『第6試合ィ!!
万! 能! 創! 造! 推薦入学とあってその実力は折り紙付き! ヒーロー科、八百万百!
バーサス! 轟業火に隠れているが彼女もまたヒーローの卵! ヒーロー科! 葉隠透!』
いよいよ透の試合が始まった。相手は八百万百。無機物なら何でも作り出せる彼女にどれだけ戦えるかが試合の分かれ目、だと……思うの、だが……。
『……ってアレ? 葉隠がいねーぞ?』
『……いや、あれは……』
そう、八百万百と向かい合うようにして立っているはずの透の姿は何処にもなかった。もしかして棄権するのか? いや、それならば事前に言うはずだ。……まさか!?
「ふっふっふっ! 甘いよ! 私は既にいるよ!」
「え? 葉隠さんもしかして貴方……」
「服を、脱いでいるのですか?」
「その通り!」
『な、な、なんとぉ!? 1-A葉隠、自らの個性を最大限に生かす為か服を脱いでいたぁっ!?』
『ありなのか?』
嘘でしょ? 見えないとはいえ衆人環視の前で全裸……。え? 本当に大丈夫なの? 黒歴史確定じゃない? というか野郎ども、何興奮してんだ。見るな燃やすぞ。
「それは、ありなのですか?」
「え? だってコスチュームの着用は禁止だけど脱ぐの禁止何てルールはないでしょ?」
そりゃどこの世界に試合で脱ぐ奴がいるんだよ。ああ、いましたね眼下の透明少女が!
「う、うーん? まぁ、本人が良いなら……。私も学生時代は似た事したし……」
「ミッドナイト先生が良いと仰るなら異論はありません」
そう言えばミッドナイト先生も痴女みたいな服装をしていましたね。個性の為とは言え恥ずかしくないんですか? ちょっと俺にはよくわからないです。
『んじゃま、主審がOK出したなら問題ないな! 第6試合! スタート!!』
俺が混乱している間に試合が始まってしまった。だが、確かにこれならば透の独壇場か。最初から脱いだことで透がどこにいるのか分からない。素足だから足音もほとんど聞こえない。八百万百は何時くるか分からない攻撃に備えるだろうが……。
「いっくよー! ヤオモモちゃん!」
「甘いですわ葉隠さん!」
「え? わわ!?」
しかし、流石は推薦入学者。試合開始と同時に自らの周りにまきびしを作り、ばら撒いたのだ。成程、あれなら素足の透じゃ通れないし、無理に通れば棘が刺さって血が出てしまうだろう。そうなれば足跡がくっきりと分かってしまい透明化の利点を生かす事は出来ない。
『八百万、スタートと同時に周囲にまきびしをばら撒いたぁ!? これじゃ近づくことは困難になったな!』
『葉隠も透明化の為に最初から服を脱ぎ捨てていたが八百万が一枚上手だったな。ここからどう動くかが肝だが……』
「うぐぐ! でもまだだよ!」
「っ!?」
八百万が大きくのけぞった。どうやら透は撒き終わる前に接近していたようだな。八百万に一発良いのをお見舞いしたんだ。その結果八百万は後方に軽く吹き飛ばされ、自らがばら撒いたまきびしの上に乗っかる形となった。
「ああぁぁっ!!??」
「まだまだ行くよ!!」
悲鳴と共に起き上がろうとした八百万だが透が追撃をしたようで八百万は上半身を起こしただけで立ち上がれずに顔を左右に振っている。あれは馬乗りになって顔面を殴っているのか。透も容赦がない。
「くっ! この!」
「きゃっ!」
ま、それでやられる程甘くはないだろう。八百万は透を突き飛ばして立ち上がると何かが入った瓶を作り出してそれを投げ飛ばした。ビンは割れて入っていた液体がまき散らされるが……。
「え!? なにこれ!?」
「油性塗料ですわ。これで葉隠さんを視認する事が出来ました」
『おおっと!!?? 八百万、葉隠に塗料を付着させてどこにいるかを分かるようにしたぞ!! だけどあれだな! 裸に塗料だからエロいな!!』
『マイク……。お前生徒に向かって何言ってんだ』
ああ、青い塗料が透に当たって……その、あれだな。扇情的とはこのことを言うんだろう。胸から股間にかけて塗料が付着してその、うん。
油性という事は落ちにくいという事でこの試合中ははがす事は出来ないだろう。透明化の利点は失われたが透もそれで諦めはしない。
「まだだぁぁっ!!」
「きゃぁっ!?」
塗料が付着したのはお腹周りだ。腕にはついていない。それを利用して八百万に軌道が読めない攻撃を繰り出していく。あれでは防ごうにも難しいな。八百万は盾を作ったけど盾のない所から攻撃したり片手で掴んでどかして殴っている。
一旦距離を取ろうにも最初に撒いたまきびしがそれを許さない。八百万は自らが撒いた種に苦しめられる事になった。
「うりゃりゃりゃー!!」
「くっ! まだ、ですわぁっ!!」
「きゃっ!」
