俺の個性はサイキョー   作:鈴木颯手

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第四話

 オールマイトはモニター越しに繰り広げられる戦闘に目を疑った。何しろ人数で不利なはずなのにその少年、轟業火は圧倒しているのだから。

 教師になるうえで業火の危険性を知らされており、多少は警戒していたとはいえ本人は特に凶暴性を見せる事はなく、むしろ爆豪勝己の方が危ないとさえ感じる程だった。

 

「(とはいえ本来は屋内訓練。屋外はルール違反なんだけどなぁ……)」

 

 オールマイトはそう思いつつも追い込まれたヴィランがアジトから出て外で戦う事もよくある事として見逃していた。それに何より、双子たちが苛烈さを増している為に止めてもいう事を聞いてくれなさそうだと感じていたからだ。

 

『アハハ! どうした! 焦凍、お前の氷はその程度かよ!』

『黙れ!』

『轟! くっ!』

 

 それはまさに兄弟喧嘩そのもので巻き込まれる障子は不憫とさえ感じるものだった。しかし、それでも訓練を忘れていないあたり実力は確かだと感じさせた。

 

「……ここまでかな」

 

 しかし、今回ばかりは相手が悪かったとしか言いようがない。最初に焦凍が業火の蹴りを喰らって気絶。1対1になった障子では業火を止められずに倒されてヴィランチームの勝利で終わった。

 

「すげぇ……。あいつら、やべぇだろ」

「焦凍の方もあの氷やべぇし業火もすげぇ火力。流石はエンデヴァーの息子……」

「というか屋内訓練なのに屋外で戦って良かったのか?」

「オールマイト先生が何も言っていないから良いんじゃないか?」

「葉隠さんへのあの気遣い。イケメンだ……」

 

 試合が終わった事でクラスメイト達が各々感想を言い合っている中、一人だけわなわなと震えて固まっている生徒がいた。爆豪勝己だ。緑谷出久との戦闘で茫然自失となっていた彼は自分よりも明確な強者と言える奴等がいる事に何も言えなくなっていたのだ。

 これまで、彼は常にトップであり、その地位を脅かす存在はいなかったのだ。しかし、ここでは違う。ここでは自分を脅かす存在はたくさんいるのだと痛感させられていたのだ。

 

「……クソが!」

 

 爆豪はそう吐き捨てる事しか出来なかった。

 その後も試合は続いたが1試合目、2試合目のような派手な展開はなく終わり、結果的に怪我をしたのは緑谷出久と轟焦凍だけだった。焦凍に関しても腕の火傷だけで保険医をしているリカバリーガールの個性で完治したために重傷だったのは出久だけだった。

 最初のヒーロー基礎学はこうして終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 ヒーロー基礎学というヒーロー科らしい授業を終えた翌日。俺は懸念していた事態に巻き込まれていた。

 

「うわぁ……。凄い人だかり」

「マスゴミめ……」

 

 そう、報道の自由の名のもとに周囲への迷惑を顧みないクソども。マスゴミだ。オールマイトが教師になった事で雄英高校の生徒相手に片っ端から取材をしている。おかげで校門前は人だかりができている。

 透と偶然会った俺はどうやって入るか悩んでいたが意を決して突っ込むことにした。

 

「あ! 君! オールマイトについてどう思うか答え……」

「邪魔」

 

 取材しようとしてきた人を押しのける。マスゴミに気を遣う必要も無いだろう。ヒーローらしからぬ行動? 知るか。

 

「業火君!? さすがに手を出すのは不味いよ!?」

「邪魔するこいつらが悪いんだよ。ほら透、行こうぜ」

 

 俺は透の手を握りマスゴミたちを押しのけながら学校の中へと入っていった。ちなみに、透の手は透明化のせいで数回空ぶった事だけは言っておく。それと意外と柔らかくて暖かった。

 

「……」

 

 途中から透の手が更に熱くなったが気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 ホームルームでは学級委員長を決める話が持ち上がった。普通ならば誰もやりたがらない役職だがヒーロー科では人気の役職だ。無論俺は興味ないので誰かに押し付けるつもりだ。

 

「待ちたまえ! ここは投票で決めようではないか!」

 

 誰もが自分がやりたいと言っている中で飯田君が手を上げながらそんなことを言ってくる。自分のやりたいのに投票で決めるなんて言うなんてまじめだなぁと思いつつ俺は透に入れておく。透もやりたいと言っていたし大抵が自分に入れるだろうからこれでいけるだろ、と思っていたのだが……。

 

