転生したら妖怪だった件   作:鋼色

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3と暴風之混沌霊(カオスヴェルート)と能力

「その、暴風之混沌霊(カオスヴェルート)がカミアと相性が悪いってどういうことだ?」

「リムルのスキル習得は消化。だけど、私の妖怪統合は表面的なの。だから並列妖怪で呼び出せるし、無理やり統合を剥がされる」

 

それどころか、剥がされた妖怪を暴風之混沌霊(カオスヴェルート)に食べられてしまう。

 

この能力がなかったら私でも勝てるんだけど、引き離してからの捕食を強制されるのが辛い。

 

そして遠距離で倒させてくれるほど暴風之混沌霊(カオスヴェルート)は甘くはない。

 

「なぁ、カミア。もしかしたらなんだが__________」

「それ本当?だったら、今の状態でもある程度は勝率はある」

「もし通用するんだったら、共闘と近接戦の鍛錬を今よりも強くしよう。通用しなかったときは……」

「それは大丈夫。鬼玉を利用した転移の魔笛があれば事前にマーキングしていたところに移動できるから」

 

脱出する術が見当たらなかった魔窟の洞窟で、脱出する目処がたった。これほど嬉しいことはない。

 

「カミア。俺とお前、二人揃って脱出するぞ!ここから!!」

 

いや……それ以上に嬉しいことが目の前にあった。

 

二人揃って脱出できないかもしれない。もしかしたら二人とも脱出できないかもしれない。

 

そんな不安を吹き飛ばすような一言。

 

…このリムルを守るためなら、私は。

 

「……っ!」

 

強く握っていた拳に手のひらが触れる。優しく包み込んでいる手のひらに動揺し、勢いよく顔を上げる。

 

どこか悲しみを抱えたようなリムルの表情が、そこにはあった。

 

「俺は、カミア。お前とが良いんだ。お前と一緒に出たいんだ。一人は、嫌だぞ」

「……ごめん。二人で出よう」

 

***

 

暴風之混沌霊(カオスヴェルート)討伐を決めてから三日目。認識を外している暴風之混沌霊(カオスヴェルート)を確認。

 

震える手で杖を握り、鬼時間(テラータイム)で煉獄を発動する。

 

煉獄烈風波(スターウィンド)

 

他の魔物なら一瞬で砕け散っている一撃。その規模の攻撃を受け、大した傷もなく意識をこちらに向けているゴースト種。

 

魔物で出来たであろう鎌を手に取り、空間を裂いてこちらに向かう。

 

知らない現象に戸惑いつつ、鍛錬の休憩時間に散々組み立てていた魔法を発動する。

 

だって……

 

「触らせねえよ」

 

私には、最高の相棒がいるから。

 

鬼時間(テラータイム)の異空間に潜んでいたリムルが飛び出し、暴風之混沌霊(カオスヴェルート)の手首を切り裂き、跳ねる。

 

初めての物理攻撃によるダメージ。生まれる動揺。

 

それを見逃すほど甘くはない。私を食べようとしたんだから、食べられても文句は言えないよね?

 

吸魔吸体(エナジードレイン)

 

魔素と精神力を奪い去り、私のものとする。

 

格上だからあんまり吸えなかったけど、初めての感覚に驚いたんじゃないの?

 

「リムル!!」

「そうですね!可愛い相棒が頑張ってるんだから俺も頑張るよ!」

 

鬼玉で作った剣を仕舞い、拳で叩く。ダメージ的には剣で切ったときの方がダメージは高い。

 

だけど、ダメージ云々を加味してもこっちの方がメリットは大きい。

 

「悪いね。お一つ頂いちゃって」

 

リムルが持つ特殊能力(ユニークスキル)の一つ、捕食者(クラウモノ)は捕食できる。

 

それが完全統合したものだろうと関係はない。そこにあるのだから食べれる。

 

「さっすが…!」

 

私と暴風之混沌霊(カオスヴェルート)が相性最悪なように、リムルと暴風之混沌霊(カオスヴェルート)の相性は最悪だ。

 

そんな状況を素早く察した暴風之混沌霊(カオスヴェルート)は私へと攻撃を与えようとしてくる。

 

だけどさ、それを想定していないと思うの?

 

私が、リムルが足止めしてくれてるから私の方に攻撃がこないと信じてる頭が弱い少女だと思ってたの?

 

私だって、強いんだよ。

 

糸之妖怪竜(スレッダードラゴン)

 

針のような触手がこちらに迫ってくる。だけど、それが私のところにまで当たることはない。

 

事前に作っていた妖怪糸で作り上げたドラゴン。このドラゴンには妖怪の魂を与えているから、自分でも動けるんだよね。

 

だから糸之妖怪竜(スレッダードラゴン)が動きながら魔法を発動することができる。

 

妖魔光線(デモンレイ)

 

触手を食いちぎり、尻尾で叩き潰す。

 

その裏で妖怪の力を込めた光線を放つ。大きなダメージを与えられるものではないけど、これで私の方へある程度の意識は向く。

 

そこをリムルが狩る。私とリムルが考えた完全勝利するための方程式。

 

「バカみたいにタフだな!」

「この洞窟最強は伊達じゃないね」

 

リムルの捕食攻撃。私の遠距離魔法攻撃。それを経てなお、体力の減少が見えない。

 

私もリムルも魔素を吸っているはずなのに、私たちより上の現実がまったく覆らない…!

