そこのお前ぇ!本当のハズレスキルってもんを見せてやるZE☆ 作:運カス探索者
つづき
深夜、ほぼ誰も使用者が居ない様な型落ちスマホのアラームで目を覚ます。
壊れたベッドから起き上がる、全身が痛い、悲鳴をあげている。
辛うじてマットレスによって破片が刺さるなんて事がなかったのは不幸中の幸い
バシュッ!!
「…なんて思ったら追加しときますねって貫くなよ…殺意の塊かよ」
いきなり真横で鋭い木片が生えたらこんな事も言いたくなる。というかベッドのどこにこんな鋭い木片になる部分あるんだよ
「はーぁ、行くかぁ」
痛む身体を捻る、バキボキと骨が鳴る。
日中のうちに受けた依頼先のダンジョンは、既に夜以降の立ち入りは禁止されている。
他の探索者を不幸に巻き込まない為の措置だ。
誰もが寝静まった深夜、依頼先のダンジョンまで行く…徒歩でな。
一時期遠過ぎるって事で自電車漕いだら下り坂で勢いよく分離して受け身を取りながら転がるという不幸があった、正しく転げ回る女の子の曲の様だった。
しかも深夜なのでタクシーやバスは使えないし、電車も既に終電は過ぎている。
なら後の手段は徒歩だけだ。
それでも依頼先のダンジョンは徒歩で30分、まぁまぁの距離だがもう慣れた。
道中は不良などには遭遇しなかったが野犬ぽい犬に追いかけ回される不幸はあった。狂犬病は怖いので死ぬ気で逃げ回った。
そして、依頼のダンジョン…『竹林ダンジョン』に着いた。
ここは元々私有地だったが、ダンジョン化した場所だ。
ゴブリンやコボルトと言ったモンスターの他には竹兵という竹で出来た兵士みたいなモンスターも居る。
竹兵の見た目は竹が人型になって直立二足歩行を始めるというシュールな見た目をしているが、そこは竹、竹槍を初めに竹刀、竹弓を装備しており、遠・中・近距離、何処からでも攻撃してくる。
そして竹林という関係上居たとしても分かりにくく奇襲を受けやすい。
更にすばしっこい上に噛みつき攻撃がガチで痛いコボルト、竹がある為に比較的道具を作りやすく、装備が竹製とは言え充実しているゴブリンも相手にする必要がある。
戦う事に慣れて来た初心者がぶつかる壁として存在しているのが、ここ『竹林ダンジョン』だ。
因みに初心者に聞いた探索者をやめると決心したダンジョンランキングでは一位を獲得している。流石だぁ!
そして、そんな不人気なダンジョン故に探索者が入りにくく、探索者が入らないと言う事はダンジョン内のモンスターは倒される事なく増え続ける。
ダンジョンに入りきらなくなったモンスターはダンジョンの外へと弾き出され、外で無差別に人を襲う様になる。
そんなリスクを減らす為にもこのダンジョンは定期的に討伐依頼が出されている。
因みに薬草採取という点だとここは高評価になる。何故なら竹以外ほぼ何も生えてない為、薬草がめちゃくちゃ見つけやすいからだ。因みに間違えられやすい毒草もそう沢山は生えていない為、初心者はここで薬草の形状などを覚えてから薬草採取の依頼を受けるのがセオリーになっている。
そして、そんなダンジョンで受けたのはゴブリンと序でに勝手に追加されていたコボルトの討伐と薬草採取だ。
薬草自体はすぐに見つかった…というより目に付いたらほぼ8割は薬草なのがこの竹林ダンジョンである。
その為、よく薬草採取依頼による金稼ぎで来ている。
肝心なゴブリンはその緑の肌が迷彩になり、小柄な事と竹装備なのもあって素早さは比較的高いものの、一撃一撃は弱く、警戒するべきなのは弓による遠距離攻撃と死角に回り込まれた瞬間に頭を『特製トゲトゲ竹こんぼう』でフルスイングで抜かれる事である。
