俺の個性はサイキョー   作:鈴木颯手

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第六話

 火災ゾーンを出た俺は情報を得るために噴水の所へと向かう。本当だったら近場のゾーンに向かうべきなのかもしれないがそこにいるとは限らない為確実に敵と相澤先生がいるだろう噴水へと向かった方が良い。少なくとも敵の中枢はそこにいるはずだからだ。

 

「っ!」

 

 いた。相澤先生はまだ戦っている。息は上がっているようだが少なくとも健在だ。ヴィランは……最初の時から見て凡そ半分以下か。流石はプロヒーローだな。このくらいはなんともないか。

 入り口付近は……、あれはなんだ? 靄があるからさっきの奴がまだいるのは分かる。そして、吸い込まれているのか? 13号先生か。最低でも13号先生は入り口にいるって事だな。

 

「なら、俺のするべきことは……」

 

 相澤先生の邪魔にならないように気配を消して動向をうかがう事。俺が援護に出れば相澤先生の意識は確実にこちらに向く。そうなれば致命的な隙を作ってしまう。援護するならば相澤先生が戦えなくなった時だ。逃げるなり戦うなり、全てはそこからだな。

 

「……!」

 

 そう思っていればついに敵が動いた。恐らく親玉らしい全身に手を付けたやつが相澤先生に吶喊する。相澤先生はそれに対してカウンターで肘内を決めるが防がれて失敗した。

 

「かっこいいなぁ、イレイザーヘッド……!」

「ぐっ!!」

 

 相澤先生が苦悶の声を上げた。見れば敵の手に防がれている肘が崩れている。敵の個性らしい。相澤先生の“抹消”の個性は相手を見ていないと発動しない。ゴーグルのせいで分かりづらいがどうやら瞬きした瞬間に個性が発動し、肘をやられたようだ。利き腕を失った事は痛手だがそれでも残るヴィランを片付けて残りは親玉と最後まで残っていた巨漢の男だけになった。

 

「ところでヒーロー。本命は俺じゃないぜ?」

「っ!?」

 

 ここまでだな。気付けば相澤先生の後方に移動していた巨漢の男に俺は足裏から出した炎で一気に接近して蹴りを食らわせる。

 

「業火!?」

「援護しますよ。相澤先生!」

 

 ……蹴りをくらわして昏倒させるつもりだったんだけどなぁ。効いてないな。頭に直撃させたはずだぞ? 巨漢の男が俺に手を伸ばしてくるがそれを俺は間一髪のところで後方に飛びのく事で回避し、ついでに相澤先生を抱えて退避する。

 

「大丈夫ですか?」

「お前……何故」

「そりゃその肘を見せられて隠れていられるような人ではないので」

「おいおい。ヒーローの卵が何でこんなところにいるんだよ。他の奴らはどうしたんだよ」

 

 手だらけの男が聞いてくる。ま、そりゃ生徒用にと大量に配置していたはずなのにこうして戻ってきていると知ればそうなるわな。

 

「何を言っているんだ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()? だからこうして早く駆け付けたんだろうが」

「……業火、お前……」

「相澤先生はその腕を何とかしておいてください。俺がやりますので」

「ま、待て……!」

 

 相澤先生が止めてくるがそれを無視して巨漢の男に接近する。巨漢の男は俺へと手を伸ばしてくるがその動きは隙だらけなのに早い。見た目通り力も強そうだ。つまり掴まれたらアウト。重傷は覚悟しないといけない。

 俺は伸ばされた手をするりと避けると懐に向けて炎で包んだパンチを繰り出す。

 

「赫灼熱拳・ジェットバーン!!」

 

 父さんの技を叩きこむ。父さんにとっては使い慣れた必殺技だが俺は初めて使用した。なんとなくで出来たがそれなりに使い勝手が良さそうだ。さて、ダメージは……。

 

「―――――――っ!!!」

「効いてないか……」

 

 俺を抱きしめる形で拘束しようとする巨漢の男を躱す。二回の攻撃でなんとなくだが相手の個性が分かった。ショック吸収辺りだろう。腹には火傷の後が残っているがこの調子だと痛みも感じていなさそうだ。

 

「どうした? 威勢がいいわりにダメージを与えられていないみたいだな。……まぁ、それも仕方ないな。そいつは脳無。ショック吸収の個性を持った奴だからな」

「脳無、ね。良いことを聞いたよ!」

 

 まさか相手から言ってくれるとは思わなかった。ダメージを与えるのが無理ならば拘束する。

 

「赫灼熱拳・ヘルスパイダー!」

 

