我が家は近年まれにみる大家族だ。父さんと母さんは今では珍しいお見合い結婚らしい。それであのラブラブぐあいなのだから恐れ入る。たまに子供の前でもバカップルの如きイチャイチャをしているからげんなりしている。
おかげで自立している燈矢兄さんや姉さんはともかく夏雄兄さんも大学進学を機に一人暮らしをしている。奨学金とバイトで稼いでまで家を出るあたりあの糖尿病一直線のイチャイチャラブラブは見ていられなかったか。
「あー、コーヒーが美味い……」
「業兄、気持ちは分かるがいい加減現実逃避している暇はないぞ」
「焦凍……、お前この空間に耐えられるのか?」
「耐えられないから俺は先に行くぞ」
「なっ!? 裏切り者ォォォォ!!!」
双子の弟である焦凍がさっさと行ってしまった為に俺は父さん母さんと三人だけだが物凄く疎外感を感じる。何故って? いい年こいて母さんを膝にのせて互いに食べさせあいっこをしている両親を見れば一目瞭然だろ?
信じられるか? これでもまだ今日は控えめな方だぜ? 俺が覚えている最古の記憶では授乳している隣で父さんが同じ事を……。やばい、気持ち悪くなってきた。この記憶はさっさと忘れたい。
「あら? 焦凍ったらもう食べたのかしら? ほら、業火も早く食べないと遅刻するわよ」
「うん……」
母さん……。父さんの膝の上に乗って言われても反応に困るからやめてくれ。俺はカップに残っているブラックコーヒーを飲み干して食事をさっさと済ませる。……全部甘い。ブラックも甘く感じる……。
「冷、俺もそろそろ行かねばならん」
「……そうね。貴方、寂しいわ」
「安心しろ。今日も定時で帰ってくる。それまでの辛抱だ」
「でも……」
「冷……」
「貴方……」
おえ、吐きそうだ。俺はご馳走様と言って学校に向かう為に部屋を後にした。
「業火君おはよー!!!」
「透、おはよう」
家を出た俺は高校に向かう途中で葉隠透とばったりと出くわした。透は高校入学後に知り合った女性で俺のクラスメイトにして席も隣だ。うちの高校、女子生徒はあり得ないくらい美人が多いけど透はその中でもとびぬけた美人だ。笑顔がとても素敵で最初に見た時は見惚れてしまったほどだ。それを伝えたら透は照れていた。可愛かった。いや、今も可愛い。
「今日の数学ってどこからだっけ?」
「新しいページからだな」
高校は小高い丘の上にあるから通学が面倒だがその分進学校として知られていて卒業できれば大手の企業の内定は間違いなしと言われている。その割には阿保っぽい奴も多いけどみんないい奴等だ。
「おはよー!!」
「葉隠さんおはよう。業火さんも」
「おはよー」
教室に入ればクラスメイト達が挨拶をしてくれる。ホームルームまでは時間があるから皆思い思いに過ごしている。担任の相澤先生って時間厳守で厳しいから予鈴が鳴る頃にはみんな席についているけどな。
「相変わらず二人一緒の登校で仲が良いね」
「え? そ、そうかなぁ?」
「たまたま出会ってな」
「たまたま、ね」
俺がそう言えばクラスの女子がニヤリとして透を連れてコソコソと話し始めた。そっと聞き耳を立ててみれば……。
「ね、ね! 葉隠ってやっぱり業火が好きなの?」
「ふぇ!? ななななななななにをいきなりりりりりりり!!!」
「動揺しすぎですわ。答えを言っているようなものではありませんか。……ではやはり業火さんに好意をお持ちなんですね!」
「恋バナや~」
「お茶子ちゃんも緑谷君の事が好きなんでしょ?」
「えぇぇっ!?? そ、そんなこと……!」
「麗日さんについては追々追及するとして葉隠さんどうなんですか?」
「そりゃ、すごく気にはなってるけど……」
「まぁ、そうだよね。何時も業火が来るの待っているもんね」
「け、拳藤さん!? 何で知って……!!」
「ケロ、いつも物陰で見張っているからバレバレよ」
「うううぅぅぅぅぅ!!!」
……聞かなかった事にしてあげよう。顔を真っ赤にしている透に眼福だと思いながら席に着いたら上鳴が近づいてきた。
「業火~~~~!!! お前今日の小テストの範囲分かるか? 教えてくれ!!」
「またかよ。いい加減予習して来いよ。どうせ峰田とエロい事でもしてたんだろ?」
「そういうなよぉ。業火も一回くれば良さが分かるって」
「俺はパス。興味ないからな」
涙目の上鳴に予鈴が鳴るまでテストの範囲や予測を教えてあげた。入学して半年。いい加減自分で頑張ってほしいものだ。
「皆! もうすぐ予鈴がなるぞ!! 席に着くんだ!」
そんな風にしていたらクラス委員長の飯田君がそう声を上げた。今日も変わらず張り切っているなぁ。
「ああぁぁぁぁっ!!! 今日も疲れたぁ……」
「まだ午前の授業が終わっただけだけどな」
お昼、学食で透と一緒に食事をとる。態々プロの料理人を雇っているだけあって個々の料理はどれも最高だ。それに……気になる人と一緒に食べているせいもある、かも?
「夏休みが恋しいよぉ」
「楽しかったもんな」
林間合宿を除けばほぼほぼ楽しい青春を過ごしたからなぁ。家族みんなで遊びに行ったり、クラスのみんなで海や山に行ったり、透と夏祭りに行ったり……。来年も行きたいもんだ。
「透の浴衣姿、とても似合っていたよ」
「え? そ、そう……? いきなりどうしたの?」
「思い出しちゃったからな」
「えへへ。そう言う業火君もカッコよかったよ?」
「……ありがと?」
「……」
「……」
鼻血が出そうになってしまった。照れながらこちらを褒めてくれるとか天使か? 女神かもしれない。
「……そ、そのご飯美味そうだな」
「そ、そう? た、食べてみる?」
「あアありがとう。ほら、透もこのうどん美味しいぞ」
ちょっと気まずい雰囲気になってしまったがとりあえず誤魔化して食事を続けた。なんてことはない。俺の平和な一日の一部の話さ。
「(またいちゃついてる……)」
「(あれで付き合ってないとか嘘でしょ?)」
「(ナチュラルにあーんしあってる……。バカップルかよ)」
「(食堂のど真ん中でやるなよ。飯が甘くなる)」
「(うーん。美女とイケメンの甘酸っぱいいちゃらぶ……。最高だね!!)」
卒業後、久しぶりに集まった同窓会でその時の事を振り返って言われた事で俺と透はともに赤面するがそれも遠い未来の話だ。そして、互いの薬指に指輪が光っている事も、な。
因みにクラスはAB一つになっています。流石に20人は少ないからね。
轟業火
普通の青年。趣味は執筆活動でな〇う系ライトノベルを書いている。作品は好評で一部は書籍化も決まっていたりする。将来は作家?
透とは卒業後結婚。両親同様のバカップルになる。爆豪、こいつらを爆破するんだ
葉隠透
個性ないから素顔もばっちり。学校一の美人だけど本人が業火と仲いいために微笑ましく思われている。
轟家
天国。ただし両親が年も考えずにイチャイチャするために子供たちからは辟易されている。父は公務員、母は実家が経営するグループ会社に勤めている。長男は警察官、長女は原作通り教師、次男は大学に通っている。皆両親のいちゃらぶに耐え切れずに家を出ている。双子の末っ子たちも高校卒業後は家を出る予定。でも家族の仲は良好。