透の猛攻に耐えていた八百万がついに反撃に出た。盾で振り払うような攻撃をしたのだ。面による攻撃で透は一瞬怯んだがその隙を見逃さなかった。盾を持った右手はそのままに左手に警棒のような短めの棒を作りそれを振り下ろしたのだ。ガッ、という音が響くが位置的に右肩に当たったようだ。
骨が折れたかは不明だが最低でも暫くは激痛で右手を使えないだろう。だが、お返しと言わんばかりに八百万の顔面に透の左ストレートがさく裂した。あれは痛い。鼻に当たったから頭全体に痛みが響くだろう。
「このぉっ!!!」
そして、八百万にタックルを仕掛ける透。ラグビー選手のような綺麗なタックルで八百万を再びまきびしの上に押し倒した。先程とは違い、今度は自分の体重だけではなく、透の体重も乗った。その結果は……。
「~~~~~~っ!!!」
声にならない激痛だろう。もう八百万の背中は酷いことになっているはずだ。実際今の背中を伝って血がだらだらと流れている。ヤバそうだ。
『女の子同士の殴り合いもそろそろ決着かー!? というか決着つかないと危なくないか?』
『八百万は血を流しすぎている。意識を保つのも限界だろう』
相澤先生の言う通り、八百万が立つ事はなく、悔しそうに眼をつぶった。それは負けを認める事でもあり、それを確認したミッドナイト先生は右手を上げて叫んだ。
「八百万さん降参! 葉隠さんの勝利!」
「や、やったーーー!!!」
『葉隠ェ!! 轟業火に隠れてここまで来たがついに実力で2回戦進出を果たしたぞーー!!!』
『業火に振り回されているだけという印象もこれで払しょくされるだろう』
うわ、相澤先生が遠く離れているのに睨んでくるのが分かる。透に関してははっちゃけ過ぎたと思っているよ。ちょっと悪い事したかなって反省もしているし。だからそう抹消の個性を発動しそうな眼力で睨まないでくださいな。
ま、何はともあれ透は無事に2回戦に進出できたようだしひと安心だな。次は切島と上鳴か。どっちが勝ってもおかしくはなさそうだし予想はしづらいな。そして、無重力女生徒と爆豪勝己は……。十中八九爆豪勝己の勝利だな。何かしら秘策はあるだろうけどそれが通じるとは思えないし見る必要は無いかな。
第7試合。切島と上鳴の対決は中々に面白いことになった。
「いい加減倒れろ!」
「このくらいなんてことねぇな!!」
試合開始と共に放電する上鳴を掻い潜り接近した切島だったがそこでつかみ合いになり、上鳴の電流を浴びる事になった。だが、それを切島は根性で耐えて見せたのだ。
「おらぁぁっ!!!」
「う、ウェーイ!?」
そして、キャパオーバーした上鳴がバカになった瞬間を狙ってそのまま切島は場外へと放り投げた。それによって切島が勝利を掴んだのだ。ま、体中焦げていたけどな。やっぱ切島はタンクとしてはめちゃくちゃ優秀だな。
続く1回戦最後の試合は予想通りの展開となったつまらない試合だった。接近しようとする女生徒に爆破で一方的に攻撃する爆豪勝己。途中プロヒーローを語る阿呆がブーイングをするというちょっとしたアクシデント? もあったがそこから女生徒は空中に浮かせていたステージの破片を一気に爆豪勝己に向けて落下させるも特大爆破で防がれてそのまま気絶。
予想していた試合展開の中で一番つまらない予想と同じになってしまった。もうちょっと面白い展開を期待したが対人戦闘訓練の時から予想していた通りこの程度だったか。女生徒に限った話ではないけどやっぱ個性に頼り切りなやつがおおいことおおいこと。格闘術でも学んで補強しようとは考えないのか。
物理で強い奴はそういった個性を持つ奴ばかりの傾向があるが普通は逆だろう。物理の個性を持たないからこそそれを補強するために学ぶもんだろうが。あー、ちょっとイライラしてきた。個性に依存し、それすらも微妙な奴が多い。見た感じそれが出来ているのは相澤先生くらいだ。
そういう意味では相澤先生は本当にすごい。抹消という強個性だが自分の身体能力には何の影響もないからと格闘術をたしなんでいるように見える。そこに捕縛布を用いた独自の戦闘スタイルを確立し、既存のものから進化させている。一長一短で身に着けたとは思えないし恐らくプロヒーローになる前から学んでいたのかな?
……そんなことはおいておいて次からは2回戦になる。最初は緑谷と焦凍か。緑谷の実力では勝てるとは思えないから準決勝は焦凍との対決になるだろうな。思えば焦凍と戦うのは対人戦闘訓練以来、人生で2回目か。あの時は障子君もいたから純粋な1対1ではなかったが今度は違う。存分に戦う事が出来るだろう。父さんが鍛え上げた最高傑作にしてそれに抗い中途半端な形となった愚かな弟。ああ、どうやって戦おうかな。今からすごく楽しみだよ。
葉隠さん、八百万に勝利! まぁ、これで負けていたらマジでいい所がなく終わってしまうので八百万には負けてもらいました。でも次は飯田君との試合なのでまず勝てないでしょうけど。