マンキーの無慈悲な横やりによってオニスズメは撃沈。
野生ポケモン特有の「存在を縮小する」生存能力によって、オニスズメは少年たちの視界から消え去る。
別に死んだワケではなく、ただ逃げただけだ。
「グルルルル……」
乱入者の姿を見てデルビルは警戒を解かず、うなり声をあげる。
自分を狙う新たな敵だと判断したのだろう。
少年は溜め息を吐き、草陰から姿を現す。
最初、デルビルは人間の姿を見て動揺したが、一度見たことがある少年の顔に少し驚いた様だ。
「お前を治してくれた女の人、ジョーイさんがな。お前のこと心配してたんだ。何かの騒ぎに乗じてここらに逃げた様だが、何でそんなことしたんだ? 」
「ワ、ワウ……」
少年の話を聞き、ようやくデルビルは警戒を解く。
ジョーイに心配をかけさせたことに対しては申し訳なく思っていたようで、少し気落ちしているように見えた。
何か事情でもあるのだろうか?
少年は何故デルビルがここにいるのかを考える。
本来、デルビルというポケモンは都会近くに生息しており、群れを成して獲物を狩る習性がある。
そんなポケモンがマサラタウンのような田舎の近くにいて、単独で行動している。
(さてはコイツ、何か問題起こして群れから追放されたな? ジョーイの世話を拒否したのは、野生としてのつまらんプライドか)
別に少年はデルビルの事情をある程度把握できたワケではない。
群れから追放された云々はただの憶測でしかないのだ。
何らかの強敵によって群れが壊滅した場合も、あるいは何らかの災害によってこのデルビルだけが別の場所に飛ばされた可能性だってありえるというのに。
まあ理由はどうあれ、酷い目に遭ったということだけは確かである。
そんなデルビルが行き着いた場所がマサラタウン近くの草原だった。
今この場でオニスズメと戦っている理由は不明だが、恐らくオニスズメを怒らせるような真似をしたのだろうか?
(恩を返さずに逃げ出すとはなんて野郎だ。元から捕まえる気なんざ更々無かったが。コイツ、裏切りそうだな……)
少年は過去に自分がやらかしたことを棚に上げて、デルビルを厳しい目で見る。
それ以上に非道な真似をしているというのに、そういった都合の悪いことは全て無視していた。
「まあいい。お前の無事をジョーイさんに報告して、この件は終わりだ。行くぞ、マンキー」
「キキッ!? 」
少年の態度にマンキーは驚く。
最強を目指すなんて言っていたから、てっきりデルビルを捕まえるものだと思っていたのだろう。
事実、「ひのこ」の火力はマンキーの眼からしてみても高い。
あのトキワの森で見かけたピカチュウとは比べ物にならないので、デルビルという種族は恵まれているといえる。
……耐久面や進化先を考慮しなければの話だが。
少年たちはデルビルに何かすることも無く、その場を去った。
残されたデルビルは何か奇妙なモノに向ける視線で少年を見ていた。
トキワシティのポケモンセンターに到着後、少年はジョーイにデルビルの様子を伝えた。
デルビルに対して何もしなかったのは正解だったようで、ジョーイから何か文句を言われることは無かった。
当然だ、嫌がるポケモンを無理矢理連れ回していれば、ジョーイは間違いなく激怒していただろう。
まあ、マンキーが少年と同行していたからジョーイは頼み事をしていたワケだが。
(大分出遅れたが、まあいい。今日中に早くトキワの森を抜けるぞ)
今頃サトシはタケシを連れて「おつきみ山」を通っている途中だろう。
そうなった場合、ニビジムはタケシの父のムノーが復帰していると思われる。
故にタケシ不在でジムに挑めない、という状況にはなりえないのだ。
正直な話、ムノーという人物の実力は原作アニメでは一切判明していない。
しかし戦法はタケシに似通っているモノと思われる。
イシツブテ、イワークの2体は確実に使ってくるだろう。
少年はマンキーを捕まえられたことを幸運だと思い、そのままトキワの森へと入っていく。
だが、今になって思わぬアクシデントが起こってしまった。
「そこのお主、マサラタウンのトレーナーでござるか! 」
変な鎧を着た子どもに刀を向けられているこの状況に、少年は苛立つ。
原作アニメで登場したポケモントレーナーの一人で、カイロスという大型ポケモンの使い手だということは解る。
「だったら何だ? こっちは忙しいんだが」
「ポケモントレーナー同士、顔を合わせたのならばポケモンバトルをするのが道理! 故に覚悟! 」
そう言って短パン小僧? ……はカイロスを繰り出してきた。
「ふざけんなお前っ! 俺はバトルをするとは言ってねーぞ! 」
「お主にトレーナーとしての誇りがあるのなら、逃げずに戦うでござる! 」
自分のことばかりで相手の気持ちなんて全く考えていない。
少年はもっと悪辣なことをしているが、この短パン小僧も
少年は溜め息を吐きながら、少しだけ後悔した。
こんなことならデルビルを捕まえておけばよかった、と。
しかしこれ以上時間を無駄にすることはできない。
「負けたヤツは勝ったヤツに賞金を払う。それさえ守ってくれればバトルしてやるよ」
「なんて強欲!? しかしバトルを仕掛けたのは拙者、故にその決まりは受け入れよう! 」
「フン。……でてこい、マンキー」
カイロスとマンキー。
二匹のポケモンが敵意をぶつけ合う。
