「浅野家に生まれて壊れずに生きていくなんて無理無理」   作:クリオネf。t

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竹林の復帰と、兄の困惑と

 竹林の事でそれどころではないE組は、一旦修の事を置いておく事にした。何故か全身を黒く焼いてきた殺せんせーが、竹林のアフターケアへ行くと言う。生徒達も竹林の事を心配し殺せんせーと共にアフターケアへ向かうようだ。修はそんなE組の光景をぼんやりと眺めていた。

 

「浅野さん」

「……?」

 

 こちらを見つめる視線に気がついたからなのか分からないが、殺せんせーが修へ声をかける。それに伴い生徒達の視線もこちらへと集まった。

 

「君はどうしますか?」

 

 どうとは、竹林のアフターケアの事だろうか。竹林の事は知ってはいるものの、直接会話を交わした事は無い。そんな人間が参加したところで、竹林からしたら困惑でしかないだろうし他の生徒達だって疑問に思うだけだろう。

 

「…どうして私に声をかけるんですか」

「君も竹林君の事を心配しているようなので」

 

 心配。その言葉に僅かに首を傾げる。

 生徒達も不思議そうな顔で見ている。

 

「…わかりません。先生には、そう見えるん…ですか」

「ええ」

「……」

 

 修は目線を下に向けた。しかし、すぐに席から立ち上がり「…遠慮、しておきます」と答える。

 

「私…竹林君とは話した事ないので。…帰ります。さようなら」

 

 ぺこりと軽く会釈をし、荷物を片手にそのまま教室を出て行ってしまった。

 

「なんかよく分かんねーよな、浅野さん」

「そーだよな。本校舎にいた頃と全然雰囲気違ぇーし」

 

 何を考え、何を思っているのかよく分からない修。E組生徒達は距離感を測りかねていた。

 

 


 

 

「僕の…やりたい事を聞いて下さい」

 

 椚ヶ丘学園の創立記念日は、毎年集会が開かれる日だ。その日、再び壇上に上がった竹林が何かを言おうとしている。

 

「僕のいたE組は…弱い人達の集まりです。学力という強さが無かったために、本校舎の皆さんから差別待遇を受けています。でも僕は、そんなE組がメイド喫茶の次ぐらいに居心地良いです」

 

 その場にいる全員に衝撃が走った。理事長室から中継を見ていた學峯も。竹林のスピーチは尚も続く。舞台袖から学秀が何かを言っているが、それに構うことなく竹林は學峯の所持する表彰盾のひとつを取り出し…それをこの場で破壊した。粉微塵になった盾が、重力に従いバラバラと地面へ落ちていく。

 

「浅野君の言うには、過去これと同じ事をした生徒がいたとか。前例から合理的に考えれば、E組行きですね。僕も」

 

 竹林はどこか晴れやかの表情で舞台袖へと下がっていく。

 

「……」

 

 修はその光景を、ただじっと見つめていた。

 

 


 

 

 修がE組へ転入して困惑していたのは、なにもE組の生徒だけではない。朝早くから必ずそこにいる彼女がいつまで経っても登校して来ない事。二学期早々告げられる彼女のE組転入の報せ。当然B組生徒は何が何だかわけが分からず混乱したし、その話は瞬く間に広がり教師も生徒も学校中が混乱の渦へと叩き落とされた。特に困惑をしていたのは兄である学秀で。

 

「修!!」

 

 竹林が2度目のスピーチを行う予定であるその日の朝、家を出る前に引き留められた。

 

「どういう事だ。聞いてない!!」

 

 その時の学秀はいつになく取り乱していた。多少の申し訳なさは感じたが、殺せんせーの姿を認識した以上E組み転入か記憶消去しか選択肢は無く。修は何となく転入する方を選んだ。

 

「理事長先生、何も言わなかったんだ。言ってくれてると思ったのになー」

 

 それでも、修は決して素を出す事はしなかった。

 

「はぐらかすな!」

「おー、怖い怖い。ほら、学秀だって気になってたんじゃない?E組のヒ・ミ・ツ♡」

 

 学秀は忌々しげに顔を歪めて修の言葉を聞いている。

 

「ということで、実際に行って確かめてみることにしたわけ。まぁでも、例えE組の秘密を知ったとしても教えてなんてあげないケド♡学秀の知らない秘密を知って、理事長の弱みも握れるなんて最高じゃない?それじゃあまたね、お兄ちゃん♡」

「っ、おい!」

 

 まだ話は終わっていないとばかりに声をあげる学秀を無視して、修は玄関を出た。

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