雄英高校、それはヒーローを目指す者ならば誰もが入学を希望するトップクラスの学校だ。ここを卒業できればトップクラスのヒーローとしてやっていく事が可能であり、社会に出てからの大きなステータスとなる。
実は西にも同様の学校があるがあちらは規律を重んじ、さながら軍学校の如き厳しさがあるが雄英高校は真逆。自由さが売り文句であり、そういう意味でも雄英高校の方が人気が高い。
かく言う俺の父親も雄英高校の卒業生であり、母校に当たる。推薦を蹴って態々一般枠で受験した時には理由を尋ねられ、というかブチ切れていたが俺としては推薦枠という実力が確かな奴等よりも何が出てくるか分からない一般枠で将来のクラスメイトと楽しみたいと感じていたから一般枠で受けたわけだが期待外れも甚だしかった。
「雄英……。制服はマシだがジャージはダサいな」
今日は通学初日だ。当然ながら俺はトップで合格しており、そのことに関しては特に感慨も無かったがその合否発表をしてきたのが現在のトップヒーローであるオールマイトだったときには流石に驚いた。というかオールマイトに反応して父さんが炎をまき散らしていたな。そちらの後処理の方が大変だった。
何でも今年から雄英高校の教師になったそうで上位の成績を残した者にはこうして態々録画だが激励の言葉をくれるようだ。
ま、オールマイト好きならばたまらないのだろうが俺としてはどうでもいいからな。大して感動もしなかった。むしろオールマイトが教師となった事で発生するだろうマスコミの殺到やヴィラン達によるちょっかいがないかが心配だ。
「……」
「お? 焦凍も一緒に通うか?」
「……」
玄関で靴を履いていると後ろから焦凍がやってきた。焦凍も推薦枠でだが雄英高校に合格していて俺と同じ制服に身を包んでいる。だから声をかけたんだが返ってきたのは殺意すら乗っている睨みだった。俺は生き写しと言われるレベルで父さんに似ている。流石に父さんのようにゴツイ身体はしていないが並べば一目で親子だと分かるほどに似ている。
焦凍は父さんを死ぬほど嫌っているからな。顔がそっくりな俺もそのせいで嫌っているのだろう。俺としてはくだらない理由で嫌われているとしか感じないから気にも留めていない。
「いやなら別にいいさ。俺も嫌われている奴と態々一緒に登校しようなんて思わないからな」
「……」
相も変わらず返事すら返してくれない。かれこれ3年は会話していないだろうな。ただでさえ無口なのにそれで人とコミュニケーションをちゃんと取れるというのか。
「それじゃ、行ってきます」
「……」
俺はきちんと挨拶をして家を出る。普段だったら姉が声をかけてくれるのだが今年から小学校の教師になった姉は俺たちよりも先に出勤している為に返事はない。だから最後に家を出る俺たちがカギをかける事になっている。
「……」
「……」
俺がカギをかけている間に焦凍は先に行ってしまった。別にそれは構わない。しかし双子とは言え兄にカギかけを任せて先に行くとは思わなかった。そこまで俺が嫌いか。嫌いだったな。
「ま、焦凍もいずれ社会の厳しさを知る事になるだろうし今のうちだな」
どうせ焦凍のやり方ではプロにはなれないだろうからな。子供の我儘って事で暫くは好きにさせるとしますかな。
「おお、流石は雄英高校。扉もでかいねー」
雄英高校のでかさは知っていたがまさか教室の入り口まででかいとは思わなかった。軽く5mくらいはありそうだが過去にそれだけの巨体の生徒でもいたのだろうか。
「さてと、クラスメイトはどんな奴等かな……」
ガラガラと扉を開けてみれば数人しか来ていなかった。焦凍は静かに自分の席について座っているし他の人達は自己紹介をしあっていた。
「あ! もしかして君も1A? これからよろしくね!」
「おう、よろしく。まさか服だけの生徒もいるんだな。」
「違うよー? 私、透明化の個性なんだ!」
俺に声をかけてきた……少女? は葉隠さんというらしい。常時透明化の個性で一切素顔どころか身体すら見えない為服を着ていなければ気づく事は難しそうな人だった。
「俺は轟業火。これからよろしくな」
「うん! 皆でヒーロー目指そうね!」
普通、透明化と言えば性格も暗くなりがちだが葉隠さんはそんなことはなさそうだ。というよりも明るい性格だから透明化で顔が見えなくても存在感が半端ない。面白い人だよ。
「そう言えばあのイケメンと同じ苗字だけど兄弟なの?」
「双子だね。俺が兄であっちが弟。ま、ちょっと嫌われているから兄弟仲は最悪だけどね」
「へー。複雑なんだね」
そうやって話をしている間に教師が来たらしい。見た目は陰鬱な先生だ。雄英高校の教師は全員がプロヒーローとの事だがこの人はどうもそういう風には見えない。まぁ、このご時世でプロヒーローなんて腐るほどいるから知らなくても当然か。
そんな風に考えているといきなり個性把握テストをするために校庭に出る事になった。入学式は不参加でこっちをやるようだ。
「時間は有限だからな。下らない入学式よりもこっちの方が効率が良い。……轟兄。前に出ろ」
「はいはい」