「緑谷が3票。八百万が2票。これで決まりだな」

「ぼぼぼぼぼぼぼ僕!!???」

 

 なんとナード君改め緑谷が委員長になっていた。どうやら3票も入ったらしい。なら透は? と思っていたら透には1票しか入っていなくて代わりに俺が1票入っていた。どうやらお互いに票を入れてしまったらしい。透の方を見ればこちらを向いているのがなんとなく分かる。流石に表情までは分からなかったがな。

 しかし緑谷に3票か。意外だな。見た感じ票が入っていないのは焦凍と飯田君と無重力の女生徒か。飯田君、もしかしてあんなに委員長やりたかったのに他人に票入れたの? 真面目かよ。それと緑谷ガクブルしているけどあれで委員長出来るのか? 飯田君の方が適性は高そうだが。

 

「何でデクに!? 誰だ入れたのは!?」

「まあ、お前に入れるよりは分かるけどよ」

「だな」

 

 その一方で爆豪勝己が何やら叫んでいるがまぁ実力はともかく性格が終わっているあいつに好き好んで入れる奴はいないわな。入れるとしたらそいつは脅迫されているに違いない。

 そうして若干名が反対だと叫んでいる中委員長副委員長は決定して普通の授業が開始された。ちなみに爆豪勝己は午前中ずっと不機嫌だったとだけ言っておく。

 

「いやぁ、まさか透と入れ違いの票になるとはな」

「ねー。私もびっくりしちゃった」

 

 食堂にて俺は透と切島、上鳴と一緒に食事をとっていた。ちなみに今日の俺はカレーうどんだ。辛さはピリ辛のな。

 

「あれ? お前らお互いに票入れたのか」

「仲良しかよ」

「俺は委員長に興味ないからな。やりたい奴に入れただけだ」

「私は業火君なら似合うかなーって思って」

「やっぱ仲良し……」

 

 とはいえ結果的に俺はやらずに済んだわけだし別にどうでもいいがな。面倒ごとは他人に任せるのが一番だ。

 

「そう言えばお前ら双子って仲はよくないのな」

「それな。お前らが話してるところ見たことないぞ」

「私も思った。喧嘩中?」

 

 そんな風に思っていたら焦凍との話題になった。まぁ、確かにはた目から見ても仲は良くないって丸わかりだよな。俺が話しかけてもにらむだけでまともに会話しないしな。昨日の試合でもこちらを睨んでいたし。

 

「まぁ、色々あってな。あっちが俺を嫌っているんだ。それ以外は特に問題ないから焦凍も仲良くしてやってくれよ」

「お兄ちゃんしてるなー」

「私は大賛成! イケメンだし」

「それ関係あるか?」

 

 焦凍もいい加減大人になって欲しいものだな。人様に迷惑をかけるなんていけないんだぞ。せめて他人に心配されない程度に俺を嫌えばいいのに。ま、そんな器用な事が出来るならこんな関係にはなっていないな。

 

 ……と、その時だった。突如として警報が鳴り響き出したのだ。

 

【セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に退避してください】

「な、なんだ!?」

「セキュリティ3!? 何ごと!?」

「わわっ!?」

 

 セキュリティ3……。何かしらの警備が突破されたと? そう思っていたら出口に生徒が殺到してパニックになってしまった。俺は隣に座っていた透を引き寄せてその場から動かなかったから無事だがさっさと避難した切島と上鳴が人の波に飲み込まれてしまった。

 

「大丈夫か?」

「う、うん。ありがと……。でも避難しなくていいの?」

「あれじゃ避難のしようがないだろ。落ち着くまでここで待機していた方が良い」

 

 迅速な避難のせいで逆にパニックになっている。迅速な対応というのも考え物だな。

 

「皆さん! だいじょーぶ!! ただのマスコミです! 何もパニックになる事はありません! だいじょーぶ!!」

 

「飯田君? 非常口に……」

「なんだあれ……」

 

 そう思っていたら何やら飯田君が非常口のポーズで叫んでいる。どうやらマスゴミの侵入らしいがそれよりもなんだあのポーズ。非常口じゃん。ウケる。

 とはいえ飯田君のおかげでパニックは無事に収まった。そして午後、緑谷は委員長を辞退して変わりに飯田君が推薦された。まぁ、あの行動を見れば誰もが納得するがその際に非常口飯田とからかわれていたな。ちょっと八百万百がやるせない顔をしていたが。

 何はともあれ無事に委員長決めとマスゴミ侵入は片付いたとみて良いだろうな。

 

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