遊戯王GX イレギュラー・シンクロン   作:埜中 歌音

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今回のキーカードはもちろんアニメ効果です。
……でもこの世界のライフ4000だしOCG効果でもワンキル狙えそう……?


狂戦士は溢れる闘気に魂を燃やす

勝利も。

敗北も。

終わってしまえばあっけなく。

(あきら)も成功も、

十代も、

翔ですら。

デュエルの勝敗を知ったのは、モンスターの立体映像(ソリッド・ヴィジョン)が消えたあとだった。

音が消え去ったような空白の時間のあと。

一拍遅れて全てを理解した観衆が、津波のような声をあげる。

 

「《イクリプス》が負けたァ!!?」

「ウソだろあの一年……“守り人(アークス)”相手に勝ちやがった!!」

「よ、よかったにゃー……」

「あり得ない! あり得ない! 成功キュンが負けるなんて!!」

「へェ……やるじゃねェの……」

「遊城……十代……!! あの、落ちこぼれが……」

「たたたたタッグデュエルでーハ、シニョール丸藤以上ーノ、実力の二人ーガ、負けてしまったノーネ!?」

「これは……番狂わせか、はたまた必然か……」

 

 

 

 

渦を巻く歓声の中で。

成功は翔に向けて、右手を差し出す。

 

「……ぼぼ、『僕たちの勝ちだ』なんて……啖呵を、切って……かか返り討ちに、されちゃった、ね……」

 

デュエル中の姿勢は消え失せ、呟くような声でおどおどと握手を求める成功の姿があった。

その顔にあるのは、敗者の表情とは思えないほどに柔らかな笑顔だった。

 

「すごい、デュエル……だった。か、完璧、に……負かされたよ。できたら、また……今度は、り、リベンジしたい、な……」

 

未だに夢見心地の翔の背中を、十代がポンと叩いた。

翔はびくっと肩を震わせてから、おずおずと成功の手を握り返した。

 

「ありがとう」

 

「こ、こちらこそ……ありがとう、ごさいます」

 

翔との握手を終え、成功は十代にも握手も求めた。相手が消えて宙ぶらりんになった翔の手を、今度は玲が握る。

 

「次は勝つ。以上」

 

翔が手に力を入れる時間も与えずに、玲はふいと手を離し、成功を追って翔の前を離れた。少し向こうでは十代が成功に「ガッチャ!」とお決まりの台詞を口にしていた。

その顔が翔のほうを向き、腕が伸びて翔の肩を掴む。

 

「ありがとな翔! お前のおかげだぜ! すげえよお前、1ターンでレベル10のモンスターを3体も召喚するなんてさ……後でデュエルしてくれよ! 最近ずっと調整ばっかでデュエルできてなかったし、俺も《ヴァルバロイド》を相手してみたいんだ!」

 

がくがくと肩を揺らされながら、「わ、わかったから離してよアニキ〜……」と目を回す翔。

成功と玲はデュエルフィールドを後にし、残された十代と翔に大柄な男子生徒が駆け寄った。最前列でデュエルの行方を気にしていた隼人だ。

 

「十代! 翔! 二人とも、よかったんだな……」

 

「は、はやどぐうううううん!」

 

やっと事態が飲み込めたのか、翔の目からも涙が溢れた。安心と喜びがどっと押し寄せてきて、翔は泣きながら隼人と抱擁を交わす。

 

「お、おい……泣くなよ二人共! ありがとうな、隼人。応援してくれてさ」

 

「十代なら勝つって信じてたんだな……信じてた、けど……相手が強くて、すごく、ヒヤヒヤしたんだな……」

 

「はは、俺も途中はビビったけどさ……っていうか、翔が勝たせてくれたようなもんだよ」

 

「アニキがいてくれなきゃ……《パワー・ボンド》を使う勇気も出なかったし、《ワイトキング》や《カオス・ソルジャー》に立ち向かうこともできなかったと思う……僕のほうこそありがとう、アニキ。アニキとタッグデュエルできてよかった」

 

「俺もだぜ翔! またお前と組んでタッグデュエルしたいけど……今は1対1のシングルだ! 早くやろうぜ、デュエル!」

 

「とっ、とりあえず食堂行こうよアニキー……安心したら僕、お腹空いちゃって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よォ、一年坊主ども」

 

 

 

 

 

 

ざくり、という音でも聞こえたかと思うほど鋭い、ドスの効いた声が翔の耳に刺さった。

 

「よかったねー手前(テメ)ェらはこれでお咎め無し、これからもバラ色の学生生活が続くッてか……や、別に一年坊主が退学しよーがしまいが、俺にゃ何の関係ェも()んだが……」

 

制服の色は、レッド寮の赤色。裾を延長し袖を詰めた改造制服を纏い、太い鎖を首に巻いた長身の男子生徒だった。

鎖の先端に溶接された飾りボタンの色は緑──三年生だ。

 

 