因みに、こう言ったモンスターの武器は奪って使える。
特に竹弓は見た目より丈夫で火にさえ気を付ければ割と長く使える武器だ。
「ギィッ!?ガッ…ギィ…!」
「武器に頼りにくいオレとしては願ったり叶ったりだな」
竹藪から不意打ちする為に飛び出して来た竹槍ゴブリンを絞め殺しながら、オレは周りの気配を探る。
オレに慣れ親しんだ武器というのはない、強いて言えば己の肉体だ。
基本的に武器は現地調達、かつ使い潰すのが前提だ。
スキル【不幸体質】は戦闘時でも不幸を呼び込む。
立派な刀?不意の事故や戦闘中に折れるぞ
短刀?数回使えば根本から折れるぞ
弓?引き絞ったら弦が切れて逆に腕を怪我したぞ
武器を使えばこのザマなので、自然と己の肉体しか信用できなくなった。
「その点この竹林ダンジョンは良い、武器持ちが我先にと飛び出してくる」
「ギィ!」
背後から竹で出来た短刀を振りかぶり奇襲するゴブリンに、オレは竹槍を拾いそのまま返し手で突き刺す
竹槍はゴブリンの重さに耐えかねてか、ポッキリと折れた。
「あと2回は使える予定だったんだけどなぁ…仕方ない」
何を塗りたくったか大体予想が付く竹製短刀を気持ち悪いものを摘む感じで持ちながら、残りのゴブリンも始末する。
弓で射抜こうとしたゴブリンには眉間に竹製短刀をくれてやった。
竹刀で複数体で襲いかかって来たゴブリンには素手で竹刀をへし折り、そのまま砕けた竹刀を突き刺して始末した。
その後も絶え間なく続くゴブリンとの戦闘に、そろそろ飽きてきた頃。
「グルルァ!」
コボルトの登場だ。
コイツらは二足歩行も出来る狼みたいなモンスター、狩りの際は四足歩行で距離を詰め、襲いかかる時に二足歩行になり、前足で身体を引き裂いてくる。
「丁度いいタイミングだな」
コイツらは二足歩行と四足歩行をそれぞれ切り替えて戦えるがゴブリンほど頭が良い訳ではない。
やる事は囲んで襲いかかる、それだけ
鋭い爪による引き裂き攻撃は柔い革鎧なら簡単に切り裂く事が出来るほどだが、今は使える肉壁が周りに散乱している。
「グルァァ!…ギャイン!?」
飛びかかって来た一匹を、ゴブリンの死体を投げ付けた上で回し蹴りを叩き込む。
死体は質量がある上に即席の鈍器になる、しかも壊れても特に問題はない。
「そらかかって来い犬っころども!」
その掛け声に応えてか一斉に飛びかかったコボルトを、ゴブリンの死体や折れている竹武器、拳を使って始末して行く。
そろそろ周りが血みどろになった辺りで、型落ちスマホのアラームが鳴った。
「…やべっ、そろそろ朝方になるじゃねぇか、解体して魔石取らねぇと」
オレはオレ専用の解体ナイフを腰から引き抜き、慣れた手付きで解体する。
この解体ナイフは【不壊】という絶対に壊れない効果と【失せ物失くし】という無くしても絶対に手元に戻るという効果のエンチャントがかけられている。
その代わりとして切れ味は死ぬ悪い上に、刀身は短い。
このナイフはC級ダンジョンの宝箱から偶然取れた物で、使い勝手はよくないが壊れないので解体用ナイフとして使っている。
最初の頃はこのナイフで無限に投擲出来るのではと思った時はあったが、投げた側から手元に戻る為使えなかった。
ゴブリンは25体、コボルトは15体、上位種ではないので、取れる魔石も小石サイズだ。だがこれで飯が食える。
死体はダンジョンに放置しておけば良い、ダンジョンが勝手に取り込んでくれる為だ。
そして、帰り道に薬草を適度に採取し、探索者ギルドへ成果物として提出。
7500円という金額を手にして、オレは食い損ねた飯を買いにコンビニに向かった。