そこのお前ぇ!本当のハズレスキルってもんを見せてやるZE☆ 作:運カス探索者
「配信コメント見ると、意外とスキルの有用性を知らない奴が多いな」
欠損部位も自身の回復魔法《リペアヒール》で直したナガレは、アカリの配信のコメントを見ながらそんな事を呟く
「…あのぅ…本当に大丈夫なんですか?このまま、ボスまで行って…」
「ボスを倒してダンジョンを踏破すれば、少なくとも今よりは強くなる。アカリの弱さも改善されるかもしれないしな」
そのまま、19階と20階を繋ぐ踊り場で、ナガレは座った。
「丁度良い、ボス攻略の前に、有用なスキルの解説でもしよう」
「えっ…それは有難い…ですけど…」
・
・何それ気になる
・でもさ、探索者ってダンジョンを攻略しないとスキルを覚える為の枠、増えなくない?
・それは確かにそう
・面倒だけど、初級ダンジョンを踏破すれば少なくとも初期の一つから最大四つには増えるしなぁ…
・なお、竹林ダンジョンは除く
・あそこはクソ
・ゴブより面倒い竹兵
・しかも火器厳禁なのが面倒
「竹林ダンジョンはやっば不人気か、まぁあそこは単独で挑むより即席でも良いからパーティ攻略が一番だぞ」
「じゃあここを踏破したら竹林ダンジョンに行きましょう!良いですよね」
「…別に構わないが」
・おっ、ツンデレか?
・野郎のツンデレとか誰得だよ
・
・173cmのムキムキマッチョのツンデレなんてお得だろ
・そうかなぁ…?
「んじゃ、先ずは武器の名前を冠する〇〇術と体術…まぁ無難だよな…」
・無難も無難
・まず取れと言われるスキル
・取ってない人とか居るんか??
「……取ってない…です…」
アカリが静かに手を上げる。
「…ここ踏破したら、体術と杖術は教えてやるよ」
・優しい
・金取らんの?
・本来なら講師に金払って取得するまで面倒見て貰うんだけどな
・4000円は地味に高い
・しかし自衛の為なら4000円は安い
「まぁ、アカリみたいに最近じゃ後回しにして魔法取る奴が多いが、魔法を使うからこそ、取るべきスキルだ。
体術スキルは良いぞ、どんな状況下でも使える。武器は己の肉体だからな」
・パッツパツになるアカリ様!?
・はち切れそう(筋肉)
・ムキムキのアカリとか見たくねぇ…
「まぁ、体術には細分化すると前衛に向いてる剛術、後衛向けの軟術があるが…そこは今度で良いか」
・へー体術ってムキムキな武闘家向きなスキルだと思ってたわ
・相手を手玉に取るアカリ様!?
・何それそそる
「後は…魔法は攻撃、治癒…バランスよく取るのが理想だな。
それと呪術は日本人向けだ。基本的に日本人なら呪術の適性は全員持っている。扱いが難しい上に、ミスれば自分が呪われるから取得は専門の人からしっかりと教わる様にな」
・ピーキーの呪術さんやんけ
・基本的にダンジョン探索に向かないスキルなんだよな
・肉を切らせて骨を断つって動きもやれるけどなぁ
・それをさっき見せつけられた我々
・あれはバケモン
「まぁ、軽くならこんな所か」
そう言ってナガレは立ち上がる。
「そして、これから鋼鉄の摩天楼を踏破したい探索者にアドバイスだ。
ボスは死ぬ程めんどくさい上に時間がかかる。安置は部屋の四隅。そこで休息を挟んでやるんだぞ
今回は早く帰りたいから速攻でカタを付けるけどな」
・仮にもボスなのに速攻で片付けられるのかよ
・信じられるか?コイツはさっきまで瀕死だったんだぜ…
・鋼鉄の摩天楼のボスってめんどくさいで有名じゃん
そして、20階への扉を開ける。
中は大きな社長室だ。
社長席に座るのは白い口髭を生やし、でっぷりと太った身体をスーツで包んだ、10mを越える高さの老齢な見た目のゾンビ
この鋼鉄の摩天楼の…ボスだ。
「アポの予定は…ない筈だが?」
ゾンビの見た目にも関わらず、流暢に話す。
「アポなし突撃だ。首を貰うぞ」
「ぬぅ…!警備!早く来…」
そう言おうとしたボスの頭部が、一瞬で吹き飛んだ。
縮地で距離を詰めたナガレが、そのまま頭部を吹き飛ばしたからだ。
「…とまぁ、警備を呼ぶ直前に隙があるので、その一瞬で絶命させればこの通り、速攻で始末出来る。
ただ、警備が到着した時点で特殊な障壁に阻まれるから、オススメはしないぞ」
「えぇ…ボスなのに、瞬殺…」
・ウソォ…
・あのめんどくさいで有名な老骨社長が瞬殺された件について
・第二形態すら吹っ飛ばして殺せるの草
「正当法で戦うなら、警備は両脇のドアから出て来るし、社畜ゾンビも徘徊する様になるからな。難易度は高いが、取れる魔石は増える」
ダンジョン踏破の証として上空から宝箱が二つ、ゆっくりと降りてくる。
「んで、鋼鉄の摩天楼の良い所は何回も踏破してもこうやって宝箱が貰える所だな」
・何それ美味すぎる
・中身は何!?
