『原初の茶』だった男   作:過失杜帆士

2 / 2
2話目投稿です

原初達との会話、佐倉との初デート、綾小路がやりたい2つ目の数字揃えを綾小路グループの面々に語るシーン等、描きたいシーンはあるのですがそこまでいくのにまだまだ掛かりそうだなと思ってます


『原初の茶』のチュートリアル期間

 

 入学式を終えた教室は大分浮かれた空気だった。

 無理もない。1ポイント=1円の価値があり10万ポイントは10万円と同価値だと知れば、高校生になったばかりの子供にはこれ以上ない飴だろう。

 「欲しいゲーム機を買う」、「欲しい服があるから沢山買う」、「ゲーセンで沢山遊ぶ」といった具合にクラスの大部分が消費に費やす様子だ。

 (自己評価で)悪くない自己紹介だったのもあってか何人かに買い物に誘われたが、それよりも優先すべきことがあったので断った。

 目的は散策の続きである。HR前の散策では不十分なので範囲を広げて再開した。

 

 散策を終え部屋に戻ったオレはコンビニで買った缶コーヒーを飲みながら考える。

 (校舎内には監視カメラが腐る程あるのに対し特別棟には1つも無かった。絶対に意図的だし、謀略にはもってこいの場所だな)

 監視カメラといい、減ってる机といい面倒事が舞い込む予感を感じずにはいられなかった。

 

 翌日から授業が始まったがクラスは無秩序な動物園と言っていい有様だった。

 近くの奴と雑談をしたりスマホを弄る生徒。堂々と昼寝をする生徒等。教師が注意をしないのもあり真面目に授業を受ける生徒は少数で、学級崩壊同然の状態に頭が痛くなった。

 

(『アイツ』がシズエ・イザワの教え子を受け持った当初もこんな感じだったろうが状況が違う)

 

 勇者召喚の失敗であの世界に連れてこられたケンヤ達召喚者。彼らは成長途中の肉体に大量の魔素が取り込まれた影響で数年しか保たない命となっていたと聞いている。彼らが自棄になって学級崩壊同然になったのは境遇を考えれば理解は出来る。

 だが目の前のこいつらが素でやっているのは如何なものか。小学校や中学校で一体何を教わってきたのやら。しかも教師はこいつらの行動に対し注意もしない。オレが注意しようかとも考えたが、この体たらくを見てその気は失せた。

 

 

 

 苦痛の時間と言える授業が終わって放課後。

 どうやら部活動紹介があるようなので、暇潰しがてら体育館に移動する。

 一通り見たがこれといって入りたいと思う部活が無かったのでそのまま帰ろうとしたがある事を思い付いたので、とりあえずボードゲーム部の部室に向かった。

 

「うん?新入生…か?もしかして入部希望者か?」

 

「いいえ、入部希望ではありません。先輩にお聞きしたいことがありまして。……此方でポイントを使った賭け事は行っていますか?」

 

 そう言った直後、室内の空気が変わった気がした。

 

「それを聞くってことは粗方把握はしてるんだよな?」

 

「ご想像の通りかと。それで、賭けには乗ってくれるんですか?」

 

「ああ、乗ってやるよ一年坊。加減無しで行くぞ!」

 

 目の前の先輩がそう言ったのを皮切りに、ボードゲーム部に対する道場破りが始まった。

 

 

 次の部活に向かう道すがら先程の賭けを思い返していた。

 ボードゲーム部で行った賭けでは上限額を1万ポイントと定め部員全員と対戦し、結果として59000ポイントの戦利金を手に入れた。

 人によっては根こそぎ奪って荒稼ぎすると思う思うが、これは前世で悪魔族として生きた影響が大きい。

エルフや悪魔族等の長命種は基本的に長期計画で利益を得る事を前提に計画を立てる。

 1つ例を出すと『原初の紫』が失敗したラージャ小亜国の件がそうだな。

ラージャの初代女王との契約で進んだあの計画は、先走ったバカ共が原因で『アイツ』らの介入を招き頓挫こそしたが、何事もなければいずれ計画は成就して彼女は受肉体を手に入れていた。

最もその後の事を考えれば、彼女にとって計画の失敗は結果的に喜ぶべきものだと思う。

 

