ようやく川内さんをドロップ出来た……!
そして、2-4で積んでおります。とりあえず、扶桑姉妹のレベル上げをしようかな!
ここ五年間しっかりと隠してきたはずの事実を、うっかり大河に知られてしまった。視覚誤認作用の魔術を使えないと分かった時に、今日の服は完全に女子の物を選んでいる。誤魔化すにも、スカートを穿いていたり無駄に長いこの髪の上手い説明は思いつかない。
いや、あえてここは何も気づかないふりをして、普通に振る舞うのはどうだろう。ふっと湧いた考えを、一刀両断する。男として普通に振る舞えば、その時点で失うものが多すぎる。女装が趣味の男子だと思われると、これからの未来に支障が出る。やはりここは、先程綾子にしたように別人として振る舞うのが得策。
士郎が思考を纏めていると、居間に繋がる襖が勢いよく開いた。
「シロウ、どうかしましたか? まさか、敵襲ですか?!」
「げ、セイバー」
武装化まではしていないが、殺気だった様子で片手にルビーを掴んでいるセイバー。自分のことで精一杯だったが、彼女の説明だってすんなりといくわけでは無い。想定外のことが重なり、軽いパニックになっている士郎がセイバーに握られているルビーを見る。彼女の魔術であれば、ここを切り抜けられるかもしれない。そんな期待を持って見るが、当の本人はどこ吹く風だ。
「しろう? あなた、士郎なの?」
セイバーの発した「シロウ」という名を聞き、大河は驚きで見開いていた目をさらに丸くしていた。そりゃそうだ。つい昨日まで、自分の勤める高校に通っていた衛宮士郎は男子生徒の制服を着て登校していたのだ。
「いや、私は……」
「そっか、士郎、士郎ね。言われてみれば、似てるものね。うん!」
まじまじと見つめられ、くすぐったさを覚える。だが、問題なのはそこでは無い。大河が今の自分を見て、衛宮士郎だと全く疑っていないという事実だ。このままでは、「そっかー、士郎は女の子だったのね。それじゃあ、戸籍とかいろいろと直さないといけないわ~」と言い出しかねない。いや、間違っては無いのだが。
「ちょ、ちょっと待ってください。私は、士郎さんの妹です!」
「んー? そういえば、美綴さんがそんなこと言ってたような」
そうだろう、そうだろう。
「えぇ、ですから別人です。衛宮士郎さんと私は、全くの別人なんです」
学校で綾子にしたものと同じ言い訳をする。だが、付き合いが大河よりも浅い彼女ですらあそこまで不審がられたのだ。この10年を一緒に過ごし、そして野生並みの勘を持っている大河を騙せる気は、正直言って全くない。
「うーん。でも、切嗣さんも、士郎も妹がいるなんて一言も言ってなかったけど……それに、そっちの方は?」
大河のごもっともな言葉に、士郎は片っ端から嘘を並べていく。
「士郎さんが衛宮切嗣さんに引き取られたように、私は別の方に引き取られたんです。私は、元々海外に住んでいる方に引き取られて、彼女はそこのお家の娘さんで……」
自分で言っていてとても辛い。元々嘘をつくのは苦手だ。それなのに、ほぼ口から出まかせなこの設定をよりにもよって大河に言わねばならないというのが実に厳しい。
「ふむふむ、なるほどね」
明らかに怪しい、と思われているのがひしひしと伝わる。だが、ここで止めてはいけない。作り話の佳境はここからだ。
「セイバーさんは、以前こちらの切嗣さんと外国でお会いしたことがあったそうで。学業が落ち着いたら、会いに行くという約束をしていたので、今回こちらにお邪魔したんです。私は生き別れの兄が冬木にいると聞いて、それでここに来たんです。本当は、もっと早くに行きたかったんですけど、なかなか日本行く予定が立てられなくて。ここに来たら、切嗣さんが兄を引き取った方だと知って、この家にお邪魔しました」
自分でツッコミを入れたい。どこの昼ドラだと。こんな偶然に偶然が重なった出来事など、普通起こるはずがない。自分がいきなり現れた人物にこんなことを言われたとしても、全くもって信じないだろう。
不安。今の士郎を支配しているのはそれだけだ。彼女の琥珀の瞳は頼りなさげに大河のものと交わる。大河は不審そうな視線を彼女へ向けていたが、思いを決めたように深くうなずいた。
「うん、分かった。それで、肝心の士郎はどこにいったの?」
目の前にいます。
という言葉を飲み込む。何がどうなったのかは分からない。しかし、大河が何故か自分のこの言い訳を、表向きには信じてくれることが分かったのだ。
「その、士郎さんは私がお世話になっている家にあいさつに行くと言って、たぶんもう飛行機の中かと」