「感動ォ的な場面に割り込んで(ワリ)ィけどよォ、デュエルが済んだらさっさと出てってくんねェかな。3人仲良くレッドの部屋でイチャイチャしてろ、目障りだ」

 

「お前……」

 

「あァ?」

 

視線の一突きで十代が口を噤んだ。隼人と翔に至っては先ほどまでの喜びを吹き飛ばされ、顔を青くして震えている。

 

「遊城……十代。(⚫︎)(⚫︎)手前(テメ)ェに用は無ェよ。いずれブッ潰してやりてェ相手だが……今じゃねェ。順番は決めてんだ……おい鮫島ァ!!」

 

人一人の体から発せられたとは思えないほどの音量だった。勝負の余韻で騒がしかった場内が、水を打ったように静まり返る。

観衆の注目を集めて、男子生徒は教員席の中心に座る男──鮫島を睨んだ。

 

「廃寮に忍び込んだのはコイツらだけじゃねェんだろ……? 他にも忍び込んだ奴はいた。なーのーに、罰を受けるのはコイツらだけで他がお咎めナシってのァおかしいよなァ!!」

 

「……たしかに生徒は他にもいましたが、彼らにはすでに指導を行いました。後日、反省文の提出も課す予定です」

 

「ヌルいんだよ……片や“守り人(アークス)”相手に退学を賭けたデュエル、片や教育的指導と反省文だァ? しかも忍び込んだ一団の中で、レッド寮の2人だけが制裁デュエルと来た。コイツは明らかな差別だろ、なァ!」

 

男子生徒は観戦席の生徒を見回し、再び大音量で叫ぶ。

 

「ここは平等に……他の奴にも制裁を与えるべきだろ、どォだ! 制裁を免れた(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)の生徒も、制裁デュエルを受けるべきじゃねェか!?」

 

『オベリスクブルー』。その声を聞いた瞬間、誰かが「そうだ!」と叫んだ。その声は四方に伝播し、静かだった観戦席が次第にざわつき始める。

 

「今の一年坊主の相手ですら“守り人(アークス)”だ、なら制裁を受けるべきブルー生には……俺が直々に引導ォ渡してやるよ!」

 

男子生徒は口角を釣り上げ、挑発的な笑みと右手の人差し指をある生徒に向けた。

 

「なァ! ツァン・ディレ!」

 

 

 

───────────────────

 

げ、とツァンがしかめ面になるのを、遊奈は背中で感じ取った。怒りのオーラはみるみるうちに膨らんでゆき、遊奈の背筋を冷や汗が伝う。

男子生徒はなおもツァンを睨み、立てた指を下げようとしない。

 

「どォしたツァン、怖気付(おじけづ)いて声も出ねェか?」

 

「……呆れて物も言えなくなっただけよ。で、何? ボクが廃寮にいた証拠でもあるの? たとえボクが廃寮にいて、何か証拠を残してたとしても……雑なアンタには見つけられないと思うけど」

 

あくまで冷静なトーンで返すツァンに、男子生徒は低い声で吐き捨てた。

 

「逃げんのか」

 

「……はぁ?」

 

「負けるのが怖いんだろ? 退学が懸かったデュエルで負けたくねェもんなァ……“七星の守り人(セブン・アークス)”第六席、名高き“姫将軍”サマよォ、なんたって(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)もんなァお前、俺に」

 

「アンタねぇ……」

 

手前(テメ)ェの言う通ォりだ、この目で直接見たってだけで証拠は無ェよ……だからデュエルから逃げるッてんなら俺はこれ以上は何も言わねェが……コイツらがそれを許すと思うか? “姫将軍”の名にそぐわねェ、みっともない敵前逃亡をよォ……」

 

観衆はすでに大半が「やれ! やれ!」と野次を飛ばしていた。男子生徒は「かかっ」と乾いた笑い声を上げ、大きく見開いた目でツァンを舐める。

 

「……やってやるわよ」

 

「お姉様!?」

 

ツァンの言葉に真っ先に反応したのは雪乃だった。遊奈も驚いて顔を後ろに向ける。

怒り心頭、という顔のツァンは雪乃の制止を聞かずにデュエルディスクにデッキをセットし、階段を下りてデュエルフィールドに立った。

 

「アンタに勝ちゃいいんでしょ。事あるごとに噛み付いてきて……鬱陶しいのよ、アホウガ」

 

『アホウガ』の呼び名には聞き覚えがあった。遊奈は首を後ろに向け、雪乃に尋ねる。

 

「藤原さん、あの人ってまさか……」

 

「ボウヤの思ってる通りよ。“七星の守人(セブン・アークス)”第四席、炎上寺鳳駕……成績の悪さ、何より素行の悪さからレッド寮に入れられているけれど、デュエルの実力は折り紙付き。私は一度も彼のデュエルを見たことないけど……一年の頃、彼を挑発したブルー生の3人組が全員、(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)にされて退学したとか……それからも何人か、彼の周りで退学騒ぎが起きてるらしいわ。そうしてデュエルアカデミアの不文律の一つに加えられたのが──『炎上寺鳳駕に関わるな』」

