圧倒的な絶望を前にしても、フィーネさんの瞳に宿る光は消えていなかった。むしろ、その表情はかつてないほどの静かな「殺意」に満ちていた。
「アマイモン、そしてお前たちに呼び出された亡霊ども。私の部下たち――騎士団の仲間たちの仇は、ここで討つ!」
フィーネさんが剣を構えると、刀身が神々しい光を放ち始めた。
「顕現せよ、不滅聖剣デュランダル!!」
その気迫に応じるように、角都の背中からおぞましい四つの黒い影――異形の仮面を被った怪物たちが這い出した。
「心臓が五つ……つまり、奪った四つの心臓を実体化させたってことか」
僕は冷や汗を流しながらも、フィーネさんが冷静さを保っていることに安堵した。
だが、敵は角都だけではない。
「おっと、俺たちがいることも忘れねぇでほしいねェ」
アマイモンの背後に並ぶ凶悪な英霊たち。音隠れの左近、多由也、君麻呂。暁のデイダラ、サソリ(ヒルコ)、そして幻影旅団のクロロ。さらに――。
「久しぶりだな、緋村抜刀斎」
全身包帯に包まれた男、志々雄真実が不敵に笑う。
「志々雄……!」
剣心が鋭い眼光で睨み返し、宿命の対決が幕を開けた。
【上空の強襲と第七班の援護】
「お前には、ここで大人しくしてもらうぜ、うん」
頭上から巨大な影が落ちた。デイダラの乗る『C2ドラゴン』が急降下し、一瞬の隙を突いてルリカを攫い上げたのだ。
「ルリカ!」
「お前の中にサスケの力があることは知ってんだよ。芸術の肥やしにしてやる、うん」
デイダラが起爆粘土をばら撒こうとしたその時、ゴンの野生の直感が危険を察知した。
「待って! ダメだ、爆発する!!」
「分かったところで、攻略できるわけじゃねえだろう!」
デイダラが起爆の印を結んだ瞬間――チィィィィッ!と千鳥の甲高い音が響き渡った。
空から一本の草薙の剣が地面に突き刺さり、それを伝って強烈な雷撃(雷遁)が駆け巡る。雷の性質変化を受けた起爆粘土は、爆発することなく不発に終わった。
「サスケ!」
そこに立っていたのは、去ったはずの本物のうちはサスケだった。
【飛段の狂気と封印魔法】
一方、地上では僕が最大の危機に陥っていた。
「痛ェじゃねえか……これで同じ痛みを味わってもらうぞォ!!」
大鎌を持った不死身の男・飛段に僅かに皮膚を掠られ、血を奪われてしまったのだ。飛段が自身の血で地面に円陣を描き、その中に入り込む。彼が自身の体を傷つければ、呪いによって僕にも同じダメージが返ってくる。
絶体絶命――そう思った瞬間。
空間にポッカリと穴が開き、そこからレオリオの腕が飛び出して飛段の襟首を乱暴に掴んだ。さらに、クラピカの『ダウジングチェーン』が飛段の腕に巻き付く。
「なにィ!?」
二人の見事な連携によって、飛段は呪いの円陣から強引に引きずり出された。
「お前の戦い方(タネ)は、彼らから聞いてる」
僕は地に足をつけ、鋼化したオリジンソードを構えた。
「鋼の剣術魔法、壱ノ型――『鉄断(てつだん)』!」
鋼鉄をも断ち切る重い一撃が飛段の防御を弾き飛ばす。
「鋼の剣術魔法、参ノ型――『鍛鉄穿(たんてつせん)』!!」
鋭く踏み込み、一点を貫く強烈な突き技が飛段の胴体を捉え、彼を大きく後方へ吹き飛ばした。
飛段が墜落した先は、先ほどデイダラがばら撒いて雷遁を免れた『起爆粘土の残骸』が密集しているエリアだった。
ドゴォォォォン!!
大爆発に巻き込まれ、飛段がバラバラになって地に落ちる。
「飛段を封印する!」
すかさず、騎士団長マグナスが重厚な詠唱を開始した。
時を止め、空(くう)を拒み、世界からその存在の証明を奪わん。
因果の糸を断ち切り、観測の彼方へと隔離せよ。
我が血と魔力を礎とし、世界線より放逐せん。
――『エターナル・クロノス・レコード』!!
