俺の個性はサイキョー   作:鈴木颯手

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第二十話

 ヒーロー殺し。想定の範囲内を出ないヴィランだった。

 これまでに戦ったヴィランに比べれば圧倒的に強かったしその思想も共感できる部分はあったのかもしれない。少なくともただのヴィランでは無かったのだろう。

 だけど悲しいかな。その思いが二度と誰かに届く事はない。ヒーロー殺しはこれでおしまい。終幕だ。余生をただただ刑務所で過ごし最後の時が来るまで無意味な人生を送る。それだけの存在へとなり下がるのだ。

 

「よっと」

「なに、してるの? 業火君……」

「逃げられないように四肢をへし折っておく。こんなやつを捕縛できるものなんて無いからな。逃走、抵抗できないようにしているのさ」

 

 緑谷が何処かドン引きした様子で聞いてくるが俺は淡々と答える。剣で殴った際に肋骨とか折れてるし内臓もやられているかもしれないが問題は無いだろう。ヒーロー殺しはそれだけの事をしたと思うからな。生きているだけ感謝してほしいものだ。

 

「……最近の若者は過激だね」

「あいつが可笑しいだけだ」

「アハハ……」

 

 ヒーローがなんか言っているがどうでもいい。とにかくヒーロー殺しは無力化出来たんだ。こいつを警察に引き渡して終わりだな。

 

「あ、ネイティブさん。動けるようになったんですか? それにこんなことを……」

「ようやくね。何もできなかった分このくらいはさせてよ」

 

 ヒーローが漸く動けるようになったのかボロボロの緑谷を背負って動く準備を整えていた。取り合えず俺はへし折ったヒーロー殺しの脚を持って引きずろうとしたら飯田君が慌てて止めてきた。

 

「ま、待ってくれ! そいつは、これまで多くのヒーローを……!」

「あ? だからどうしたんだ? こいつはヴィランだがヒーローは捕えるのが仕事だ。……まさかとは思うけど殺そうと考えてるのか?」

 

 飯田君の様子がおかしいがまさか復讐とか考えているのか? 確かにこいつに殺されたらしいけどヒーロー志望の癖に復讐に呑まれんなよ。

 

「飯田君。君は何になりたいのかな? ヒーローでしょう? 死んだ兄の事なんかに囚われてないでヒーロー目指すならヒーローらしい行動を心掛けろよ」

「業火君、飯田君のお兄さんは死んだわけじゃ……」

 

 緑谷が脇から何か言っているが言いたい事は言わせてもらう。

 

「そもそもヒーローになるのならそのくらいの覚悟はあって当然だろう? ヒーローは劇場に立つ演者なんかじゃないんだ。人を殺してもおかしくはないヴィランを相手にするんだ。当然、死ぬことだってあるだろうさ」

 

 飯田君がそんな事に囚われるなんて思ってもいなかったよ。これでヒーロー目指すとか焦凍以上の失笑もんだわ。

 

「……!!」

「その程度の事も分からないのなら今すぐ雄英を去った方が良いよ。ヒーロー、向いてないからさ」

「おい! お前ら!! 何をしてる!!」

 

 俺がそう言うと同時にヒーローらしき爺さんがやってきたので俺はそれ以上何かを言う事はなくヒーロー殺しを警察へと引き渡した。

 その後は父さんを始めとするヒーローたちによって事件は解決したらしい。聞いた話だけどヒーロー殺しと並行して雄英を襲撃したヴィラン連合の……脳無という化け物が大量に現れたとの事。脳無を隠れ蓑にヒーロー殺しは次のターゲットを殺そうとしていたわけだ。つまりヴィラン連合にステインは加入したという事で所詮はヒーローを殺したいだけのヴィランだったという事だろう。

 その翌日には保須市の警察の人が司法取引を持ち掛けてきた。俺たち、というよりも俺がメインだけど無断で個性を使用したことで批判される可能性があるから今回の功績を全てエンデヴァーに渡す代わりにそれを無かったことにしないかというものらしい。父さんの功績になるのならと俺は快く受け入れたよ。父さんは大分渋い顔をしていたけどな。それも仕方ないか。自分の子供が手に入れた功績をかすめ取った形になったわけだからな。良い顔はしないだろう。

