憎まれっ子、世にはばかる   作:ヴィット

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※警告文

主人公は犯罪者側の人間であり、性格は最悪です。
暴力・性暴力の表現があります。
クロスオーバー先主人公のキャラ通りの設定とはいえ、犯罪被害者を嘲笑う表現があります。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
以上の事を理解の上、全て自己責任での閲覧をお願い致します。


第1話

 

「はぁ。何でこんなクソ面倒なことやらされてんだ、俺は……」

 

 はじまりの田舎町、マサラタウン。

 その南側にある家屋の庭で一人の少年が嫌々と草むしりをしていた。

 

 少年は別にこの家の者ではない。

 たまたま同世代の子どもたちに交じって野球をしていたところ、ボールがこの家の窓ガラスを割ってしまったが故に、罰として草むしりをしているだけである。

 

 ちなみに一緒に遊んでいた子どもたちは逃げた。

 彼だけが逃げ遅れている。

 

「あいつら、マジで覚えてろよ……」

 

 恨み言を吐き、少年は作業を続ける。

 この町で家屋の主は「頑固者のガミガミ爺」と言われる程、性格のキツイ人物である。

 少年がサボっていれば、翌日には怒鳴り込んでくる。

 それが嫌だから、少年は渋々やっていた。

 

 まあ性格が終わっているのは少年も同じだが。

 彼は真面目に作業しているように見えて、実は手を抜いている。

 草を抜くのではない。

 スコップで地面を掘り返し、草を土の中に埋めているだけだ。

 

 後々になってバレるのは間違いないが、少年からしてみれば問題は無い。

 何故なら、明後日にはマサラタウンから旅立つからだ。

 

 

 さて、十歳になる年のマサラタウンの子どもたちはポケモンを貰って旅立つという習慣がある。

 この少年も十歳だが、精神年齢はかなり違う。

 なんと彼には前世の記憶があるのだ。

 

 ゲームフリークという会社が製作した子供向けゲーム、ポケットモンスター。

 それがアニメ化された世界に少年は転生してきたのだ。

 

 アニメ版主人公のサトシ、そしてライバルキャラであるシゲルの二人は少年の同期である。

 そして少年はサトシやシゲルが最初のポケモンとして何を選ぶのかを知っている。

 

 ……まあつまり、少年には同期の子どもたちよりも多大なアドバンテージがあるのだ。

 原作知識を持っている転生者がやりたい放題する二次創作なんてよくある話。

 本来なら準備期間として色んなことを学ぶはずだったが、少し年齢が下の子どもに野球しないかと誘われ、このザマである。

 

「クソが、忙しいことを理由に断ればよかった。何が気分転換だ、クソったれ! 」

 

 勉強やアルバイトばかりし過ぎてストレスが溜まっていたことを言い訳に、野球に逃げようとした罰だ。

 やりたくもない草むしりをしながら、少年は逃げた子どもたちを呪った。

 

 

 夜の九時、子どもは寝る時間である。

 そんな時に少年は机に向かってノートを開いてにらめっこ。

 考えていることは当然、「最初のポケモンは何を選ぶか」である。

 

「フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメのどれかってことだろ? こいつらには微塵も興味ねーんだが……」

 

 カントー地方の御三家は良くも悪くも、初心者向けで育てやすい。

 アニポケにいたリザードンは「元が捨てられたポケモン」故に言うこと聞かなくなるのは当然だと思われるが、最初のポケモンに限ってそういう心配ごとは無い。

 マサラタウンなだけに、心も純粋無垢のまっさらだ。

 

 リザードンのカッコよさに惚れてヒトカゲを選ぶ子どもがいれば、最初のジムを楽に攻略するためにフシギダネやゼニガメを選ぶ子どももいる。

 隣町にあるトキワジムは地面タイプの使い手だ。

 初心者にとってこれほどまでに都合のいい環境は他にないだろう。

 

 まあ原作知識を持っている少年からすれば、トキワジムは地雷以外の何物でもないが。

 なんせそこのジムリーダーはロケット団のボスであるサカキ。

 強い上に黒い噂ばかりの男だ。

 確実にミュウツーを使ってくることから、間違いなく敗北確定である。

 

 そうなれば、トキワシティよりも少し遠い町、ニビシティやグレンタウンが最初のジムとして相応しいだろう。

 フシギダネを選んだ場合はタケシを、ヒトカゲを選んだ場合はカツラを最初の相手として選べばいい。

 

