俺の個性はサイキョー   作:鈴木颯手

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第二十九話

 林間合宿2日目。ついに本格的な訓練が始まった。行うのは各々に見合った個性伸ばし訓練である。本来ならば担任だけでは全員の個性を見るなんてことは出来ない。故にプッシーキャッツの面々の力を借りるのである。

 ラグドールの個性【サーチ】は見た者の個性や弱点を100人まで把握することができ、それを用いて諸々の課題を確認。個性【土流】を持つピクシーボブがそれぞれに見合った地形を作り上げ、プッシーキャッツの司令塔であるマンダレイが個性【テレパス】で複数人に一度にアドバイスや指示を出すという連携が為されていた。

 そして最後の一人、虎はその肉体を生かして単純な増強系の個性の者に対して筋繊維が引きちぎれるまでひたすらに訓練を施すことになった。

 以下が1-Aの面々の訓練内容である。

 

青山

個性【ネビルレーザー】を腹痛になっても出し続ける。飛距離と威力アップを狙う。

芦戸

酸を出し続けて酸の強化と皮膚の強度を高める。

蛙吹

舌を使って登攀し、全身と舌の筋肉を鍛える。

飯田

ひたすら走り込みを行い、脚力をアップする。

麗日

ゾービング等を行い、三半規管を鍛える。

尾白

切島とペアとなる事で硬化する切島をひたすら尻尾で殴り続ける。

上鳴

大容量バッテリーと通電して容量の拡大を目指す。

切島

尾白とペアを組み、硬化してひたすら尾白の攻撃を耐える。

口田

大きな声を出して遠い距離にいる動物を操れるようにする。それと恥ずかしがり屋な性格を直す目的もある。

障子

葉隠とペアとなり気配を消す葉隠を複製腕を出し続けながら索敵する。

耳郎

ピンジャックの部分を岩に打ち付けて強度を高める。

瀬呂

ひたすらテープを出し続ける。

常闇

暗闇でダークシャドウをコントロールする。

轟焦凍

風呂に入り、氷と炎を交互に出して温度を常に一定にし続ける。

葉隠

障子とペアを組みひたすら障子から気配を消して逃げる。

爆豪

熱湯に手を入れて汗腺の拡大と爆破の威力増大を行う。

緑谷

筋繊維をボロボロにしながら虎に殴る蹴るの暴行を受ける。

峰田

ひたすら頭のもぎもぎを出し続ける。

八百万

食べ物を食べながら物を作り続ける。

 

 というものであり、一部の生徒は地獄としか言いようがない苦行となっていた。ちなみに、これを見たB組は魂が抜ける程の衝撃を受けていた。

 

 そして、業火についてだが……。

 

「……」

「ストップストップ!! これ以上温度を上げたら私達が持たないわよ!」

 

 既に個性伸ばしの訓練で何をすれば良いのか分からなくなっていた。というのも幼少の頃より訓練を受けていた業火は自らの個性を鍛えに鍛え続けたために出来ない事が無くなってしまっていたのだ。今行っていた温度をどこまで上げられるかもあっという間に青い炎になってピクシーボブが生み出した土魔獣を溶かし、溶岩へと変貌させてしまったほどである。

 更に言えば低い温度の炎についても楽々にこなしており、燃えているというのに周囲を凍らせるという芸当を可能としていた。それには焦凍も驚きの目をして固まっており、業火は「焦凍なら出来るはずだよ」と煽っているかのごとき言葉を残している。

 

「うーん。どうしようか」

「どうしましょうね」

 

 結局、そこから色々と試した結果、一人だけ教師たちに混ざってABの個性伸ばしの手伝いをする事になった。技の一つである陽炎で分身を作り必要な者達の相手をさせたりすることで微力ながらも個性の訓練となるようにしていた。

 

「あなた、本当に規格外ね。炎の個性とは思えない程出来る事が多彩だわ」

「別にそう言う個性というわけではありませんよ。多才と思える程個性の使い方をマスターしただけですよ」

 

 ピクシーボブの言葉に業火はそう答えた。そして、その時に見せた顔を見てピクシーボブはなんとなくだが彼の事を理解したような気がした。

 彼はまるで子供が自慢するかのように無邪気な笑みを浮かべていたのだ。それはまさに一切の悪意の感情がない、ただただ自慢したいだけの幼い子供の様に見えたのだ。

 