 話を戻すが有り金を根こそぎ奪えば懐は大きく潤う。ただしその場合次回以降の挑戦を受けなくなる可能性が高い。

 それに対して上限を1万程度に定めれば今後も挑戦を受けてくれる可能性がある。自分の懐が少し潤うか寂しくなるか。その塩梅の方が一度に得られる金額は少なくとも継続してオレのATMになってくれる。

 それに作った模型を戦わせるアニメでも

「遊びだからこそ本気になれる」

そんな感じのことを言っていたからな。遊び相手とは長く遊んでいたいものだ。

 

 その後2つの部活に道場破りを仕掛けたオレは全ての勝負に勝ち一日で約15万稼いだ。

 

(1つ辺り約5万としてあと3~6つ程巡れば見積もりは約30~45万程か。一月の稼ぎとしては悪くない方だろ)

 

 明日以降の集金に思いを馳せながら胸を膨らませ今日という日を終えるのだった。

 

 

 

 

 休日を挟んだ月曜の放課後。オレは図書室へ足を運んでいた。

 

(あれから6つの部活を巡り稼ぎは約42万。大凡見積もり通りだ。相手の反応も悪くなく来月も付き合ってもらえると見ていい)

 

 先週の道場破りの感触を思い返しながら図書室を見て回っていると1人の女子生徒が目についた。

彼女は高い位置にある本を取りたいようだが手が届かないようだった。

 見て見ぬふりをしようかとも考えたがオレは取ってあげることにした。

 

「取っていただきありがとうございます」

 

「いや、自己満足でやったことなんだ。気にしないでくれ」

 

「私は1年Cクラスの椎名ひよりと申します。お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

 

「1年Dクラスの綾小路清隆だ」

 

 オレは気まぐれで助けた銀髪の少女、椎名ひよりと会話を重ねた。

 

「図書室にいるということは綾小路くんは本をお読みになるんですか?」

 

「読みはするがひよりの好みとは合わないと思うぞ」

 

「…………」

 

「ひより?大丈夫か?」

 

「すみません。名前呼びにちょっと驚いただけです」

 

「ああ、そういうことか」

 

 そう言われてこの国では、初対面の相手とは大抵ラストで呼び合うことが多いことを思い出した。

 

「すまない。海外での暮らしが長い影響でファーストで呼ぶのに慣れているから、つい名前で呼んでしまった」

 

「そういうことでしたか。それで、綾小路くんは普段どんな本を読んでいますか?」

 

「主にラノベを読んでいるが、アニメや漫画を書籍化したものも読むな。以前は本の類は興味が無かったが、『アイツ』に影響されて手を出すようになった」

 

 軽く『アイツ』のことを話した瞬間、重苦しくなった空気を感じたのかひよりは別の話題に切り替えた。

 

「えっと、本は紙と電子がありますが綾小路くんはどちらが好きですか?」

 

「オレは紙を好んでいるな。電子を知った当初は嵩張らない上に端末1つ済むから多用したが、とあるアニメに登場する槙島◯護の「紙の本を買いなよ」のシーンを見てからは紙に戻ったな」

 

「槙島◯護ですか」

 

「ああ、ユー◯ューブにそのシーンがあるから、気になるなら見てみるといい。恐らくひよりも気に入ると思う」

 

「わかりました。時間がある時に見てみますね」

 

 ひよりとは少し長く話込んだ。好きなジャンルが被りはしなかったが、好きなものについて語り合う時間は悪くないと思った

 

 

 

 

 4月半ばの水曜日。今日の体育は水泳をやるそうだ。4月に水泳は珍しいとは思ったがそういうこともあるかと思い気にしないことにした。 

 教室に入ると中は少し騒々しい様子だった。遅刻の多い春樹や寛治がいた。珍しいなと思い彼らが大きめの声で話している内容に耳を傾けた。が、オレは彼らの話す内容に耳を疑った。

 なんと彼らは教室の真ん中で女子のおっ◯いランキングなるものを作っていた。

 オレはあいつらの正気を疑った。

 峰◯実という性欲の権化の存在は知っているが、あれはあくまでもフィクションであり2次元の存在故にリアリティは無いと思っていた。

 だがオレの目の先で巫山戯たランキングを作っている彼らは現実であり、峰◯実に匹敵する存在がリアルに存在するとは思いもしなかった。

 

「あなたはあれに混ざらないの?」

 

 ありえない現実に打ち拉がれているオレに隣人の黒髪ロングが話しかけてきた。

 

「お前はオレにあれに混ざりに行けと言いたいのか?」

 