 しかし、少年はもっと別のことを考えていた。

 

(明後日旅立つ子どもは俺、サトシ、シゲル、……そしてオサムの四人か)

 

 ちなみに同年代の子どもは少年含めて四人だけ。

 同世代ではない、同年代だ。

 

 実は五人目の子どもが居るのではと少年は疑ったこともある。

 なので、「こいつ頭おかしいのか? 」と疑われるくらい、周りの大人たちに聞き回っていた。

 結果、旅立ちの日に研究所を訪れる子どもは四人のみだと判明。

 

(オサムって、あの高橋か? 転生者は俺だけじゃないんだよなぁ)

 

 少年の前世では、大学時代の友人の中に高橋修という男子がいた。

 彼の知る高橋は「巨乳に拘ってばかりの変態」でしかない。

 何故そんな人物と仲良くなったのかといえば、馬鹿話ができる貴重な悪友だったことが理由として挙げられる。

 

 そんな高橋だったが、この世界では何故か金髪のイケメンに変貌していた。

 しかも「金持ちのお坊ちゃま」ときた。

 女子の胸に視線を向ける仕草さえ無ければ、あの高橋だと気がつかなかっただろう。

 

(金持ちでイケメン。……どう考えてもシゲルの上位互換じゃねーか! マジでふざけんな! )

 

 前世でも現在でも、少年はフツメンの範疇にある。

 おまけに性格の悪さもあってか、女子からの人気は全くといっていいほど無い。

 前世では見くびっていた相手が急に女子にモテるようになったことから、少年はとてもご立腹だった。

 

 当然、オサムはポケモンに関する知識を持っている。

 何なら図鑑埋めの為に協力することもあった。

 そして少年が転生者だということも向こうは気づいている。

 

 ポケモンマスターの玉座に座れるのはたった一人だけだ。

 オサムはもちろん、サトシやシゲルも少年にとっては手ごわい強敵である。

 

(……まずはサトシだ。あいつの主人公補正をできる限り削るか)

 

 少年は何の躊躇いもなく、卑怯な手を使う。

 それを恥だとは思ってもいない。

 必要なら同郷の人間ですら陥れる卑劣さを持っていた。

 

 ……オサムやシゲルとは違って、サトシは今の内であれば対処できる相手だ。

 失敗すればサトシは間違いなく順調に勝ち上がってきてしまうだろう。

 千載一遇の好機(チャンス)を少年は逃したくなかった。

 

 

 

「失礼しまーす。ポケモンを貰いに来ました! 」

 

 この日、少年はわざと(・・・)寝坊し、わざと(・・・)一番最後にオーキド研究所にやって来た。

 

「遅いぞ! サトシよりも遅い時間に遅刻とはどういうことじゃ!? 」

 

 案の定、少年はオーキドに怒られた。

 だが問題はそこではない。

 

「用意していた3匹じゃが、お主よりも先に来た3人が持って行ったぞ! 」

「ええっ、そんなー」

 

 そう、少年よりも先に来た子どもはカントー御三家を選んだ。

 

(計画通り! サトシはピカチュウを選ばなかった(・・・・・・)! )

 

 もし少年よりもサトシが遅れてきた場合、間違いなくピカチュウは選ばれただろう。

 しかしサトシは少年よりも先に研究所に来てしまった。

 

(持って行ったのがフシギダネかヒトカゲかは知らねーが、これでお前がリーグ戦に参加することなんて無い! )

 

 サトシというトレーナーはピカチュウという最高の相棒がいたからこそ輝けた。

 しかしそのピカチュウを連れていない以上、ただの凡百のモブトレーナーに成り下がる。

 選ぶべきポケモンを選ばなかった時点で、躍進は無くなったも同然だ。

 

 シゲルは原作通りゼニガメを選んだだろう。

 オサムはどちらかを選んだは解らないが、後々解ることだ。

 

「ご、ごめんなさい。つい寝坊してしまって。……あの、せめて図鑑だけでも欲しいのですが」

「ポケモンを持たない子どもに渡せるワケないじゃろ! 」

 

 ポケモンを持っていない子どもに大事な図鑑を託すワケが無い、正論である。

 少年からしてみれば図鑑なんて正直どうでもよかったが、ここで違和感を覚えられた場合が後々ヤバいことになると解っているので、あえて子どもらしい態度を見せていた。

 

