い霧に飲まれた左脚か消えていた。
「言っただろう、遊城十代。これは闇のゲーム……プレイヤーである以上、敗者となれば魂を封印されるのは俺とて同じだ」
「……ターン、エンド」
タイタン LP3000 手札2
デーモンの将星 Atk2500
迅雷の魔王-スカル・デーモン Def1200
セットカード1
万魔殿ー悪魔の巣窟ー(フィールド魔法)
遊城十代 LP3100 手札2
E・HEROブレイズマン Atk1200
E・HEROランパートガンナー Def2500
セットカード2
「俺のターン、ドロー」
タイタンも、黒い霧に全身の2割ほどを呑み込まれた。
その姿勢にぶれが見えないのは、おそらく“闇のゲーム”での幾百の死地を乗り越えてきた経験からの自信だろう。
「遊城十代……貴様は2体の守備表示モンスターで守りを固めたつもりだろうが……その程度の壁モンスターで俺の攻撃を防げると思うな……」
「へっ。だけど、お前のフィールドには《ランパートガンナー》を倒せるモンスターはいないぜ!」
「……フン。スタンバイフェイズ、メインフェイズ。《デーモンの騎兵》を通常召喚。さらに、自分フィールドに《デーモン》モンスターが存在する場合に、《デーモンの将星》は手札から特殊召喚できる!」
カカッ! と蹄鉄を鳴らす《騎兵》。しかし、雷光が瞬き、《騎兵》を粉々に砕いた。
「この方法で特殊召喚した《デーモンの将星》はこのターンには攻撃できず、特殊召喚に成功した時に自分フィールドの《デーモン》モンスターを破壊する」
《デーモンの騎兵》だったものを踏み荒らし、2体目の《デーモンの将星》が現れる。
「自分のモンスターを………….」
そのプレイングに憤りを覚えたのか、ツァンが一歩前へ出る。遊奈は慌ててそれを制止した。
「……この場合は、《デーモンの騎兵》を破壊するのが正解でしょう……」
「《騎兵》の効果くらいボクも知ってるわよ……だからって……」
凄まじい形相でタイタンを睨みつけるツァン。
「自分のモンスターを自分で破壊なんて……」
「《デーモンの騎兵》の効果発動。 このカードが効果で破壊された場合、墓地の《騎兵》以外の《デーモン》を特殊召喚できる……《戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン》を特殊召喚するゥ! さらに、《万魔殿ー悪魔の巣窟ー》の効果が発動するゥ! 破壊された《デーモンの騎兵》未満のレベルをもつ《デーモン》、《デスルークデーモン》を手札に加える!」
タイタンの背後に、巨大な椅子が落下した。
その椅子に、巨人のような巨体を誇る悪魔が腰を下ろした。
足首だけでゆうに《デーモンの将星》の背丈を上回っている。
「《デーモンの騎兵》の効果で特殊召喚したモンスターはこのターンに攻撃できないが……《戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン》には特殊効果がある……墓地の《トリック・デーモン》を除外して効果発動! 《E・HEROランパートガンナー》を破壊だァ!」
巨大な悪魔が人差し指で《ランパートガンナー》を指し、その指先から雷が迸った。《ランパートガンナー》は粉々に砕け散る。
「まだ終わらんッ!墓地の《ヘルウェイ・パトロール》の効果を発動するゥ! 墓地に存在するこのカードを除外し、手札から悪魔族モンスター《ジェノサイドキングデーモン》を特殊召喚だッ!!」
地面に空いた穴の中、深い闇の中から大剣を携えるデーモンが現れる。
「《メタモルポッド》や《ダーク・グレファー》で墓地へ送ったカード全てに意味があったというのか……バカな、攻撃力2000以上のモンスターがこうも簡単に5体並ぶだなんて……」
5体の《デーモン》。その威圧感に三沢が呟くが、その隣からツァンが叫んだ。
