俺の個性はサイキョー   作:鈴木颯手

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第九話

 何やら他クラスの連中が敵情視察に来ていたが興味はないので無視していたらあっという間に雄英体育祭当日を迎えた。

 この日までに俺は透を中心に訓練漬けの日々を送っていた。とはいっても基本的に教える側に いたけどな。さすがに現時点で透と俺とでは明確な差が存在するからな。一緒に鍛錬をするのではなく、透のレベルアップをしたほうがいいと判断したのだ。

 鍛錬内容は基本的に格闘術だ。素人でも覚えやすく確かなダメージを与えられるやつを教えてみた。透は下手に何かするよりその透明を利用して相手が気づかぬうちに至近距離でラッシュを決めるのが一番効果的だと判断したからだ。

 ではそれ以外はどうするのかと言われれば簡単だ。俺がサポートする。約束した以上透を体育祭一目立つ存在にしてやるさ。たとえそれが本人が思っていたようなものではなかったとしてもな。

 

 そういうわけで実に有意義な日々だった。透も少しがたいがよくなったように感じるし、一撃一撃重いものを叩き込んでくるようになった。訓練の成果はあっただろうな。

 

「ジャージか……コスチュームが着れればよかったんだけどなぁ」

「ほんとほんと」

「公平性を保つためだからね。仕方ないさ」

 

 俺と……酸の女子の言葉にしっぽの人が答える。確か何とか白くんだったかな。いまいち普通の人という印象が抜けない人だ。

 

「みんな! 準備はできているか! まもなく入場だ!」

 

 そこへ委員長の飯田が声をかけてきた。どうやらようやくこの時が来たみたいだな。ようやくといった感じでクラスの雰囲気が引き締まる中、一人動いた者がいた。

 

「緑谷」

 

 焦凍が緑谷に声をかけたのだ。クラス中の視線が二人に向かう。俺としても二人がここで話すのは珍しいと思う。何しろ見た感じ接点がないからだ。まだ飯田君や無重力の女生徒のほうが関わり合いがあるだろう。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

「え? ……うん」

 

 うは、すごいこと言っているな。いじめか? 焦凍も言うようになったじゃないか。ほら、緑谷が委縮しちゃっているぞ。

 

「……けど、お前。オールマイトに目ぇかけられてるよな」

 

 へえ? そうなんだ。興味なかったから全然知らなかったな。やっぱ個性の関係でかわいがられているのか? それとも馬鹿な子ほどかわいいっていうあれかな?

 

「別にそれに関しては詮索する気はない。だけど」

 

 

「お前には勝つ」

 

 

 ……くは。ほんと、焦凍は面白いことをする。馬鹿な長男とも逃げた次男とも違う。できると本気で思いこんだ愚者だ。今の状態で勝てると本気で思ってるんだから。

 

「それと、兄貴。おまえにも負ける気はない。右の力だけで勝ってやる」

 

 そう思っていたら俺にまで飛び火してしまったな。別にいいけどさ。俺はにやりと笑みを浮かべてやれば嫌悪感を隠さずにこちらをにらみつけてくる。お兄ちゃん悲しくなっちゃうな。

 

「……遅れを取るわけにはいかないんだ」

 

 あ、緑谷何か言ってたのね。興味なくて聞いてなかったわ。めんご。今のお前でどこまでできるかわからないけど予選だけでも通過できるように頑張るといいよ。俺は透だけひいきするから応援なんてしないけどね。

 

 さて、焦凍の覚悟だけは乗った宣戦布告も終わったし会場へと入場するとしますかね。

 

 

 

 

 

 俺の双子の兄は人ではない。見た目は普通の人だがそういうことではない。あいつは、親父以上にクソだ。

 

『しょーと! いくぞー!』

『うん!』

 

 小さい頃は普通の家庭だった。双子の兄とも仲良くやっていたし、ほかの兄さん姉さんとも家族らしいことができていた。

 だけど、親父が俺に虐待とさえ思える訓練を施すようになってからすべてが変わった。俺はほかの兄弟たちと隔離されるようにして過ごし、遊ぶ時間なんてなくなった。毎日毎日血反吐を吐きながら親父のいう訓練を行う日々。あれだけのことをされてよく壊れなかったと思う。

 

『父さん? しょうとはなにをしているの?』

『……業火。お前にもこれからは鍛錬をしてもらう。俺は焦凍の相手で手一杯だ。俺の事務所のサイドキックから学べ』

 

 そして、親父は兄貴に対しても訓練を課すようになった。それが一体どんなものだったのかは分からない。もしかしたら俺よりも優しいものだったかもしれないし、厳しいものだったかもしれない。誰もその時の事を語らないし、俺も知りたいと思わなかったから不明のままだ。

 だけど、それから全てが狂っていった。兄貴は、家族に対して冷たくなった。いや、冷たくなったんじゃない。他人の家族を見ているような視線を送るようになったんだ。当事者のくせに周囲で見守る他人のような感覚でいるあいつに俺は次第に苛立ちを感じていた。

 

『にいさん! なんで……!』

『……しょうと。

 

がんばろうぜ! このくらいらくちんなんだからさ!』

 

 それから、俺は兄貴と話すことをやめた。そして、決定的だったのが母が俺に火傷を負わせたことだ。あの時の母は限界を迎えていた。だから火傷を負った俺が母さんに対して何かを思う事はない。むしろおやじへの憎悪を高ぶらせる事になった。

 だけど、あいつは、壊れた母さんにこういったんだ。

 

『……ダサ』

 

 そういったあいつは嗤っていた。嘲笑していた。家族に、母親に向けて言い表情じゃなかった。

 

『個性婚っていうらしいな。俺らの家庭は。つまり愛ある家庭ではないんだ。なのに無駄に張り切っちゃってさ。馬鹿らしい。イカレ野郎どもの仲間入りを果たしたのも当然の結果だな』

『知ってるか? こいつの火傷跡、母親に熱湯をかけられたせいなんだぜ? ……ああ、違うさ。母親は精神異常者でな。焦凍を化け物とでも思ったんだろうな。個性を見た瞬間に熱湯を浴びせたんだ。今は入院中だよ。当然の報いだよ』

『……クラスメイトに何であんな事を言ったのかって? 事実だろ? 俺は事実しか言っていないぜ? お前を気になるっていう女子生徒がどうしてもっていうから教えてあげただけさ』

『母のお見舞い? いや行かないよ。焦凍にあんな怪我を負わせるようなヤバい人に会ったら双子の俺も何をされるか分かったもんじゃないからね。……え? 姉さんは行くの? ……止めはしないけど命は大事にね? それと何かあればお医者さんを呼ぶんだよ? 気を付けてね』

 

 

 

『……焦凍。いい加減意地張ってないで仲良くしようぜ? 双子なんだからさ』

 

 

 

 ああ、本当に、胸糞わりぃ……。

 




オリ主は焦凍の回想通り家族に対しては冷たい対応をします。それが本人の素ですが外では猫を被っています。中学生時代はあまり意味ありませんでしたが受験から入学までの間に大分矯正して普通っぽくふるまっています。
特に長男と次男は嫌っていると言えるレベルで冷たいです。何しろ父さん姉さん、焦凍と呼ぶのに二人は長男と次男ですので。
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