 

「退学、って……」

 

「お姉様を止めたい……のだけれど、ああなったお姉様は話を聞いてくれないから……信じるしかないわね、お姉様が勝つことを……」

 

「ディレ先輩……」

 

遊奈はデュエルフィールドに視線を戻す。ツァンの闘志……というより怒りは、後ろ姿からでも感じ取ることができた。

ふと。

ツァンと対面する男子生徒──炎上寺鳳駕のほうに目をやると、彼は鋭利な包丁のような目を、遊奈に向けて光らせていた。

 

「いつも通りに負かしてやるよ……と言いてェ所だが、(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)いるよなァ……廃寮に忍び込んで、お咎めナシの生徒がよォ!!」

 

拳銃を突きつけるように、鳳駕の指が伸びる。その銃口と彼の威圧的な目は、まっすぐに遊奈を差していた。

 

「……えっ、俺?」

 

手前(テメ)ェだよ。オラ早く下りて来やがれ……2人まとめて変則タッグでブッ潰してやる!!」

 

遊奈は「え、はい?」と困惑の表情を浮かべる。前触れなく矛先を自分に向けられ、返事を見失ったまま数秒ほどまごついた。

そんな遊奈の代わりに、ツァンが鳳駕に反論する。

 

「……ちょっと、東雲は関係ないでしょ? どうせアンタはボクに噛み付いて……」

 

「別に1人ずつ潰しても良いんだがな。あの一年坊主を見捨てるッてんなら……」

 

「東雲早くこっち来なさい。デュエルするから」

 

「ちょーっとディレ先輩ィー!?」

 

どうやら断れなさそうだ、と諦めた遊奈はデュエルディスクのデッキを付け替えた。ポーチの中から取り出したデッキを、いつも装填している《ジャンクドッペル》と交換する。

 

「遊奈!? 正気か!?」

 

三沢の問いに、遊奈は自信なさげな笑顔を返す。

 

「いやーだって……あの人たち、デュエルで決着しないと話聞かないでしょ……」

 

「で、でも、さすがにこれは理不尽すぎるよ……せっかく十代と翔が無事だったのに、遊奈が退学だなんて……」

 

遊海もなんとか制止しようとするが、鳳駕の「モタモタしてんじゃねェぞ一年坊ォ……」という呟きに肩を震わせて黙り込んでしまった。

 

「ま、まあ勝てば大丈夫なんだ……ディレ先輩もいてくれるんだし、勝てば……」

 

はは、と虚ろな笑い声か喉から漏れた。

勝てば大丈夫、と自分に言い聞かせながら、遊奈はデュエルフィールドに立った。

 

「……一応言っとくけど、ボクの足引っ張らないでよね」

 

「……善処します……」

 

対照的なテンションの会話を交わしつつ、遊奈は鳳駕を観察する。

 

(……自信満々だな。変則タッグってことは炎上寺先輩1人で俺とディレ先輩を相手するってことなんだろうけど……不利なデュエルなのにあそこまで自信持ってるって、何なんだ……)

 

「ルールの確認だ。俺は2人分のライフと先攻のターン、そんでもッて先攻1ターン目のドローフェイズをもらう。手前(テメ)ェらのフィールドは別、ライフも別だ。バトルフェイズは全員にターンが回った後……後攻2ターン目からOK、こんなモンだろ」

 

「手札からのカードは、パートナーのターンでも発動できるんですか?」

 

「ああ、たまにあるらしいなそういうカード……いいぜ、手前(テメ)ェがツァンに合わせたデッキを組んでるとも思えねェしな」

 

「……それと、パートナーのフィールドにモンスターを特殊召喚するのは?」

 

「……まあ、アリでいいだろ。変に制約付けて、言い訳されるのも面倒臭ェし」

 

「もしデュエル中にパートナーのライフが尽きた場合はどうするんです?」

 

「その時は残ッた1人対俺でシングルデュエルだ。ただし、パートナーのフィールドに残ッたカードは使っていいぜ」

 

「ちょっと、聞き捨てならないわよ東雲。アンタより先にボクが倒れるって?」

 

「逆の場合もあるでしょうし……まあ、ルールは大体わかりました。それじゃあ一丁……ブチかませるかなぁ……」

 

頼んだぞ、と遊奈は自分のデッキを指先で撫でる。隣を見るとツァンが早くもデッキから5枚のカードを引き抜き、鬼の形相で鳳駕を睨んでいる。

 

「準備はできたみてェだな……いくぜェ!」

 

「「「決闘(デュエル)!」

 

 

───────────────────

 

「先攻ォは俺のターンだ、ドロー」

 

6枚のカードを見比べ、鳳駕は「ほォ、」と眉を上げた。

 

「早ッ速だがいくかァ……フィールド魔法、《炎王の孤島》を発動ォ! こいつは自分フィールドにモンスターがいねェ時、手札の鳥獣族・炎属性モンスター1体を特殊召喚できる! 来い──」

 

「手札から《幽鬼(ゆき)うさぎ》の効果を発動!」

 