「バカはアンタよ、黄色いの! 攻撃可能なモンスターの攻撃力の合計は8000、《ブレイズマン》の攻撃力を引いても6800よ!? 赤いののライフは3100、丸ごと吹っ飛ぶじゃないの! あの赤いの、なんで《ブレイズマン》を守備で召喚しなかったの……やっぱりあんなクズに任せるべきじゃなかった……東雲、アンタのせいよ! やっぱりボクが……」
ツァンはすでに十代の敗北を確信したようだ。
対して遊奈は、
「……遊城はクズじゃありませんよ、先輩。少なくとも、俺よりは強いデュエリストです」
「でも、《ブレイズマン》を何の考えもなしに攻撃表示で……」
「たしかに遊城は考えてデュエルするような奴じゃない……だけど、タイタンのプレイング全てに意味があるように、あいつの直感的な行動が、いつも意味を持つんです」
「《迅雷の魔王-スカル・デーモン》を攻撃表示に変更し、バトルフェイズ! 《ジェノサイドキングデーモン》で《E・HEROブレイズマン》を攻撃!」
《ジェノサイドキングデーモン》の大剣が《ブレイズマン》に迫る。
無残に切り捨てられた《ブレイズマン》が砕け散った。
だが、十代は無傷だ。
「な、なぜ貴様はダメージを受けていないッ!」
「俺はこのカードの効果を発動していたのさ……」
十代のフィールドに
そのヒーローは十代にカードを手渡す。
「永続罠、《死力のタッグ・チェンジ》! 表側攻撃表示モンスターが戦闘で破壊されたときに発生するダメージを0にして、手札から戦士族モンスターを特殊召喚する! さらに特殊召喚した《エアーマン》の効果でデッキから《E・HEROフェザーマン》を手札に加えるぜ!」
「……だが、所詮は攻撃力1800! 《迅雷の魔王-スカル・デーモン》で《E・HEROエアーマン》を攻撃するゥ!」
「……く、《死力のタッグ・チェンジ》の効果! 戦闘ダメージを0にして、《E・HEROフェザーマン》を守備表示で特殊召喚!」
《スカル・デーモン》の雷撃が《エアーマン》を粉砕するが、十代の手札から翼をもつヒーローが舞い降りる。
「……フン、守備表示ということは、もう手札に戦士族はいないということか……」
「……やっぱバレる?」
「舐めるなよ、遊城十代。ダメージを与えられないのは癪だが、この盤面を返すのは不可能だ……《デーモンの将星》で《E・HEROフェザーマン》を攻撃!」
《フェザーマン》の頭上から雷が降り注ぐ。なす術なく《フェザーマン》は破壊された。
「このターンを凌いだところで、貴様の不利は変わらんのだ……ターン、エンド」
タイタン LP3000 手札1
デーモンの将星 Atk2500
迅雷の魔王-スカル・デーモン Atk2500
デーモンの将星 Atk2500
戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン Atk3000
ジェノサイドキングデーモン Atk2000
セットカード1
万魔殿ー悪魔の巣窟ー(フィールド魔法)
遊城十代 LP3100 手札1
死力のタッグ・チェンジ(永続罠)
セットカード1
「俺のターン、ドロー!」
ライフポイントは今のところ、拮抗している。
とはいえ、タイタンのフィールドには高攻撃力の《デーモン》が5体、十代のフィールドにモンスターは存在しない。
遊奈はこの一月半で幾百と繰り返してきた十代とのデュエルを思い返す。
そのうちの1度に、《スターダスト・ドラゴン》《琰魔竜レッド・デーモン》《氷結界の龍 トリシューラ》《ジャンク・デストロイヤー》《神樹の守護獣ー牙王》をフィールドに並べ、勝利を確信した瞬間ーーその全てが、覆る。
(うん、いける)
心の独り言を、遊奈は綴る。
(遊城のデッキにこの状況を覆すカードの組み合わせがあれば、遊城は絶対にそれを引いてくる)
そして今回、十代の反撃のターン、その起点はーー
