『嘘だろ……? い、1位は1-A葉隠透、2位は轟業火だぁぁぁっ!!?? 一体誰が予想できた!? あんな序盤は座っていただけの奴らが、僅か
『少し前から準備してただろうが。良く確認しろ』
プレゼントマイクは何が何やらと言った様子だが一部始終を見ていた相澤先生はそう突っ込みを入れていた。隣にいた相澤先生が気づいたのだからプレゼントマイクも気づけるはずだったのだ。
『3位は緑谷出久! 4位、5位は轟焦凍と爆豪勝己! 1-Aがトップ5を占めたぞ! 1位と2位については完全に予想外だったけどなぁ!!』
割れんばかりの大歓声を浴びながら葉隠透はカタカタと震えていた。それはゴールした喜びでも音速を超える移動をした恐怖でもなかった。つかつかと業火の元へと詰め寄った。
「どういう事!? 確かに目立ったけど私、何もしてないんだけど!?」
「俺にしがみついていたじゃんか。普通あんな速度を出されたら途中で落ちてもおかしくなかったのにちゃんとしがみついていた。それは普通に凄い事じゃないか?」
「それだけじゃん! 他の皆みたいに障害物を突破したわけでもないし……」
葉隠は納得いっていなかった。確かに目立ちたいと考えていたがこんなやり方では断じてないのだ。こんな自分の力を一切使用していないやり方など認められるはずがなかったのだ。
「なら辞退するか? それでもいいがもし、自分の力で、って望むならここから挽回することだってできるかもしれないぞ?」
「……辞退はしないよ」
確かに、納得は言っていないが同時に、彼を振り払って皆とスタートする事も出来たのにそれをしない選択を取ったのは自分なのだ。今さら結果に文句を言ってもしょうがない事だった。葉隠はここからは自分の力で勝ち抜いてやると決意した。
それも直ぐに決壊する事になったが。
「本選第一種目は騎馬戦よ!」
それは特殊なルールを用いた騎馬戦だった。崩れてもフィールドから出ても直ぐに復帰可能という何時までも騎馬が減らずにフィールド内を動き回る事が出来るのだ。
「そして騎馬は先ほどの予選の結果によって与えられるポイントの合計値の鉢巻きを付けてもらう! これを奪い合って上位4チームが2回戦へと進出できるようになるわ! そして、これがそのポイントよ!!」
「……え?」
42位から5ポイントずつ上昇していくが1位だけは明らかに桁が可笑しかった。
「1位には1000万ポイントが与えられるわ! 頑張って奪い合いなさい!」
41人の視線が葉隠へと向かう。とはいえその何名かは同情による視線だった。業火のおかげで勝利し、優勝したのにその結果悲惨な事になってしまったのだから。
「それじゃ今から15分。チーム決めの交渉スタートよ!」
葉隠が呆然としている間に騎馬のチーム決めが始まってしまった。それによって一斉にどうするかを話すが誰も葉隠に話しかける者はいなかった。それも仕方ないだろうがただ一人だけを除いて。
「いやぁ、透、ごめんな」
「……業火君」
燃え尽きた、というのが相応しい葉隠の様子に何時もの笑みではなくまじめな表情になり業火は言った。
「騎馬、組もうか。今回ばかりは俺の責任だ」
「業火君」
「ごめん。俺が余計な事をしたせいで透を傷つけてしまったな。責任はきちんととるよ」
これが病院前とか歓楽街の中からば違う意味に聞こえるだろうそれもここでは誰も気にしない。そして、葉隠はわたわたと手を振った。
「そ、そんなことないよ!? わ、私が最終的に決めたんだし、業火君のせいじゃ……」
「安心しろよ。騎馬戦は余裕とかそんなことを考えずに本気で勝ちに行くからさ。絶対に葉隠さんを2回戦に進出させて見せる」
業火にあるのは責任感だった。おふざけをしたせいでこんなことになっていると責任を取ろうとしていたのだ。
「……わ、分かったよ。どうせこんな私と騎馬組んでくれる人なんていないだろうし……」
そしてどちらにしろ葉隠には断る理由なんか存在しなかった。1000万という多額のポイントに誰もが怖気づき、守るよりも奪った方だと楽だと知っていたからだ。それに何より業火の実力は誰も知っている為に心強くもあったのだ。
「よし、なら騎馬は二人で組むぞ。透が上な」
「私が上なの?」
「そうだ。透明化を生かして鉢巻きの位置を少しでも分かりづらくするんだ。そして俺が肩車して周囲の守りに入る。騎馬は2名からでも良いと言っているからな。むしろ俺一人の方がどんな状況にでも対応できる」
そうして二人は作戦会議を始める。途中、1位と2位に釣られたサポート科の生徒が来たが騎馬は決まったとして追い返される等の事態もありながら無事に15分間のチーム決めは終わった。
『起きろイレイザー。チーム決めは終わったぞ』
『ん、ああ。……ほう、中々面白い騎馬が出来ているじゃないか』
チーム決め終了のブザーが鳴り、各騎馬が所定の位置に付く。しかし、誰もかれもが視線を向けるは1000万ポイントの葉隠チームだった。計1000万205ポイント。端数が意味ないと言わんばかりの多額のポイントであり、誰もが狙うものだった。
『騎馬戦!! スタート!!!』
そして始まった騎馬戦だが当然ながら誰もかれもが葉隠チームに殺到する。1000万が手に入れば実質1位で通過できるのだ。狙わない手はなかった。
それを出来るだけの実力があれば、の話だが。