さて、カイロスの分類は「くわがたポケモン」、タイプは「むし」であり、攻撃種族値は125である。
明らかにマンキーが敵うような相手ではない。
「マンキー、「きあいだめ」だ! 」
「カイロス、マンキーに接近して「しめつける」でござるよ! 」
マンキーが気合を溜めようとしている時を狙って拘束しようと思ったのだろう。
カイロスは自慢の長い二本角を広げ、突撃してきた。
……本来、「しめつける」の命中率は85と低い。
しかしカイロスの素早さはマンキーよりも高く、おまけにマンキーは「きあいだめ」をしている途中だった。
なので「しめつける」は成功する。
「よっしゃ! このままダメージを与え続けるでござるよ! 」
「このまま「みだれひっかき」だ! 」
「なっ!? 」
マンキーは怒り狂ったかのように、カイロスの頭部に向かって乱暴に引っ掻きまくる。
今発動している「みだれひっかき」の命中率は80と低いが、カイロスに拘束されているこの状況下であれば命中率関係無く当たる。
おまけに「きあいだめ」によって急所に当たりやすくなっているため、ダメージも大きくなっているだろう。
全ての攻撃が当たり、その中には強烈な一撃も混じっていただろう。
カイロスの体力は削り切られ、そして倒れた。
「すまぬ、カイロス……! 」
「愚策だったな。隙を見せたのはわざとだ。拘束技を使うだろうと思ってたんだよ」
短パン小僧は負けたショックで落ち込み、気絶しているカイロスをボールに戻す。
そんな彼の様子を少年は冷たい目で見ている。
(しかし、俺のマンキーの特性は「いかりのつぼ」か? ぼうぎょの高いをカイロス相手に勝つなんざ、こうげきが上がっても無い限りそんなの不可能だ)
「いかりのつぼ」とは「自分への攻撃が急所に当たると、『こうげき』ランクが最大まで上がる」効果を持つ特性だ。
逆転勝ちが発生する可能性を持つ特性だが、マンキーの場合は眠り状態にならない効果を持つ「やるき」がベストである。
隠れ特性の「まけんき」は、現状では変更手段の入手が厳しいので考える必要は無い。
「キキッ! 」
「おう、お疲れさん」
頑張ったマンキーを労わるべく、少年は持っているキズぐすりを使う。
回復するだけなら地面に落ちているオレンの実でも良かったが、そんなことをすればマンキーがブチ切れるかもしれない。
なので少年は貴重な回復アイテムをここで使うことにした。
まあ少年からしてみれば、オレンの実を非常食として使うこともできると思っていたらしく、大した痛手ではないと考え直したのかもしれない。
キズぐすりでは空腹までは癒せないのだ。
「さて、約束は覚えてるよな? 金を寄越せ! 」
「くっ! 約束は守るでござるよ……」
嫌々ながらも短パン小僧は素直に金を渡してきた。
原作ゲームとは違って、この世界で負けた相手に賞金をせびるのはマナー違反どころではない。
事前に約束事として交わした、負けた相手に非があった、等々の理由があっても悪質な犯罪行為でしかないのだ。
今回は侍のように潔い短パン小僧だったから成立してしまったことであり、もしロケット団のような粗暴な人であれば喧嘩になるだろう。
この問題はジュンサーたち警察も頭を抱えており、殆ど対処できていなかった。
暴走族やロケット団といった連中が平気な顔をしてやらかしており、しかも逃げ足は速い。
なので警察は彼らを更正できずにいる。
金を受け取った後、少年はニビシティに向かって再度歩きだす。
もうこれ以上トラブルが発生しませんように、と祈りながら。
しかし悲しいかな、ゲス野郎はどんなに祈っても報いを受ける定めにあるのだ。
思わぬアクシデント、その2。
何故かブチ切れているスピアーの大群に襲われる。
「ふっざけんなあああああ!!! 」
「キキキィイイイイイイ!!! 」
どんなに無表情のポケモンだったとしても、スピアーたちが怒り狂っているのは見て解る。
一匹だけならまだマンキーだけで対処できたが、大群となればもう逃げるしかない。
この状況に対して奇跡的に抗えているのは、少年も戦っているからである。
しかし、少年がスピアーたちに対してダイレクトに殺意をぶつけているのは明らかに大問題だ。
弱者だと思って見下していた相手からそんな態度を取られれば、スピアーたちも更に激怒するだろう。
ちなみに、スピアーたちが何故怒っているのかというと、昨日「別の人間の子どもたちを相手にボロ負けした」ことに対する八つ当たりである。
まあこの時も人に襲い掛かって返り討ちに遭ったという、普通に自業自得なケースではあったが。
まあつまり、ガチの犯罪者VS群れている不良の構図である、
勝手に潰し合っていろ、としか思わない。
いや、心情的に「頑張れスピアー」って応援する正義中毒は多いだろうが。
ただ残念なことに、少年はスーパーマサラ人特有の身体能力を持って産まれている。
故に凶暴なスピアーたちを相手に戦えてしまっているのだ。
一匹ずつ、どくばちポケモンの数を減らしていく……。
それでもスピアーたちは退くに引けなかった。
見下していた相手を倒せずにいるため、頭に血が上ってしまっているのだろうか。
それとも数で勝っている相手から逃げることを恥だと思っているのか。
いずれにしろ、スピアーたちは戦闘を続行する気でいる。
「クソが!