「魔法カード、《ホープオブフィフス》! 墓地の《E・HEROエッジマン》《シャドー・ミスト》《エアーマン》《ブレイズマン》《フェザーマン》をデッキに戻し、カードを2枚ドローする! 」
強力なドローソース。補充した手札を見た十代の口元が緩んだ。
「罠発動、《
筋骨隆々の戦士が、背負った大剣を引き抜く。その左腕、金色のガントレットからも刃が飛び出した。
「フン、高攻撃力とはいえ2600か。《ジェネシス・デーモン》には届かんな」
「そろそろ、場所を変えようぜ! こんな雰囲気最悪な場所はヒーローには合わねえよ。ヒーローには、ヒーローが戦うための場所ってものがあるのさ」
その言葉の意味、それはつまり……
「手札から《E・HEROキャプテン・ゴールド》を捨てて効果を発動! デッキからフィールド魔法、《摩天楼ースカイスクレイパーー》を手札に加え、発動!」
フィールドの半分が、近代的なビル街へと塗り変わる。
「《スカイスクレイパー》でヒーローが攻撃するとき、その攻撃力が相手モンスターより低ければ……ダメージ計算時だけその攻撃力は1000ポイントアップする!」
「なっ……それでも、《ジェネシス・デーモン》を葬るだけに過ぎん!」
「そして《E・HEROワイルドジャギーマン》は……相手フィールドの、
「なん……だとォ!?」
「バトルフェイズ!」
《ワイルドジャギーマン》がほとんど瞬間移動のようなスピードで
タイタンLP3000→2400→2300→2200
残すは《ジェネシス・デーモン》ただ1体。《ワイルドジャギーマン》は跳躍して後方宙返りを決めると、《スカイスクレイパー》のビル街から頭一つ飛びぬけた中心のビルの
「行けっ、《ワイルドジャギーマン》!」
大剣を片手に、《ワイルドジャギーマン》は飛び降りた。
「“インフィニティ・エッジ・スライサー”!」
正中線に沿って、《ジェネシス・デーモン》の身体が両断される。
タイタンLP2200→1600
「やった!」
「あんなに不利な状況から、今は十代が押してるんだな!」
翔と隼人が手を取り合って喜ぶ。
「さすがだ、十代……やはり、彼は何かが“違う”な……」
三沢は微笑みを取り戻し、
「ね? 先輩。あいつはこういう奴なんですよ。あいつのライフが0にならない限り、フィールドと手札にカードがなくても油断できない。俺だって、ほぼ勝ちの状態から毎回負かされるんですよ」
「……わかったわよ……クズは撤回、ちょっとは戦えるみたいね」
遊奈の言葉を聞いたツァンは渋々といった様子で腕を組んだ。
「……だけど、勝ちきれなかった。東雲、アンタの理屈を使うなら、敵にだって反撃の可能性は残ってるはずよ?」
「……恐いのが、《デーモン》にもこの状況を返すカードがあるってことですね……」
遊奈は十代を見る。
(……やっぱり)
笑っていた。
(こんなデュエルでも、あいつは楽しんでるんだな……)
「……くっ、だが《ジェノサイドキングデーモン》が破壊されたとき、手札の《デスルークデーモン》を捨てて効果を発動ゥ! 墓地から《ジェノサイドキングデーモン》を復活させるゥ!」
「メインフェイズ2、俺はカードを1枚セットしてターンエンド」
タイタン LP1600 手札0
ジェノサイドキングデーモンAtk2000
セットカード1
万魔殿ー悪魔の巣窟ー(フィールド魔法)
遊城十代 LP3100 手札1
死力のタッグ・チェンジ(永続罠)
セットカード1
「俺のターン……ドローォォォ!!」
タイタンの身体は半分以上が闇に呑み込まれて消えていた。
だが、ドローカードを見たタイタンはニヤリと口角を上げる。
「スタンバイフェイズ、墓地の《プリズンクイーンデーモン》の効果が発動するゥ……《ジェノサイドキングデーモン》の攻撃力を1000ポイントアップさせるゥ!!」
「ああっ、《ワイルドジャギーマン》の攻撃力を超えた!」
