「浅野家に生まれて壊れずに生きていくなんて無理無理」 作:クリオネf。t
「君はE組へ行ってから更に腑抜けた。強者でなければ何の意味も価値も無いという事は分かっている筈なのにね」
そう言われた瞬間の修に表情は無かった。素を知る前ならば、ただの真顔だと思ったかもしれない。
「そう。話がそれだけなら私は戻らせてもらうわ」
父には、娘である修の姿がどう映っているのだろうか。どこまで気づいているのだろう。……分からない。
何がしたいのかさっぱり分からない父、すっかり変わり果てた姿となった友人達、途中で退室して行った妹の事を悶々と考えながらも帰り支度をしていた時。学秀のスマホに着信が入った。ディスプレイに映し出される「修」という名前。
「修。お前、大丈夫なのか」
丁度心配していたタイミングでかかってきたので、考える間もなくすぐに応答した。
『…あの、浅野君』
しかし受話器越しに聴こえる声は妹のものではなかった。思わず「誰だ」と声色が険しくなる。電話先の声の主は修のクラスメイトである矢田桃花という女子生徒だった。
『あのね、落ち着いて聞いて欲しいんだけど』
──あーちゃん、旧校舎に来るまでの道の途中で血塗れで倒れてたの。
矢田の一言に、思わず息を飲んだ。
誰が、どうしたって?修が血塗れで倒れていた?
頭の中が真っ白になりかけた。しかしここで取り乱しても何も解決はしないと、冷静さを保ちながら何とか「…それで、今どこに」と声を絞り出す。
『旧校舎の保健室だよ』
「……。分かった。今すぐそっちに行く」
普段ならば絶対に寄りつこうとも思わない
「…ありがとう」
「えっ?お、おう」
まさか学秀がE組に対し礼を口にするなどとは思わず、一瞬戸惑う。学秀はそれどころではなく、そんな菅谷達には目もくれずに保健室を目指していたが。
「……あいつ、
「確かに。てかめっちゃ息切れしてたな」
「相当急いで来たんだろうな。余っ程妹の事心配なんだな。意外だ」
旧校舎の保健室へ向かう学秀の背中を見つめながら、彼等はそう呟くのだった。