「そのお前呼びは気に入らないわね」

 

 オレの返答に嫌そうな反応を返すが仕方のないことだった。

 

「そうは言ってもオレはお前の名前を知らない。それにオレとお前の会話はさっきのが初めてだ」

 

「はぁ、堀北鈴音よ」

 

「堀北、鈴音。そうか。お前の名前は鈴音というのか」

 

 黒髪の女子、堀北鈴音は又も嫌そうにする。

 

「いきなり名前呼びなんて失礼な人ね」

 

 鈴音は心底嫌そうな様子だが仕方のない部分もある。

 

「お前は自己紹介の時いなかったから知らないだろうが、オレは海外での暮らし長かったからな。ラストよりファーストで呼ぶのに慣れているんだよ」

 

「そう」

 

 ちゃんと説明したのにどうでもよさそうな反応だ。

 

「それと最初の質問だが、女子のヘイトを集めまくっているあそこのゴミ共に混ざる気は一切無いぞ」

 

「そう。てっきり貴方もあそこで低俗な会話をしてる彼らと同類だと思っていたわ」

 

 なんと言うかとことん失礼な女子だと思った。オレはこの少女と会話をしたくないと既に思いはじめていた。

 

 

 体育の時間がやってきた。

既に着替え終えたオレ達男子は女子や体育教師が来るのを待っていた。 

 

「なあなあ、俺が今から女子更衣室に突撃したらどんな反応をすると思う?」

 

 山内がとんでもないことを聞いてきたのでオレは真面目に返した。

 

「その場合お前は間違いないなく少年院行きになるだろうな。よかったな山内。お前は性犯罪者としてみんなの記憶に残る可能性があるぞ」

 

 そう返された山内はビビり散らかしていた。

 

「お、おいマジで返すなよ。じょ、冗談。軽い冗談だってのっ!」

 

 そう返す山内だが、こいつなら将来そうなってもおかしくない。オレにはそう思えてならなかった。

 

 そうこうしてる内に女子がやってきた。女子の登場に色めき立つバカ共だったがそれも直ぐ様嘆きに変わった。

 理由はランキングのオッズで上位だった波瑠加や愛里を初めとする多くの女子が見学したからだった。

 

「佐倉は!?長谷部は!?俺のおっ◯いがぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 

「はぁはぁはぁ、櫛田ちゃん櫛田ちゃん櫛田ちゃん」

 

「あああああぁ!!俺の、俺のパラダイスがぁ!!」

 

 控えめに言ってもキモいなこいつらは。こうして変態の権化と言えるこいつらを見ていると、峰◯実は少年誌掲載の漫画だからあの表現ですんだと思い、現実の変態はこんなにも気持ち悪い生き物なのだと戦慄した。

 

「よーし全員集合!見学は……16人か、意外と多いな」

 

 バカ共の愚行が原因で欠席者が多いが教師はあまり気にとめてなかった。やはりここでも放任か。

 

「早速だが、個々で準備運動をするように。終わりしだい実践に入る」

 

 教師のその言葉に何人かの生徒が不満そうにする。泳ぎ方のコツを教わらずレクチャーもないままいきなり実践ともなればそうなるのも無理はない。

 

「あの先生、俺あまり泳げないんですけど」

 

「大丈夫だ。俺が泳げるようにしっかり教えてやる」

 

「いや、泳げなくてもいいですよ。この学校じゃ海とかで泳ぐ機会とかありませんし」

 

「安心しろ。夏までに泳げるようになれば必ず役に立つ!」

 

 その言葉に少し違和感を感じた。それではまるで海等で泳ぐ機会があると言っているように思えた。

 

 準備運動を終えた後はプールで軽く泳いだ。水温は適温だった為快適に泳ぐことができた。

 

「では、早速だがこれから競争をする。男女別で50M。1位になったやつには俺から5000ポイントを支給する。逆にビリだった奴には補習を受けさせるから覚悟しておけよ」

 

 補習と聞いて嫌そうにする生徒もいたがオレはむしろその逆だった。

 たとえ5000程度でも貰えるなら貰っておこうと1位を目指すことにした。

 

 女子のレースが終了した。1位はかや乃で2位は堀北だった。

 かや乃は確か水泳部だったか。本職だけあって綺麗で良い泳ぎだと思った。

 

 その後男子のレースが始まった。男子は人数が多いので上位5名が決勝に進む形だ。

 

