角都を無事に封印し、戦場に一瞬の静寂が訪れたかに見えた。
「ジャン、腕が酷く火傷しているぞ」
「さっきの攻撃で、少し火がかすったみたいです」
顔をしかめる僕の腕に、フィーネさんがそっと手をかざす。優しく冷たい水属性の治癒魔法が、痛みをスーッと引かせてくれた。
「ありがとうございます、フィーネさん」
その直後だった。
「いけねっ!」
後方で援護に回っていたシカマルが、舌打ちをして片膝をついた。
「シカマル! 大丈夫!?」
「影真似の術が……出せねぇ。アイツにやられた」
シカマルの視線の先。額に十字架の刺青を持つ男――幻影旅団団長、クロロ=ルシルフルが、片手に不気味な本を具現化し、優雅に立ち塞がっていた。彼の念能力『盗賊の極意(スキルハンター)』によって、術の概念ごと奪われてしまったのだ。
「お前の忍術、確かに借りた。次はこれだ――『雷雲魔法』」
クロロが本に視線を落とすと、頭上にどす黒い雷雲が立ち込める。
「奪った魔導士の魔力を組み合わせた、新たな融合魔法か!」
「術の概念ごと奪って使うなんて、角都とは次元が違うぞ!」
「関係ありません!! 俺たち、相手が誰であろうと自分の戦い方をするだけです!!」
緑色のタイツを着た熱血師弟、ロック・リーとマイト・ガイが凄まじいスピードでクロロへ突っ込む。
「それもそうだね」
クロロが冷たく指を鳴らした瞬間、雷雲から極太の落雷がリーとガイを直撃した。
「「わあああああっ!!」」
真っ黒焦げになった二人が倒れ伏す。(命に別状はなさそうだが、完全に戦闘不能だ)
「次はこれだ。『吹雪魔法』」
今度は水と風の融合魔法。猛烈な吹雪が戦場を飲み込もうとした、その時。
「ナルト! 気づいたか! アイツ、別の能力を使うたびに必ずあの本を開いてるぞ!」
サスケの鋭い観察眼が、敵のルールの穴を突いた。
「もちろんだってばよ! あの本そのものをブッ壊せば、使えなくなるはずだ。アレ、やるぞ!」
「おう!」
ナルトとサスケが同時に地を蹴り、左右からクロロへ肉薄する。
「風遁・螺旋手裏剣(らせんしゅりけん)!!」
「炎遁・加具土命(かぐつち)!!」
風の極限と、決して消えない黒炎。二つの強大な力が空中で合体し、漆黒の炎の風車となってクロロを襲う。圧倒的な威力が、クロロが手にしていた『盗賊の極意』を跡形もなく燃やし尽くした。
「てりゃあああっ!!」
本を失い、一瞬の隙が生まれたクロロへ、燃えるような緋の眼を輝かせたクラピカが突っ込む。
「『律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)』!!」
鎖がクロロの心臓に巻き付き、絶対の掟を強いる。さらにクラピカは怒りのままに拳を振り上げ、クロロの顔面を強烈に殴り飛ばした。
「お前はジャッジメントチェーンにより、二度と念能力は使えない。……今だ、奴を封印しろ!!」
アルト王国騎士団長マグナスが前に出る。両手を広げ、重厚な詠唱を紡ぐ。
「――『エターナル・クロノス・レコード』!!」
絶対空間の魔法陣が展開され、幻影旅団団長クロロは光の中へと完全に封印された。
暴かれる正体と砂の絶対防御
「……たく。シカマル、お前ほんっと役立たずだな!」
膝をついていたシカマルに対し、テマリが容赦なく巨大な鉄扇を突きつけた。
「お前、シカマルじゃないだろう。クロロに術を奪われたフリをして戦線離脱する口実を作った。……全部お前の自作自演だろうが。さっさと正体を現せ!!」
「……ククッ。バレちゃったか」
シカマルの姿がドロドロと溶け崩れ、六魔神・地のアマイモンが不気味な笑みと共に本来の姿を現した。さらにその隣では、這いつくばっていた傀儡『ヒルコ』の装甲が弾け飛び、暁の天才造形師・サソリが真の姿を現す。