鳳駕の効果宣言に遊奈の声が割り込む。遊奈の背後に浮かぶ半透明の少女が、手にした札を《炎王の孤島》のカードに投げつけた。

 

「すでに表側表示で存在する魔法、罠カードが発動した時、このカードを墓地に送ることで発動したカードを破壊する」

 

「チッ、《孤島》は解決時にフィールドに存在しなきゃァ効果は使えねェ……仕方ねェな、《天使の施し》を発動、デッキからカードを3枚引いて2枚捨てる。で、だ……《炎王獣ガネーシャ》を召喚、カードを3枚伏せてターン終了ォだ」

 

鳳駕のフィールドに紫の炎が上がり、その中からピンクの象を模したモンスターが現れる。

初動はまずまず、少し伏せカードが多いだろうか。このルールでは次のさらに次の鳳駕のターンまで、バトルフェイズが行えない。今は、地盤を固める時間だ。

鳳駕の最初のターンは終了し、次はツァンのターンだ。

 

炎上寺鳳駕 LP8000 手札1

炎王獣ガネーシャ Atk1800

セットカード3

 

 

───────────────────

 

「ボクのターン、ドロー」

 

遊奈はちらりと、ツァンの表情を窺った。心なしか、先ほどよりも影がかかっているように見える。

 

(……まさか先輩、事故ってないです……よね?)

 

「《六武の門》、《六武衆の結束》を発動。それで、相手のフィールドにだけモンスターが存在する場合、《六武衆のご隠居》を特殊召喚。さらに自分フィールドに《六武衆》がいるから、《六武衆の師範》を特集召喚。武士道カウンターが2つ乗った《結束》を墓地に送って、カードを2枚ドロー……カードを3枚セットして、ターンエンド」

 

ツァンのフィールドには小さな輿に乗った仮面の老人と、隻眼の武人が立っている。《六武衆》にしては物足りない初動だ。しかし、

 

(攻撃できない上に、相手は《炎王》……展開し過ぎないほうがいい。攻められるターンに、一気に攻めないと勝ちはない、かな……)

 

ターンは再び、鳳駕に回る。

 

「メインフェイズ終了時、《炎王円環》だ。《ガネーシャ》を破壊して墓地の《炎王神獣ガルドニクス》を特殊召喚するぜ」

 

──わけではなかった。

ピンクの象が炎に包まれ、その炎が内側から弾けるように吹き飛ぶ。残滓の火の粉を振り払い、炎を纏う鳥が翼を広げた。

 

「それだけじゃねェ。《ガネーシャ》は破壊された時、墓地の獣族か獣戦士族、もしくは鳥獣族の炎属性モンスターを特殊召喚できる。来い、《炎王神獣 ガルドニクス》!」

 

鳳駕のフィールドに炎がもう一つ燃え上がり、2体目の炎の神鳥が舞い降りた。

 

「罠カード、《火霊術(かれいじゅつ)-(くれない)》。自分フィールドの炎属性モンスターをリリースし、その攻撃力分のダメージを相手に与える。俺は《炎王円環》で蘇生した《ガルドニクス》をリリースし、ツァン・ディレに2700のダメージを与える」

 

「なっ、くうっ!?」

 

再び炎に包まれた《ガルドニクス》が、その輪郭をぼやけさせながらツァンに体当たりを繰り出す。一気に半分以上のライフポイントを削られ、ツァンの表情がさらに険しくなった。

その様子を見た鳳駕は「かかっ」と乾いた笑い声を上げた。襟の鎖が揺れ、金属の擦れる音がする。

 

「何も無きゃァ手前(テメ)ェのエンドフェイズだぜ、ツァン。早くターンを寄越しやがれ」

 

「優先権パクったのそっちでしょうがァ……ターン、エンド」

 

怒りに震える声とともに、今度こそツァンのターンが終わる。

 

「……おォっと忘れるトコだった。《ガネーシャ》の効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズに破壊される。《ガルドニクス》はこのタイミングで“破壊”されるぜ」

 

翼を閉じた《ガルドニクス》を紫の炎が包み、鳳駕のフィールドにはセットされたカードが1枚だけ残った。

再び訪れた鳳駕のターン。

破壊王(ザ・タイラント)が力の片鱗を見せ始めた。

 

 

炎上寺鳳駕 LP8000 手札1

セットカード1

 

ツァン・ディレ LP1300 手札1

六武衆のご隠居 Def0

六武衆の師範 Atk2100

六武の門(カウンター4)

セットカード3

 

───────────────────

 

 

「俺のターン、ドロー……スタンバイだ」

 

鳳駕の周囲で、黄金色(こがねいろ)の炎が渦巻いた。

 

「破壊された《ガルドニクス》は、次のスタンバイフェイズにフィールドに舞い戻る……復活しろ、《炎王神獣ガルドニクス》!」

 

黄金色の爆発があった。

不死鳥が帰還する。再生を表す炎は鳳駕のフィールドだけでなく、ツァンのフィールドをも飲み込んでゆく。

 