終わらない戦いに少年は激怒する。
しかし頭の中は冷静だ。
サトシやシゲルであれば逃げる一択だが、そんな選択肢を少年は取らなかった。
詐欺や暴力といったことが
だからといって、圧倒的に不利なのは少年とマンキーだ。
大群相手に無双しよう、なんて考えは
時間が経過すればするほど少年の体力と精神力がみるみる消耗していく。
そんな無駄な戦闘に少年が困っていた時だった。
「アオーン! 」
なんと、マサラタウン近くで倒れていたあのデルビルが何処からか現れた。
少年たちの様子見をしていたけど、スピアーの大群に困っていた様子から助けようと思ったのだろう。
「あいつは……!? 」
まさか助けに来るとは思っていなかったのか、少年は驚く。
野生のデルビルが自身との関わりの薄い人間を助けるなんて普通は思わない話だ。
「ガァ!! 」
デルビルは口から「ひのこ」を吐き出し、自身の近くにいるスピアーを焼き払う。
効果は抜群だ、何匹か無視できないダメージを負う。
耐久面が紙装甲なスピアーにとって、皮肉なことに「泣きっ面に蜂」である。
プライド云々の話よりも、苦手な炎タイプの攻撃に焦ったのだろうか。
スピアーたちは我先に逃げ出していく。
どんなに凶暴なポケモンであっても、一撃で瀕死にされるのは怖かったらしい。
「助かったけど、何でお前ここに来てんだよ? 」
「ワンワンッ! 」
「見た所、俺がどういう人間なのか、見定めるために尾行してたってところか。……まあいいや、ありがとな」
デルビルに敵意は無い。
特にマンキーに対して酷いことはしていない。
強いて言うなら、短パン小僧に対しては恐喝をしていたが、あれは相手が先に喧嘩を吹っかけてきたので返り討ちにしただけである。
故に、デルビル視点では「普通に良い奴」にしか思えないのだ。
とりあえずマンキーに対して治療を行った。
減っていくキズぐすりの個数に少年は顔をしかめるも、運が悪かったと諦めるしかない。
「そんで、お前はどーすんだ? トキワシティのジョーイさんに頼めば養って貰えそうだけど? 」
「ワン」
デルビルは少年が持っているマンキーのモンスターボールに視線を向ける。
要するに、少年の旅に同行するつもりだろう。
(何だコイツ。恩を売って人間の世話になって、美味しい思いをしたいってことか? フン、何が友情ゲットだ、ふざけやがって)
原作アニメでよくある、友情ゲットという場面に対して酷く冷めた考えを持っていた様子。
デルビルを見捨ててニビシティに向かうかと思いきや、思考は更に続く。
(……けど、この先マンキーだけでやっていけるワケねーし。捕まえられる時に捕まえておかねーと、後々になって困るのは俺だ。仕方ねぇ。捕まえるか)
30秒くらい考えて、ようやく少年はデルビルを捕まえることに決めたようだ。
思いっきり失礼なことを考えていたが、不満を口に出さないだけまだマシである。
「俺を選んだのはお前だぞ」
そう言ってデルビルにボールの開閉スイッチを触らせた。
Q:捕まえたポケモンがマンキーにデルビル。
フン、ご都合主義だな!
しかも一匹は友情ゲットかよ。
A:一応言うけど、少年はポケモンを捕まえるのが下手くそです。
捕まえようとしても、気づかれて逃走、なんてことが多いからね。
なので、気の弱い連中(コラッタやポッポなど)は捕まえるの無理です。
Q:オニスズメ捕まえねーの?
A:マンキーで手を焼いている状況で、問題児増やしても……。
Q:主人公選びで失敗してない?
素直に正義のヒーロー書けば良かったじゃん。
A:人間のクズが一番書きやすいんですよね。
逆に聖人君主が書きにくいし、人によっては違和感持たれる。
未完にした作品読み返したけど、「マチスのキャラおかしくない? 」って思ってしまったのが……。
Q:何でそんな「友情ゲット」を軽視してるの?
A:友達だと思ってた奴(フリード)に裏切られたことがあるから。
現在ゲットしたポケモン
マンキー Lv.5→Lv.11
デルビル Lv.8