「お前ら全員、俺の極上の『人傀儡』にしてやるよ」
「ふざけるな! 誰がお前の仲間になんかなるもんか!」
「さて、それはどうかな? 口寄せ――『穢土転生(えどてんせい)』!」
アマイモンが地を叩くと、地面が割れ、禍々しい無数の棺桶がせり上がってきた。
「俺が喚び出したこいつらは、情報と記録を邪悪に書き換えた『オルタ化英霊』だ。しかも、生前は上級から特級魔導士クラスの英雄たちばかりだよ」
混乱の隙を突き、アマイモン、君麻呂、サソリ、そしてルリカを攫ったデイダラのC2ドラゴンが、背後に開いた巨大なワープホールへと逃げ込んでいく。
「待てッ!!」
「道は私が切り開く! さっさと行きな!!」
テマリが放った凄まじいカマイタチが立ち塞がるオルタ化英霊を吹き飛ばす。僕、フィーネさん、グリード、ナルト、ゴン、そして我愛羅が追撃部隊としてワープホールへ飛び込んだ。
【アマイモンの要塞】
ワープホールの先は、薄暗く巨大な石造りの要塞だった。
「やあ♦ 久しぶりだね♠」
闇の中から現れたのは、ピエロのような奇術師・ヒソカ。
「警戒しなくていいよ♣ 僕は誰とも契約していない『はぐれ英霊』だからね。今回は君たちの敵じゃないよ♥」
不気味な笑みを残し、ヒソカは闇へ消えた。
さらに奥の巨大な広間。頭上にはルリカを捕らえたC2ドラゴンが旋回している。
「風の剣術魔法――」
誰よりも早く動いたフィーネさんの姿が消え、上空で風の刃が閃く。C2ドラゴンの巨体が真っ二つに両断され、落下するルリカを優しく抱きとめた。
「喝(かつ)!!」
だが、デイダラが嗤う。要塞中に仕掛けられていた起爆粘土が一斉に火を噴き、桁違いの連続爆発が僕たちを飲み込もうとした。
絶体絶命のその時、爆煙の中から巨大な『砂のドーム』が現れた。我愛羅の絶対防御だ。
「だが、周囲の崩れた建物の瓦礫で身動きが取れないのだ!」
プンが叫ぶ通り、巨大な岩がドームを塞いでいたが、我愛羅は静かに両手を広げた。
「問題ない。流砂爆流(りゅうさばくりゅう)!!」
強大なチャクラが瓦礫を一瞬で砂へと粉砕し、圧倒的な砂の津波となって要塞を飲み込む。逃げる間もなく、デイダラと君麻呂は怒涛の奔流に押し潰され、データの粒となって消滅した。
災禍の魔獣と継承者の覚醒
「そろそろあれを出すか。召喚し顕現せよ、災禍の魔獣ゲノーモス!」
アマイモンの足元から、山のように巨大な怪物が現れた。
突っ込んだナルトの螺旋丸とゴンのジャジャン拳すらも弾き飛ばす圧倒的な力。二人はヒソカのバンジーガムと我愛羅の砂によって間一髪で回収された。
一方、サソリとオルタ化英霊の相手をしているサスケたちにも増援が到着していた。
「行くよ。――『領域展開』」
五条悟、虎杖悠仁、伏黒恵。三人の呪術師による同時領域展開が穢土転生の軍勢を空間ごと閉じ込める。
「グランド英霊の五条悟か、厄介な奴が来たな……」
さらにそこへうちはイタチが参戦。「月読」によって穢土転生の術そのものを完全に解除してみせた。
「行けサスケ、ナルトの所に」
戦況が傾く中、僕とアマイモンの一騎打ちが始まった。
だが、変形魔法を操るアマイモンはプンの姿に化けて僕の死角から強烈な一撃を見舞い、さらにグリードのアースバインドをも縮小して躱す。
翻弄された僕は強烈な打撃を受け、視界が真っ暗になり――気を失った。
気がつくと、僕は異次元空間に立っていた。
目の前には、見知らぬ赤い髪の男。
「時は満ちたようだなお前。いいか八代目君、俺は二代目継承者にして、歴代で一番の『天才』ソードマスター、ハナミチ・サクラギだ。頑張りたまえ」
(声が出ない……!)
