『原初の茶』だった男   作:過失杜帆士

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初投稿です。よろしくお願いします


『原初の茶』は転生する

 

  夢を見た。

 

 世界の創造主であるヴェルダナーヴァは世界の管理の為に、光の大精霊から天使を生み出した。

 

 その際にそれと対を成すように闇の大精霊から悪魔が生まれた。

 

 原初の悪魔と呼ばれる最古の悪魔。

その八柱目『原初の茶(マロン)』。それオレという存在の始まりだった。

 

 

 

 

 ある時『原初の黒』が現れた。

オレを勧誘に来たソイツの話が長かったので要約すると「自分は今あるお方に仕えている。その方の元で働けるのは素晴らしいので、冥界で暇を貪っている貴方を勧誘しに来た。既に黄、紫、白も誘っている」とこんな感じだった。

 

 

 正直驚いた。黒の系統は上から下まで大体が変態か変人だ。そんな相手をするのが面倒臭い奴の代名詞と言えるコイツが、スライムを主と認め仕えている。

 

 

 オレはそのスライムに興味が湧いた。黒の言う通り暇を持て余していたのは事実だ。変態的で身勝手なこいつが仕え力説するくらいに素晴らしいなら楽しい時間を過ごせるかもしれない。そう思った。

 

 

 オレはスライムに謁見した。

 魔王リムル=テンペスト。八星魔王の一角でジュラの大森林を治める盟主。元々はゴブリンの集落だったそうだが、噂を聞き付けた他のゴブリンや種族がやって来て大きくなり『無から国を創った』建国の王。謁見の際オレは『原初の白』達と共に物質体で人間に偽装したが、彼は一目でそれを見破った。

 

 オレ達はリムルの配下に加わり『名』を与えられた

『原初の白』はテスタロッサ

『原初の黄』はカレラ

『原初の紫』はウルティマ

そしてオレ『原初の茶』はアウル

 『名』を与えられ受肉したオレ達は『上位魔将』から『悪魔公』へ進化した

 

 魔国連邦の中央都市リムル。

 ここで過ごす日々はとても楽しかった。中でも特筆すべきは食文化だろう。転生者のリムルがゴブイチやシュナ、ミョルマイル等の力を借りて再現した異世界の料理はどれも美味しかった。ラーメン、ハンバーガー、寿司、天ぷら等々。最初は生で食べる事に抵抗があり避けていた寿司や刺身だが食べてみたら案外すんなりといけた。

 

 戦闘面の仕事もそれなりにあった。

長くなるので内容は割愛するがグランベル・ロッゾ率いる集団のルベリオス襲撃、東の帝国との戦争、天使との天魔大戦、侵略種族となったヴェルダナーヴァとの決戦。わずか10年足らずで激動の時代と言える時を過ごすとはリムルの配下になった当初は思いもしなかった。

 

 そうして魔国で長い時を過ごしたオレは転生した。

 

 

 目を開けて目に映ったのは白だった。

壁も床も何もかもが白で目がおかしくなりそうだと思った。

 

 転生して数年が経った。

情報収集してわかったのは、ここが異世界でありこの場所がホワイトルームと呼ばれる場所ということ。この場所は人工的に天才を生み出すことを目的としていること。オレは4期生に分類され既に10人そこらの人数が脱落していること。そしてオレの個体名が綾小路清隆であること。

 

 オレの名が綾小路清隆だと知って何かが抜け落ちた感じがした。オレという存在の根幹。『原初の茶』でも『アウル』でもない人間の綾小路清隆。リムルとの繋がりが消えたことはオレに大きな喪失感を与えた。

 

 ホワイトルームの生活はとても退屈だ。朝起きてから就寝まで勉学や運動のカリキュラムが組まれている。食事は栄養を重視した味気ないもので、テンペストの食事が恋しくなった。

 娯楽も当然なく、漫画やラノベが無い環境はとても暇で黒が勧誘に来る前の名無しの原初だった頃を思い出した。

 

 ある時、雪という少女が脱落を宣告された。可哀想だとは思ったがこの場所はあの世界と同じ弱肉強食だ。力の無い者は淘汰される。

 オレがリムルの配下となる前、クレイマンとかいう魔王が主導した計画で豚頭帝の餌となった大鬼族等の種族。あるいはテンペストに戦争を仕掛け覚醒魔王の養分になったファルムスの兵士。あるいは聖魔十三守護王と称されるオレ達の覚醒進化の養分となった帝国兵。

 それらを思い返している間に雪がオレに縋りついた。人としての倫理観や道徳観に照らせば、ここは助ける為に動くべきだろうがあの世界での生き方や死生観が染みついているオレは雪を切り捨てた。

 今のオレ見たらアイツは叱ったりするかもしれない。だが、アイツの系譜でも友人知人でもない相手を助ける気にはなれなかった

 

 雪の脱落から少し時が経ったある日、同じ4期生の志郎からホワイトルームの脱走を持ち掛けられた。内容としてはカリキュラムでわざと手を抜いて脱落しようというものだった。

 オレは考えた。この場所で学べることを放棄してまで外に出る意義はあるのかと。

 しかしホワイトルームの生活が退屈極まりないのも事実なのでオレは志郎の話に乗りホワイトルームを抜け出した

 

 ホワイトルームを抜けたオレは血縁上の父親の執事である松雄の力借りて海外に飛んだ後各地を転々とする生活をした

 その生活を数年続けた後オレは高度育成高等学校に入学した。

 