翔が愕然とした声色で叫ぶ。
「まだだ……魔法カード、《強欲な壺》! デッキからカードを2枚ドローする………………フッ、ククク……フハハハハハハ!!」
2枚の手札を見て、高笑いをするタイタン。
「悪いな、遊城十代……この勝負は俺がもらった……手札から、《デーモンの騎兵》を召喚……そして魔法カード、《フォース》を発動! 《ワイルドジャギーマン》の攻撃力を半分にし、その攻撃力を《ジェノサイドキングデーモン》の攻撃力に加える!」
「「「《フォース》!?」」」
三沢、遊奈、ツァンの表情が一変した。声にも驚きの色がこもっている。
《フォース》。相手モンスターの攻撃力を半分にし、その数値だけ自分モンスターの攻撃力を上げる……つまりは、自分モンスターの攻撃力分のダメージが約束されるカード。
「アニキの残りライフポイントは3100……《ジェノサイドキングデーモン》の戦闘ダメージ3000と、《デーモンの騎兵》のダイレクトアタックを食らったら……」
「ま、負けてしまうんだな!」
翔と隼人は早くも諦めムードだ。とはいえ、遊奈にも希望的な予想はほぼできない。
「バトルフェイズだァ……《ジェノサイドキングデーモン》で《E・HEROワイルドジャギーマン》を攻撃……“炸裂・五臓六腑”!」
《ジェノサイドキングデーモン》の腹部から、大量のコウモリが湧き出した。その群れは《ワイルドジャギーマン》の身体を食い荒らし、十代にすら群がる。
十代LP3100→100
「うわっ、や、やめろ!」
「無駄だ、闇のゲームから逃れることはできないィ……」
タイタンは千年パズルを揺らす。
「があああああああああああああーーーーーーーー!!!!!!!」
コウモリの群れの中から、悲痛な叫び声が響く。
まるで、本当にコウモリ達に肉を食いちぎられているような……そんな悲鳴だ。
「アニキーーーーーっ!!」
堪えきれず、翔は十代に駆け寄ろうとする。
「止まれ小僧……闇のゲームを汚せば、貴様も闇に魂を封印されるぞ……」
が、タイタンの言葉で足が止まった。
「アニキ……ぼ、僕は……」
「ぐああああああああああああーーーーーーー…………ぅ…………」
悲鳴が止み、コウモリ達が離れてゆく。
後に残ったのは、
「な……っ!?」
「バカな……十代!」
「そんな……」
「アニキ……アニキ!?」
「十代……」
十代
十代の身体は、最早1割すら残されていなかった。
「フン……そんな状態になってはデュエルは続行できんな……俺の勝ちだ、遊城十代……」
「まだだ………」
それでも十代は、
「まだ俺のライフはゼロになってないぜ……」
「う、腕がないのにデュエルディスクが浮いてる!?」
翔が目を剥いて叫んだ。
「……翔、何を言っているんだ? 腕はちゃんと残ってるぞ?それより口がないのに声が聞こえることのほうが怖いんだな……」
と、隼人、
「……いや、口はあるだろう? 消えたのは首の下じゃないのか?」
と、三沢。
3人の言葉を聞いた遊奈は首を捻った。
(俺には顔の右半分と右手だけ見えるんだが……)
「おかしい…………」
遊奈の隣で、ツァンも首を傾げていた。
「先輩、」
その肩を叩く遊奈。
「何?」
「ーーーーーーー、ーーーー」
「……ああ、うん。わかった。……本当に?」
「多分。……先輩のほうは、可能ですか?」
「うん、できる」
「往生際が悪いぞ、遊城十代……《デーモンの騎兵》でダイレクトアタック! これで終わりだァ!」
「速攻魔法……ッ!」
十代の声には力がない。
残り
それでも、
命尽きぬ限り、十代は戦い続ける。
「《クリボーを呼ぶ笛》! デッキから《ハネクリボー》特殊召喚………っ、する!」
《デーモンの騎兵》の攻撃を受け止める、小さな毛玉。
「バカな……防いだというのか!?」
「へへ…………ありがとな、相棒…………」
砕け散った毛玉に対し、十代は感謝の言葉を送る。