眩い光の魔法陣が展開され、バラバラになった飛段は絶対空間の中に隔離され、完全に封印された。
【角都の融合と伝説の英霊】
「チッ……なら、これならどうだ」
角都が四つの仮面(心臓)を二つずつ融合させた。
地と水の融合魔法は、巨大な茨となって自在に形を変えながら襲い掛かる。火と風の融合魔法は、猛烈な火力を伴う炎の竜巻となって戦場を焼き尽くそうとする。
「一人で融合魔法を……!」
しかし、フィーネさんは冷静だった。風と同化し、茨の軌道を完全に見切る。
「風の剣術魔法、弐ノ型――『暴雨連牙(ぼううれんが)』!!」
豪雨が降り注ぐような超高速の連続斬撃が茨を切り刻み、見事に『地』の心臓を破壊した。
「危ない、フィーネさん!」
死角から『火と風』の竜巻がフィーネさんに迫る。僕は咄嗟に飛びつき、彼女をかばって地面を転がった。
「ジャン! どうしてこんな無茶を!」
「本能的に動いただけです! 融合魔法なら、どちらかを破壊すれば防げるはず!」
「その通りでござる」
風を切り裂き、剣心が躍り出た。逆刃刀の神速の抜刀術が、『風』の心臓を一刀両断にする。
「拙者は不殺(ころさず)を誓った身。だが……複数ある心臓のうち、一つや二つを斬ったところでお主を殺したことにはならぬでござるよ」
「……火と水は相性が悪いぞ」
角都は残った三つの心臓(水、火、そして自身)を強引に一つにまとめ、無数の黒い触手(地怨虞)を爆発的に増殖させて全方位攻撃を仕掛けてきた。
あまりの猛攻に、僕とフィーネさんは触手を斬り払うだけで精一杯になる。
(どうすれば……僕は、早くみんなを助けたいんだ!)
その時、僕の脳裏にマリー王女殿下の言葉が蘇った。
『ジャンさんのオレンジ色のブレイブリングには、歴代の継承者と共に肩を並べ、英雄となった特別な存在――【レジェンド英霊】が宿っています』
『あなたが真の意味で助けを求めた時、彼らは必ず力を貸してくれるはずです』
僕がブレイブリングを強く握りしめた瞬間、リングから眩いオレンジ色の光が天を衝いた。
奇跡は起きた。膨大な量の『砂』が突如として戦場に現れ、角都の触手を次々と飲み込んでいく。
「……我愛羅!!」
レジェンド英霊の正体は、砂漠の我愛羅だった。
我愛羅は静かに腕を掲げ、絶対的な威圧感と共に術を放つ。
「砂縛柩(さばくきゅう)」
角都の巨体と触手が、逃れられない砂の牢獄に完全に捕縛された。
「砂瀑送葬(さばくそうそう)」
ドゴァァァッ!!
凄まじい圧力で砂が圧縮され、角都の体内にあった残りの仮面(心臓)が粉々に砕け散った。
「やったー!!」
砂が晴れた後、そこには具現化された当初の『たった一つの心臓』だけになり、地に倒れ伏す角都の姿があった。
「ガキのお前らに……俺が……」
這いつくばる角都を、フィーネさんが冷たく見下ろす。
「お前から見れば、私たちは頼りないガキに見えただろう。だが、お前が負けたのは老いて衰えたからじゃない。若い世代の成長と、その絆の強さを侮ったからだ。お前はここで封印する」
フィーネさんはデュランダルを地に突き立て、マグナスと同じ封印の詠唱を紡ぐ。
時を止め、空(くう)を拒み、世界からその存在の証明を奪わん。
因果の糸を断ち切り、観測の彼方へと隔離せよ。
我が血と魔力を礎とし、世界線より放逐せん。
――『エターナル・クロノス・レコード』!!
かつて部下を奪った因縁の敵・角都は、フィーネさんの手によって永遠の空間魔法の中へと閉じ込められた。
続く
気になる属性
-
地
-
水
-
火
-
風
-
光
-
闇