 

 高度育成高等学校。東京に位置する国主導の学校。就職・進学率はほぼ100%を誇り、敷地内の寮生活が義務付けられ外部との接触禁止等の制約がある。敷地内にはスーパー等の買い物に必要な施設やゲームセンター等の娯楽施設もある為生活する分には敷地外に出れずとも困りはしないだろう。

 

 校門をくぐり所属クラスがDであることを確認したオレは早めに着いて比較的時間に余裕があったので校内の散策をすることにした。

 散策しながらオレはあることについて思考していた

 それは自分の名前を探している際に隣のCクラスにある3人の名前を見つけたことが切っ掛けだった。

「ウルティマ・サマエル」、「カレラ・アバドン」、「ギィ・クリムゾン」

 どう見ても赤、紫、黄を連想させる名前である。というか赤の名前はそのままで、紫と黄はラストネームが究極能力だ。

 もしやと思い他のクラスも見てみたらBに3人、Aに1人発見した。

 名前はそれぞれAが「ディアブロ・アザゼル」

Bは「テスタロッサ・ベリアル」、「ミザリー・ヴェルト」、「レイン・ミスト」

 恐らくこの7人は考えている通りの人物で間違いないだろう。

 

 正直頭を抱えそうになった。アイツらも転生していたこともそうだが、『原初』が全員同じ学校に通うことに。

 まだマトモな面子が固まっているBはマシに感じるが問題はAとCだ。Aは黒を抑えられる人材がいるとは思えないし、Cは赤がストッパーになりそうではあるが不安はある。「ギィ」の名は人間の悲鳴が由来だし、何よりも悪魔として長い時を生きたオレ達の価値観は人間と大きくズレている。

 

 そんなことを考えながら2年生の階を経て3年生の階も散策していると後ろから声を掛けられた。

 

「そこの新入生、何をしている?」

 

 掛けられた声に懐かしさを感じながらオレは後ろを振り向いた。振り向いた先にいたのは眼鏡をかけた男子生徒。人を寄せ付けない雰囲気を醸し出すその男子生徒をオレは、どことなくソウエイに似ているかもしれないなと思いながら見ていた。

 

「さっきから黙って俺を見ているが、どうかしたのか?」

 

「すみません。貴方の声や雰囲気が知り合いに似ていたので少し見入っていました」

 

「そうか」

 

 ああ、本当にゼギオンの声に似ていると思った。2人でアテレコさせたら見分けがつかないのでは?とそんなくだらないことを考えた。

 

「先程そこの新入生と仰っていましたが、貴方は上級生という認識でよろしいでしょうか?」

 

「そうだ、俺は3年生の堀北学だ。それで最初の質問だが何をしていた?」

 

「散策ですよ。初めての場所では可能な限りその場所の把握をするようにしているんです。把握をしていれば役立つこともありますし、ちょうど早めに着いたので」

 

「そうか。それで何か役立つ成果はあったのか?」

 

「気になった点が2つ程。1つ目は監視カメラですね。防犯目的にしては過剰な数なので、別の目的があるのではと」

 

「そうか。もう1つは何だ?」

 

「机の数です。この学校は1クラス40人のハズですが上の学年になる程数が減っています。加えてAは少なくDは多い傾向にあるのですが、ここで答えを聞いてもよろしいですか?」

 

「悪いがその質問には答えられない」

 

「そうですか。答えられない、ですか」

 

「ああ、答えられなくてすまない。そろそろ時間だ。時間を取らせてすまなかった」

 

 そう言って3年生堀北学は去っていった。時間を確認すると確かに教室へ向かった方がよさそうな頃合だったのでDクラスの教室へ向かった

 

 教室に入った後担任だろう女教師が入ってきた。胸元が開いたスーツに髪型はポニーテール。スカートをパンツスタイルに変えて額に角のような物を付けたらシオンに近くなりそうだな。

 そんなことを考えている間に女教師から学校に関する説明があった。

 外部との接触禁止。学生証に10万ポイントが振り込まれていること。ポイントは毎月1日に振り込まれる。この学校でポイントで買えないものはない。etc.。

 

「質問はないようだな。では良き学校生活を楽しんでくれたまえ」

 それらの説明終えた女教師、茶柱佐枝は教室を去った。

 

「皆、少し話を聞いてもらえるかな」

 

 声を上げたのは真面目な好青年といった印象の男子生徒平田洋介。彼は入学式まで時間があるので一日でも早く仲良くなれるように皆で自己紹介をしないかと提案をした。

 それに対して金髪ポニーテールの女子生徒を初めとして賛同の声が上がったので自己紹介をする流れとなった。

 途中で体格のよさそうな赤髪の男子生徒が平田に反発して出ていき、それに連られてか隣人の黒髪ロングの女子を含む何人かが出ていった。

 残った面々で自己紹介が再開しやがてオレの番となった。

 

「綾小路清隆です。趣味は漫画やラノベを読むこと。海外での生活が長かった為ファーストネームで呼ぶがあると思う。勉強や運動はそれなりに出来ると思います。よろしくお願いします」

 嘘は言っていない。アイツの教え子に何人か日本人がいたが名前呼びだったし、聖教会のヒナタやルドラが転生したマサユキ等も名前呼びだったからそっちの方が慣れてる。そもそもあの世界でラストネーム持ちの数が少ないのもあるが。

 

 

 こうして『原初の茶』改め綾小路清隆となったオレの高度育成高等学校での学生生活が始まった。

 

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