 

 今回の職場体験は初っ端から面白い経験をする事になった。ヒーローについても学べたしいい経験を得られたと思うよ。父さんの所に来れて本当に良かったよ。

 

 

 

 

 

 エンデヴァーのサイドキックであるバーニンはデビューした当時には既に轟業火は入り浸るようにサイドキックの元で訓練を受けていた。当時はまだ10歳にも満たない子供が何でこんなところに……? という思いを抱いていたがエンデヴァーの息子であり、自らのサイドキック達に訓練を受けさせている事を知り疑問は消えていった。

 しかし、同時に感じてくるのは底知れない彼の才能だった。彼は子供でありながら高い戦闘能力を身に着け、時にはサイドキック相手にさえ勝ってしまいそうな程の実力をつけ始めていた。バーニンでさえ彼との模擬戦は本気でやらねば負けてしまう程であり、その圧倒的な強さからエンデヴァーには何度も話をしようとしたが聞いてもらえた事は無かった。

 

『業火君は何でそんなに強くなろうとしているの?』

 

 バーニンは一度、そう尋ねた事があった。彼女の目に業火はただただ強さを追い求めるように映ったからだ。少なくともヒーローを目指す者が見せて良い瞳では無いと彼女は感じたためにそう聞いたのだ。

 しかし、それに対する業火の返答はとても純粋なものだった。

 

『俺は父さんみたいに強くなりたいんだ』

 

 キラキラとさえ感じる程の純粋な願い。しかしそれ故にその答えを聞いたバーニンは背筋に氷を付けられたかの如き悪寒を感じていた。それが何なのかは今でさえ分からない。ただし、それが良いものではないのは確かだった。

 故に彼女は業火を矯正しようと必死になった。他のサイドキックは業火のそれに気づいていない。話しても気のせいだと思われてしまいならばとそれに気づいた自分だけが矯正できると奮闘したのだ。それがより良き未来の為になると信じて。

 結果的にそれ以来業火に対して悪寒を感じる事は無くなった。ヒーローとして最低限問題ない程度にはなったとバーニンは思っている。それでも、強さに対する執着が消えたわけではないと雄英体育祭を見て改めて感じていた。

 所詮はヒーローであってカウンセラーでも教師でもなんでもないバーニンにはそれが限界だった。それ以上は彼女ではどうしようも無かったのだ。

 

『お久しぶりです、バーニンさん。一週間よろしくお願いします』

『え、えぇ。よろしく……』

 

 職場体験に来た業火のその挨拶にバーニンは辛うじてそれだけを言う事が出来た。笑顔を向けて先輩として敬ってくる業火に対してバーニンは炎の化け物の如き姿を幻視していた。それはまさに彼が持つ本性を現しているかの如き姿だった。

 結局、職場体験はそれ以来問題らしい問題も起こる事なくバーニンが幻視した姿やそれから来る不安とは裏腹に平穏に一週間を終える事となるのだった。

 

 

 

 

 

「……ああ、君か。君も見たかな? 今年の雄英体育祭を。

そう、2位の彼。実に素晴らしい。1位の彼も素質はあるが2位の彼の方が断然上だ。是非ともこちら側に勧誘したい。

……ん? 君は反対なのか。確かにこちらに勧誘する危険性は理解している。だが彼なら断る事は無いと断言できる。これまで数多くの人と接してきた私の中の直感がささやくのさ。

無論こちらに危険がないように慎重に事を進めるつもりだ。そこは心配する事はない。これまでも、そしてこれからも、ね」

 

 

 

 

 

 そうして、ヒーロー側が平穏を謳歌している裏で闇は着々と忍び寄りつつあるのだった。

 




ステインさっさと退場したためにステインの言葉はなくヴィラン連合強化のフラグはへし折られる事に。
とは言えなんだかんだ言って開闢行動隊は結成されると考えてください。それと飯田君は裏側で緑谷と焦凍によって原作通りに立ち直っていると思ってください。
基本的にオリ主君視点で話が進む都合上オリ主君が見ていない事や興味ないことはスルーされる傾向にありますので。
因みに一応オリ主君の今後については決まりましたがどう話を展開させていこうか迷っていたり。
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