遊戯王GX イレギュラー・シンクロン   作:埜中 歌音

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イレギュラーは未知の力を白日に晒す

「すげー…………」

試験会場ーー海馬ランドの中の様子を見て、遊奈は思わず呟く。

まるでバスケットボールやバレーボールのコートのような、長方形に区切られたデュエルスペースが4つ。

その4つでそれぞれ、デュエルが行われていた。

どうやら実技試験の真っ最中らしい。受験票の文章によると、筆記試験はすでに終了しており、その順位がそのまま受験番号なのだという。

18位ーーそれなりにいい順位だろうか。

遊奈に筆記試験を受けた記憶はないが、結果が出てしまっている以上仕方がない。これはズルじゃない、と自分に言い聞かせながら遊奈は実技試験の様子を眺めていた。

デュエルディスクにソリッドビジョン。立体映像で実体化したモンスターたち。

アニメで見た通りの遊戯王の世界がそこにあった。

「へえ…………面白いなここ……」

とりあえず観戦席に座り、自分のバッグの中からカードケースを取り出す。遊奈は3つのデッキをメインで使っている。

見ると、3つのデッキが全て収まっていた。

とりあえず、戦える。

デッキの存在に一息ついた遊奈は、デッキ内容の確認に入る。

「1、2、3……メインは大丈夫か。エクストラは……あれ?」

エクストラデッキを取り出したところで、彼の表情が変わる。

足りない。

それも、デッキの核となるカードが足りない。

「1、2、3……うわ、6枚足りない……盗まれたかな……」

失踪したカードの中にはかなりのレアカードも含まれていた。たしか単品価格は中古で1000円だったか、買い戻すの嫌だな……と遊奈は項垂(うなだ)れる。

「……探したいけど、仕方ねえか。サイドチェンジで軸も変えられるように組んでるし、とりあえずはこっちでいくか……サイドは……うん、全部あるな」

エクストラデッキにカードを加え、メインデッキのカードを何枚か入れ替える。シャッフルして5枚ドローを数回繰り返し、それなりに戦えることを確認して、遊奈は大きなため息をついた。

「熱心だな。試験の前から回りの確認か?」

後ろから声をかけられ、振り返る遊奈。そこには単発をオールバックにした、ガタイのいい男子生徒が立っていた。

「いやあ、やっぱり、初手がどの5枚でも極力戦えるようにしたいじゃん?……まあ、どう転んでも勝てるデッキなんて作れないんだろうけど、やっぱり安定性は大切だし」

遊奈の言葉に、男は頷きながら返した。

「そうだな。爆発力や展開力も重要だが、やはり安定性を重要視するべきだと思う」

「気が合うな!」

「そうだな、君とは気が合いそうだ。……隣、いいか?」

「どうぞどうぞ。俺は東雲遊奈。名前は?」

名乗りとともに差し出された遊奈の手を笑顔で握る男。社交的な男、と遊奈は受け取った。

「三沢大地だ。よろしく、遊奈」

「名前を呼ばれるのは好きじゃないんだけどな……なんか、『ゆうな』って女の子みたいじゃない?」

「そうか?いい名前だと思うぞ」

「嬉しいよ」

二言三言喋ったあと、遊奈はデッキ調整に戻った。その内容を、三沢が覗き込んでくる。

「……下級モンスターが多すぎないか?というか、上級モンスターがいないんじゃないか……?」

「こんなもんだろ?下手に上級詰めて重くなるの嫌だし」

「……これだと、相手の上級モンスターをどう攻略するんだ……?」

「……そりゃ……」

そのとき、ポーン、という電子音が響いた。

『受験番号、12番から24番、一階、デュエルフィールド入口に集合』

遊奈は自分の受験票に書かれた『18』の数字を見る。

「俺、行ってくる。お前は?」

「僕は……まだだな、遊奈、頑張れよ」

「……11番以内なんだな……三沢、お前もな」

遊奈が握り拳を突き出すと、三沢も拳を握ると遊奈の拳にぶつけた。

 

「……さて、いっちょブチかましてやりますか……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「受験番号18番、東雲遊奈くんかな?」

「はい」

「……緊張しているかい?」

「……多分、人並には」

デュエルフィールドで遊奈の向かいに立っているのは、独特なデザインのコートを着た中年の男だ。心なしか、太っているように見える。

「緊張は悪いことではないよ。ともかく、君の全力を見せてくれ。デュエルは一本勝負、やり直しはきかないからね」

「出し惜しみできる相手じゃなさそうですしね……全力でいきます」

「いい意気だ。じゃあ、早速デュエルといこうか!」

試験官はデュエルディスクを構え、それに釣られて遊奈もデュエルディスクを構える。これはなぜかバッグに入っていたものだ。

 

