異世界転生したので森で隠居してたら、勇者と魔族の娘を拾った話   作:you are not

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新作です。アクションかきたくて書きました。


第1話「出会い」

 死体かと思った。

 

 きっかけは、いつものように森の中を歩いていると白い塊を見つけたことだ。最初は魔物の死体かと思ったが、どうやら違ったらしい。

 

 それは人間だった。

 

 俺は眉をひそめながら、その白い塊に近づく。

 

 最初に目に入るのは伸びた白髪、背中を覆うほどに長い。そして、泥だらけの服や身体中の傷から森の中を無茶しながら進んできたのがすぐにわかる。

 

「……まだ、生きてるみたいだな」

 口が動いていることから息はあるのはわかった。俺はゆっくりと近づいてしゃがみ込み、首筋へ指を当てて脈を確認した。

 

 予想通り、かなり弱っている。虫の息というやつだろう。

 

「んんっ……」

 その時、少女は薄く瞼を開いた。赤の瞳が俺を見る。

 

「た、すけて……」

 首に当てていた手を彼女は掴みながら、掠れるような声で呟く。しかし、それで力尽きたのかガクっと脱力して気絶してしまう。

 

「はぁー」

 俺は頭を掻いた。

 

 正直、面倒ごとの匂いしかしない。

 

 全身傷だらけだがその中には森で付いた傷もある。逆に、鞭か何かで打たれたような痕も混ざっていた。

 

「でもなぁ」

 だとしても、このまま放っておけば死ぬだろう。それも俺が見捨てたせいで……。

 

「仕方ない。たまには善きサマリア人になるか」

 どうやら俺は死にかけの人間を見捨てるほど腐っちゃいなかったらしく、彼女を助けることにした。

 

「よいしょ……軽いな」

 俺は少女を両手で抱き上げると驚くほど軽かった。

 

 まともな食事を取っていなかったのだろう、骨ばった肩が当たる。そのまま彼女を馬に背に乗せると俺も騎乗する。

 

「チィチィ、行きな」

 鞍の上から舌を鳴らして馬に発進の合図を出す。馬は森の中をパカパカと動きだし、小屋へ向かって歩き出す。

 

 十分ほど歩くと森が開けて、空き地が現れる。

 

 雑草から低木まで根こそぎ刈ったからかなり見晴らしのいい場所に、二階建ての丸太小屋。その横に小さな畑。反対側に鶏小屋と馬小屋。そして数頭の山羊。

 

 それが俺の住んでいる家の全体だ。

 

「メェー」

 放し飼いにしている山羊数頭が出迎えるように前に出てくる。

「ただいま」

 馬に降りて、少女を背中に抱えながら返事をすると山羊は満足そうにして離れていった。

 

「気分屋なの相変わらずだな」

 肩をすくめながら、家へと歩いていく。

 

 少女を背中と片腕で支えながら、空けた片方の手で腰の革袋から木製の鍵を取り出すと、斜めに扉の穴に差し込む。

 

 ―――カチリ。

 

 内部の木製のピンが持ち上がり、扉の鍵が開く。

 

 続いて蝶番へ目を向ける。仕掛けておいた紐はそのままだった。

 

「……異常なし」

 俺は扉を足で開け放ち、少女を抱えたまま家の中へ入っていく。

 

 家の中に入ると、行儀が悪いと思いながらも足で扉を閉ざす。続いて椅子を引き寄せ、ドアノブへつっかえ棒のように斜めにして噛ませた。

 

 これで誰も入ってこれない。もっとも

 

「森の奥まで来る物好きはそういないだろうがな」

 少女を抱えたまま階段へ向かう。

 

 そう言えば、自己紹介がまだだったな。

 

 俺の名前はカイン。

 

 十五歳。平民だから名字はない。

 

 今はこの森で暮らしている。

 

 理由は単純だ。五年前に両親が死んだ。村の連中は露骨なもので、それ以来居心地が悪くなったので出ていった。

 

 あとは、俺は転生者ということくらいか?前世の記憶と言う奴があって、地球という世界で生きた記憶がある。

 

 もっとも、転生者だからといって何でもできるわけじゃない。

 

 ドラゴンを斬れるような英雄でもなければ、山を吹き飛ばすような魔法使いでもない。

 

 それでも、この森で一人で生きるくらいなら十分に役立つものだ。

 

 前世の知識がなければ、俺はとっくに野垂れ死んでいただろう。

 

 

 

 なんて考えていると、目的の二階の奥の部屋へとたどり着く。

 

「ここを空けるのもいつぶりだ?」

 元は両親が使っていた部屋だが俺はベットを使わないので、今ではほとんど空き部屋となっている。

 

 ベッドの上に積まれていた埃を多少払う。そのまま寝かせるわけにもいかないので、上に毛布を被せてから少女をゆっくり寝かせた。

 

「うぅ……」

「すまんな、埃臭いだろうが家にはこれしかない」

 意識がまだ蒙昧としている彼女にそう言い訳をしながら、簡単にでも治療をしようと立ち上がった。

 

「まったく、酷い傷だ。体を酷使し過ぎだ」

 呟きながら洗面器を持ってくる。

 

 片手をかざすと、手からに生まれた水球がゆっくりと洗面器へ落ちた。この程度の生活魔法なら俺にも使える。なにかと便利なものだ。

 

 布を濡らし、泥と血を拭き取っていく。

 

 拭き取りながら怪我の状態を確認する。

 

 水膨れ、裂傷、擦り傷。

 

 幸い致命傷はない。

 

 芋焼酎を染み込ませた布で傷口を消毒し、アロエから作った軟膏を塗っていく。

 

「……」

 途中、矢などの刺し傷があったがすぐに目を背けた。

 

 元より訳ありなのは察している。誰だって、知られたくない事の一つや二つあるものだ。

 

「……俺が言えたことじゃないな」

 彼女の寝ている毛布を首元まで引き上げ、俺は部屋を出て行った。彼女がいつ目覚めるか知らないが、夕食は二人分作っておこう。




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