「少し、本気で行くぞ!」
業火はそう言うと炎を生み出し、周りに広げていく。それは足元を広がるように進み、一瞬だが騎馬の動きを止めさせた。
「足止めか? 無駄な事を……!」
だがそんなものは足止めにさえならない。焦凍はくだらないと吐き捨てるように氷で炎を消そうとした時だった。ズズズ、と炎から何かが付きだしてきた。それは一つだけは二つ三つと増えていき、合計30以上の炎の人形へと姿を変えたのだ。
「
守るように展開した炎の人形たちの後ろで業火はニヤリと笑みを浮かべるた。来れるものなら来てみろ、と。
「ふざけんな! こんな炎ごときに遅れ何て取らねぇよ!!」
そして最初に飛び出したのは爆豪チームだった。一番近い陽炎に爆破を放ち、消し飛ばそうとした。
「はん! 実体のねぇ炎ごとき、足止めにもなんねぇよ!」
「……一体、いつ、それが実体ないなんていったのかな?」
爆破で吹き飛ばしたと思った陽炎だが、煙から飛び出て爆豪へと襲い掛かった。咄嗟に手でガードするも腕を掴まれた瞬間にジュゥと肉が焼ける痛みが走る。
「こいつら! じゃまだぁっ!!!」
「ひぃっ!? 何よこれ?!」
爆豪への攻撃を皮切りに一斉に陽炎は騎馬へと襲い掛かった。悪質な崩し目的の攻撃は禁止されているが陽炎はあくまで触れるだけにとどまっていた。しかし、触れた個所が軽いやけどを負う為に馬にも騎手にもダメージが入りつつあった。
『オイオイオイ!!?? こんなのありかぁっ!?』
『ルールには触れていないからな。だが、これで近づくのは困難になったわけだが、まぁ、それで諦めない奴等もいるか』
相澤先生の言うとおり、陽炎の何体かが氷によって蒸発する。いくら実体を持っていようと自分以上の質量の氷を受けてはどうする事も出来なかったのだ。
「1000万、寄こせ……!」
それを行った、焦凍は憎悪のこもった目で業火を見ていた。そんな視線を受けた業火はニヤリと、まるで嘲笑するかの如き笑みを浮かべていた。
「焦凍、俺は透の為に本気を出すと決めたんだ。お前じゃ話にならないよ」
その瞬間、焦凍を囲むように再び陽炎が出現する。その数なんと30体。それだけの数がいっぺんに襲い掛かったのだ。
「舐めるな!!!」
しかし、その程度、焦凍の敵ではない。全方位に放つように氷を射出すれば陽炎は一瞬で消え去っていった。実体があるとはいえそこまでの強度を持たない陽炎では焦凍の氷を防ぐ事は出来なかったのだ。
「これで邪魔者は……!?」
そして業火に視線を向けた時、そこには既に姿はなかった。慌てて左右を確認してもその姿はなかった。まさか透明化の個性か!? と考えるも葉隠にはそんなことは出来なかったはず……、と思考を巡らせていると答えを言うように前馬を務めている飯田天哉が言った。
「上だ! 上に逃げたぞ!」
「何、だと……!」
バッ! と顔を上げればはるか上空に業火はいた。予選でも見せた足から炎を噴き出して上空を飛んでおり、その姿はまさにエンデヴァーを思わせる程安定した浮遊を見せていた。
「くそっ!」
やられた、と焦凍は歯を食いしばった。上空への攻撃が出来ないわけではない。しかし、相手は縦横無尽に飛ぶことができ、それが出来ない自分達では武が悪かった。加えて未だに地上には陽炎が存在しており、騎馬たちの妨害をしてきていた。
『轟業火、飛んだーーーー!!?? あんなのありかよ!?』
「アリよ。別に騎馬が崩れてないしね」
『だから肩車か。重量を軽くするために』
3人以上ならあそこまで安定して飛んではいられないだろう。業火の実力は不明だがあの様子から試合中は飛んでいられるのだろうと相澤先生は予測した。そして、それは的中する事になる。
試合が後半戦に移行する中でも業火は空を飛び続けていた。葉隠だけが何もできていないからかそわそわとしているが業火は取り合う気はないのだろう。
「炎野郎!!! 降りてきやがれ!!!」
『って、今度は爆豪が飛んだぁぁぁっ!!??』
「地面に落ちなければセーフよ」
しかし、そんな業火にくらいつく者もいた。爆豪勝己だ。元々入試1位の業火を気に入っていない爆豪はまるで見下されるかのような今の状況についに我慢の限界を超えたのだ。
「死ねぇぇぇ!!!!」
「お前がな」
しかし、自由自在と多少自由に飛べるという明確な違いがある二人では差が大きすぎた。爆豪が業火に爆破を放とうとするところをするりとすり抜けると鉢巻きを取るついでに右腕を掴み思いっきり炎を噴き出した。
「ぎっ!!?? がああぁぁぁっ!!!」
それでもなお左手で爆破を放とうとする爆豪に足裏から出している炎を体に当てて吹き飛ばす。ジェットエンジンのように強力に噴き出す炎によって爆豪は地面へと叩きつけられそうになるのをチームメイトたちによって回収されていた。
「ま、こんなもんよ」
「うぅ……私、何もできていない」
右腕と腹部を負傷した爆豪は再び業火の距離まで上がってくる事はなく、試合終了のブザーが鳴った。結果、轟業火と葉隠透は圧倒的なポイント数でもって1位通過を果たしたのだった。
オリ主は麗日が爆豪戦で貯めてた破片くらいの位置まで上がってます。それに食いついてくる爆豪よ。
それと皆さんいつも感想ありがとうございます。返信は出来ていませんがきちんと読ませてもらい、今後の糧にさせてもらっています。