Be The ZENLESS Z:One / from ビルド ZEW WORLD 作:ZENIUS
断絶と混乱、憎しみと争い、そして破壊と破滅。
その全ての根源へ──最後の一撃を放つ。
「……さぁ──」
その手に握られた、「黄金の兎」と「白銀の龍」。
「──実験を始めようか……?」
数多の方程式が、「ボトル」を振る音と共に流れる。
そして強い決意と確信を込め、それを挿し込んだ。
ラビット!/ ドラゴン!
「ベルト」のレバーを回す。抽出された二色のエネルギーが、彼の前方と後方で形作られる。
Are You Ready !?
「ビルドアップッ!!」
掛け声と共に二つが合わさり、一つの鎧となる。
有機体と有機体──本来それは何の相乗効果も生まない組み合わせ、そのハズだった。
しかしベルトは高らかに宣言する。
R / D
Best Match!!
ベルトが示した最高到達点──まさに理屈と法則を超えた「奇跡のフォーム」。
「「勝利の法則は決まったッ!!」」
Ready──Go!!!!
崩れかけた空へと跳び上がり、必殺技に備える。
その延長線上の先、諸悪の根源たる「怪人」もまた迎撃せんと跳ぶ。
VORTECATTACK!!!!
両者ぶつかるも、その力量差は圧倒的。
押し切られて体勢の崩れた怪人の腹に、渾身の「ライダーキック」が突き刺さる。
「これで最後だッッ!!!!」
勢い止まらず、地面目掛けて加速しながら降下する。もはや受け身を取る間も、攻撃を止めさせる術もなく、怪人は「二人」の力に屈服した。
「この俺が滅びるだとッ!?」
膨大なエネルギーと破壊力を持ったキックを受けながら、怪人はただ困惑と怒りに満ちた声で叫ぶ。
「そんなことがあってたまるかッ……!! 人間どもがぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
怪人は強烈なインパクトと共に地面に叩きつけられ、消滅。
その際に起きた爆発は空間を崩し、荒れ狂う嵐を作る。
暗黒の竜巻が唸る中、必死に「相棒」の方へ手を伸ばす。
「万丈ォーーッ!!」
気を失った彼の名を呼びながら、ただひたすらにもがく。
耳が潰れそうなほどの轟音、身が裂けるような痛み……そのどれもを無視できるほどの強い感情。その感情に突き動かされるまま、無我夢中で手を伸ばした。
二メートル、一メートル── 十センチ、三センチ。指先が、あともう少しで相棒に届く。
しかし意識を失う間際、手の中に感じたのは──冷たく硬い、「時計」の感触だけだった。
NEW WORLD
ZEW WORLD・・・?
Z
Z
──痛む身体と、尋常ではない疲労感。ただ真っ暗闇の中、自分はそこにいた。
今は夢なのか、それとも目蓋を閉じているだけで意識はあるのか、それすらも曖昧だ。もしかしたら自分は死んで、今いるここは死後の世界なのかもしれない。
なんにせよ、身体が動かない。
ならばもうこの闇の中に身を預けてしまおうか……そう思った時、自分の前に誰かが背を向けて立っていることに気付いた。
いつの間に現れたのか、何者なのか……そう質問する先に、その「誰か」は少し横顔を見せ、話しかけてきた。
「……いつまで眠っているんだい?」
突然、暗闇だったこの場所に光が差し込み始めた。
「早く目を覚ましなよ」
その言葉を最後に光は強くなり、「誰か」を包むようにしてホワイトアウトしてしまった。
最後に聞こえたのは、心地の良い波の音──
──古い、大きな灯台が望む、小さな港。
桟橋には今日も多くの釣り人が、のんびりと釣りを楽しんでいる。
その釣り人らの中でも一際古参である「谷じい」もまた、海面に垂らした糸とにらめっこをしている。
「おはようございます、谷じい!」
そんな彼に、若い船乗りが元気に声をかける。
「今日も釣ってますねぇ! どうですか、首尾は──」
谷じいの傍らには、大量のゴミが積み上がっていた。濡れていて、海藻がくっ付いているところ、全て彼が釣り上げたものだろう。
