灰色の町、ニビシティ。
この場所は科学博物館や石工業が特徴であり、数多の学者や彫刻家たちが集う場所でもある。
ニビあられと呼ばれるあられ餅が町の名産品があるが、イマイチ人気は無い。
最近ではポケモンコンテスト会場の設立計画の話が出ているが、資金不足が祟ってか、今の所は目途が立っていない。
まあただでさえ考古学の研究に出費しているので、金銭的に余裕は無いのだろう。
ただ子どもたちは「そんなの知ったことか」と言わんばかりに、この町に来ている。
その理由はポケモンジムの存在だ。
初めは誰もがこう思うだろう。
何故、「最初に挑むジムとして岩タイプの使い手を相手に選ぶのか」と。
ある者はこういう、「岩タイプは弱点が多いから戦いやすい」と。
ある者はこういった、「岩タイプはすばやさが遅いから戦いやすい」と。
その他にも色々と理由はあるが、一番の理由はより現実的な回答だった。
それは、「岩タイプの攻撃技は命中率が低い」からというもの。
つまり相手からの攻撃を回避しやすいことから、最初の手持ちが貧弱でも勝てる可能性は高いというワケだ。
故に、ニビジムに訪れる子どもは多い。
「って聞きましたけど、本当でしょうか? 」
「うーん、そうねぇ……。タケシさんには悪いけれど、岩タイプを極めようって考えるトレーナーは見たこと無いわね」
ニビシティのポケモンセンター、そこで少年はここのジョーイと会話をしていた。
マンキーとデルビルの健康チェックが終わったので、ニビジムが今どうなっているのか、それを確認するためである。
ちなみにタケシは今もジムリーダーをやっているとのこと。
それを聞いて少年は眉をひそめた。
(マジでどーなってんだ? サトシがヒトカゲを選んだのは解ってたが、ここまで影響が出るのか? )
サトシがピカチュウを選んでいたから起こったタケシ加入イベント。
しかしその可能性は少年の卑劣な手によって摘まれてしまっており、どう足掻いても原作通りの展開にはなりそうにない。
「そういえば、ここにサトシってヤツは来ませんでしたか? 」
「ええっと、昨日の夜に来た男の子かしら? ジムバトルで負けて、手持ちのポケモンの治療をしたわよ」
どうやらサトシはタケシに敗北したようだ。
ヒトカゲの他は、原作通りであればピジョンとバタフリーだろう。
ゲーム通りであれば、タケシに挑むのならバタフリーで勝てそうなものだが……。
「それで、サトシはどうしたんですか? 」
「しばらくトキワの森で修行するって言っていたわね。新しいポケモンを捕まえたらって忠告したけど、今の手持ちだけでタケシさんに勝つって言ってたわ」
行き詰った時、作戦を立て直したり、修行して強くなれば勝てると思い込んでいる様だ。
せっかくジョーイがお節介焼いているにも関わらず、意固地になって
サトシの悪い癖が出てしまっている。
ジョーイのいう新しいポケモンとは草タイプや水タイプのポケモンのことだろう。
近場でゲットできるニドランやマンキーのような、「比較的、岩タイプと戦えるポケモン」を捕まえることを言っていたと思われる。
マンキーは言わずもがな、ニドランは「にどげり」といった格闘タイプの技を覚えられるため、岩タイプのポケモンの弱点を突けるのだ。
彼らをゲットしないのなら、サトシはバタフリーを頼るしかなくなる。
(ククク……。素直に「タケシに勝てるポケモン」を探せばいいのにな。これで時間を無駄にするようなら、サトシは何時か袋小路になるね)
黒いことを考えているが、少年も人のことは全く言えない立場だ。
なんせ、マンキーとデルビルだけではタケシに勝つことは難しいはずである。
マンキー1匹に頼らざる負えない状況である以上、サトシを嗤うことなんでできないはずだが……。
「ジョーイさん。少し聞きたいことがあるのですが……」
ニビジム。
少年は建物の扉を開き、大声で呼びかけた。
「ごめんくださーい。ジムの挑戦させて欲しいのですが! 」
その声に反応したのか、天井の照明に光が灯る。
フィールドは砂場にいくつか岩を置いたような環境になっており、岩や地面といったタイプのポケモンにとって都合が良い。
そんな場所に、タケシであろう青少年が姿を見せた。
原作アニメのような穏やかで明るい印象は無く、硬派かつ威厳ある態度。
正に「強くて硬い石の男」という肩書に恥じないキャラクターと言える。
「新たな
「その通りです」