「な、ならモンスターボールが欲しいです! ポケモンは自分の力で獲りに行きますから! 」

「君は本当に反省しておるのか!? 約束も守れない子どもに旅立つ資格は無い! 諦めて家に帰りなさい! 」

 

 少年のしつこい態度に流石のオーキドも不快に思ったのか、対応が悪くなる。

 これ以上ここに留まることは難しいだろう、間違いなく鉄拳制裁が飛ぶ。

 

(フン、まあいい。モンスターボールの調達先には宛てがある。こんなクソ爺に頼る必要なんて無い)

 

 少年は舌打ちをし、踵を返して研究所から出た。

 7匹目を捕獲した場合、この研究所に送られるという問題はあるが、そっちについても少年には考えがあった。

 

 家に帰宅した少年は靴を脱ぎ、自室に戻る。

 前世と同じ、父は闇金の斡旋業者、母はエステ詐欺の常習犯というロクでもない家庭だからか、「ただいま」や「おかえり」といったコミュニケーションすらない。

 椅子に座りながらテレビを見ている母は子どものことなんてどうでもいいと言わんばかりの態度だ。

 

「お袋、頼みがあるんだけど」

「何よ、こっちはアンタに構いたくないんだけど」

「モンスターボールが欲しいんだけど、用意してくんない? 」

 

 少年の発言を聞いて、母は彼のいる場所へと顔を向ける。

 

「アンタ、オーキド博士からポケモンを貰うんじゃなかったの? 」

「びりっけつだから駄目だって。諦めて家に帰れ、だとさ」

 

 少年はそういうと、母は溜息を吐いて財布を開く。

 

「……千円やるから、それでトキワシティのフレンドリィショップに行きなさい。五個は買えるでしょ」

「解ったよ」

 

 母から千円を受け取り、少年は家を後にした。

 なお、少年はちゃんと旅支度は済ませており、カバン等は自費である。

 お金も、親からのお小遣いなんてモノは無く、新聞配達などで稼いだなけなしの貯金だ。

 

 もう一度言うが、彼の家はマサラタウンの中で最も冷え切っている。

 千円だけを渡したのは、子どものポケモンを用意するなんて面倒事を母はしたくなかったからだ。

 本当なら金も渡さずに少年を家から叩き出すこともできたが、少年が窃盗をやらかす可能性もありえたので、仕方なくそうしたのだろう。

 

「私らに迷惑かけんじゃないわよ」

「解ってる」

 

 これ以降、この親子が会話をすることなど無かった。

 

 

 マサラタウンからトキワシティへ向かう途中、大雨が降った。

 少年は折り畳み式の傘を開き、降りかかる雨水を防ぎながら歩く。

 

 そんな悪天候の時だった。

 歩いている途中、少年はポケモンの姿を見かける。

 

「あれは、デルビルか? 」

 

 ダークポケモン、デルビル。

 ポケットモンスター金・銀初出のポケモンだが、主な生息地がカントー地方の都会近くというワケの解らないことになっているヤツだ。

 ちなみにダークポケモンというのは分類の話であり、某ゲームに登場した魔改造された戦争兵器のことではない。

 

 そのデルビルだが、傷だらけで相当弱っている。

 炎タイプ故か、雨に打たれているので瀕死どころではない。

 

「……まあいい。ポケモンセンターの女医たちからの好感度を稼ぐチャンスだと割り切るか」

 

 トレーナーである以上、どうしてもポケモンセンターを利用しなければならない。

 ゲットするかしないかは別として、「弱っているポケモンを助けた」という評価は後々に響く。

 

 デルビルを抱え、少年は駆け足でトキワシティへと向かうことにした。

 幸運なことに野生のポケモンに襲われるなんてことは起こらなかったが、それでもポケモンを抱えて走る場合の体力消耗は酷い。

 特に子どもがそれをやるのなら猶更だ。

 

 時間をかけてやっとの思いでトキワシティに到着し、少年はポケモンセンターに向かって走った。

 

「すみません! このポケモンを治して下さい! 」

「なっ!? どうしてこんな傷を負わせたの! 」

 

 室内に入り、少年はジョーイさんに傷だらけのデルビルを見せるも、怒られる。

 少年が傷を負わせたのか、あるいは無理をさせたのか、そういう勘違いをしてしまったのだろうか。

 