 指先から炎の斬撃を飛ばす技だが俺の炎はひと味違う。巻き付くように脳無に絡みつけてそのまま拘束する。ジュッ、と肉が焼ける音がするが相手は唸り声を上げるだけで悲鳴さえ上げない。

 

「ちっ。脳無。さっさと拘束を解け」

 

 手だらけの男の言葉に脳無が引きちぎろうとするがビクともしないようでただただ肉が焼ける音だけが響く。それを見た俺はにやりと笑みを浮かべた。

 

「無駄だよ。俺の炎は()()()()()()()()()()()()。弾力がありながら丈夫な炎の縄だ。その程度じゃ引きちぎるのは無理だ」

「なら……!」

 

 手だらけの男がこちらに来るがその程度、問題ないよ! 相澤先生が手だらけの男に対して抹消を発動したのを確認し、一撃で仕留めに掛かる。腕は拘束の為に使用できない。だから蹴りを叩きこむ。炎の噴射で加速した蹴りの一撃を手だらけの男の腹部にめり込ませる。

 

「ごはっ!!」

「まだだ!」

 

 足裏からの炎を調整して方向転換し、かかと落としの体制へと身体を無理やり動かして頭部へと蹴りを叩きこむ。地面に罅が入り衝撃波が周囲に広がった。

 

「……」

「終わりだな」

「死柄木弔!!!」

 

 そこへ一歩遅く俺たちを散り散りにした靄が戻ってきた。俺を靄に包もうと伸ばしてくるのをバックステップで避けるが死柄木弔と呼ばれた手だらけの男と更にいつの間にか拘束していた脳無を回収された。

 

「死柄木が倒れた以上ここまでのようですね。……雄英高校の皆さん。いずれまた……」

 

 そう言うと靄の男は消えていった。どうやら、逃げられたらしい。

 

 ……少しだけ、楽しめたし今はこれだけで満足しておこうか。

 

 

 

 その後、事態を聞きつけたらしいオールマイトや更に遅れて他の教師が駆け付けた事でこの襲撃事件は幕を閉じた。幸いにもけが人は相澤先生と13号先生、それと緑谷だけだった。相澤先生は肘を、13号先生は靄を吸おうとして自分の背中を吸って一番重傷。緑谷は左の親指と中指を粉砕したらしい。

 結局、主犯格は逃したがそれ以外のヴィランは全員捕らえられた。その数は数十人にも及んだそうだが話によると火災ゾーンには()()()()()姿()()()()()()()()()。不思議な事もあるもんだね。警察の人から説明を受けた俺はそう感じていたのだった。

 

 

 

 

 

「……火災ゾーンに、確かにヴィランの姿はなかった」

 

 全てが片付いた後、雄英高校の好調である根津は教師を引き連れてUSJを訪れていた。彼は後ろ手に手を組みながら神妙な面持ちで話始めた。

 

「だけど、火災ゾーンにはなかった()()()()()()()()()()()()()()()。残念ながら監視カメラはあそこにはないしあったとしても事件のせいで録画は出来ていない。断定は無理だろうね」

「……校長は、彼が人を殺したと思っていますか?」

 

 そう尋ねたのは教師であるミッドナイトだった。彼女は普段の様子からは想像も出来ない程悲し気な表情をしていた。まるで、嘘であって欲しいと願っているように。しかし、根津の答えは彼女の願いとは真逆のものだった。

 

「十中八九、そうだろうねぇ。だけど、追及は難しい。燃えカスだけじゃ断定はできないし例え調べられたとしてもヴィランに襲われるという非常事態に気が動転していたと言われてしまえばそれまでだからね。不手際はこちらにあるから余計にね」

 

 この件を大事にする事はする気はない以前に出来るわけがなかったのだ。例え彼らの予想通りだったとしてもそれ以上に雄英高校の不手際を攻められるだけだ。彼の非情な行いを世間が咎める事はないだろう。

 

「だけど野放しにするわけにはいかない。生徒が間違った道に進もうとしているのならばそれを止めて正しい道へと導くのも教師の役目。ましてや彼もまたヒーローの卵なのだから」

「……そう、ですね。分かりました」

「それよりもまずはヴィラン連合だ。新たな巨悪が動き出した以上僕たちも黙ってみているわけにはいかないからね」

 

 根津はヴィラン連合という新たな脅威への対策を進めていく事になる。

 そして、その一方で彼、轟業火が火災ゾーンにいただろうヴィランを一人残らず焼き殺した件は秘匿されつつ彼の様子をさりげなく様子見していく事が決定されるのだった。

 




オリ主はあえて父親の技を使用しています。しかしそれは本人の技ではない為に必殺技と呼べるような物ではありません。簡単に言ってしまえばこれを使用している時は舐めプをしているという事です。
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