・勇気出して行ってみるかなぁ…
・まずD級になる所からなんだよなぁ
「中身は知れてるぞ、ぶっちゃけ何回も回る必要はないしな」
「あの、私も貰って良いんですか…?」
目の前にある宝箱を見て、アカリはおずおずとナガレに問いかける。
「リベンジなんだろ、自分の強化にも繋がるんだ。貰っとけ」
そう言って、ナガレは宝箱を開けた。
「とぅ!」
中から銀髪の幼女が飛び出そうとするも、速攻でナガレは宝箱を閉める。
ゴッ!という鈍い音と共に、静寂が訪れる。
「…あの、なんですか?今の」
「今日の宝箱ハズレだな、そのままにしとくか」
・なんだ今の
・親方!宝箱から幼女が!!
・なんで宝箱に幼女入ってんだよ
・教えはどうなってんだ教えは!
・速攻で閉めたの草
ガタンガタンと揺れる宝箱を蹴り飛ばして、ナガレはアカリを見つめる
「後はアカリの宝箱だな」
「…あの」
「さぁ開くんだ」
「…あっ、はい」
先程の幼女の事を聞こうとするも、ガン無視されるのでアカリは諦めた。
「…わっ…これ良いやつなんですかね?」
宝箱から出てきたのは、翼の生えた杖だ。
絡み合う蔦と杖の上部に嵌め込まれた蒼い宝石、その宝石を覆う翼が目を引く
「…おお、天界の杖か、末長く使える装備だな…出るとしてもここじゃなくてB級ダンジョンだが」
「私の幸運体質のお陰って事ですね!やったー!!」
ぴょんぴょん跳ねてアカリは喜ぶ
・うおっ…
・でっかぁ…
・切り抜き不可避
・これは眼福
・野郎のコメがキショ過ぎる
・同じ穴の狢定期
「あの、それよりあの宝箱…無視して良いんですか?」
未だにガタンガタンと揺れる宝箱をアカリは指差す
「良いんだよ、元々宝箱から出てきた奴を戻したら、不定期に出て来ようとしてるだけだし」
「…あの、宝箱の中から女の子見えたんですけど…もしかして…」
「アレは元々ダンジョンのモンスターだ」
「…そこまで知ってて何で戻したんですか?」
「…普通に、報告とかめんどくさかった…けどなぁ…これ配信だしなぁ…」
はぁぁ…と溜息を吐いて、渋々…という様に再び、ナガレは宝箱を開ける。
「ツガイーーー!」
「ゴファッ!!」
身体をくの字に曲げて、ナガレは吹っ飛ぶ
そのままボス部屋の壁にヒビを入れながら叩きつけられた。
銀髪の幼女は目尻に涙を溜めて、すりすりとナガレの腹部を頬擦りする。
見た目は銀髪を腰まで伸ばし、ゴシックドレスの赤目の幼女だ。
「やっと会えたよぉ…」
・これは……ヌッ…!
・↑通報した
・↑通報しますた
・何この子可愛いー!!
・これがダンジョンのモンスター…?見た目人間じゃないか??