それに気付いた船乗りは、思わず閉口。暫くの沈黙の後、谷じいが溜め息混じりに話しかけた。
「全く……場所を変えたってのにどうしてゴミしか釣れんのじゃ……」
「……い、いやぁ……なんと言うか、その……もう一種の才能なんじゃないですかねぇ……?」
じとっと睨む彼の視線を受けて、船乗りはまた閉口。
その内やっと釣竿がしなり、意気揚々と谷じいがそれを振り上げるものの、糸の先に付いていたのはペットボトルだった。
「……はぁ……なんじゃ一体コレは……もうペットボトルは十本目じゃぞ……なんでゴミしか釣れんのか……」
「うーん……これもう、呪われてるんじゃないですかね? それか……谷じいの餌は魚が嫌うヤツだったり?」
「なんじゃ! ワシの隣に来てまで滅入る事ばかり言いよって! それに、餌は普通に店で買った物じゃ!」
「あぁ、すみません! つい……」
「はぁ〜……全く……」
ブツブツとぼやきながら、釣り上げたペットボトルを傍らのゴミ山に積んだ。それを見ては、谷じいは呆れ顔。
「しかし皆、海に捨て過ぎじゃ……なんじゃこの量は、けしからん! 海はゴミ捨て場ではないんじゃぞ!」
「確かにこれは多過ぎですよね……いやゴミの量に驚くべきか、これだけ釣り上げる谷じいに驚くべきか……」
「ふんっ! これほど捨てられとるのなら釣れんのも納得じゃい! 道理で魚も寄り付かんワケじゃ──」
向かいの桟橋で釣っている釣り人が、なかなかの大物を釣り上げていた。おまけに谷じいの足元の海面で、魚が煽るようにライズ……谷じいは言い訳を止めた。
「……いっそ、向かいのスロノス区にあるリゾートまで行こうかのう。あっちの方が釣れそうじゃ」
「あ。なんか物凄い盛り上がってるって言う場所ですよね。良いんじゃないですか? 向こうだったらスマートフォンとか釣れるかもしんないですよ!」
「お前はさっきからなんなんじゃ!」
ふと、谷じいの視線が、近場に浮かぶブイの方へ向く。
「……ほれ、見ろ。あんな大きなゴミも捨ておって」
「どれですか?」
「あそこに浮かんでおるブイじゃ。袋みたいな物が付いておるじゃろ?」
船乗りが目を凝らす。確かになにか大きな物がくっ付いていた。
「あー。確かになにか……」
「お前はさっきワシが呪われとるだの言うとったが、本当に呪われるべきはあーゆーのを捨てとる奴じゃろうに!」
「……ん?」
谷じいより目の良い彼は、そのくっ付いているゴミが人の形をしている事に気付く。
「……え。谷じい、アレ……人……じゃないっすか?」
「……なに? 人? 本当か……!?」
「……あ、いや……ゴミ……?」
「なんじゃ、やっぱりゴミか……人なワケがないじゃろ」
「…………アレ? え? やっぱ人……?」
船乗りは桟橋の奥へ行き、出来るだけブイに近付く。
そして近付いて確信する。ブイに引っかかっているのは、気絶した人間だと。
「た、谷じい!! 人だッ!! 人がブイに引っかかってるッ!!」
「なんじゃとぉ!?」
すぐにブイの方にボートが行き、その人間を救出。酷い怪我を負った、若い男であった。
桟橋に上げると、まず谷じいが脈を測った。
「……うむ、生きておる! すぐに救急車と治安官を呼ぶのじゃ!!」
居合わせ人たちが彼の指示を受け、慌ただしく動く。
その騒ぎが耳に入ったのか、男は一度呻くと、ゆっくり目を開いた。
「うぅ……こ……ここは……?」
「おぉ! 意識が……! ここはヤヌス区のポート・エルピスじゃ!」
「ポート……エルピス……?」
「ああ! 一体あんた、なにがあったんじゃ!?」
「お……れ、は……」
「うん!?」
男は朦朧とした意識のまま、呟いた。
「……おれは……誰、だ…………?」
彼の右手には、「時計のような機械」がしっかりと握り込まれていた。
──救出された青年が、病院に運び込まれてから数日後。彼の元を二人の治安官が訪ねた。治安局ルミナスクエア分署に勤める「
青年は身分証の類を持っておらず、二人はその身元を確認する為にやって来たのだ──が、
「……本当に、何も覚えていないんですか?」