「こいつは道端で倒れていたんです! 早く治して下さい! 」

「そ、そうだったの。解りました。治療しますので、ここで待ってて下さい」

 

 誤解は解け、ジョーイは急いでデルビルを治療室へと運ぶ。

 間違いなく少年が良い人だと思われたのだろう。

 

(……さて。やることやり終えたし、さっさとフレンドリィショップに向かいたいところだが)

 

 ここで待っていないと不審に思われるので仕方なく近くにあったソファに座る。

 そして同時にある疑問が浮かんだ。

 

(そういや、サトシのヤツもここに来るはずだよな? )

 

 原作なら傷だらけのピカチュウをポケモンセンターへと運ぶ話になっていたが、少年のせいでピカチュウは別のポケモンに置き換わっている。

 傷だらけになるのがフシギダネかヒトカゲかはともかく、サトシはここに来る可能性は充分ありうる。

 なんせ、オニスズメに投げた石をぶつけているのだから。

 

 しかし何らかの理由があったためか、少年はサトシと遭遇していない。

 ピカチュウ不在のせいでサトシの行動は大きく変わり過ぎているからだ。

 

 カバンからノートを取り出し、トキワシティ近くでゲットできるポケモンについて確認する。

 コラッタ、ポッポ、オニスズメ、ニドラン、キャタピー、ビードル、そしてピカチュウ。

 ピカチュウ以外であれば余裕で捕獲できるだろう。

 

(やはりキャタピーだよな。最終進化形態のバタフリーが持っている「ふくがん」と「ねむりごな」の組み合わせはグンバツ過ぎる。なんせ97%の確率で相手を眠らせられるんだぞ? )

 

 今後、強力なポケモンを捕獲するという時の為に捕獲要因は必須だ。

 それにタケシを相手にするのであれば「ねんりき」も必要になってくる。

 故に、バタフリーになれるキャタピーが最適解だ。

 

「お待たせしました。見たことも無いポケモンだったから薬を使いましたわ」

 

 治療が終わったのか、ジョーイがこちらにやって来た。

 そして少し後ろでデルビルが警戒するかのように少年をじっと見ている。

 

「それはそれは。元気になって良かったですね」

 

 そう言って少年はノートをカバンの中にしまい、ソファから立ち上がる。

 

「俺はこれから用事があるので、ここで失礼させて貰いますね。こう見えて忙しいので」

「あら? この子は君のポケモンじゃないの? 」

「さっきも言いましたけど、そいつは道端で倒れてたんです。つまり野生のポケモンなんで、俺は関係無いんですよ」

 

 ゲットしていないから野生のポケモン。

 それにデルビルは少年を警戒しているし、どう考えても友好的な関係は無理だと思われる。

 

 優秀な炎タイプをゲットしたいのならリザードンやブーバーン、ウインディといった優秀なポケモンがカントー地方にはいるので、デルビルに拘る必要が全く無い。

 故に、少年は時間をかけてまでデルビルに関わろうとは思わなかった。

 

 





Q:サトシがピカチュウを選んでないんだけど!?

A:サトシが一番最初に選ぼうとしていたポケモンがゼニガメの時点でお察し。
  フシギダネ、ヒトカゲといった順に選ぼうとし、御三家が残って無かったからピカチュウを選ぶしか無かった、というのが原作の流れ。
  御三家のどれか一匹が残ってたら、ピカチュウは選ばれない。


Q:少年がクズ過ぎる!

A:父は闇金の斡旋業者、母はエステ詐欺の常習犯という血統から産まれたナチュラルクズ野郎。
  本人もそれなりに恵まれているので、特に同情の余地なんて無いですね。
  fateシリーズでいうところの、クリストファー・コロンブス。


Q:何で五人目の子ども居ないの?

A:五人目とかいたら、流石のオーキド博士もイーブイとか用意すると思う。
  原作だと、オーキド博士は子どもの人数を「三人」だと勘違いしてたみたいだし。


Q:コイツすげー弱そう……

A:原作(外道? 悪党? だからなに?)読んでない読者に説明するけど、理不尽な力を持っているだけのチンピラだぞコイツ。
  例えばの話だけど、もしハンターの世界に転生したら多分「放出系」になってたと思う。
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