「「デュエル!」」

 

「先攻は譲ろう」

試験官の言葉に、遊奈は首を左右に振る。

「いいです。先攻どうぞ」

試験官は意外そうな表情をした。

「変なことを言うんだな、君は」

「本音を言うと1ドロー欲しいだけです」

「なるほど……なら先攻をもらおうか」

自分が握る5枚の手札を眺める試験官。その表情は真剣そのものだ。

「スタンバイフェイズ、メインフェイズ。そうだな……魔法カード、《召喚師のスキル》発動。デッキからレベル5以上の通常モンスターを手札に加える」

試験官のデュエルディスクが、デッキから1枚のカードを選び出す。

「私はレベル8の通常モンスター、《ラビー・ドラゴン》を選択、手札に加える。続いて魔法カード、《トレード・イン》。レベル8モンスターを捨ててデッキからカードを2枚ドローするカードだ。《ラビー・ドラゴン》を捨てて2枚ドロー。……ふむ」

内容が塗り替えられた手札で少し考える試験官。

その指が、動いた。

「魔法カード、《古のルール》発動。手札のレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚する。私は《ラビー・ドラゴン》を特殊召喚」

「……あー…………、はい」

現れたのは、巨大な耳と後脚をもつ龍だ。先程、《トレード・イン》のコストとして捨てたカードと同名カードということは、デッキに複数枚投入されているのだろう。

高いステータスを誇る、優秀な通常モンスターだ。

「続いて、《アレキサンドライドラゴン》を通常召喚」

次に、宝石のように光り輝く鱗をもつ龍が現れる。《ラビー・ドラゴン》ほどの存在感はないが、下級モンスターとしてはかなり高い攻撃力をもつモンスターだ。

「永続魔法、《凡骨の意地》を発動。さらに、カードを1枚セット。ターン・エンド」

 

試験官 LP4000 手札0

 

ラビー・ドラゴン Atk2950

アレキサンドライドラゴン Atk2000

 

凡骨の意地(永続魔法)

セットカード1

 

試験官はこの1ターンで手札を全て使い切った。

とはいえ、高火力のモンスターを2体並べ、使い様によっては強力なドローソースとなる《凡骨の意地》を発動している。さらにはセットカードが1枚。それなりに厳しい状況だ。

「俺のターン、ドロー」

6枚となった手札を眺め、最善の動きを頭の中で練り上げる遊奈。

30秒ほど考えていると、試験官から声がかかった。

「……長考はあまり長引くと遅延行為ととられるぞ。それとも、この盤面を攻略する術が思いつかないか?」

「すいません。すぐ、動きます」

30秒で考えは整った。相手の手札は0、これならいけるーーと、遊奈はカードに手をかける。

「スタンバイ、メイン。まず、《サイクロン》でその邪魔なセットカードを破壊します」

「くっ、《奈落の落とし穴》が破壊される……」

攻撃力1500以上のモンスターの召喚、特殊召喚に反応して発動し、そのモンスターを破壊し除外する《奈落の落とし穴》。いいカードを破壊できた、と遊奈は内心、ほっとする。

初動は上々。次の一手だ。

「相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合、《アンノウン・シンクロン》は特殊召喚できる」

横向きのカードから、球体の機械が現れる。

「攻守0……?同じ条件なら、《サイバー・ドラゴン》の方が優秀なのでは……」

「手札から魔法カード、《ワン・フォー・ワン》。《チューニング・サポーター》を捨ててレベル1モンスター、《レベル・スティーラー》をデッキから特殊召喚する」

今度は、大きなテントウムシが現れた。《アンノウン・シンクロン》と同じように、横向きのカードの上に鎮座している。

「さらに、魔法カード、《調律》発動。デッキから《シンクロン》と名のつくチューナーモンスター、《ジャンク・シンクロン》を手札に加える」

「チューナーモンスター……?何だ、それは……」

目を見張り、驚いたような顔をする試験官。

少し気になったが、遊奈は無視してプレイングを続ける。

「《調律》はサーチ効果の処理のあと、デッキの上からカードを1枚墓地へ送る。……《ボルト・ヘッジホッグ》が墓地へ」

墓地へ送られたカードを見て、遊奈はニヤリと口角を上げた。もう一度手札とフィールド、墓地を確認すると、次の一手へと指をかける。

「……よし。通常召喚、《ジャンク・シンクロン》このカードは召喚に成功したとき、墓地のレベル2以下のモンスター1体を特殊召喚できる。《チューニング・サポーター》を特殊召喚」

