俺の個性はサイキョー   作:鈴木颯手

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第三十話

 林間学校3日目。個性引き延ばし訓練も2日目を迎えたことで少しは訓練に慣れてきた中で、死にそうな顔をしている者達がいた。

 

「「「「「……」」」」」

 

 青山、芦戸、麗日、上鳴、切島、瀬呂の赤点組である。彼ら彼女らは何と夜中の二時まで補習授業を行っていたのだ。昼間の訓練の疲れも取れないうちの勉学は心身ともに辛いものがあり、6人はまるで死んだような目で訓練に参加していたのだ。

 

「補習組! 手が止まっているぞ!」

「す、すみません」

「眠い……」

「まさか夜中の2時まで補習をやるなんて……」

「うぃ……」

「だから言っただろうが。キツイって。個性の強化だけじゃない。何より期末試験で露呈した立ち回りの脆弱さ。分かるだろ?」

「「「「「「うっ!!」」」」」」

 

 6人は相澤先生の言葉に一斉に胸を押さえた。全員が心当たりがありすぎる話だったからだ。

 

「何故お前らが他のクラスメイト達よりも疲れ果てているのか。その意味をしっかりと理解して訓練を行え!」

「「「「「はい……」」」」」

 

 そうは言われても大した睡眠時間を確保できていない彼らはその後も動きは鈍いままだった。他のメンバーも昨日に比べて明らかに精彩を欠いていた。あまりにもハード過ぎる訓練に心も体もついてこれてなかったのだ。

 そこで、予めて用意されていたイベントを行う事になった。

 

「みんな! 今日の晩はクラス対抗肝試しを決行するよ!」

「肝試し!?」

「しっかりと訓練した後にはしっかりと楽しいことがある! それ、飴と鞭!」

 

 ピクシーボブの言葉に誰もが、「ああ、そう言えばそんなものもありましたね」と言った表情を見せる。喜ぶ気力も残っていない彼らにはそれ以上の反応をする事が出来なかったのだ。

 それでも夜には楽しいことがあると分かった事で以後の訓練は多少なりとも頑張って乗り切る事が出来たのだった。

 

 

 

 

「爆豪君、包丁使うのうま! 意外やわぁ」

「うっせぇ!! 何が意外だ! 包丁さばきに美味いも下手もねぇだろうが!!!」

「でた、才能マン」

「というかよく叫ぶ元気あんな……」

 

 夜、昨日に比べれば手際よく夕食の準備が進められていく中、爆豪が意外な才能を見せたり、体力に余裕のある業火が昨日以上に手際よく料理を進めていき再び女子の心にクリーンヒットをしたり、洸汰の事で緑谷が気にかけていたりとちょっとしたことが起きた中、ついに肝試しの時間がやってきた。

 

「さて! お腹も膨れて後片付けも終わった! なら、次にやる事は……!」

「「「「「肝試しー!!」」」」」

「待ってました!」

 

 ピクシーボブの言葉に芦戸を中心に補習組が叫ぶ。この時を楽しみにしていたと昼間の疲れも忘れてはしゃぐがそんな彼らに相澤先生が残酷な一言を告げる。

 

「その前に、補習組はこのまま勉強だ」

「……うっそォォォォっ!!!???」

「昼間の訓練が思ったよりも疎かになっていたからな。その分こっちを削る事にした」

 

 相澤先生がそう告げると同時に芦戸達が逃げられないように捕縛布で拘束する。楽しみにしていた行事を目の前で取り上げられた6人は捕縛布で拘束されている事も相まって捕まった囚人のようであった。実際、彼女たちの気分は囚人と同等だろう。

 そんな囚人の如き補習組を残りのメンバーは沈痛な面持ちで見送った。楽しみにしていたことを取り上げられる辛さは彼らにも理解できるからだ。だからと言って変わってやりたいとは思わなかったが。彼らとて辛い事だけの林間合宿など送りたくないからだ。

 

「気を取り直して! 先にB組が脅かす側ね! 二人一組で3分おきに出発。中間地点に名前が書かれたお札を用意したからそこに行って取って戻ってくる事! B組は接触禁止だけど個性を使って脅かしてくるよ!」

「そしてより多く失禁させたクラスの勝利である」

「止めてください汚いです」

 

 ピクシーボブの説明の最後に虎が言った言葉に耳郎は嫌そうに突っ込みを入れた。男子はともかく女子はキツイものがあるだろう。B組が先行して準備をする中A組はピクシーボブの用意したくじを引いてチームを決める事となった。

 チームは以下のとおりである。

 

1組目 障子・常闇

2組目 爆豪・焦凍

3組目 耳郎・口田

4組目 八百万・蛙吹

5組目 葉隠・業火

6組目 尾白・峰田

7組目 飯田・緑谷

 

「わぁ! やったね! 業火君!」

「おう、よろしくな」

 

 狙ったのか、そうではないのか。葉隠と業火はペアとなっていた。女子とペアになれなかったことで峰田が血涙を流していたり爆豪が焦凍と同じペアになるのを嫌がったりしたりしたが結局そのままのペアで肝試しがスタートすることになった。

 12分の間にいくつもの悲鳴が上がっており、葉隠は少し怯えているが業火は堂々としていた。

 

「うぅ……。業火君は平気?」

「ん? まぁこういうのは昔から怖くはないな。むしろびっくりさせられた時に思わず手が出て殴り飛ばす危険性の方が怖いな」

「えぇ……」

 