「く……愚かな、防いだところで苦しみが長引くだけだ…………ターンエンドだ」
タイタン LP1600 手札0
ジェノサイドキングデーモンAtk2000
デーモンの騎兵 Atk1900
セットカード1
万魔殿ー悪魔の巣窟ー(フィールド魔法)
遊城十代 LP100 手札1
死力のタッグ・チェンジ(永続罠)
「俺の……」
「遊城!」
ドローフェイズに入ろうとする十代。それを遊奈が呼び止めた。
「何だよ……」
「俺を見ろ、遊城」
遊奈は十代をまっすぐに見据え、十代の呼吸に自身の呼吸を合わせてゆく。
「苦しいか?遊城」
「…………ああ」
「そうか、遊城」
「…………何だよ……」
「目を閉じて、想像しろ。遊城」
「想像……?」
「そうだ。遊城、君はデュエルしてる。遊城、デュエルは楽しいかい?」
「……ああ、楽しいぜ……」
「遊城、なら痛くも苦しくもないはずだよ」
「小僧、闇のゲームを汚すな!」
タイタンは遊奈を怒鳴りつけるが、遊奈はまるでタイタンなどその場にいないように、
「痛くない、痛くないよ。お前はいつだってデュエルを楽しんでたじゃないか。だんだん痛みがひいていく……いつのまにかぜーんぜん痛みを感じなくなってる。最初から痛みなんてなかったように……痛まなくなってくる。デュエルに痛みなんてないからね……痛くない……いたくないよ……はい!」
パン! と、乾いた音が反響する。遊奈の拍手だ。何の前触れもなく、いきなり大きな音を聞いた十代はビク! と身震いをした。
「…………どういうことだよ、遊奈……」
十代が言葉をこぼす。その声には、先ほどまでの痛みはない。
「本当に、痛くない……」
「やっぱりか……」
遊奈はタイタンを指差す。
「アンタすごいな……あんなに簡単に、
「催眠……? 俺たちは催眠状態だったというわけか?」
「そうだよ、三沢。……といっても、本当に催眠状態だったのは遊城だけだろうな。俺たちはただ、騙されてただけ」
「根拠はあるのか、小僧………」
「見つけたわよ、東雲」
タイタンは遊奈を睨む。だが、その間にツァンが割って入った。
「
「……そんな、ものが、どこにあると……」
「ここよ」
ツァンは指に挟んだ4枚のカードを投げる。
2枚は上、2枚は下。いずれも、突き刺さった壁や床からは火花が散った。
「そんでもって……ラスト!」
もう1枚が空気を切り裂き、タイタンの手にある千年パズルへと突き刺さった。
「ぬっ!?」
千年パズルが火花を散らし、黒い煙をあげて爆発する。古のオカルトアイテムには似合わない、機械的な壊れかただ。
同時に、周囲に漂っていた霧が嘘のように消える。
否、全て嘘だったのだ。
「おかしいと思った……
「……く……」
「アニキ!」
翔が叫び、十代へと駆け寄る。
「身体が……あるんだな!」
少し遅れて、隼人も十代のもとへ駆け寄った。
三沢は顎に手を当てて考えていたが、
「……つまり、タイタンは立体映像で十代の身体を消し、催眠術で十代に痛みや苦しみを与えていた……ということか? 遊奈」
「たぶんね」
「ぐぬゥ…………」
タイタンは一歩、二歩と後退りする。
そして、
「……フ、ハハハ……さらばだァ!」
「え、カッコ悪!」
バッ! と走り出すタイタンを見て、遊奈は思わず言ってしまった。
そのとき、
「……ッ!!」
“それ”に反応できたのは、ツァンだけだった。
ツァンはとっさに翔と隼人を突き飛ばす。
彼女にもそれが限界だったようだ。
世界が、“黒”く染まったーーーー
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「………………?」
黒い。
遊奈が受けた最大の印象はそれだった。
「東雲、」
声のしたほうを見ると、ツァンが腰に手を当てて立っている。
そしてその後ろに、鎧兜で身を固めた屈強な………