猫被った態度を見せているが、少年はさっさとバトルしてジムバッジを貰いたいと思っている。
滅茶苦茶無礼だ。
タケシは少年の内面に勘づいていたが、「10歳の子どもならそういう考えにもなる」と判断した模様。
「見た所、君の手持ちは2匹だね? 今ジムバッジはいくつ持っている? 」
「ここが初めてのジムチャレンジです」
「……解った。ルールは勝ち抜き戦で、技の使用制限は無し。先に相手のポケモンを2匹倒したトレーナーが勝利する。
そして一番重要なことだが、ジムバッジを渡すかどうかはジムリーダーである僕の判断で決める。君が負けたとしても、ポケモンを大切に扱っているのであればジムバッジを渡してもいい」
逆に、手持ちのポケモンをぞんざいに扱っている悪いトレーナーにはジムバッジを渡そうなんてしないだろう。
タケシはトレーナーとポケモンの信頼関係を見て、良いトレーナーかどうかを判断している様らしい。
互いが所定の位置に立つ。
何故か審判の居ないフィールドでバトルが始まった。
「行け、イシツブテ! 」
「出番だ、デルビル! 」
フィールドにイシツブテとデルビルの姿が現れ、両者共に相対する形となる。
タケシは古傷の目立つデルビルを見て眉をひそめるが、デルビルが大人しく従っている姿を見て、「特に問題無し」と判断した様だ。
……さて、イシツブテというポケモンは物理攻撃力が80と高い。
散々ネタにされているイワークを大きく上回る数値であり、「いわおとし」や「マグニチュード」の火力を考えると凄まじい火力になると思われる。
炎タイプのデルビルでは呆気なくやられると誰もが想像つくだろう。
「まずは小手調べだ! イシツブテ、「たいあたり」! 」
……まあ、一つもバッジを持っていないトレーナーを相手にそんな大人げないことはやらないのだが。
リーグ協会が決めた基準を守っているらしく、タケシはイシツブテに使われる技を制限している様だった。
ちなみに「いわおとし」や「マグニチュード」といった技は、ジムバッジを2個以上持っているトレーナーの相手をする時にしか、イシツブテには使わせないらしい。
しかしイシツブテの攻撃は「たいあたり」だったとしても、今の少年たちにとっては充分脅威だ。
デルビルの耐久力は紙装甲なので、一撃ヒットするだけでもヤバい。
……まあ、難なく躱しているワケだが。
「今だ、「バークアウト」!! 」
「バウバウッ!! 」
少年が考えていた秘策、それはデルビルに悪タイプの特殊技を教えることだった。
本来、ポケモンに技を教えることなんて非常に難しいはずである。
理由は「技のほどんどは、人間が真似できるようなモノでは無いので教えられない」からだ。
例外は、ノーマルタイプや格闘タイプ、……そして悪タイプ。
「バークアウト」は和訳すると「怒鳴り散らす」と言う意味になる。
相手に向かって怒鳴り散らすだけなら人間でもできることであり、ましてや喧嘩腰で暴力的な発言ができる人であれば容易に教えられるだろう。
少年の本質は「卑劣な悪党」だ。
故に、悪タイプの技であれば殆どのポケモンに教えることができる。
イシツブテの特殊防御力は30と低い。
おまけにイシツブテの鈍足が祟ったのか、デルビルの攻撃を回避する余裕が全く無い。
故に、「バークアウト」の2回連続で倒されてしまった。
「ば、馬鹿な!? 俺のイシツブテがこうもあっさり……」
「デルビルはね、特殊攻撃力が高い種族なんですよ! 」
勝敗を分けたのは素早さの差、そしてデルビルと「バークアウト」のタイプが一致していたことだろうか。
もしイシツブテの「たいあたり」がヒットしていれば、倒れていたのはデルビルだったのかもしれない。
「ならばこのイワークはどうする!? 」
タケシが次に出したのはいわへびポケモンのイワークだった。
物理攻撃力45という悲しいステータスを持っているが、物理防汚力160に素早さ70もあるため、初心者にとっては充分脅威である。
「戻れ、デルビル」
しかし少年は「無理は禁物」と言わんばかりにデルビルをボールの中に戻した。
レベル差とこれからタケシが使ってくるであろう岩タイプの技を考えれば、引っ込めて正解だろう。
リーグ協会が制限を課したのはイシツブテの使用技であって、イワークには何の
「行け、マンキー! 」
「キキキ! 」
意気揚々と現れるぶたざるポケモン。