「《ガルドニクス》は破壊から再生した時、自身以外のモンスターを全て破壊する! 吹ッ飛べェ!」

 

炎に巻き込まれた《六武衆の師範》と《六武衆のご隠居》の姿がかき消える。そうして何者もいなくなったフィールドに、《炎王神獣ガルドニクス》は悠然と舞い降りた。

 

「つッてもこのターンはまだ攻ォ撃はできねェからなァ……メインフェイズ、《強欲な壺》で2枚ドローだ。そんでもッて《貪欲な瓶》を発動、《天使の施し》《炎王の孤島》、《火霊術-紅》、《炎王円環》、《強欲な壺》をデッキに戻して1枚ドローするぜ」

 

「……手札補充……くそっ」

 

隣から聞こえたそこそこ大きめの舌打ちに、遊奈の背筋が震えた。

 

「おいおい、タッグパートナーがビビッてんぜ? (こえ)ェ先輩だなァ……」

 

「真っ正面からガン飛ばしてるアンタに言われたくないわよ。どーせ《ガルドニクス》飛ばすくらいしかやることないんだし、早く済ませてくれない? エンドならエンドって言いなさい」

 

「残念ながらまだターン渡す気は無ェよ……フィールドに炎属性モンスターが存在する時、《怨念の魂 業火》を手札から特殊召喚するぜ。この効果で特殊召喚に成功した時、《業火》は自分フィールドの炎属性モンスターを破壊する。俺は対象に《ガルドニクス》を選択し、破壊だ」

 

炎の塊が口を開き、不死鳥に齧りついて食い尽くす。墓地に送られた《炎王神獣ガルドニクス》は条件を満たし、次のスタンバイフェイズに再び蘇る体勢を整えた。

 

「さァて……カードを2枚セットしてターン終了だ。力ァ見せてみろよ、一年坊ォ」

 

ぎらつく目で遊奈を威嚇しながら、鳳駕の2ターン目が終了した。

その顔に、凶暴な笑みを宿しながら。

 

炎上寺鳳駕 LP8000 手札1

怨念の魂 業火 Atk2200

セットカード2

 

ツァン・ディレ LP1300 手札1

紫炎の道場(カウンター3)

セットカード3

 

東雲遊奈 LP4000 手札4

 

───────────────────

 

がりがり、と自分の奥歯が立てる音が脳に響き、ツァンは目を閉じてため息をひとつ吐き出した。

 

(勝てばいい。そう、勝てばいいのよ……)

 

自分にそう言い聞かせ、ターンプレイヤーの遊奈を見やる。特に変わった様子はなく、少し自信がなさそうなのはいつも通りだ。

 

「俺のターン、ドロ…………」

 

「ドローフェイズだァ!リバースカード、オープン!」

 

ターン開始の宣言に、鳳駕の叫び声が割り込む。表になったカードを見て、ツァンの喉から息を呑む声が飛び出した。

 

「《火霊術-紅》! 《怨念の魂 業火》をリリースして、2200ポイントのダメージを相手に与える。対象ォは……」

 

ぎらり、と眼光が(ほとばし)る。

高く吊り上がった口の端から犬歯が見え隠れする。

 

手前(テメ)ェだ、ツァン・ディレ!」

 

「うそ……っ!?」

 

ぐねぐねと形を変え、蠢く火の玉となった《業火》がツァンを狙って飛ぶ。

咄嗟に両腕を上げてガードの姿勢をとるツァンだったが、カードダメージは防げない。

 

ツァン LP1300→0

 

 

唐突に訪れた敗北。

戦闘への対策は用意していた。それで、鳳駕の攻め手を防いだつもりだった。

負けた。

炎上寺鳳駕に負けた。

否、それ以上に──(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)

 

(……あれ、なんで?)

 

声にならず、ツァンは自分の手を睨んで自問する。

何やら声が聞こえる気がするが、混濁する頭では理解することができなかった。

両膝から力が抜ける。

 

「ディレ先輩!?」

 

「おォっと一年坊、遅延行為か?」

 

膝から崩れ落ちたツァンに駆け寄ろうとする遊奈の足を、鳳駕の声が縫い止めた。

 

「今は手前(テメ)ェのターンだぜ……先輩ナシじゃ戦えねェってか? やること無ェならエンドしろよ、すぐ終わらせてやる」

 

鳳駕は立てた人差し指をくいくいと前後させ、遊奈を煽るように睨んでいる。

それに対して遊奈は、

 

(……東雲?)

