ちなみに更新速度は遅いです!
この物語を始める前に、まず俺自身の事を語らねばなるまい。
とは言ってみたものの、あまり語るべき事は多くない。産業界において世界を牛耳るフェニックス家の一人息子として生まれ、親の愛を受けながら何不自由ない生活をしてきた。8歳で有名大学を主席で卒業し、神童と誉めそやされたりもした。
まあ、ここまではよくある話だよな。
俺の人生が大きく変わったのは9歳の冬だった。
両親が俺の目の前で殺されたのだ。
家族で出掛けた買い物の帰り、執事のミッチェルが運転する車の迎えを待っているときに、父への恨み言を喚く男に銃撃されたのだ。
犯人は父親の会社の元従業員だった。会社をクビになったのを父のせいだと勘違いした奴で、所謂逆恨みというやつだった。
まず父が、そして次に母が凶弾に倒れた。
そして男の銃口が俺に向けられそうになったそのとき。
奇妙な事が起こった。
男の動きが、いや、世界の動きがひどくゆっくりになったのだ。
そのときの事は今でも忘れられない。
気がつけば俺は父が護身用に持っていた拳銃に手を伸ばしていた。
コルトのシングルアクションアーミー。
根っからの西部劇好きである父が好んで持ち歩いていた、時代遅れの回転式拳銃。よく父に連れられて射撃場に行ったとき、散々この銃の薀蓄や自慢話を聞かされたものだ。俺は撃たせてもらえなかったが。
おっと、話が逸れたな。
父の銃を掴んだ俺は、未だ緩慢な動作でこちらに銃口を向けようとする男の額にコッキングしながら標準をあわせ、その引き金を引いた。
放たれた弾丸は、男の額に風穴を開けた。
その時何故そうできたのかはわからない。散々見せられた西部劇映画のせいなのか、はたまた生存本能ゆえか。
そして男を殺した俺は、初めて撃つ銃の衝撃で引っくり返り、頭を打って気絶した。
目が覚めたのは次の日の夜だった。俺は病院のベッドに寝かされており、執事のミッチェルが涙を流しながら俺の顔を覗き込んでいた。彼は泣きながら俺に謝った。自分がもっと早く来ていれば、旦那様と奥様は死なずにすんだかも知れないにのに、と。
間抜けな事だが、俺はこの時初めて両親が死んだ事を悟った。
莫大な遺産と豪邸、そして父が築き上げた巨大な会社を残して。
当時ガキだった俺は泣き叫んだ。彼のせいではないのに、執事のミッチェルに八つ当たりじみた事も言った。そんな俺をミッチェルは何も言わずに支えてくれた。
しかし、両親の死を悲しむ間もなく、俺に様々な問題が待ち受けていた。葬式の準備に遺産の引継ぎ、父の会社であるフェニックス・コーポレーションの後任選び。次々と押し寄せるこれらの問題から俺を守ったのは、ミッチェルだった。
ミッチェル。
俺の家に仕える執事だ。
当時28歳という若さながら非常に優秀な男で、俺にとっては年の離れた兄のような存在だった。
彼は俺の抱える様々な問題をたった一人で解決した。両親の葬儀に遺産の管理、父の会社を乗っ取ろうと企んでいた重役やライバル会社の排除、そして俺の教育。感謝してもし足りないくらいだ。優秀な執事を持った俺は幸運だな。
・・・また話が逸れたな。
とにかく俺は、彼のおかげで前とそれほど変わらない生活をおくれるようになった。
しかし、その一方で変化もあった。
俺が自身の弱さを憎むようになった事だ。
もっと俺が強ければ。あの時父と母を救えたかもしれないのに。
だから俺は自分を鍛えた。あらゆる武術を学び、武器の扱いを覚えた。元特殊部隊や傭兵を金に糸目をつけず雇って、それこそ地獄のような訓練をつけてもらった。最初はミッチェルもいい顔をしなかったが、俺の真剣さを見るにつれ次第に協力してくれるようになった。
俺は妥協せず、知識と経験を貪欲に吸収していった。
意外な発見だったのは、両親が殺されたとき感じた不可思議な力がある程度コントロールできる事だった。これは集中すればするほど時間が延び、俺の動きが速くなっていった。
まるでシューティングゲームの『バレットタイム』のようなこの能力は、俺の生活に大いに役立ってくれた。
それから16年間、俺は自分を鍛え続けた。時には骨折したり死に掛けた事もあった。ミッチェルを無理やり納得させ、雇った傭兵と一緒に紛争地帯を駆けずり回った事もあった。
そして25歳になった時、フリーランスの傭兵として独立した。会社をミッチェルとその部下たちに任せ(もちろんミッチェルは渋ったが)、世界中を転々としながら生活していった。
そんな事を2年も続けているうち、やがて『殲滅者(スローター)』という(大変不名誉な)二つ名で呼ばれるようになった。なんでも敵対する組織を片っ端から殲滅していったからそう呼ばれるようになったらしい。すごく不満だが。たまに家に帰るとミッチェルに『お帰りなさいませ、殲滅者様』とか言われるんだぞ!恥ずかしいわ!
・・・・まあいいや。
あまり語る事がないとか言っておきながら随分長くなってしまったが、とにかく俺はこんな人生を歩んできた。
俺の名前はサイモン。
サイモン・フェニックス。
これから語られる物語は俺が巻き込まれた事件、その全貌だ。