「げほ…見た目に騙されるなよ…コイツは元々A級ダンジョンのボス…の幼体だ」
「わ、可愛い〜!」
そう言って近寄ろうとしたアカリの足元に一線の亀裂が走る。
「…お前、なに?近寄らないでくれる?久しぶりに会えたんだから、邪魔しないで」
ギロリと睨む幼女の頭を、ナガレが撫でる
それだけで先程の威圧は何処はやら、ニコニコ笑顔で頬すりしている。
「…コイツは、今は封印されてるA級ダンジョン、【黒龍の棲家】のボス、黒龍の幼体…つーか子供だ」
「へっ?」
・ふぁぁぁ!?
・激ヤバ個体じゃねぇか!!!
・なんで封印されてるダンジョンのボスの幼体が宝箱に入ってるんだよ!?
「それはダンジョンボスの黒龍が嫁に行くなど断固反対ってしてたらじゃあ良いもん!って自ら宝箱に入ったせいだ、その時見てたしな」
・その時見てたというパワーワード
・あの、黒龍の棲家って何で封印されたんですか?
・あぁ、最近の子は知らんのか…
・封印された理由は公に明かされてるんだけどな
・黒龍の嫁ってなんだよ
「黒龍の棲家が封印されたのは、単純に出現モンスターが龍しかいない上に対抗できるのがA級のみだった事。
ダンジョンボスである黒龍が、人類に対して好戦的じゃない事だな。
元々黒龍の棲家自体が他ダンジョンに稀に現れるドラゴン系統のモンスターの出生地で、そのダンジョン自体はドラゴン系モンスターの繁殖場所だったって訳だ。
当然、龍やドラゴンの素材は金になる上に強い武器や防具になる。
それに目を付けた企業が違法な探索者を雇って襲撃、怒り狂ったドラゴンや龍が街に飛び出して辺りを破壊し尽くしたって訳だ。
これを受けて探索者ギルドの代表が【黒龍の棲家】を封印し、黒龍との間に不戦協定を結んだ。
…んで、オレはその大暴動してるドラゴンや龍の熾烈な攻撃を回避して民間人や負傷した探索者を救助してたら、外でふらつくコイツを見つけて、黒龍の元に届ける為にダンジョンに侵入。
んで、コイツはオレに惚れたか知らんが離れようとしなくて、親の黒龍の説得も虚しく、封印されるダンジョンから抜け出す為に宝箱に入った訳だ」
・黒龍可哀想
・黒龍の子供に惚れられる
・どこが
「それで、寂しいか知らないが…宝箱を取得すると稀にこうやってコイツが出て来る訳だ…
よーし、そろそろ戻れ」
「やだ!!」
「あの、流石に可哀想ですし…世間にもう知られてるので諦めて連れ帰った方が…」
アカリの言葉に、幼女もぱぁっ!と明るい笑顔になるが
「因みにコイツに何かあったら親の黒龍が封印を破って危害を加えた奴を殺しに来るけど」
「……戻しましょう」
「なんでぇぇ!!」
ナガレに抱えられながら、じたばたと幼女が暴れる。
「あのなー、そもそも親を心配させるなよ…元の住処に戻れ」
「定期的に戻ってるもん!!ちゃんとお母さんも大丈夫って言ってくれてるもん!!」
「畜生確かめようにも封印されてるから行けねぇ」
・これは賢い
・何を見せられてるんだ俺ら
・すごいだろ、あんな見た目だけど俺達を瞬殺できるんだぜ?
・そもそも龍やドラゴンに勝てるのはA級や極一部のB級パーティだけなんだよなぁ…
そんな事をしていると、ナガレの型落ちスマホが鳴った。
「ん?…そこ座ってろよ?」
「はぁい」
ちょこんと座って待つ幼女
・可愛い
・可愛い
・ほっぺもちもちしてそう
「…はい、…はい?マジですか?…はい…」
何やら電話で話すナガレは、溜息を吐いて、幼女を見た。
「…探索者ギルドから、連れ帰る様にって通達が来たから、連れ帰る…」
その言葉に、幼女は目を輝かせた。
「あっ…配信は終了で…」
アカリは、思い出した様に配信を切った。