追いついたら加筆修正したものを出すと思います
10月中旬の休日、今日は愛里とデートの日である。
先日の体育祭で、それぞれ入賞出来たら相手にご褒美をあげる、という約束をした。
結果、お互いに入賞出来たのでオレは愛里とデートを望んだのだ。
寮の前で読書をしながら愛里を待っていたオレは改めて今日の装いを確認する。
今日のオレは下から、黒のコンバットブーツ、黒のカーゴパンツ、白の長袖シャツ、黒のネクタイ、薄手の黒いモッズコートだ。
『アイツ』の配下になってから愛用した軍服がモデルの為、オレにとってはとても馴染み深い。
「清隆くん、お待たせ~」
待ち合わせ時間の5分前に愛里がやってきた。
声がする方に目を向けるとそこにいるのは愛里ではなかった。
そう言うと語弊がありそうだが、今日の愛里は見慣れた佐倉愛里でも、雫としての愛里でもなかった。
白のワンピースに淡いピンクのカーディガン、白の靴とショルダーバッグ。髪型はハーフアップ。眼鏡は掛けてない。
白が大部分を占めるのでカーディガンと髪色のピンクが映える印象だ。
「清隆くん、今日の私はどうかな?」
愛里がやや緊張した様子で聞いてくる。
「まず目につくのはハーフアップだな。普段の愛里はハーフアップをやらないからとても新鮮だ」
一番の違いはやはり髪型だ。眼鏡の有無もあるが普段とは違う髪型だと印象が大きく変わって見える。
「服装に関しては、これが初めてのデートだからかとても可愛い。すごく魅力的だ」
「あ、ありがとう」
顔を赤らめながらお礼を言う愛里を、これはこれで可愛いなと思う。
「纏めると、今の愛里はもの凄く可愛いから独占したい。どこにも行かないでお部屋デートしてもいいのではと思っている」
「…………」
愛里の脳がパンクしたようで、顔が真っ赤になり硬直している。
どうやら愛里には刺激が強すぎたみたいだな。
『アイツ』は「女性を綺麗と思ったり、可愛いと思ったらちゃんと伝えるんだぞ」と言っていたからその通りに実行したんだが。
10分程経ち愛里が回復したのでデートを再開、いや、この場合は開始だろうか?
ともかくオレと愛里のデートがスタートした。
*
今日予定としてはまず、ラウンドワンで遊ぶ。
スポッチャで受け付けをした後、オレはコートをロッカーに閉まった。
最初はフットサルコートで遊んだ。2人なのでできるのはパスを出し合うくらいだったがオレは十分楽しめた。
偶に離れて強めのパスを出したり、愛里が蹴ったボールがオレの位置から大きく離れたところに向かったりすることがあったが愛里も楽しんでいたと思う。
次はマルチコートで遊んだ。ここではバドミントンをした。
ラリーを続けること目的にして打ち合いオレ達は楽しんだ。打ち合っている最中、愛里の笑顔が眩しく感じたので写真に撮れなかったのが悔やまれる。
なお、逆手でラケットを持って打ってみたが、最初はその感覚に慣れず手こずった。幾度か打てば慣れたがこういうのも面白いなと感じた。
バスケのコートがあったのでやりたい気持ちがあったが、愛里のワンピースの丈が長かったのもあり、次の機会があればやろうと思い一度休憩した。
その後は卓球やミニボウリング、エアポリン等で遊び、楽しい時間は過ぎていった。
*
昼食はお好み焼きを食べた。
お好み焼きを二つ頼み、一枚目はオレが焼いた。出来上がったものを四等分にして半分を愛里の方へ寄せる。
一切れを先を食べ終えたオレは、愛里が食べ終えるのを待ち、食べ終わったら愛里の隣の席に移動する。
「えっと、清隆くん?どうしたの?」
オレは愛里の側に残っている一切れを更に四等分し、その内の一つを愛里の口の方へ持っていく。
言わなくてもわかると思うが「あーん」である。
「愛里、あーん」
戸惑いはしたが、オレの「あーん」をややぎこちないながらも美味しそう食べる愛里を見て、何かが満たされる感じがした。
愛里が二切れ目を食べ終えたのを見て一声かける。
「あーんは初めてやったが美味しかったか?」
「う、うん。ちょっとドキドキしたけど美味しかったよ」
嬉しさと緊張が混じりながらも美味しかったと伝える愛里。
そんな愛里の頭をオレは無意識の内に撫でていた。
「清隆くん?」
「!すまない。そうか。美味しかったか。……愛里の美味しそうに食べる姿が可愛くて、オレは幸せな気分になった」
「えっと、ありがとう?」
「ああ…」