幾らか回復したのか、ベッドから半身を起こして聴取に応じる青年だが、朱鳶のその質問には辿々しく首肯した。
「住所も……名前も、全く?」
「はい。全く……」
「生年月日……年齢とかも思い出せそうにないですか?」
「ん〜……おじさん……って、呼ばれる年齢ではないハズ……はい……」
朱鳶は思わず、傍らに立つ青衣に目を向けた。するとそれを合図と捉えたのか、青衣が二本指を立てながら尋ねた。
「意識が明瞭としておらぬやもしれんな。おぬし、これが何本に見える?」
「……ラブアンドピース」
「ぬぅ、困った。朱鳶よ、この者は未だ万全とは言えぬようだ」
思わず眉間を押さえる朱鳶。
「……医師からはもう問題ないと聞かされたのですが……」
「いやいやいやいや、意識はハッキリしているんですよ!」
青年は必死に弁明する。
「ただ……自分自身が思い出せないだけで記憶はあるらしく……無意識の反射だとか、と言う形でそれが出て来ることもあるって医師から言われて……多分、今のもそれじゃないかなと……」
「ふむ……機械で例えるが、記憶回路が損傷した『ボンプ』が良く陥る症状であるな」
「……ボンプ? ポンプの言い間違い?」
「……ボンプさえ忘れたと言うのか?……あぁ、ほれ。あれだ」
青衣が指差した先を見ると、ちょうど廊下を歩いている「ウサギっぽい耳が付いたモチモチした物体」が目に入った。すぐに青年は幽霊でも見たかのような表情でそれをポカンと見ていた。
どうやら忘れたのは自分自身に関する事だけではないと気付いた朱鳶が、幾つか質問を始めた。
「ここは『新エリー都』の、ルミナスクエアにある大病院です。これらに聞き覚えは?」
「シン・エリート?……なんだか俺にピッタリな名前の街だな…………」
「…………最近、『
「えいひ?……初めて聞いた……」
「……『エーテル』、『エーテリアス』は……?」
「なんか、『Hard』『Harder』みたいだな……比較級とか、最上級、みたいな?」
割り込んで青衣が質問する。
「さすがに『ホロウ』は覚えておろう?」
「ホロウ…………空洞? 空洞放射の話? もしかして……プランクの法則!? あの、プランクの法則と言うのはドイツの物理学者マックス・プランクが考案した黒体放射のスペクトラムに関する法則で、物体が光を吸収または放射する時、そのエネルギーは──」
「…………」
「……じゃ、ない?……あっ、はい……覚えてないです……」
青衣は朱鳶を連れて廊下に行き、声を潜めて話す。
「……頃合いを見て切り上げるか。このままでは『リゾート』に行けぬぞ」
「ちょ、ちょっと青衣先輩!? 諦めないでください!」
真面目な朱鳶は引き止めるが、青衣は難色を示していた。
「さりとて朱鳶よ……なにも覚えていないと言う者からなにか聞き出そうなどと……それはもはや治安官ではなく、カウンセラーの仕事ではないか。我らでは暖簾に腕押し、石に灸だ」
「しかし、怪我した状態で海を漂着していたんですよ?……誰が見ても、事件に巻き込まれたのは明白です。なにが彼の身に起きたのか、ハッキリさせなければ……」
朱鳶は「それに」と言って続けた。
「……あの人自身も、もしかしたら『ただの被害者』……ではないのかもしれませんし……」
「ほう?」
「もう既に彼の指紋や顔のデータは、市民認証ファイルや治安局のデータベースと照合済みです……しかし、全く該当しませんでした。少なくとも新エリー都まで辿り着いた以上、なにかしらの痕跡はあるハズなんですけど……」
「ふむ……犯罪者であらずも、新エリー都の市民でもあらずか……確かに奇怪だ」
「そして気になるのは……彼が唯一持っていた物です」
朱鳶は自身のスマートフォンで、「彼の所持品」を撮った写真を見せた。
「彼は財布やスマートフォンと言った物は所持していなかったのですが……この用途不明の『円形の装置』は大事そうに待っていたそうです」
彼女が見せた画像には、表面にヒーローマスクのような物が描かれた「円形の装置」があった。
「目下、どう言った装置なのかは鑑識が調べていますが……」
「……我には玩具にしか見えぬが」