「喋れんのか? まあいい。今、俺が与えるのは俺の剣だ。アイツに攻撃が当たらないなら、当たるくらいデカくすりゃいいんだよ。俺の剣は地属性の変化で巨大化する大剣さ」
サクラギはニヤリと笑う。
「俺のバディだった我愛羅と共にアイツを倒せ。地水火風光闇の六つを渡り、残り五つの剣と六人のレジェンド英霊と出会え。……さあ、最後だ。その剣の名を呼んでみろ」
「――神剣ユグドラシル!」
決着、そして新たな誓い
現実世界。僕の手にあるオリジンソードは、身の丈を超える巨大な『大剣』へと変化していた。
「その剣は懐かしいな。行くぞジャン」
我愛羅の声に応え、僕は大剣を振り上げる。
「鋼の剣術魔法、肆ノ型――『鉄槌砕き(てっついくだき)』!!」
巨大な鉄槌を振り下ろすような重い斬撃が、変形して逃げようとしたアマイモンを正確に叩き潰す。
「なんだその力は……!」
「ジャンさんの中の『ジャンプフォース』が目覚めたのですね。地水火風光闇のどれでもない、オリジンソードを持つ者にしか扱えない特別な力です!」とルリカが叫ぶ。
「欲に生き、欲を喰らい生きればいい……!」
アマイモンはギーファに植え付けられたエゴを暴走させ、巨大な化け物へと姿を変えた。
だが、グリードのアースバインドがその足を縫い止め、我愛羅の『砂漠層大葬封印』がその巨体を拘束する。
「今だ、ジャン! 止めを刺せ!」
「鋼の剣術魔法、終ノ型――『天鋼神断(てんこうしんだん)』!!」
鍛え抜かれた肉体と精神、そしてユグドラシルの全てを一撃に込める究極の型。
鋼鉄の神が振るう剣のような一閃。巨大な銀白色の刀身となって現れた斬撃の軌跡が、天空を裂くようにアマイモンを一刀両断にした。
「うわああああっ!!」
アマイモンは崩壊する大地と共に地の底へと落ちていった。
時を同じくして、魔獣ゲノーモスの元に全英霊が集結していた。
ヒソカのバンジーガム、クラピカの鎖、そしてレオリオの空間を越える腕が魔獣の四肢を完全に拘束する。
「今よ!」
「ジャジャン拳・グー!!」
「神速(カンムル)!!」
「尾獣玉!!」
「建御雷神(タケミカヅチ)!!」
「神威雷切(かむいらいきり)!!」
全ヒーローの必殺技がゲノーモスに集中し、大爆発と共に災禍の魔獣は完全に消滅した。
地に封印されていた大精霊ノームが復活し、王都に恵みの雨が降り注ぐ。枯れた大地にみるみるうちに緑が戻っていく。
「勝ったんだ……!」
安堵した瞬間、両腕の握力が抜け、凄まじい激痛が走った。
「いてててっ……!」
限界を超えた痛みに、僕はそのまま意識を手放した。
数日後。僕は病院のベッドで目を覚ました。
「ジャンさん、目を覚ましたのですね」
傍らには、心配そうな顔をしたルリカが座っていた。
「ジャンさんの腕は回復したばかりですから、無茶しないでくださいね」
「それにしても君の回復が早いと先生が言っていたよ」とフィーネさん。
「ジャンは昔から治りが早いのと、丈夫だけは取り柄なのだ」
「『だけ』は余計だ!」と僕が笑う。
だが、医師の診断は深刻だった。
「必要以上の力を使い、筋肉や骨に異常な負担がかかっている。いくら治りが早くとも、『天鋼神断』を今のまま使い続ければ腕が使い物にならなくなる。次は骨が砕けるぞ」
自分の器がまだ力に追いついていないことを痛感し、僕は静かに頷いた。
退院後、アルト王国を救った英雄として、街の人たちや英霊たち全員と記念写真を撮った。
その日の夜。
バルコニーで夜風に当たっていると、ルリカが隣にやってきた。
(これから私も強くなって、ジャンさんを護れるようになる……)
「ジャンさん」
ルリカはそっと目を閉じると、背伸びをして、僕の額に自分の唇を重ねた。
「……私も共に強くなります。これは、その誓いの印です」
顔を真っ赤にしながらも、彼女は満面の笑みで言った。
翌日。
大精霊ノームの加護を取り戻した僕たちは、出会った英霊たちと契約を交わし、新たな仲間である特級魔導士グリードと共に、一度故郷であるイストク王国へと帰還するのだった。
(続く)