呼ばれてしまった。どうやらどういうものかを教えるためにデモンストレーションをするらしい。やるのはソフトボール投げだ。これを個性を使ってやってみろとの事。中学生までは個性禁止だったからどうやるか……。
俺はボールを壊さないように気を付けながら炎でボールを包み込む。そしてそれをふわりと投げればあら不思議ボールはゆらりと遥か上空へ消えていった。
「こんな感じですかね」
「……因みに何時まで出来る?」
「このくらいなら一日中可能ですよ」
本当はもっとできるけどいう必要は無いだろう。教師と言えど手札は隠し持っておきたいからな。
「……そうか。なら∞でいいな」
∞もありなんだ。先生はクラスメイトに説明をしていくがそんなときに誰かが面白そうと発言したために最下位の人は除籍すると言い出した。まぁ、プロヒーローを育成するならそのくらいの心構えが無いと駄目なんだろう。先生は楽し気に笑っているからな。
そうして始まったテストだけどどれもこれもつまらないの一言に尽きる。
最初は50m走。軽く足裏から炎を噴き出して2秒ほどで到達した。
続いて握力測定。特に見せ場はないため中学の時より強くなった程度だった。
3種目目、立ち幅跳び。これも足裏から炎を出して∞を記録した。
4種目目、反復横跳び。普通にやったために特にいう事なし。
5種目目、ボール投げ。最初と同じように∞の記録を叩き出した。
6種目目、上体起こし。普通にこなした。
7種目目、長座体前屈。炎で追加して∞の記録を叩き出した。
8種目目、持久走。これも炎でずっと飛んでいたら∞となった。
結局個性を使えた時は∞の記録ばかりを叩き出した結果俺が1位となった。途中、自分の力をまともに制御できていない奴がボール投げで中々の成績を叩き出しているが特に見どころはなかった。
そんなわけで俺はクラスメイト達の個性を見ていたが流石は雄英高校合格者。どいつもこいつも面白い個性の持ち主だった。
現状、俺が面白いと判断したのは爆豪勝己、八百万百だ。爆豪勝己はヴィランみたいなやつで確か入試2位の奴だった。そのせいか睨まれていたが焦凍に比べれば大したことではない。個性は爆破で手の平から爆発を生み出せるらしい。それで空中を飛んだり爆風に乗せてボールを投げていたりした。対人戦闘能力も高そうな良い個性だ。
八百万百は推薦入学者で個性は創造。原理さえ知っていれば無機物を何でも生み出せるという強個性であり、持久走ではスクーターを生み出して乗っていたしボール投げでは大砲を作っていた。テストも俺に次ぐ2位だった。
因みに葉隠さんは下位に沈んでいたが透明化である以上生かしにくい中で最下位じゃないだけ健闘したと言えるだろう。
「轟君凄いね! 1位じゃん!」
「焦凍もいるし業火って呼んでよ。葉隠さんも透明化の個性でよく頑張ったと思うよ」
「えへへぇ。そうかな? あ、私の事も透って気軽に呼んでよ!」
そんなわけで葉隠さん、もとい透とは雄英高校最初の友人となる事が出来た。他にも何人かと話をしたが透程仲が良い相手は出来なかったな。
「くぅ! 羨ましいな、炎を生み出すとかかっこいいぜ!」
「それな。俺の個性なんて電気を操れるだけだからなぁ」
透の次だと切島君と上鳴君だな。硬化と帯電という個性を持っており、切島は自分の個性が地味だと嘆いていたな。逆に上鳴は自分の個性がコントロールできない事を嘆いていた。
「なら放課後一緒に訓練でもするか?」
「え? そんなことできるのか?」
「相澤先生に聞いてみたら許可さえ取ればトレーニングルームを使用できるらしい。特に入学から最初の方は新入生に優先的に貸し出してくれるようだ」
「マジか! 頼む!」
「俺も俺も!」
因みに相澤先生とは俺らの担任の先生だ。何でも見た個性を消すという中々に強力な個性を持っているらしい。流石に異形型のような個性は消せないようだけどな。それまで消えた場合、透の顔も見れたりするのだろうか。
そんなわけでテストを終わらせて放課後、俺たち三人は他にも何人か誘って皆で訓練をする事にした。と言ってもお互いまだ知り合った初日だから互いの自己紹介とか個性の紹介とかがメインになったけどな。
「そう言えば轟ってエンデヴァーの息子なんだろ?」
「え!? マジかよ! トップ2のヒーローじゃん! すげーな!」
「そうらしいな。でも逆に家族だと近づきすぎていまいち凄さが分からなくなるぞ。こういうのは親族にいない方が凄さが分かるからな」
「それでもプロヒーローが親とか羨ましいぜ」
羨ましい、ね。あの人の本性を知れば誰もそう思う事はないだろうな。特に家庭環境を知れば、ね。俺は既に慣れたというか諦めたから気にしなくなったが姉や兄、焦凍はそのせいでぎすぎすしているからな。
そうしてクラスメイトと交流を深めていき、本人の性格や個性を把握する事が出来た。これで凡そ全員のを把握できたと思うがやっぱ脅威になりそうな奴は今のところはいない、か。将来性はある奴ばかりだけどヒーローの卵と言えるこいつらでこの程度ならばやっぱうちの家庭は異常なんだろうな。改めて再確認できたわ。再確認なんてしたくはなかったけどな。
ヒロインは葉隠さんで行きます。葉隠さん良いよね。