「(もしかして、君は……)」

 

 ピクシーボブが感じ取った業火のオリジンの一端。それを更に深く知ろうとした時、マンダレイから呼び出しを受けて中断せざるを得ず、ピクシーボブは思考を切り替えて業火の元を後にした。

 一人、残された業火は個性の訓練をするABの人たちを冷めた目で見つめているのだった。

 

 

 

 

 

 初日並にボロボロとなり果てたABに待っていたのは大量の食材たちだった。初日こそ世話を焼いてもらったがこれからは自分達で料理を作るしかない。これも訓練とリーダーシップを発揮する飯田の指揮の元よろよろと料理作りを開始した。

 

「焦凍―! こっち火ぃ頂戴!」

「分かった」

「業火君! 私たちの方にお願い」

「任せろ」

 

 炎を出せる事から轟兄弟たちは引っ張りだこだった。特に業火は大して疲労もしていないからと率先して料理を行って良き、あまりの手際の良さに何人かの女子が謎の敗北感を感じてしまう程だった。

 

「業火君料理できるんだね!」

「姉さんの手伝いをたまにしていたからな。手の込んだものはレシピを見ないと無理だがこれくらいなら楽勝さ」

「あ、難しい料理もレシピ見れば作れるんやね……」

「私たちより料理出来る……」

「なんだろう。この謎の敗北感……」

 

 何はともあれ完成したカレーライスは味としては微妙だがみんなで作り上げたという事で美味しく食べる事が出来たのだった。昼間の個性訓練で疲れた者達はがっつくように食べ、少しでも肉体を回復させようとしていた。

 

「……」

「……業火君?」

 

 ふと、葉隠は業火が頬杖を突きながらクラスメイト達の様子を見て微笑みを浮かべているのを見かけた。それは傍から見れば青春するクラスメイト達を見て笑っているように見える表情だったが葉隠には何処か嘲笑っているように見えてしまった。慌てて腕で目をぬぐってもう一度見ればその時にはカレーを食べている業火が映っており、葉隠は気のせいと思う事にして自らもカレーを食していくのだった。

 

 

 

 

 

 

「……カァいく無いです」

「我慢しなよ。一応裏の人間が作ったアイテムで性能はお墨付きなんでしょ?」

「そんなの関係ないです。カァいくないのが問題なのです」

「えぇ……」

 

 一方、林間合宿を行っているエリアから少し離れた場所にて闇の力が伸びつつあった。遥か先まで見渡す事の出来る崖の上で少女と少年らしき人物が話していた。その周りでは明らかに表では生きていないような風貌や圧力を放つ者達が立っていた。

 

「ハァイ。お待たせ」

「にく……にくぅ……」

「これで7人か」

 

 新たに二人、合流したことでリーダーらしき人物がぼそりと呟いた。それはこの場に集まった人間たちの事を指しており、周囲を見れば確かに7人が集まっていた。その中の一人、フードを被り、仮面をつけた大男が拳をぽきぽきと鳴らして低い声で言った。

 

「まだかよ。さっさと始めようぜ……」

「まだだ。全員集合するまで待て」

「クソが……! 待ってられねぇぜ!」

「黙ってろ、イカレ野郎」

 

 リーダー格の男の言葉に大男は不承不承と言った様子で待機する。とはいえ大男はそう不服そうにしつつも命令には従うのかそれ以上何かを言う事も行動することもなかった。この場に7人集まっているがいいかえれば彼にはまだ7人しか集まっていないのだ。人数が揃うまで、彼らは待つ事を選んでいた。

 

「数だけのチンピラをいくら寄せ集めたところで意味はない。やるならば少数精鋭。裏社会でも生き残って来た猛者たちを集めての奇襲だ」

 

 そこまで言うと男は遥か彼方に見える雄英生たちが宿泊する施設を目を細めながら凝視した。

 

「我らは開闢行動隊。その力を振うのは全員が揃ってからだ。だが、我らが揃った時、雄英はその地位を失楽させるだろうぜ。その時は思い知らせてやろう。お前らの平和が一体誰の手のひらの上に存在していたかを」

 

 そう言って男は嗤って待ち続ける。全員が揃い、自分達が動き出すその瞬間まで。

 

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