 決勝に進んだのはオレ、健、明人、洋介、そして六助だ。

 

 レーンについたオレに隣の六助が話しかけてきた。

 

「綾小路ボーイこの決勝では本気で泳ぎたまえ」

 

「もちろんそのつもりだ。それと六助、オレは呼ぶのも呼ばれるのもファーストの方が慣れてるから清隆で呼んでくれるとありがたい」

 

「ふふっ、いいだろう。もしきみが勝つことがあれば考えておこう」

 

「もし、じゃない。お前は必ず考えるさ。何せ結果はオレが1位でお前が2位。他の奴は3~5位を争うことになるんだからな」

 

 そう言いながらオレはオレらしくないなとも考える。 

(いくらポイントの為とは言え妙に熱くなっているな。かつて『名無し』だった頃は誇りだのプライドだの矜持だの、何かに拘ることを馬鹿らしい、どうでもいいとさえ思っていたのに、今のオレはその真逆だ。『アイツ』に仕えて受けた影響が、人間に転生したことで大きくなったか?)

 

 オレの発言が聞こえた健が癪に障ったのか声を荒げる。

 

「おいこら綾小路!何勝手に勝った気でいやがる!手前も高円寺も俺に負けるんだよ!」

 

「きみが?ノンノン、レッドヘアーボーイきみでは私や綾小路ボーイには勝てないよ」

 

「ンだとゴラぁ!!」

 

「ちょっと須藤くんっ、落ち着いて!」

 

 洋介が健を抑えるのを尻目にオレは思う。

(六助、オレが蒔いた種とはいえ火に油を注がないでほしい)

 

 健を落ち着かせて始まったレースは予想通りオレと六助がトップ争いをし、洋介達が3~5位を争う展開となった。

 

 六助との勝負は接戦だったがオレが21秒85、六助が22秒07、以降他3人が続きレースはオレの勝利で幕を閉じた。

 P.S.六助のオレに対する呼称は清隆ボーイとなった。

 

 

 

 初のポイント支給日である5月1日が明日に迫った4月の最終日。茶柱先生の授業で抜き打ちの小テストを受けた。

 問題を全て確認したがアンバランスといえばいいのか妙なものを感じた。

 最後の3問とそれ以外の難易度が違いすぎるのだ。まず大部分の問題だが、これは入試の問題よりも簡単だ。中学で真面目授業を受けていれば1問5点のこのテストで85点は取れるだろう。

 但し最後の3問に関しては別だ。この3問は高校1年の範囲から逸脱している。恐らく1問でも解ければいい方だろう。

 オレにとってはホワイトルームで既に習った内容なので全て解いた。

 

 

 

 

 

(これまでに集めた情報を元に考えれば、この学校で行われているのは特典を求めて争う椅子取りゲーム。その中でもここは問題のある生徒や欠点の多い生徒が集められた『最底辺』のDクラス。今月の授業の様子を見る限り纏め上げるのも勝ち上がるのも間違いなく他より苦労する)

 

 懸念事項は他にもある。それはオレ以外の『原初』の存在。

 

(まだ確認出来ていないが、初日に見た名前がそうであると仮定した場合能力面で確実に驚異になるとみるべきだな)

 

 但し不安要素も抱えている。

 

(問題はアイツらがこのゲームにどこまで関わるのか。『原初』は漏れなく全員が一癖も二癖もありプライドが高い。同僚だった4柱はほぼ確実に『アイツ』以外を主や王とは認めないだろう。傲慢な『原初の赤』は誰かに従うとは思えない。彼と隷属関係だった『原初の緑』と『原初の青』は他クラスである以上不干渉を貫くか最低限関わる程度とみるべきだろうか)

 

 

 明日以降のことを考えながら『原初の茶』のチュートリアル期間は終わった。

 

 

 そして彼は明日以降の日々で、兄や姉と言える存在の他の『原初』全員とこの世界で再会する。

 

 『原初の赤』、『原初の青』、『原初の緑』、『原初の黒』、『原初の黄』、『原初の白』、『原初の紫』

 

 変化は他にもある。

 

 

 『原初の茶』は『最愛の人』に出会い、『彼女』を含めた4人とグループを結成することになる。

 

 

 




0621時点の構想になりますが、次回は0501のネタばらし(D)、次々回はネタばらしが終わった後の原初達の反応を予定してます

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。