《ジャンク・シンクロン》がゴミ箱へ手を突っ込み、がさがさと中身を漁る。やがて、目当てのものを見つけたのか、両手でそれを引っ張り出した。

出てきたのは古ぼけたフライパン。そのフライパンから人型の小さな体が生え、《ジャンク・シンクロン》の隣に並び立つ。

新たに2体のモンスターが加わり、遊奈のフィールドにはモンスターが4体。どのモンスターも攻撃力1500に満たない弱小モンスターだ。

「……その弱小モンスターで、どうするつもりだ?一番攻撃力の高い《ジャンク・シンクロン》でさえ、《ラビー・ドラゴン》どころか《アレキサンドライドラゴン》も破壊できないぞ?」

試験官の言葉に、遊奈は不敵に笑って答える。

「俺のデッキのモンスターには全てに役割がある……弱くたって、力を合わせれば強くなれる!いくぞ、皆!」

遊奈のデッキは、弱小モンスターがフィールドに並んでから真価を発揮する。

下拵えは整ったと言わんばかりに、遊奈は人差し指で《ジャンク・シンクロン》を指差した。

「まずはお前だ!頼んだぞ、《ジャンク・シンクロン》!レベル1の《レベル・スティーラー》、《チューニング・サポーター》にレベル3、チューナーモンスター、《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

バッ!と《ジャンク・シンクロン》が跳んだ。空中でくるくると宙返りを決めた《ジャンク・シンクロン》は、背中の推進装置(ブースター)のようなもののレバーを引く。

すると、《ジャンク・シンクロン》に変化が起こる。全身が緑に発光し、ついには3つの光の輪に分かれてしまった。

その輪の中に、《レベル・スティーラー》と《チューニング・サポーター》が飛び込む。するとその2体も発光し、2つの光の球となった。

緑の輪数は、チューナーモンスターのレベルの数。

光の球の数は、チューナー以外のモンスターのレベルの数。

その合計は、5。

「集いし思いが、未来の叡智を呼び起こす!光差す道となれ!」

カッ!と、緑の輪を光の柱が貫く。

その中から、眼鏡をかけた長身の男が飛び出した。

「Go、シンクロ召喚!《TG(テックジーナス)-ハイパー・ライブラリアン》!!」

バッ……とローブを翻し、決めポーズをとる《ハイパー・ライブラリアン》。今まで活気づていてた試験会場が、水を打ったように静まり返る。

当の遊奈本人は、試験会場の異変に気づいていない。

「………………18番、君は……」

試験官が何かを言おうとした、そのとき。

 

「なんなんだよ、あれ!」

「すげえ!新しいシステムか!?」

「シンクロ召喚!?」

「いきなり上級モンスターが出てきたぞ!?」

 

莫大な野次が、遊奈のフィールドに降り注いだ。(おびただ)しい声の奔流は津波のように、個々を失ってただの“音”として遊奈に襲いかかる。

「え、え?」

困惑する遊奈。彼の知っている遊戯王とは特殊召喚を重ね、シンクロ召喚やエクシーズ召喚で主要モンスターを展開するのがセオリーだ。そのセオリーに(のっと)ってシンクロ召喚をして、こんな野次を食らうとは思っていなかった。

 

「18番、これは……何だ?」

試験官の驚愕の表情が、遊奈をさらに困惑させる。

「何……って、シンクロ召喚ですよ……」

「そんな召喚方法は()()()()()()()()()……?」

「……え……!?」

聞いたことがないーー試験官はおそらくデュエルアカデミアの教官。つまりはデュエルモンスターズのスペシャリストだ。そのスペシャリストが「聞いたことがない」と言った。つまりーーーー

 

 

この世界には、シンクロ召喚は存在しない。

 

 

まずい。遊奈の頭の中はその単語で満たされた。

(…………そういえば、)

三沢大地という生徒がいた。

遊奈の記憶が正しければ、彼は『遊戯王GX』のキャラクターだったはずだ。

シンクロ召喚の初舞台は、『GX』の次作である『遊戯王5D's』。

やっちゃったー……と遊奈は冷や汗を流す。

(ああクソ、なんで三沢なんだよ!もっと十代とか翔とかカイザーとか万城目とか出てこいよ!三沢(空気くん)じゃ気づかねえっての!)