「えぇー?! 士郎、私に何も言わずに行っちゃったの? ひどい――」
いくらなんでもこのまま話を終わらせるのは不味い。ついでに大河のフォローもしておかないと。
そう考えながら、士郎は慌てて付け足した。
「あ、でも。大河さんによろしくって言っていましたよ? 迷惑かけてごめん、と」
「ぶーぶー、士郎のお姉ちゃんとしてみれば、弟の行動がいささか問題あるような気がしますが……」
うっ、と言葉に詰まるのはもちろん士郎だ。大河はもう一度士郎をまっすぐ射抜く。士郎は先ほどとは異なり、大河を強く見つめ返す。
――しょうがないな、士郎は。
そう言ってやりたいのをぐっとこらえた。我儘なんて言わなくて、いつも人のためにしか動かないのが士郎だ。そんな彼が、必死にこの場を切り抜けようとしている。姉であるならば、ここは見て見ぬ振りをするのも必要なのではないか、と感じていた。
「まぁ、こんな可愛い妹ちゃんに免じて、許してあげますか!」
「あ、ありがとう、藤……じゃない、大河さん」
せっかく難を乗り越えたというのに、自分でぶち壊すところだった。誰かのうっかりが自分にうつっている気がする。
納得してくれたことで、ようやくこれで虎から解放される、と思うが大河の言葉は続いていく。
「そっか、士郎の妹さんね。もしかして、士郎の部屋に女の子の洋服とか
あるのって、あなたのためのだったりするの?」
「……。え?」
一瞬目眩がした。
聞いてはいけない言葉が耳に入ったのだ。いや、言葉というか事実というか。そもそも、年頃の少年の部屋のタンスの中身をなぜ知っているのでしょうか。
まあ、士郎は本当は女の子なんですが。
「ワンピースとか、ブラウスとかスパッツとか。いつの間に士郎に女装趣味があったのか、なんて思ってたんだけど。まぁ、思春期の男の子は難しいから、ほっておこうかとしてたけど、あなたへのプレゼントだったのねきっと」
「あ、はい。ソウデスネ」
ルビーの視覚誤認操作の魔術が使えるように戻ったとしても、当分は男の姿を見せたくない。士郎はげっそりとした顔で答えた。
ようやく話がひと段落したところで、大河はある事実に気がついた。
「あ、そういえば、あなたのお名前も聞かずにごめんなさいね。私は、藤村大河。切嗣さんが亡くなった後、私が士郎の保護者みたいなものなの」
「わたし、私は……」
あれほどの設定を瞬時に考えついたというのに、名前はさっぱり浮かばない。といっても、自分の名前を考え込む人間など、記憶喪失にでもなっていなければいないだろう。
「彼女は、シェロ。シェロ・ペンドラゴンといいます。私のことはセイバーとお呼び下さい」
助け船を出したのは、今まで黙ってことの成り行きを見守っていたセイバーだ。彼女が言ったシェロ、という名前。初めて聞くようなものだが、とても身に馴染む。士郎は肯定するように大きく頷いた。
「が、外人なのに日本語がお上手なのね……。シェロちゃんと、セイバーちゃんね。うん、よろしくね」
「よろしく、お願いします」
ぺこり、と頭を下げる。
なんだか不思議な感じだ。大河と改まってこんな風に挨拶を交わしたのは、おそらく初めて会った時以来だ。いつもはふざけている所ばかりを目にするが、きちんとした姉の大人の姿を盗み見てしまった気持ちになる。
――なんだ、ちゃんと大人なんだな。
自分しか知らない大河、自分の知らなかった大河。そのどちらもを知ることが出来たことが、どことなく嬉しい士郎だった。
ちなみに。
「どうせなら、明日とか穂群原学園に通わない? 制服ならあるし、見学のつもりでどうかしら?」
などという爆弾を投げつけられるのは、セイバーを交えた夕食の時間。最高に天パった士郎がよく内容を理解しないまま頷いてしまうのも、お約束なのだった。
草木も眠る丑三つ刻。
自分の隣の部屋で眠るセイバー。自分の真横で気持ちよさそうに寝返りを打つ大河。二人分の寝息が聞こえるのを確認し、士郎は起き上がる。
音を立てないように布団から出て、ハンガーに掛けてあったコートを手に取る。ゆっくり、静かに襖を開けて廊下に出た。冷えた板張りの床を足の裏で感じ、少しだけ身震いをする。押し殺すように息を吐いて、自分の後ろに浮遊するステッキに声をかけた。
「行こう、ルビー」
「はいはーい、士郎さん」
待ってましたとばかりに士郎の手の中にすっぽりと収まったルビー。セイバーと大河、どちらにも気づかれることなく部屋を抜け出せたのは彼女の力だ。
気配の遮断。