「《真六武衆》!?」
「おッ、手前ェ、俺らのこと知ッてんのか?」
黄色の鎧兜の武士、カゲキが背のロボットアームを動かす。
「いや、お前ら過去の環境でどんだけ暴れまわってたよ……ちょっと前からやってるプレイヤーなら知ってんだろワンキル集団……」
「それァ手前ェも人のこと言えねえだろ。ご主人サマがなんか言ッてんぜ、ジャンク・シンクロンさんよ」
カゲキの言葉に、ジャンク・シンクロンは目を泳がせて横を向いた。
「って、ちょっと待て!」
遊奈が見ると、その他にもクイック・シンクロンやチューニング・サポーターのような、遊奈が日常的に使っているモンスターが空中に浮いていた。
「へぇ……あのデカイのだけじゃなかったのね、アンタの
ツァンは辺りを見回しながら言う。
「遊城も、ここに来てるんですか?」
「赤いのは
ピタ、とツァンの目が止まる。
視線の先には、
「俺のターン、ドロー!」
十代のターンが始まろうとしていた。
相手はタイタンだが、なぜか様子がおかしい。
「……………嫌な予感はしたけど、やっぱりね……」
「……先輩……これは、どういう……」
「これは本物の“闇のゲーム”。とてつもない偶然が重なって、“条件”が整ってしまったのよ……」
「……じゃあ……」
「うん。ライフ100の赤いの……遊城だっけ?は、絶体絶命ってこと」
「魔法カード!」
暗い雰囲気を切り裂く、十代の発動宣言。
「《ミラクル・フュージョン》! 《E・HERO》融合モンスターの融合召喚に必要な素材を、フィールド、墓地から除外することで融合召喚するぜ! 除外するのは墓地の《E・HEROスパークマン》と《沼地の魔神王》! 《沼地の魔神王》は正規の融合素材モンスターの代わりに融合素材として扱うことができる! 現れろ、《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》!」
最後のドローカードは、やはり十代に味方したようで、
「《シャイニング・フレア・ウィングマン》は墓地の《E・HERO》の数だけ攻撃力を300ポイントアップする! 墓地には《クレイマン》《フェザーマン》《バーストレディ》《エッジマン》《ワイルドマン》《ワイルドジャギーマン》の6体! よって攻撃力は1800アップし、4300ポイントだ! バトルフェイズ! 《シャイニング・フレア・ウィングマン》で《ジェノサイドキングデーモン》を攻撃!」
眩い輝きの拳が、タイタンのライフを吹き飛ばした。
タイタンLP1600→0
デュエルが終わった瞬間、周囲の“黒”が蠢きだす。
「なっ……何だ! やめろ、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ………」
“黒”はタイタンにまとわりつき、やがてタイタンの声が消える。
「…………遊奈、大丈夫だったか?」
「いや、それこっちのセリフ」
「俺は大丈夫だぜ。遊奈のおかげでな」
十代は遊奈に向けて拳を突き出した。遊奈はそれを拳で小突く。
「ヒヤヒヤさせないでくれよ。寿命が縮んだぞ」
「勝ったからいいだろ。それより、ここからどうやって出るかだが……」
『クリクリ〜』
ポン、と十代の背後から毛玉が出てきた。背中の羽をぴこぴこと動かして浮かんでいる。
「相棒!」
十代はその毛玉を撫でる。
遊奈は自分についてきているジャンク・シンクロン一行とハネクリボー、真六武衆の面々を見て、
「これは何なんですか?」
とツァンを見た。
「デュエルモンスターズの精霊よ。アンタがいつも使ってる《ジャンクドッペル》のね。危害は加えないから大丈夫」
「にわかには信じられないんですが……」
「どうあれアンタも見ちゃった以上は“こっち”の人間よ。いずれ、“いる”のが当たり前になるわ」
「遊奈! ……と、」
十代が遊奈を呼んだ。続いてツァンに目を向け、言葉が止まる。