 

灼熱雷霆(フレアサンダー)

 

ならば、と今度は暴風之混沌霊(カオスヴェルート)にではなく、リムルへと魔法を放つ。

 

今攻撃した拳とは反対の拳を広げ、捕食者(クラウモノ)を発動させる。雷と炎の属性を兼ね備える魔法を吸収したことで可能になった雷と炎の混合強化。

 

器用に捕食者(クラウモノ)と炎と雷の混合強化を右拳に付与し、叩く。

 

鬼時間(テラータイム)を使用しなければ受けることができないほどの威力。それを真正面から受け止め、少し下がった。

 

切る感じや魔法が当たるところを見ると、防御値が高いというよりもヒットポイントが桁違いの数って認識の方が合ってるかも。

 

固定割合ダメージが与えられるなら話は別なんだけど……獲得している妖怪にとりつきダメージの妖怪はいないし……。

 

いや、ある!ダメージとりつきじゃないけど、場を良い方向に傾かせれるとりつきが!!

 

「パッカー!ネガティブーン!ドンヨリーヌ!からみぞん!」

 

素早さダウンのとりつき。攻撃力ダウンのとりつき。防御力ダウンのとりつき。

 

4つとも相手の行動を阻害する嫌味ったらしいとりつき。

 

私、というか守護之聖鳥(カルラ)のとりつきは良い効果だから色々と分野は違うけど、ちょっとした阻害なら出来る。

 

急な肉体デバフと思考阻害。それに困惑し、動きに粗が出ないはずはない。

 

そこを見逃さず、リムルの渾身の一撃が刺さる。直撃した一撃はこれまでで一番ダメージが入ったみたい。

 

「そろそろ終わりそうだね」

「降りてきて大丈夫なのか?食われたりとかは…」

「ないよ。そもそもあのゴースト種が無理やり統合できるのは色々な核を食してきたから。今の暴風之混沌霊(カオスヴェルート)はとりつきでその機能があつかえな……え?」

 

暴風之混沌霊(カオスヴェルート)から発する魔物の気配が消え失せる。あるのは本来のゴースト種としての気配。

 

普通のゴーストになった。私の天敵ではなくなった。なのに、何故だろう。身の毛がよだつような圧倒的な存在感は。

 

ドラちゃんを目の前にしたときのような圧倒的格差。

 

あれは敵意がなかったから恐怖耐性で何とかなった。でも、これは敵意と殺意がプラスされている。

 

〈解答。統合した魔物や統合する上で必要な核を全てエネルギーに変えたのだと思われます〉

 

これは、まずい。

 

アレがあの体に慣れる前に片をつけなくちゃ……負ける!

 

「聖天流妖魔杖術……」

 

杖を使って首を刎ねようとしたとき、アレの動きは既に完了していた。

 

万能執事(ワタシノシツジ)で思考加速を行っていた。1000倍の思考加速を持ってしても、視認することが敵わなかった。

 

一瞬の間に5発打たれ、いつの間にか壁にもたれかかっている。体験したこともない痛み。あぁ、悶絶せずにはいられない。

 

リムルも立ち向かおうとするけど、呆気なく叩きのめされる。自己再生でも間に合わない速度と威力で殴られてる。

 

食べても何も意味はないのに。リムルはアレに食べられようとしている。

 

え、あ、食べられようとしている?誰が?誰に?

 

リムルが、危ない。

 

「ぁ、アアアアアア!!私は、私は守護之聖鳥(カルラ)!全て守るもの。護り通すもの!!まだ私は倒れてないぞ、ゴースト!!」

 

ボロボロの肉体を妖怪糸で無理やり動かす。体がキシキシと痛み、もう無理と訴えかけている。

 

だから?今ここで折れたら死ぬのはリムル。私は、何が何でもリムルを守り通す。

 

この命が潰えたとしても!リムルが生きているのならそれでいい!!

 

これが私の覚悟!だから力を!リムルを守れるだけの力を!!

 

〈感情値の向上を確認。感情を妖怪存在値値に変換します。妖怪存在値が参へと上昇しました。固有能力[妖魔再生]、[魔素還元]、[妖魔覇気]を獲得しました〉

 

〈誰かを守る覚悟を確認。守護之聖鳥(カルラ)の妖怪権能……守護之御力を解放しました〉

 

傷ついた体を妖魔再生で癒し、上がった魔素量と精神力で体に強化を施す。

 

守護之御力と鬼玉で杖を強化する。

 

エネルギーを込めれば込めるほど切れ味が増し、どんなものよりも質量が付与される。

 

私が強くなればなるほど強くなる成長性の妖魔杖。

 

「根比べしよう。私とあなた、どっちの方が耐え切れるか」

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