「最初は私もそう思っていましたが……どうやらかなり精密な機械のようです。とても、一般人が作るとは考えられないほどに」
朱鳶はスマートフォンをしまいながら、
「最近、この辺りのホロウでは『ホロウレイダー』の一団が不穏な動きを見せています……私にはどうにも、なにか関連があるのではと思えてなりません」
「確か、多くのホロウレイダーがなにかを探している……と言ったものだったか」
「もし関係しているのならここでなにか聞き出さないと。もしかしたらなにか不都合な事実があり、記憶喪失を装って難を逃れようとしている可能性もあります」
「……成る程」
青衣はちらりと、病室の彼を一瞥する。心配そうにこっちを伺っていた。
「……されど我には、彼奴がなにか隠しておるようには見えん」
「……そうですか?」
「『思い内に在れば色外に現る』……どれほど取り繕うとも、嘘や隠し立ては仕草に出るものだ……彼奴にはそれはない。あれは本当に記憶を失っておる、哀れな青年で間違いなかろう」
「……それはそれで捜査対象かと思うのですが……」
とは言え、あまり時間をかけられないのも事実。青衣の意見を飲み、今日は帰還する事に決めた。
「……分かりました。押収している装置の分析を待って、再度伺いましょう」
「うむ。では、リゾートに向かうか」
「……やっぱり行きたいだけですよね?」
「そも、我らの業務は完了していたハズだ。この件に関しては後から押し付けられたのだぞ」
二人はまた病室に入り、緊張気味な彼に声をかけた。
「どうやらまだ万全ではなさそうですので……私たちはまた後日、改めて伺います」
「なにか思い出せば、ルミナスクエア分署へ一報を入れると良い。その際は朱鳶か、この青衣の名を出すのだぞ?」
「あ……は、はい。どうも、ご迷惑を……」
立ち去る間際、朱鳶が声をかける。
「家族や、友人の名前とか……とにかくなにか思い出したら連絡してくださいね」
「…………」
家族、友人──その名を聞いた途端、ふわりの脳内に浮かぶ言葉の数々。
青年はその言葉を必死に紡ぐように、二人を呼び止めた。
「ま、待って……友人……なんか思い出しそう……」
「……え?」
「ちょっと待って、……なんか……もう、舌先まで出てるんだよ……」
糸を辿るように言葉を引きずり出し、それを口から出す。
「……バカ」
「…………え?」
キョトンとする朱鳶と青衣。
「……バカ、ですか?」
「突然我らを罵倒するとはな。して、なにが気に障ったのだ?」
「いや違う違う!! ゆ、友人の特徴! そう……俺には友人……相棒がいる……!」
誤解を解いてから再び、言葉を引きずり出す作業に入った。
「まず、筋肉のバカと……」
「……筋肉のバカ?」
「ドルオタのバカ……」
「ドルオタのバカ……?」
「あと……ヒゲの、バカ……」
「…………」
青衣が彼の交友関係について「馬鹿しかおらぬのか」とつっこむ。
更に青年は続けて、
「あ、あと……えと……フリーの記者やってるスパイと……ネットアイドルやってる……火星の、女王」
「気が動転されているようなので今日はお休みになられてください」
「だから違うんだって!! 本当に…………あっ」
その記憶の断片を辿って行った末、思いもよらず思い出したものがあった。
今、自分で挙げた「友人たち」の呼ぶ声が、ふと耳元で聞こえたような気がした。
「……『
「え?」
その声たちが言った「名」を、自らの声で呼んだ。
「『
そして自信なさげに、
「……多分」
Be The ZENLESS ZOne
※時系列は「新・エリー都の落日」の前となります。
※主な試みとしては、オリジナルのスマッシュや本編未登場のベストマッチフォームの登場等と言ったビルド設定の拡張を目的としております。
※ゼンゼロの世界観については、原作を踏まえた上での独自解釈で進める予定です。
※ゼンゼロ側のストーリーは、「リン」主体の方で進める予定です。
※プロットの修正につき、サブタイトルの変更と、本文の一部書き直しを行いました(2026.6.24)