アルト王国騎士団を巡る騒動は無事に解決し、僕たちは新たな仲間である特級魔導士グリードをジャンプ号へと迎え入れた。
そして休む間もなく、訓練所でのフィーネさんによる修行が再開された。
「さて、自分の魔力属性が『地』だと分かったところで、次はその魔力を自身の剣術に組み込む『剣術魔法』を身につけてもらう」
「それって、どうやるんですか?」
「百聞は一見にしかずだ。私の属性は『風』だが、よく見ていろ。風の剣術魔法――」
ヒュンッ!
フィーネさんが剣の柄に手をかけたかと思うと、瞬きする間もなく目の前の巨大な岩が綺麗に両断されていた。
「す、すごい! 今のって、一瞬姿を消したんですか!?」
「いや、違う。風属性の性質である『気体の強化』を応用し、自身を風と同化させて見えない速度で斬り抜けただけだ。君の地属性の性質は『固体の変化』。それを自分の剣術にどう組み込むか、自分で考えてみろ」
「はい!」
僕はとりあえず、自身の黄色い『地』の魔力を剣に纏わせ、様々なイメージを試してみた。しかし、ただ剣が重くなるだけで、うまくいかない。
(そうだ、グリードも確か地属性だって言ってたな。何かヒントを知っているはずだ)
僕は行き詰まりを感じ、グリードの元へ向かった。
「グリード!」
「よう、ジャン。どうした?」
「グリードも地属性の魔導士だよね? 地属性の接近戦での戦い方を教えてほしいんだ」
「なるほどな、そういうことか」
グリードは自身の得物である槍を取り出し、構えた。
「まず、見てみろ」
彼が槍に魔力を込めると、ただの鋭い刃だった槍の先端が、グニャリと形を変え、三又の『トライデント』へと変化した。
「これくらいなら、最初からトライデントの武器を買えばいいのだ」
後ろからついてきていたプンが的確なツッコミを入れる。
「まあ、最後まで見てな」
グリードがさらに魔力を練り上げると、トライデントの柄が猛烈な勢いで伸び、離れた場所にあった岩を深々と貫通し、粉々に砕き散らした。
「ええっ!?」
「本気を出せば、もっと巨大な岩盤ごと破壊できる。地属性の魔法は、物質の『変化』。つまり、自分で考えたオリジナリティーが作りやすく、それゆえに強烈なイメージ力と集中力が求められる。武器を巨大化させたり、全く別の形に変えたりと、応用は無限だ」
「じゃあ、グリードが知っている『最強の武器のイメージ』ってどんなの?」
グリードは少し遠い目をして答えた。
「そうだな……俺もこの『グングニル』でその領域を目指しているが、俺が知る中で最強なのは、かつてアルト王国を魔獣ゲノーモスから救った伝説の英雄が使っていた神剣『ユグドラシル』だな。ミーハーな地属性の奴らがこぞってあの剣をイメージして創り出そうとしたが、誰一人として成功しなかった。中途半端なイメージしかできないなら、最初からデカい大剣を買って振り回した方がマシなレベルだ」
「……ありがとう、グリード。自分が何をすべきか、分かったよ!」
僕は急いで修行場に戻り、剣を構え直した。
(魔力で腕から剣全体を包み込み、一つの強固な『固体』へと変化させる……!)
強く、硬く、絶対に折れない物質のイメージ。
その瞬間、僕の腕とオリジンソードを包んでいた黄色い魔力が、鈍い光を放つ『鋼(はがね)』へと変質した。
(鋼化した剣で、一気に……斬る!)
「はあぁぁぁっ!!」
僕が振り抜いた鋼の剣は、先ほどの岩よりもさらに硬い岩盤を、紙くずのように粉砕した。
「出来た……! これが僕の、『鋼の魔法』だ!」
翌朝。
僕、ルリカ、プン、フィーネさん、そしてグリードの五人でアルト王国の市街を歩いていると、一人の上品な出立ちの男性に声をかけられた。
「あなた方が、私の濡れ衣を晴らしてくれた恩人ですね」
「あなたは、もしかして……」
「はい。私が本物のアルト王国騎士団三番隊隊長、リュウです」
僕たちはリュウさんの実家である大きなお屋敷に招待された。
温かいお茶を出された後、リュウさんは深刻な顔で切り出した。
「実は、今この国に起きている『ノーム様(地の精霊)の加護が消失する災い』には、明確な元凶がいるのです。……クロノス帝国から送り込まれた、『六魔神』の一人。地のアマイモンです」
「クロノス帝国……!」
プロローグで出会った、あの恐るべき時の魔導士『ギーファ・クロノス』の顔が脳裏をよぎる。
ルリカが力強く立ち上がった。
「クロノス帝国は、私たちが追うべき最大の標的です。その災い、私たちが必ず終わらせてみせます」
決意を固めて屋敷の外へ出ると、そこには見知った顔ぶれが勢揃いしていた。
ナルト、サクラ、カカシ、サイ、ヤマトの第七班。そして剣心、左之助、ゴン、キルア、悠仁。
「話は聞かせてもらったってばよ!」
ナルトが拳と掌を打ち合わせ、ニカッと笑う。
「俺たちも行くぜ」
悠仁も力強く頷いた。
「心強いですが、敵は六魔神。一旦ジャンプ号に戻って策を練りましょう」とルリカが提案するが、グリードが首を振った。
「いや、こうなったら王属騎士団の力も借りるぞ」
グリードの提案で、僕たちは王城の中枢へと足を踏み入れた。
玉座の前に立っていたのは、荘厳な鎧を身に纏った威風堂々たる騎士だった。
「やっと来たか、グリード。今になって私を頼ることにしたのか」
「……兄さんにリュウの偽物の件を話して、無駄に事を荒立てたくなかったからな。だが、今回は別だ」
「えっ、兄さん!?」
驚く僕に、その騎士は振り返り、重厚な声で名乗った。
「私がアルト王国騎士団長、マグナス・ユグドラシルだ」
最強の騎士団長の協力を得て、僕たちの大所帯はアマイモンが潜むという荒野へと軍を進めた。
切り立った岩肌が続く渓谷に差し掛かった、その時。
「伏せろ!!」
先頭を歩いていたカカシの鋭い警告が響き渡った。
全員が地面に伏せた直後、僕たちが歩いていた場所が大音響と共に爆発し、猛烈な土煙が舞い上がった。
「やあ、初めまして。僕が六魔神・地の『アマイモン』だ」
土煙が晴れた崖の上に、不気味な笑みを浮かべた男が立っていた。
だが、脅威は彼一人ではなかった。アマイモンの背後から、異界の記録から呼び出されたであろう凶悪な『英霊』たちが次々と姿を現したのだ。
巨大な鎌を持つ銀髪の男、飛段。
全身を黒いコートで包んだ男、角都。
額に十字架の刺青を持つ男、クロロ・ルシルフル。
そして、不気味な関節音を鳴らしながら無数に這い出てくる、サソリの傀儡人形たち。
歴戦の英雄たちを前にしてもなお、絶望的なプレッシャーが場を支配する。
しかし、その空気を切り裂くように、フィーネさんが前に出た。彼女の体から、かつてないほどの激しい魔力の嵐が吹き荒れる。
「角都……!」
フィーネさんの瞳には、僕が今まで一度も見たことのないような、深く、暗い『怒り』の感情が渦巻いていた。
「貴様だけは……絶対に許さない!!」