雄英体育祭は無事に終了した。表彰式ではオールマイトが直々にメダルの授与を行った。俺も2位としてメダルを受け取っている。面白いのが爆豪だろう。俺にずっと突っかかってくるからって厳重に拘束されていた。1位の姿とは思えなかったから「1位おめでとう」って笑顔で言ったら余計に暴れてしまったよ。
とはいえ1位は1位。大人しくオールマイトからメダルを受け取り雄英体育祭は無事に終了した。俺としては納得のいく結果で終わったと思うけど透には大分悪いことをしてしまったと思う。悪目立ちさせてしまったし今後のヒーローとしての道に陰りが見えないと良いんだが……。
それと雄英体育祭の影響で明日明後日は振替休日となるらしく2日間の休日となった。恐らく怪我を治す意味も兼ねているのだろうがどうするべきか……。焦凍は何やら母さんに会いに行くとか言っているけど正気か? あんな奴にあんなことをされて会いに行くとか俺だったら無理だね。
「業火……」
「? どうかしたの? 父さん」
そんな風に考えていたら父さんに声をかけられた。雄英体育祭が終わったばかりだというのに父さんはそのまま事務所に戻らずに家に帰ってきていた。おかげで我が家はいつも通り凍った空気だよ。
「……少し話をしたい」
「……そう。良いよ」
何処か様子の可笑しい父さんについていく。向かった先は家に併設されている道場のような場所だ。昔はここで焦凍が地獄のような訓練をしていた。何度も血反吐を吐いていたから正直汚いと思って使った事はないんだよなぁ。
そんな風に思っていたら部屋の中央に立った父さんがこちらを向いた。その表情はまるで……。
「何時からだ?」
「何が?」
「何時から、あんな力を……」
ああ、そこね。サイドキックを通じてある程度は聞いていたと思うけど知らないんだね。
「んー、サジタリウスの矢は小学生の時には編み出していたよ。炎龍のかぎ爪は中学生の時かな。陽炎は……気づいたら出来ていたよ」
「……それだけではないだろう。何故実力を隠す?」
……へぇ、やっぱ気づくんだ。俺が一切全力を出していない事に。
「お前の動き、特に決勝での動きは本来ならば攻撃のタイミングを態と何もしない動きをしているように見えた。恐らくだが本気の実力の半分も出していまい」
「はは。流石は№2ヒーローのエンデヴァーだ。よく見ているしよく理解しているな」
まぁ、知るのが遅すぎたと思うけどな。確かに俺はサイドキックの方々相手にも
「……業火。お前、
「……そんなことをするわけないじゃん」
……ほんと、ヒーローとしては一流だね。父さんは。だから
「あのサジタリウスの矢は人を殺せる威力を持っていた。そして、あの冷静さは
「だからそんなことはしていないよ。それに、仮にしていたとしても一体誰を?
俺はそんなヘマはしない。そう、俺は確かに
せっかく楽しい雄英生活をしているんだし今更ヴィランとして追われるなんて勘弁だしな。あ、でも透になら捕まってもいいかもしれないな。でもそのためには敵対する事になるし……悩みどころだ。
「安心してよ。俺はエンデヴァーの名声に傷がつくような事は決してしないよ。しても絶対に見つからないようにしているからさ」
「っ!!! そういう問題では……!!」
「話は以上? それだけなら俺も今日は疲れたし寝たいんだけど」
「業火! まだ話は終わって……!!」
後ろで父さんが何か言っているけど気にしない気にしない。俺は俺のやりたいようにやるだけなんだから。今さら父さんが何を言おうと返る気はないよ。
「それで相澤君。君は轟業火をどう見る?」
雄英体育祭が終わった日の夜、雄英の校長である根津は1-A担任の相澤にオールマイト等一部の教師を集めて会議を行っていた。議題は1-A所属の轟業火についてだった。
「結論から言います。その辺のヴィランなんか比べるまでもない程に危険です」
「やはりそう思うか」
「完璧に判明したわけではありませんが雄英体育祭での業火を見た結果、思考はヴィランのそれとよく似ています」