「ディレでいいわ」
「じゃあディレ!」
「せめて『さん』か『先輩』を付けなさいボクは最上級生よ!?」
「でぃ、ディレ先輩!」
改めて言い直してから、十代はハネクリボーを指差す。
「相棒が元の世界まで連れてってくれるってさ」
「へぇ、やるじゃないアンタ」
ツァンがハネクリボーを撫でる。その後ろで真六武衆の数人が羨ましそうにハネクリボーを睨むが、ツァンの鋭い視線で全員が目を逸らした。
「……そうだ、遊城」
「ん、」
「一応、お礼を言っとくわ。明日香を助けたのはアンタだし。……ま、ボクならあんな奴サクっとライフ全部吹っ飛ばしてやってたけどね」
「そこまで言うなら俺とデュエルしようぜ先輩! 超強いんだろ!?」
「帰ったら考えといてあげる」
「えー、遊奈とはデュエルしたんじゃないのかよー」
「コイツには前から興味があったしね……今日のデュエルを見て、アンタにも興味が湧いた。アンタが暇なときにでも女子寮に来なさい。気が向いたらデュエルしてあげるわ……あと、東雲」
「は、はい?」
「アンタのデュエルも、気が向いたら受けたげる。この前のリベンジもしたいしね」
「……では、明日にでもお伺いします」
「待てよ遊奈、俺が先だ!」
「早い者勝ち、これ常識」
「先輩! 俺も明日だ!」
「……はいはい、気が向いたらね。じゃ、そろそろ帰らせて頂戴」
ツァンの言葉で、ハネクリボーが発光した。優しい光は3人を包むと、ますますその強さを高めーーーー
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「うごっふ!」
腹部に衝撃を感じ、遊奈は目を覚ます。
全身がだるい。少し寝不足気味だ。やはり前日の肝試しが響いているのだろうか。
「……って、お前か………」
遊奈の腹にのしかかっているのは、ネジを大量に生やしたハリネズミ……ボルト・ヘッジホッグだ。
その隣にはジャンク・シンクロンやジェット・シンクロンが空中から遊奈を見下ろしている。「もう朝だ」とでも言いたげな表情だ。
大きく伸びをして、心で呟く遊奈。
ーーーーずいぶんと、《友達》が増えたな………
お久しぶりです、埜中です。また3週間ほどかかってしまいました……
あとがきを書いてる今になって気づいたのですが、字数が普段の1.5倍くらいあるんですよね。前後半に分ければよかった……最後の方とか私も何を書いているか半分わかっていない状態で(ちなみにこれを仕上げるまで7時間ほど、ブッ通しで書いてました)……拙い文章がいつにも増して拙くなっていることでしょう。デュエルミスしてそうで怖いなあ……
VSタイタン、VSデーモンで、味方陣営は十代のHEROでした。この作品では初の、遊奈くんがデュエルしないデュエルをフルでお送りしました。ジャンド回したい……
エッジマン大活躍(笑)リアルで中々見ない彼ですが、彼の融合体には意外と強力なモンスターが多いですね。
タイタンさんのデーモンは、いわゆる一般的な《デーモン》に《チェスデーモン》のエッセンスを少し加えたものとなっております。《チェスデーモン》を主体として回したかったのですが……だって将星とかトリックとか便利だし……ジェノサイドさんは活躍してたし……
ちなみに、タイタンの最後まで開かなかったセットカードは《闇次元の解放》でした。発動タイミングが見事になかったんですよね(笑)これを引いたのがタイタン最大のプレミでしょうね。
では今回はこの辺りで。次回は遊奈くんの日常を描いてみようと思います。最後になりましたが、こんな駄文を読んでくださった皆様に感謝しつつ、筆を置きたいと思います。皆様にささやかな幸せがありますように。
2015年月5某日 埜中 歌音
質問、アドバイス、デュエルミス等あれば是非是非コメントへお願いします。キャラやデッキのリクエストも受け付けております。