 

(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)顔で鳳駕を睨み返していた。

 

「……スタンバイフェイズ、あなたの《炎王神獣ガルドニクス》は特殊召喚される」

 

「それくらい俺に言わせろよ。戻れ、《ガルドニクス》」

 

空中に燃え広がる炎が翼の形に展開し、不死鳥が炎の中から復活する。

 

「……メインフェイズ……よろしいですか?」

 

「ほォ、デュエルを続ける気力は残ってたか」

 

「俺のターン、まだ1ターン目なんでね……正直(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)なんで、まだ勝負は捨てられないですよ」

 

「言うじゃねェか……来いよ、そのナメた態度ごと吹ッ飛ばしてやる」

 

「遠慮なくいきますよ……《六武の門》の効果発動! 武士道カウンターを4つ取り除いて、《六武衆》モンスター……《六武衆-ヤリザ》を手札に加える!」

 

「な……ッ、《六武衆》……?」

 

鳳駕から笑みが消えた。

 

手前(テメ)ェのデッキは《シンクロン》じゃなかッたのかよ……ま、良いぜ。《六武衆》なら《六武衆》なりの潰し方をしてやる」

 

「《バオバブーン》を通常召喚」

 

遊奈のフィールドに飛び出したのは、猿の顔が生えた樹木だった。《バオバブーン》は着地するなり根を触手のように伸ばし、遊奈のデッキの一番上のカードを絡め取る。

 

「《バオバブーン》の召喚、特殊召喚成功時に、デッキからカードを一枚ドローできる。その後手札を一枚選んでデッキの一番上か下に……今回は一番下に戻します。さらに……手札を1枚捨てて《THE トリッキー》を特殊召喚」

 

(……違う、《六武衆》じゃない)

 

展開されるモンスターを見て、ツァンは遊奈のデッキに不気味さとも言える違和感を抱いていた。

 

(《バオバブーン》も《トリッキー》も、《六武衆》には基本入らない……ってか《ヤリザ》って……《門》のカウンターをそんなのに使うか普通……)

 

《真六武衆》を使いこなすツァンでなくても、遊奈のデッキが《六武衆》でないことを見抜くのは容易だ。

問題は、《六武衆》でなく《何》のデッキなのか──

 

「ディレ先輩」

 

「な、何よ」

 

突然声をかけられ、ツァンは遊奈を見返す。

遊奈はにやりと顔を綻ばせ、自然な笑顔をツァンに向けた。

 

「伏せカード、借ります。仇、取ってきますね」

 

ピ、ピ、とデュエルディスクの電子音が続く。

 

「リバースカード、オープン! 《六武衆推参!》! 墓地に眠る《六武衆-ヤリザ》を特殊召喚する!」

 

白群(びゃくぐん)色の光が縦横に飛び回る。

槍の穂で残像を描く、鉄紺の鎧兜の武人。《六武衆-ヤリザ》は、高速で振り回す槍をある一点でびたりと止めた。

その眼光と穂先の延長に、鳳駕の体がある位置だ。

 

「……何するかと思えば《ヤリザ》かよ……ンな雑魚に何ができる」

 

「自分フィールドに《六武衆》モンスターがいる時、《真六武衆-キザン》を特殊召喚」

 

鳳駕の挑発を耳に入れず、遊奈は自分のプレイを進める。

 

「バトルフェイズ」

 

遊奈の声に合わせて、《ヤリザ》がぐっとその身を屈めた。

 

「……あ? 手前(テメ)ェのモンスターじゃァ《ガルドニクス》にゃ勝てねェだろ……」

 

「……ところで貴殿、ヤリザ殿の効果テキストを読んだことは御座るか?」

 

「ナメてんのか?」

 

「失礼……しかしヤリザ殿は止まらぬよ。《六武衆-ヤリザ》で相手プレイヤーに(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)!」

 

瞬間、《ヤリザ》の姿が消えた。白群の光を引く穂先は《ガルドニクス》の横をすり抜け、鳳駕に直接突き刺さる。

 

炎上寺鳳駕LP8000→7000

 

「なッ……!? 直接攻撃モンスターか!?」

 

「いかにも。ヤリザ殿は他の《六武衆》と共に在る時、敵軍をすり抜けて大将に刃を突き立てることができる(つわもの)に御座る」

 

「フザけてんじゃねェぞゴルァ! たかが1000のダメージでイキがッてンじゃねェよ!」

 

「ヤリザ殿の真髄はこれからに御座るよ。(たか)が1000、()れど1000……あと(⚫︎)(⚫︎)槍が届けば、貴殿のLP()を取ることができる! 速攻魔法、発動────《狂戦士の魂(バーサーカーソウル)》!」

 

《ヤリザ》の兜から覗く目が怪しく光った。鎧に包まれる全身が小刻みに震え、わずかに露出している頬に血管が浮き出る。

 

「手札を全て捨て、効果発動。このカードはモンスターカード以外のカードが出るまで何枚でもドローし、墓地に捨てるカード……そしてその数だけ、攻撃力1500以下のモンスターは追加攻撃ができる! 」

 

「直接攻撃の追加攻撃だァ!?」

 

「さあいくぜ! まず1枚目、ドロー──モンスターカード、《ゴーストリック・ランタン》を墓地に捨て……《六武衆-ヤリザ》、追加攻撃!」

 

再び、白群の穂先が閃いた。《ヤリザ》は霞むような速さで鳳駕を貫き、「まだ足りぬで御座る」とでも言うように槍を振り回している。

 