それが相澤がこの雄英体育祭を通じて見た業火の総評だった。ヴィランがヒーローを目指している。そう思わせる動きを業火はしていると判断したのだ。
「とはいえこれはあくまで自分の判断によるものです。確証はないため断言する事は出来ませんが」
「いや、僕もそう思っているさ。彼は一体どこで歪んでしまったのか」
エンデヴァーの息子、轟業火。もし彼がヒーローの息子じゃなければ今頃彼がいるのは暗い路地裏だっただろう。そう断言できてしまう凶暴性が見え隠れしていた。
「USJの火災ゾーンの燃えカス、警察が鑑定してくれたけど判別する事は出来なかったそうだよ。鑑定できない程損傷が激しいらしいけど随分と手馴れている」
「少なくともUSJが初めて、ではないという事ですね?」
根津が警察から受けた報告から予想したのはミッドナイトだった。彼女もまた雄英体育祭で業火を注視していた教師の一人であり、無いとは思っていたがもし暴れるような事があれば彼女の個性を用いて止めるつもりだった。尤も、別の人物に使用する事になるとは彼女も思ってもいなかったが。
「少なくともあれだけ徹底して行えるレベル、それも相澤君の証言通りならばワープして直ぐに迅速に動いたことになる。それだけ早く動いて行動するまで一体どれだけの人が犠牲になったのか……」
問題は証拠がない事だ。警察でさえ判別できなかった以上これらは全て彼らの妄想に過ぎない。実際にそれを目にしたわけでも証拠があるわけではないのだ。
「ではどうしますか? 今まで通り現状維持にしますか? 下手に問い詰めてヴィランになられるよりはマシと言えますが……」
「そうだね……」
根津達が想定する最悪の事態は彼がヴィランへと堕ちる事だ。あれだけの実力を持つ者がヴィランとなればそれこそどうなるか分からない。
「……今は見守る事しか出来ないね。相澤君。悪いけど今まで通り彼をよく見てあげてくれ」
「分かりました」
その後も、彼らは業火というヴィランに最も近しい生徒の話を中心に会議を続けるのだった。
轟業火
エンデヴァーの三男。焦凍の双子の兄。幼少期よりエンデヴァーに憧れており、個性の強化を続けてきた。その過程で路地裏のチンピラを個性の実験台にしていくつもの焼死体を作り上げている。
エンデヴァーの個性婚を肯定しており、そのために失敗作として長男と次男を無意識に嫌っており、エンデヴァーが最高傑作という焦凍を気にかけている。
幼少期からの訓練で個性に頼り切った戦闘ではいずれ限界が来ると判断して格闘術も多数習得している他個性を伸ばして強力な必殺技をいくつも編み出している。
因みに雄英に通っているのはエンデヴァーがヒーローだからであり、エンデヴァーがヴィランだったら同様の道を歩んでいる。将来の展望については現時点で不明。ただし、強い相手との戦闘を好む戦闘狂のきらいがある。
自分を中心に興味がある人しか中々覚えられない難儀な性格を抱えており、今だ1-Aの生徒の半分くらいしか名前を覚えてない。何なら顔を覚えてない奴もいるかもしれない。ナチュラルに相手を煽るために敵を作りやすい。何なら人を覚えるときはどんな個性を持っているかを見てから把握する傾向がある。
葉隠透に関しては透明化という強力な個性から興味を持ち、有用そうだと感じているうちに葉隠自身に好意を持つようになった。その辺は年相応の為透と話すとドキドキしている。寮生活になったらお互いに部屋で一緒に寝るかもしれない。
個性【ヘルフレイム?】
エンデヴァーと同様の炎熱系の個性。ただし、母親の個性が混ざった結果その炎は質量を持たせる事が出来るようになっており、実体がある。それを用いて武器の形状にしたり分身を生み出すなどのエンデヴァーにはない応用性を見せている。
副時効果として熱に対する高い耐性を有している。それはエンデヴァーや焦凍以上であり、彼らの炎がまず効かないレベル。荼毘も行けるかどうか。それに加えて冷気への耐性も多少なりともある。