大河が泊まっているときに、どうしても冬木の夜の見回りに行きたい場合、何度かこの力を借りていた。相手に作用するものではなく、自分の気配を薄くすることで悟らせない。使い勝手のいいこれも、ルビー曰く魔術なのだそうだ。
武家屋敷の門を出て一息つく。空を見上げると、零れ落ちそうなほどの星が見えた。真冬の空を駆ける異国の英雄のオリオンの三ツ星と二つの一等星。雲一つ無いこの空では、一際この星座が大きく見えた。
「明日の学校とか、どうすればいいんだ……」
星を見ながら、ため息と共に吐き出したのは、明日からの自分の身の振り方だ。ルビーはくすくすと笑い声を上げながら尋ねる。
「セイバーさんを連れてくんですか? 学校に行くって聞かなかったじゃないですか。そうしたら、なんとも愉快なことになりそうですね」
「俺がまず女子の制服着てくだけで、神経すり減りそうなのに、セイバーまで連れていけるわけないだろ」
はぁ、ともう一度息を吐き出す。自分を守ると言って聞かない彼女を、何としても家に留めておかねば。
「おい」
「でも、何て言えば納得してくれるかな……。聖杯戦争は昼は行われないし、学校は人の目が普通の場所よりも多いし、心配無い……で了承してくれるかな」
「もう一押し欲しいとこですね。学校には聖なる結界が張ってあるから、邪悪な心を持ったサーヴァントとかマスターは入れない、とか」
「おい」
「いや……さすがにそんな子供騙しみたいな嘘に引っかかるとは思えないぞ」
「当たり前ですよ。そんなん引っかかるの、士郎さんくらいですもの」
あのなぁ……と文句を言おうとした時。先ほどから、地味に士郎とルビーの会話に割って入ろうとしていた人物がとうとう痺れを切らしたようだ。
「王である我を無視するとは、言い度胸ではないか、シロウ」
紅玉を埋め込んだような赤の瞳、大理石のように滑りのいい白い肌、黄金を糸に変えたかのような光を持つ金の髪。
日本人の見た目では、明らか無い男が士郎の前に立っていた。彼によって名を呼ばれたことで、士郎はようやくその存在を認識した。
「え、あ。ギル、居たのか」
それは残酷な返答だった。
そこにいたのに、いるとこを認識されていなかった。いるものを無視されることとはまた一味違う苦しみがそこにはある。ギル、そう呼ばれた男はにこりと貼り付けた笑みを見せ、額に青筋を浮かべていた。
「ふっ、よし殺そう。すぐに殺そう。シロウよ、我は僅かながら貴様に失望しているぞ。力の差が歴然としている相手に、そこまで殺されたいか。雑種のくせに生き急ぐとは難儀なことよ」
「そういえば、この頃うちに来てなかったけど、ご飯大丈夫だったか?」
人の話を聞いていない士郎。というか、意図的に聞かないようにしているとも取れる。男は士郎の問いを聞き、殺気を沈め反対にどんよりとした空気を纏い始めた。
「大丈夫だと思うか? 貴様の家に寄り付かなくなって二週間。毎日途切れる間も無く麻婆。豆腐だったり、茄子だったり。はたまたラーメン。朝昼晩、三食赤の麻婆」
聞いているだけで辛くなっていく。そんな三食刺激物を食べるなど、食に対する冒涜であろう。
「相変わらず、嫌がらせに満ち満ちたメニューですこと。金ぴかさんの同居人さんと私、とても仲良くなれるきがしましてよ」
楽しそうな声を出したのは、ルビーだ。
「と、危ない。貴様、わざと話を逸らそうとしたな!」
「いや、そういう訳じゃなくて。さっさと見回り行きたいから、ギルの相手したくないだけだ」
「貴様に聞きたいことはただ一つ。ここに、セイバーがいるかどうか、だけだ!」
びしっと人差し指を突きつけられる士郎。男の口から出た、セイバーという言葉。いつも食事をたかりにくるだけのこの男が、なぜ彼女を知っているのか。士郎は静かに金ぴかの彼に探るような視線を送っていた。
偽タイガー道場
師匠:ちょっといい感じなお姉さん。それが、わ・た・し。きゃー言っちゃった!!
弟子1号:大河なんかより、最後の金ぴかのほうが気になるわ。あいつ、士郎と知り合いなわけ? ありえない……!
ルビー:それに関しては、2日目の幕間でお話ししますね。金ぴかさんとは、大河さんと私に次いで長い付き合いなんじゃないですかねぇ……
師匠:あ、だから天敵のとこに「どっかの金ぴか」ってあったのね。
弟子1号:むかつくわ。前から気にくわない金ぴかだったけど。今日という今日は、私のバーサーカーがあいつを倒すんだから!!
ルビー:楽しそうなのでお伴しますねー
師匠:あ、二人とも行っちゃったわ。私も行こっかな〜。今回も読んでくださってありがとうございます! 次回もまた、よろしくお願いします!