恐る恐る試験官を見てみると、試験官は技術者らしき白衣の男と話し込んでいた。

十数秒ほど言葉を交わしたあと、試験官が「了解した」と頷く。白衣の男はもう一言何かを付け足して、試験官から離れていった。

「18番」

「は、はい!」

別に失格になろうが、デュエルアカデミアを志していたわけではない遊奈にはどうでもいいことだ。

だが、シンクロ召喚を行ったことで遊奈は『異端者』という扱いを受けてしまうだろう。卑怯者呼ばわりか、それとも怪しげな研究施設で実験台にされるか……遊戯王の世界観なら、無いとは言い切れない。

「……デュエルディスクが正常に作動している以上、不正は見受けられない。シンクロ召喚という召喚方法は実在するようだ。気にせず続けてくれ」

「……え、あ、はい」

今の所は助かった……と心の中でため息をつく遊奈。

だが、この後何をされるかはわからない。デュエルが終わったら三沢に軽く挨拶してすぐ帰ろう、と遊奈は心に決めた。

「《チューニング・サポーター》がシンクロ素材として墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドローできる。さらに、墓地の《ボルト・ヘッジホッグ》の効果を発動」

「墓地で発動する効果モンスター!?」

試験官の驚いた声。たしかに、この時代では墓地で発動するカードは少なかったか……

「このカードは自分フィールド上にチューナーモンスターがいるとき、墓地から特殊召喚できる。俺のフィールドの《アンノウン・シンクロン》はチューナーモンスター、条件は整っている!来い、《ボルト・ヘッジホッグ》!」

遊奈の傍らのゴミ箱から、オレンジの毛玉が飛び出した。数回バウンドした毛玉は4本の足で地面を掴むと、背中から大量のネジを生やす。

「レベル2、《ボルト・ヘッジホッグ》にレベル1、チューナーモンスター、《アンノウン・シンクロン》をチューニング!」

もう一度のシンクロ召喚。緑の輪は1つ、光球が2つ、合計は、3。

「神風の使者に守護の祈りが集うとき、その翼は聖なる嵐を巻き起こす!光差す道となれ!シンクロ召喚!レベル3、《霞鳥クラウソラス》!!」

フィールドに、激しい風が吹く。

深緑の羽根が無数に舞い散り、その持ち主ーー鮮やかな緑の大きな鳥が翼をはためかせて着地した。

「自身の効果で特殊召喚した《ボルト・ヘッジホッグ》はフィールドから離れた場合、除外される。続いて、さらに、《TG-ハイパー・ライブラリアン》の効果で、シンクロ召喚が行われたことにより1枚ドロー。続いて手札の《クイック・シンクロン》の効果を発動。このカードは手札のモンスターカードを墓地に送って特殊召喚できる。《ラッシュ・ウォリアー》を墓地へ送って《クイック・シンクロン》を特殊召喚」

まだ止まらない。次はぼろぼろのマントで身を包み、目深に被ったぼろぼろのハットで顔を隠しているガンマン風のモンスターだ。

「墓地の《レベル・スティーラー》の効果を発動。このカードは自分フィールド上のレベル5以上のモンスターのレベルを1つ下げ、墓地から特殊召喚できる」

「また墓地で発動するモンスター効果か……」

試験官も、この後に起こることを予感したのだろう。苦虫を噛み潰したような顔をする。

「《クイック・シンクロン》のレベルを5から4に下げて特殊召喚」

ゴミ箱から飛び出したテントウムシが、《クイック・シンクロン》に体当たりをかます。まともに受けた《クイック・シンクロン》は、スッテン!と転び、《レベル・スティーラー》はその横に、何もなかったかのように浮いている。見ると、《クイック・シンクロン》のものらしき星が《レベル・スティーラー》の背中にあった。

「レベル1、《レベル・スティーラー》にレベル4となった《クイック・シンクロン》をチューニング!」

緑の輪は4つ、光球が1つ。

合計は、5。

「集いし願いの結晶が、新たな進化への速度を(はし)る!光差す道となれ!シンクロ召喚!レベル5、《ジェット・ウォリアー》!」

けたたましいジェットエンジンの音とともに、少し小さめのジェット機が飛来した。

飛行機雲を従えながら飛び回るジェット機は、その羽根の下からミサイルを覗かせる。

「《TG-ハイパー・ライブラリアン》の効果で1枚ドロー。さらに《ジェット・ウォリアー》はシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールド上のカード1枚を手札に戻す(バウンスする)効果がある。《ラビー・ドラゴン》を手札に」

「……くっ……」

《ジェット・ウォリアー》から発射されたミサイルが《ラビー・ドラゴン》に命中、その爆風で《ラビー・ドラゴン》は試験官の手札に戻った。ジェット機はそれを確認すると、遊奈のそばに止まって変形、人型となる。