デルビルが活躍している姿を見て、自分も戦ってみたくなったらしい。
まあだからって特性が「やるき」に変化するワケでは無いが……。
「今度はセオリー通り、格闘タイプか。しかしイワークは堅いぞ! 」
「マンキー、「にらみつける」! 」
物理防御力が高いのなら、補助技を使ってランクダウンさせてやればいい。
マンキーのメンチ切った視線を向けられ、イワークは思わず動揺してしまう。
「構わず、相手を「しめつける」んだ! 」
「グオォォォ! 」
タケシの指示にハッと我に返ったのか、イワークはマンキーに向かって突撃し、岩の尻尾で拘束しようとする。
素早さが少年の予想以上に速かったのか、マンキーはまんまと身動きを封じられてしまった。
「くっ、「けたぐり」だ! 」
「キキッー! 」
巨大な岩の蛇に身動きを封じられ、まともな手段ではどう足掻いても技なんて出せっこない。
そんな状態で「けたぐり」なんて普通は不可能だ。
だが「けたぐり」という技は格闘タイプの足蹴りとして機能した。
普通に蹴っただけだが、イワークにとっては弱点なのは変わりない。
「グ、オオオオオッ! 」
しかし「けたぐり」を受けてもイワークは「しめつける」を止めなかった。
意地でも勝つという戦意は弱点技を受けても衰えていない。
けれど、そのイワークの拘束技が鬱陶しかったのか、マンキーは逆上した。
特性「いかりのつぼ」によって物理攻撃力のランクが最大値まで上昇する……!
「しめた! もう一度、「けたぐり」だ!! 」
「キ、キキキィーッ! 」
激怒による再チャレンジの「けたぐり」をイワークにぶつけた。
痛烈な一撃によって岩の尻尾による拘束は解除される。
そしてイワークの巨体は地面に倒れた。
「戻れ、イワーク! ……僕の負けだ」
イワークをボールに戻し、そして少年に近づくタケシ。
ジムを制覇した者に与えられる名誉の授与、それを少年に授けるために。
「君のトレーナーとしての実力を認め、このグレーバッジを渡そう。これを持っていれば岩タイプの技の威力が少しだけ上がるぞ」
「えっと、ありがとうございます? 」
タケシから渡されるバッジを見て、何とも言えない顔をする少年。
どうせまた失礼なことを思っているのだろうか。
「それと僕に勝った証として、この技マシンも貰ってくれ。中身は「がまん」という技が記録されている。受けた攻撃を倍にして返す、面白い技だぞ! 」
「……」
ここで読者の誰もが思っただろう。
そして今、この少年も同じことを考えているに違いない。
……何でゲームフリークはこんなクッソ使えないゴミ技を考えたんだ、と。
ぶっちゃけた話、同じノーマルタイプの技であれば「しめつける」がよっぽど有能である。
対戦環境において継続ダメージを与えられる拘束技こそ、貰って嬉しいものではないか。
「……ありがとうございました。タケシさんもジムの運営、頑張って下さい」
「こちらこそ、対戦してくれてありがとう」
お礼を言って、少年はジムを後にする。
(グレーバッジは良いとして。……何でこんなゴミ技を寄越すんだよ! 「がんせきふうじ」や「いわなだれ」でも良かっただろ!? )
心の中で毒づき、そしてフレンドリィショップで売ろうと考えているのだろう。
タケシが可哀想だ。
まあぶっちゃけた話、「いわなだれ」のような技マシンは高額である。
タケシの懐事情を考えれば、ジムチャレンジャーの為に用意できる程の余裕は無いのだ。
15歳の青少年が無理なく購入できる技マシン、「がまん」だったというだけである。
ニビジムの建物から程よく距離が離れたところで、少年は溜め息を吐く。
そして頑張ってくれたマンキーとデルビルの治療のため、ポケモンセンターへと足を運ぶのだった。
Q:「悪タイプの技であれば殆どのポケモンに教えることができる」って書いてあったけど、「あくのはどう」とかは流石に無理だよな?
A:できますよ。
少年の前世を考えると、悪タイプ以外の技も教えられそうなものですが……。
Q:「いかりのつぼ」、発動し過ぎじゃね?
A:トレーナーに褒められたくて急所に当てようとするでしょう?
それが裏目に出ているワケです。
Q:こんなクソ作品書いてないで、「サトシと翼の王」の続き書けよ!
A:気力無いので無理です。
ナツメを強くし過ぎたせいで、どう書いても違和感出る……。
現在ゲットしたポケモン
マンキー Lv.11→12
デルビル Lv.8→9