炎上寺鳳駕LP7000→6000

 

「2枚目ドロー……モンスターカード!」

 

次に墓地に送られたカードは、《ドラゴン・アイス》。《ヤリザ》の姿がかき消え、鳳駕のライフポイントが削られる。

 

炎上寺鳳駕LP6000→5000

 

「チィ……だがその効果はいずれ、魔法か(トラップ)を引き当てれば終わる! デッキの中の魔法罠が《狂戦士の魂》2枚だけだとしても、7枚モンスターが続く確率は半分以下だ……」

 

「……残念ながら、《ヤリザ》の攻撃を防げなかった時点で負けですよ。炎上寺先輩」

 

「あン? デッキトップ7枚全部モンスターだッて言い切れんのか?」

 

青筋を浮かべて遊奈を睨みつける鳳駕に対して、遊奈は自分のデッキを掲げて言い放った。

 

「先輩の言う通りこのデッキは3枚の《狂戦士の魂》と37枚のモンスターカードで構築されています……1枚は今、フィールドで処理中の《狂戦士の魂》。2枚目はこの《狂戦士の魂》の発動コストに捨てた《狂戦士の魂》。そして3枚目は……デッキの(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)にあります」

 

「デッキの、一番下ァ? デッキを見たわけでもねェのに言い切れるワケが……!」

 

鳳駕の顔が引き攣る。このデュエル中に発動された、一つのカードを思い起こしたのだろう。

 

(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)……ッ!!」

 

 

続いて、ツァンも遊奈の真意を悟った。たしかに遊奈には一度、デッキの一番下を操作するタイミングがあった。

 

(《バオバブーン》の効果を発動した時! それが本当なら東雲は、残るデッキの32枚のモンスターを全て《狂戦士の魂》のコストにできる!?)

 

「3枚目……モンスターカード!」

 

墓地に送られる《カードカー・D》。それに呼応して《ヤリザ》の攻撃が鳳駕のライフポイントをさらに削る。

 

炎上寺鳳駕LP5000→4000

 

「バカな……手前(テメ)ェ、東雲遊奈ァ……!」

 

「ドロー、モンスターカード!」

 

炎上寺鳳駕LP4000→3000

 

「ドロー、モンスターカード!」

 

炎上寺鳳駕LP3000→2000

 

「ドロー、モンスターカード!」

 

炎上寺鳳駕LP2000→1000

 

「ドロー、モンスターカード!」

 

炎上寺鳳駕1000→0

 

鳳駕のライフポイントが尽きた。

だが、遊奈はカードを引く手を止めなかった。

 

「……ドロー、モンスターカード! ドロー、モンスターカード! ドロー、モンスターカード!」

 

「ちょっ、東雲……! とっくにアホウガのライフはゼロよ!?」

 

「いやーこのカード、相手ライフ削りきっても魔法罠引かないと処理終わらないんですよね……一応『魔法罠を引けずにデッキが切れて引き分け』っていう可能性もあるので……ってことでドロー、モンスターカード! ドロー、モンスターカード!」

 

《ヤリザ》の攻撃は止まらず、遊奈は32枚のカードを墓地に捨て、鳳駕に32回の追加攻撃を行った。

 

「最後のドロー! ……で、魔法カード《狂戦士の魂》なので効果処理は終了です。……GG、個人的に胸アツなデュエルでした」

 

「……壁にむかってヤッてろ……」

 

鳳駕は呆れた顔でデュエルディスクを折りたたみ、デュエルスペースの出口へと向かう。

そこで顔だけを後ろに向け、

 

「覚えてろよ。東雲、遊奈」

 

どす黒い声を残して、ドアの向こうに消えていった。

 

「う、恨まれたかなー……」

 

遊奈は困った顔で頬を掻き、逆の手をツァンに差し出した。

 

「……何よ」

 

「えっと、その……仇、取りましたよ」

 

「……いらない! 自分で立てる!」

 

ツァンは勢いよく立ち上がり、三割増しの足音を立てながらデュエルスペースを出る。

その後ろでは遊奈が「う、恨まれたかなー……」と不安そうな顔で頭を掻いていた。

 

───────────────────

 

「それでは! 十代、翔、隼人、あと遊奈の退学免除を祝してぇー……乾っ、杯ぃ!!」

 

オベリスクブルー、女子寮。遊海の部屋。

部屋の主と名前の挙がった4人、それに三沢と明日香、雪乃というメンバーが、各々飲み物の入った紙コップを片手にちゃぶ台を囲んでいた。

ちなみに女子寮は男子禁制だ。だが遊海は「部屋主が招いたんだし大丈夫デショ!」と、男子連中を遊海の部屋に忍び込ませた──女子寮の壁にできた不自然なくぼみを登らせて。

なんでも遊海が「自分の手で」くり抜いたらしい。「抜け出すために使っている」のだとか。

 