「《霞鳥クラウソラス》のモンスター効果、発動。1ターンに1度、相手モンスターの攻撃力を0にし、効果を無効にする。《アレキサンドライドラゴン》の攻撃力を0に」

「な、なにっ!?」

《クラウソラス》が大きく羽ばたくと、その風を受けた《アレキサンドライドラゴン》が堪えきれずに目を閉じてしまう。

「こ、これは…………」

試験官が思わず、後ずさりをする。

遊奈のフィールドには、攻撃表示で攻撃力2400の《ハイパー・ライブラリアン》と2100の《ジェット・ウォリアー》。

試験官のフィールドには、攻撃力0となった《アレキサンドライドラゴン》。ライフポイントは4000で、伏せカードもない。

単純な計算だった。

「バトルフェイズ。《TG-ハイパー・ライブラリアン》で《アレキサンドライドラゴン》を攻撃。《ウィズダム・ブレイク》」

《ハイパー・ライブラリアン》が右手の本を開いて呪文を唱えると、フィールドの天に現れた雲から雷が降り注ぐ。

断末魔をあげて破壊される《アレキサンドライドラゴン》と、ダメージを受ける試験官。

試験官LP4000→1600

「《ジェット・ウォリアー》でダイレクトアタック。《ジェット・ショット》」

《ジェット・ウォリアー》の右腕が変形し、機銃に切り替わる。

発射された大量の銃弾が、試験官のライフを削り切った。

試験官LP1600→0

Winner 東雲 遊奈

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「よっ、三沢」

「ああ、君か遊奈。すごかったな、シンクロ召喚なんて初めて聞いたぞ」

「はは、まさか誰も知らないなんて思ってなかった。地元じゃ皆……いや、使う奴は使ってたんだけどな……」

試験デュエルのあと、結果が家に郵送される旨を聞いた遊奈は、迫り来る野次馬をなんとか回避して観戦ブースまで辿りついた。

「ところで遊奈、シンクロ召喚は、チューナーモンスターとチューナー以外のモンスターのレベルの合計のシンクロモンスターを融合デッキから特殊召喚する。……という理解で大丈夫か?」

「冴えてるな。それで正解」

初見の召喚方法を三回見ただけで理解するとは、と遊奈は少し感心した。この三沢という男は頭が回るようだ。

彼の隣に腰掛けようとして、軽い目眩に襲われた。

慣れない出来事の連続で、自覚以上に疲弊しているのだろうか。

「……じゃあ俺は帰るよ。また会おうぜ、三沢……お互い合格してたらな」

「……君は大丈夫だろう。それに、多分僕も合格はできる……そうだ、携帯電話の番号を交換しておかないか?」

「おっ、いいねそれ」

遊奈はバッグを下ろすと、携帯電話を求めてなかをかき回す。

「……ん、あったあった」

取り出した携帯電話を操作して自分の番号を探していたところで、どこかのデュエルフィールドの声が遊奈の耳に届いた。

 

「レベル4の《ガガガマジシャン》と、レベル4になった《ガガガガール》でオーバーレイ!」

 

「……は?」

遊奈にとってはシンクロと同じくらい慣れ親しんだ召喚方法だ。

が、ここにはシンクロ召喚は存在しない。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

ならば、その声はなぜシンクロ召喚よりもあとに誕生したはずの召喚方法を実践しようとしているのだ?

 

「エクシーズ召喚!来て、私のヒーロー!ランク4、《No.(ナンバーズ)39 希望皇 ホープ》!」

 

「エクシーズ、召喚……?」

遊奈の呟きが漏れた、直後。

再び、海馬ランドは声の奔流に飲み込まれた。





どうも埜中です。全然久しぶりじゃない気がします。
この作品はだいたいのストーリーが決まっているので、しばらくは週一回のペースでがんばってみようと思います。あまり自信はないですが……
VS試験官、VS《通常モンスター》の入試デュエルです。《通常モンスター》デッキですがGXの設定上《青眼の白龍》が使えないので《ラビー・ドラゴン》にしました。通常モンスターを限定するサポートカードで高火力モンスターを展開するデッキなのですが、遊奈くんが容赦無くワンキルしちゃいましたね。
遊奈くんが使うのは《シンクロン》デッキ。この時代に持ってきて大丈夫かな……という懸念もありますが、まあ、アニメキャラにはアニメキャラ補正がついていますし……それに、訳あってアクセルシンクロモンスターは使えないので、そこまでパワーバランスが崩れるわけではないかと……少なくとも、十代は大丈夫でしょう。彼には強力なHEROたちが付いてますから。
さて、次は15日、無事投稿できるのでしょうか……
では最後に、こんな駄文を読んでくださった皆様に感謝しつつ、筆を置きたいと思います。皆様にささやかな幸せがありますように。

2015年 1月某日 埜中 歌音
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