 確かに業火君ならあり得るかも……、と思いつつ葉隠は業火の腕にしがみつく。透明化されているとはいえ服の上からでも十二分に感じる胸の柔らかさに業火はびくりと身体を震わせた。肝試しよりも無自覚な葉隠の方が恐ろしいと感じていた。

 

『皆!』

 

 その時だった。突如として二人の脳内にマンダレイの声が響いた。彼女の個性【テレパス】による一方的な送信だった。突然の事に驚く葉隠だが業火は冷静にマンダレイの話に耳を傾ける。

 

『ヴィラン2名襲来! 他にも複数いる可能性あり! 動ける者は直ちに施設へ! 会敵しても決して応戦せずに撤退を!』

「これって……!」

「逃げるぞ、透」

 

 葉隠が困惑している中、業火は既に動いていた。彼女の手を取り、来た道を戻る。本来ならば宿舎に直接戻った方が良いのかもしれないが森の中にヴィランが潜んでいるかもしれない為に安全策を取って道を戻ろうとしたのだ。

 

「業火君?」

「USJの時と同じって事だ。急いで相澤先生がいる施設に……!?」

 

 その瞬間、業火は何かに気づいたように葉隠を突き飛ばした。瞬間、葉隠がいた処を管のようなものが通過する。飛んで来た方に目を向ければ森の中から一人の少女が姿を見せてきたのだ。

 

「ヴィラン……か?」

「外れちゃった……。失敗したのです」

 

 少女、トガヒミコはちっとも残念とは思っていなさそうな声色で呟いた。業火は葉隠の前に出つつ冷静に彼女をうかがう。装備品や武器、どんな個性を使ってくるかまでを冷静に予測する。

 

「あなた、雄英体育祭に出てた轟業火君ですね? 後ろのは彼女の葉隠透ちゃん」

「そりゃ知られているか。にしても驚きだよ。同級生くらいに見えるお前がヴィランなんてな」

「事情があるのです。別に話したいとは思いませんが」

 

 トガヒミコはそう言うと冷たい瞳で業火を見据える。右手には逆手に持ったナイフと左手には肩に装着した注射器のようなサポートアイテムを持ち、一気に接近する。

 闇の中で生きてきた彼女は気配を消すことに長けている。目の前にいるはずなのに一瞬視線を逸らしただけで見失わせるテクニックを持つ彼女はそれを十分に生かして業火に接近する。

 

「っ!!??」

「私、貴方のような人を見ていると心が痛くなるのです。個性で苦労していなさそうな貴方がすごく妬ましい」

 

 ナイフや針が業火の頬を掠めていく。業火は気配をうまく感じ取れないトガヒミコに苦戦しつつ葉隠に攻撃がいかないように必死に避けて防御をする。

 

「私の任務は複数人の血を採取しないといけないのですがあなたのはいらないので死んでください」

「そう言われて死ぬ奴なんていねぇよ!」

「きゃっ!」

 

 一瞬の隙をついてトガヒミコの腹部に蹴りを入れる。軽く吹き飛ばされ距離を取ったところで業火は警棒を二つ作ると一つを葉隠に渡した。

 

「透! これをもって今すぐ逃げろ!」

「業火君、でも……!」

「正直透を守りながら逃げられるような相手じゃない! 早く!」

 

 緊急時という事で焦っているのだろう。業火の表情に余裕はなかった。それでも、葉隠を守りたいという気持ちだけは伝わってくる。葉隠は渡された警棒をぎゅっと握りしめる。

 現状において二人の間に実力が大きくある。故に業火が仕留め切れない相手なら自分がいたところで足手まといになるだろう。それが分かった葉隠は覚悟を決めていった。

 

「必ず、生きて戻ってきて!」

「当り前だろ」

 

 業火はそう言ってにこりと笑みを浮かべる。純粋な、幼子のような笑みを見て葉隠は彼に背を向けて走り出した。彼が助かると信じて。

 

「……まさか見逃してくれるなんてな」

「私、あなたを確実に殺したいと思ったので」

 

 葉隠を見送った業火は目の前で立っているトガヒミコに向き直った。互いの瞳には冷たい感情だけが交差し、夏だというのに周囲の気温を低下させる。

 

『A組B組総員! プロヒーロー、イレイザーヘッドの名において戦闘を許可する! 繰り返す! A組B組総員! 戦闘を許可する!』

 

 そして、丁度良くマンダレイから戦闘許可の指示が飛んだ。それはまさにナイスなタイミングであり、まるで後押しされたように感じた業火は思わず笑ってしまう。

 

「……クハっ!」

「何が可笑しいです?」

「いや、別に。まるで後押しされているみたいだからな」

「何を言って……」

 

 トガヒミコは業火を見て固まった。それはヒーローがしていい表情をしていなかったからだ。

 

 

 

「俺を殺そうとしたんだ。当然、殺される覚悟もしてるよな?」

 

 

 

 瞬間、()()()がトガヒミコを包み込んだ。

 




トガヒミコが業火を嫌いな理由は普通を押し付けてくる側の人間に見えたからです。加えて雄英体育祭では終始余裕をもっていたので全てを持っていて自分とは違うと思ってしまったからです。
よって彼女がヴィラン連合に入った理由は業火を殺す為です。トガヒミコと違うじゃんと思う方もいると思いますがこの作品ではこんな感じだと思ってください
因みにスピナーはステインがいない関係で不参加です。代わりにもう一体脳無が参加していると思ってください。他は原作通りです。
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