「さあ飲もう飲もう、今日は私のおごりだよっ! 雪乃にも手伝ってもらったけどねっ、とにかくハッピーで胸キュンなことがあったんだからパーティーだよ! ポテチ何から開ける? コンソメ? 私コンソメ好きだから開けちゃうね! あー十代コップが空だよーこっち貸して貸して! オレンジジュースだよね? おっけーオレンジジュース! 大地は何飲むー? ぬぅー? 君ぃ、私のドクペが飲めないというのかね? そうなのかねー?」

 

「……もしかして笹嶋さん、飲んでる?」

 

素面(しらふ)のはずよ……一応私も買い出しに付き合ったけど、飲み物はジュースしか買ってなかったわ」

 

遊奈が小声で明日香に尋ね、2人で呆れ顔になってため息をつく。適当に流している雪乃、遊海と同じテンションではしゃいでいる十代は問題無さそうだが、三沢は少し遅れ気味、翔と隼人はすでに目を回しそうな顔をしている。

 

「……でも、本当によかった。十代も翔も、あなたも退学にならなくて」

 

「俺も入ってるんだ、ありがとう」

 

「あらそこのお二人、いい雰囲気ね……?」

 

騒ぎから少し離れていた遊奈と明日香に、雪乃が近づいてきた。細い指でレモンティの入ったコップを揺らしながら、意味ありげな眼差しで遊奈と明日香を見比べている。

 

「からかわないで、雪乃。ごめんね遊奈、雪乃っていつもこんなので……」

 

「そうね。ボウヤには残念な話だけど……明日香を口説こうと思ってるならやめなさい。なんたって明日香には……」

 

「ちょっと雪乃、何の話をしようとしてるのか聞かせてくれるかしら?」

 

「何かしらね……教えてあげてもイイけど……どうしようかしら……」

 

「デュエルするわよ雪乃」

 

「え? 天上院さん?」

 

「強引なアプローチね……興奮しちゃう」

 

「藤原さん?」

 

「えっ明日香と雪乃、デュエルするの!? 見たい見たい!」

 

「お、オベリスクブルー同士のデュエルか……俺も確かに興味が……うっ、ドクペが胃から上がってきた……」

 

「そうだ、思い出した!翔、あの2人のデュエルが終わったら俺たちでデュエルしようぜ!」

 

「受けて立つよアニキ! 今日の僕は絶好調だしね!」

 

「おっ、じゃあちょうど8人いるしトーナメントしようよ! 私1戦目大地ね!」

 

「えっ!? じゃあ俺と遊奈がデュエルすることになるのか!? じ、自信ないんだな……」

 

「……どうしてこうなった……」

 

 

 

───────────────────

 

(大会)も終わり、ひとまず解放された遊奈は一人で女子寮の裏手に(たたず)んでいた。遊海の部屋の窓からは未だに続いているデュエルの声が漏れている。どうやら十代が隼人に挑んだらしい。

 

「楽しかったなぁ……」

 

思わず漏れ出た言葉を噛み砕いて、遊奈はふっと吹き出した。

デュエルディスクのデッキから這い出した《ボルト・ヘッジホッグ》が遊奈の腕を登ってきた。遊奈は《ボルト・ヘッジホッグ》を右手の甲に乗せて、左の人差し指でネジだらけの背を撫でる。

 

「……せっかくだし藤原さんにも相手してもらおうかな。まだ一回もデュエルしてないし……」

 

壁のくぼみに手をかけ、遊海の部屋に戻ろうとする遊奈。

 

「東雲」

 

それを呼び止める、鋭い声があった。

 

「ディレ先輩……」

 

ツァンは何も言わず、デュエルディスクを構える。

 

「……」

 

「……先輩?」

 

「ボクとデュエルして、東雲」

 

その後ろに、5人の武人を従えながら。

 




お久しぶりです。埜中です。
モチベは続いております。自分に課した締め切りからは一日遅れてしまいましたが、投稿自体はできました。よかった。
久しぶりの遊奈君デュエル回、でも使うデッキはジャンドじゃないっていう……それどころかネタデッキです。一人の時は絶対回せません。
……ちなみにOCG版《狂戦士の魂》は特殊召喚した攻撃力1400以上のモンスターを《地獄の暴走召喚》した後に《真竜皇バハルストスF》で《リチュア・シェルフィッシュ》と《地縛神Ccarayhua》を破壊すれば……とか考えたり。何枚コンボだよ……
最後のデュエル大会ですが、遊奈くんは三沢に負けました。三沢が遊海と遊奈に勝ったわけです。まあ決勝で雪乃に負けたんだけれども。
十代は翔に負けました。
次回もこのくらいの期間で完成させられたら……と思いながらも、そこそこ真面目なデュエルを書こうとしてるので難しいと思います。頑張れ、私。
最後になりましたが、こんな駄文を読んでくださった皆様に感謝しつつ、筆を置きたいと思います。皆様にささやかな幸せがありますように。

2018年10月某日 埜中 歌音

質問、アドバイス、デュエルミス等あれば是非是非コメントへお願いします。キャラやデッキのリクエストも受け付けております。
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