「清隆くん。清隆くんの方に一切れ残っているから、今度は私があーんをしていい?」
「是非お願いしたい」
お返しに今度はオレがあーんをされる番になる。
感想は言うまでもなく美味しかった。
自分では気付かなかったが、この時のオレはどうやら幸せそうな表情をしていたようで、オレにあーんをする愛里はとても嬉しそうだった。
二枚目は愛里が焼き、普通に食べた。
予習の為に1人で来て食べた時は何も感じなかったが、愛里と一緒だと暖かいものを感じて、ふと、『あの世界』でのことを思い出す。
それは『アイツ』の配下となり受肉して間もない頃のこと。
悪魔族にとって、食事というのは基本的に魂を喰らう行為を指し、人間の食べる物質的な料理など味のしない泥のようなものである。
しかし、受肉によって味覚を得たことでその認識は覆された。
物質的な料理を美味しく感じるようになり、食べることの喜びを知った。
これは龍人族のガビルが「人に近い味覚を得て、以前は味気なかった食事が今は楽しみの一つになっている」といった旨の発言をしたことにも表れている。
また、誰かと一緒に食べることにも幸福感を覚えた。ベニマルやハクロウ、或いはラミリスやヴェルドラ等の面々と他愛もない話をしながら食事をすることもあった。
そんなことを思い出しながら気付く。
(そうか、オレは愛里と食事をすることに嬉しさや楽しさを感じているのか)
*
昼食を終えたオレ達は愛里の要望でプリクラを撮る為にゲームセンターに向かった。
プリクラには自分達の前に数組並んでおり、待っている間愛里がお願いをしてきた。
「清隆くん。ここで約束したご褒美の権利を使いたい」
「わかった。何を望む?」
「わ、わた、私をおんぶしたり、お、お姫様抱っこをしてほしいです」
緊張しながらもご褒美のお願いをしてきたので、迷わずに了承する。
オレ達の順番になった。プリクラの操作をしたことのないオレは愛里に丸投げした。
このタイプは4枚撮るようなので一枚目は横に並んで撮り、二枚目は不意打ち気味に肩を抱き寄せて撮った。
突然の不意打ちに面食らった愛里だが要望のご褒美は次からである。
三枚目でオレは愛里をお姫様抱っこした。当然顔の距離は近くなり愛里の赤くなった顔がよく見える。いっそのことキスでもしようかとも考えたが、友人でしかない関係でそれはやり過ぎだと思いやめた。
四枚目。オレは愛里をおんぶしたが当然背中にある感触が伝わる。
愛里の「それ」が大きいのは知っているが、背中越しに伝わる感触からやはり愛里のは大きいなと取り留めのないことを考え、友人の関係ならこうすればいいのか?という思いから愛里の頭を撫でた。直後、落ちないようにオレを抱きしめる力が強くなった。
撮ったプリクラの内三枚目と四枚目が写った方をオレが貰った。
プリクラを本の栞として使うことを伝えると、恥ずかしそうに照れながらも「大事に使ってね」と言われた。
*
時間は夕方となりオレ達は海岸沿いの道を歩いていた。
今日一日の出来事を振り返る。
何度か心を動かされることがあり、オレとしてはとても楽しかった。それは恐らく愛里も同じハズだ。
「清隆くん」
愛里の方を向くとそこには何かを決意した表情の愛里がいた。
「愛里、どうした?」
「……清隆くんは今日のデート楽しかった?」
「?ああ、楽しかったぞ」
まっすぐオレを見据えて愛里は自分の中にある感情を伝える。
「───私は清隆くんが……好きです。私と……付き合ってください!」
その言葉はとてもまっすぐで、とてもシンプルだった。
「そうか」
「う、うん」
愛里は自分の発言を振り返って挙動不審になりながらもオレの返事を待っていた。
ならばオレもしっかり向き合わなければならない。
「愛里、告白してくれてありがとう。オレも愛里が好きだ」
「あ……」
愛里は嬉しさのあまりオレに抱きついてきた。
そんな愛里をオレは抱きしめて、また、頭を撫でる。
───正直なところ、オレが愛里に抱いている感情がlikeなのかloveなのか今は判別できない。
───だが、例えlikeだったとしてもいつかloveになるかもしれない。
───或いはこの気持ちがloveだと自覚できるかもしれない。
そうあってほしいと願い、オレは愛里を抱きしめて幸せを噛み締めた。
自分なりに人間味のある綾小路や可愛い佐倉を書けたかなとは思っています