吹き飛ばされたチョウジを探すため、僕とプンは降りしきる雨の中、アクエリアス王国の無人の街を駆けていた。
「ジャン、英霊反応なのだ!」
プンが声を上げたのと同時に、僕の懐に忍ばせていた『連絡鳥』がピピピッと鳴った。
「あ、グリードからだ」
通信をつなぐと、グリードの呆れたような声が聞こえてきた。
『おいジャン。瓦礫に埋まってたぽっちゃりを見つけたから、お前らも戻ってこい』
「ごめん、こっちで強い英霊反応があったから、合流は後にするよ!」
僕はそれだけ伝えて通信を切った。
グリードたちの視点にクロノス帝国の刺客がいた。
「シカマル、どうしてなんだ」
ナルトがシカマルに話しかけていた。
「わりいな、具現化されてどうすればいいかとめんどくせーこと考えていたらアリトンの所に連れていかれたんだ、まあいつ裏切るかを図ってたんだ」
シカマルはナルト達の方に行った。
「てことで俺は仲間の元に戻らせてもらうぜ」
「裏切り者め」
「裏切り者じゃねえって最初からお前達の仲間じゃねえって」
クロノス帝国の刺客を倒して追い出してシカマルの奪還成功した。
「で、プン。どっちだ?」
「こっちなのだ!」
プンの案内で路地裏を抜けると、開けた広場に出た。
そこには、オレンジ色の特徴的な髪をし、黒い死覇装(しはくしょう)を纏った一人の男が立っていた。彼の周囲には無数のモンスターが倒れ伏しており、男は身の丈ほどもある巨大な黒い包丁のような剣を、肩に無造作に担いでいた。
「あのオレンジ頭から英霊反応がするのだ」
(たった一人で、この数のモンスターを全滅させたのか……)
僕が感心しながら近づき、「あのう」と声をかけると、男は鋭い眼光でこちらを振り返った。
「ん? あんた達は」
「僕はジャン・サンダルフォン」
「ぼくちんはプンなのだ」
「……俺は黒崎一護だ」
一護と名乗った彼に、僕は手短に、しかし真剣に事情を説明した。
「一護。君がこれから聞くことは、全部本当のことだからちゃんと聞いてほしい。ここは君の知っている世界じゃない。君は『異界の英雄の情報と記録』から、この世界に具現化された存在なんだ」
一護は眉間に皺を寄せて少し考え込んだ後、ふっと肩の力を抜いた。
「……ってことは、俺がここにいるからって、空座町(からくらちょう)から俺本人がいなくなったわけじゃねえんだな。俺の体はあっちにあるってことだろ?」
「うん、まあそうだね」
「ならいい。あっちには護らなきゃならねえ連中がいるからな」
一護が安堵の息を吐いた、その瞬間だった。
――ヒュオッ!!
何もない空間から、突如として『見えない斬撃』が僕たちを襲った。
「危ねえッ!」
ガァンッ!
一護が咄嗟に巨大な黒剣を振り上げ、不可視の斬撃を見事に弾き落とす。
「アイツか……!」
一護が睨みつけた先。雨に煙る建物の屋根の上に、異形の怪人が立っていた。
淡褐色の肌に、尖った耳。屈強な肉体の肩、腹、そして両腿から『鼓(つづみ)』が生えているという、不気味極まりない姿だ。
「ヒィッ……!」
プンがガタガタと震え、全身の毛を逆立てている。
「プン、大丈夫か!?」
「あ、雨に当たり続けて冷えただけなのだ……!」
強がりを言っているが、明らかに敵の放つ異様なプレッシャーに怯えている。
ポンッ!
怪人が腹の鼓を叩く。すると再び、見えない三連の斬撃が僕たちに襲いかかった。
「ジャン!」
「鋼の造形魔法――『スチールシールド』!」
僕は瞬時に地属性の魔力を変化させ、強固な鋼の盾を具現化して見えない斬撃をガィィィンッ!と弾き返した。
「なるほどな。こいつ、叩く鼓の場所によって、斬撃の軌道が違うようだな」
一護が冷静に分析する。
「僕もそう思った。右肩が右からの斬撃、左肩が左から……」
「なら、軌道さえ読めれば近づける。行くぜ!」
一護が地を蹴り、僕もそれに続く。
ポンッ、ポンッ、ポンッ!
連続する鼓の音。僕と一護は、飛来する不可視の斬撃の軌道を完璧に読み切り、左右に別れて怪人の懐へと一気に肉薄した。
「てめえ、名は?」
一護の問いに、怪人は虚ろな目で低く答えた。
「……響凱(きょうがい)」
「響凱、か。テメエの事、忘れねえよ」
「はああぁぁっ!!」
僕のオリジンソードと、一護の巨大な『斬月』が、左右から同時に響凱の体を十文字に斬り裂いた。
手応えは確かにあった。怪人の体は真っ二つになり、崩れ落ちる……はずだった。
「なっ……こいつ、まだ生きてるぞ!?」
一護が驚愕の声を上げる。
斬り裂かれた響凱の肉体が、おぞましい速度でうねりながら再生し、何事もなかったかのように立ち上がったのだ。
「どんな魔物でも、急所を斬られれば倒れるはずなのに……!」
響凱が再び鼓に手をかけようとした、その時。
「――水の呼吸 壱ノ型」
冷たい雨を切り裂くように、透き通るような静かな声が響いた。
流れるような太刀筋と共に、実体を持った『水流』が円を描く。
「『水面斬り(みなもぎり)』」
ザシュッ!!
何者かが放った一閃が、今度こそ響凱の首を綺麗に刎ね飛ばした。
首を失った響凱の体は、今度は再生することなく、塵となって雨の中へと完全に消えていった。
「お前達は、俺達の世界の人間じゃないな」
静かに刀を鞘に納めたのは、左右で柄の違う半々羽織を着た、黒髪の剣士だった。
「あいつら『鬼』は、首を斬らないと死なない」
冷ややかな視線を向けるその剣士に、僕は尋ねた。
「あんた、名は?」
「……冨岡義勇(とみおかぎゆう)だ」
「冨岡さんよ。別の世界って口にしたってことは、あんたもこの世界に具現化された英霊なんだな」
一護が気さくに話しかけるが、義勇はピクリとも表情を変えず、水を打ったような沈黙(シカト)で返した。
「だったら、僕たちと一緒に行きませんか? 強力な仲間がたくさん――」
僕が慌てて誘いかけた言葉を、義勇は冷たく遮った。
「俺は、お前達と共にいるつもりはない」
それだけを言い残し、義勇は雨の向こう側へと、幻のように姿を消してしまった。
「……なんだあいつ、愛想のねえヤツだな」
一護が呆れたように頭を掻く。
強力な死神と、その頼もしい仲間たち。
僕たちは一護を連れて、皆が待つ『ジャンプ号』へと戻るのだった。
続く