魔素を杖にまとい、ゴースト種を穿つように放つ。
同じく、魔素がこもった鎌で止められる。
「だから……だからなに?このまま押し切る!」
守護之御力で身体能力を向上させ、鎌で防御されても威力で吹き飛ばす。
守護之御力と
これはあんまり成功率高くなかったんだけど…今なら行けそう。
天敵から潜むイメージで……。
「_____蝉隠れ」
音を消し、匂いを消し、存在感を消す。確かにそこにいるのに感じることが出来ない。
その動揺を突こうと思っていたんだけど、
「なんで動揺してないの?」
口を動かしたのは疑問。存在感を消す蝉流忍術の一つ、蝉隠れ。
普通なら動揺して一瞬動きが固まる。私もそれを予測して隙を突こうとした。
他の魔物でこの特徴を見たから?
いや、それはない。
意識がない魔物に線密な演算処理ができるとは思えない。
なら、なに。動揺したら隙を突かれると知ったから動揺しないようにしたの?そんなの、意識で出来る範囲じゃない…!
「っ!私だって!負けていられない!!」
動揺した隙を狩ろうと思ったら、私が動揺した隙を狩られようとしている。
地面に倒れると共に首元へと迫る鎌。まともに喰らえば首と胴体が断裂してしまう。
幸い、鎌が首へと触れるよりも地面に落ちる方が早い。
なら、やりようは幾らでもある。
「
左手が地面へと接触する前に所有する鬼玉で衝撃反転の装備を作り、装着する。
制作時間が短かったから一回きりの装備だけど、反撃をするためなら十分。
本来腕にくるはずだった衝撃を反転し、空中へと飛び上がる。
鬼の力を右足に溜め、ゴースト種の首元に叩きつける。
地面へと衝突し、ごろごろと転がっていくのを視認してから次の攻撃を行う。
右手で所有している杖を投げる。
額めがけて投げた杖はピンポイントで額にいき、すり抜けた。
やっぱり、やっぱりするしかないよね!!この杖によるダメージは君にとっても大ダメージ!
だから鎌で防ぐしかないし、間に合わないと分かったら透過するしかない。
君が自己保全を考えてくれてよかった。じゃなきゃこの作戦は通用しなかった。
「
鬼玉で作ったガントレットを両腕に装着し、殴り続ける。
一発で壊れてしまう。だからなに?壊れたのならまた作ればいい。
幸いのこと、鬼玉はたくさんある。すでに準備は完璧に等しいんだよ。
「ハァァ!!」
「っ!……!」
123発目の拳を向かわせようとしたとき、頬に衝撃が飛んできた。
守護之御力と
思いっきり吹き飛んでしまった。
「腕……?」
疑問を抱え、ゴースト種の方向に視線を寄せれば腕が生えていた。
白く、人外の腕としか思えない真っ白の腕。
ゴースト種に本来、腕はない。
つまり、目の前のゴースト種は進化を成した。圧倒的危機の前で進化を成したんだ。
「嫌になるなぁ…!あなた主人公!?」
「かもな。自我はなかった。だが、強敵を前にして芽生える自我。物語としたらなんてクソだ。俺らにとっちゃぁ不条理だ。だが、打ち砕くんだろ。俺とお前で」
「リムル!?もう怪我は大丈夫なの?」
「治った。けど、散々ボコられた相手に向かっていくのは怖い」
「なら……!!」
「守られる。それは、居心地がいい。自分は何も傷付かず、結果を待ってればいい。自分は何も責任を持たなくていい」
リムルからオーラが漏れる。いつもの優しそうなオーラじゃなくて、敵意を感じさせるような針を刺すようなオーラ。
魔素量も上がってるぽいけど、なんか雰囲気が違うような…。
〈報告。リムル=テンペストは
ぁ、はい……。うぅ、なんか、こう、羞恥心が。
「それは、気分が悪い。その相手が相棒だと特にな。だからさ、俺も一緒に戦わせてくれ。カミア」
「分かったよ…。しょうがないから戦わせてあげる」
〈リムル=テンペスト、カミア=テンペストの互いのために戦うという思いがリンクします。
「行くよ!」「行くぞ!」
溢れる魔素と、
溢れるパワー!
今なら何でも出来そうな気がする!
ガントレットによる純粋パワーと捕食による抉り。
私とゴースト種で均等だった均衡が今、崩壊する。
「
リムルが自身の破片を周囲に散りばめ、ゴースト種を拘束する。
「ありがとう。リムル!」
今可能な強化を右腕に施す。
力を溜めているだけで腕が破裂しそうなほどのパワーを携え、拘束されている体に撃ち放つ。
頑強な装甲と莫大な体力を貫通し、胸元に大きな穴を開ける。
ダラダラと流れる血を前にして、安堵の念を抱いて倒れ込んでしまう。
戦闘時間は1時間42分。
短期戦闘ばかりやってきた身としては辛いよ〜!
途中で集中力が途切れそうになったり、色々と大変だった。
リムルを守りたい一心で覚醒したりしたけど、それでもだった。
リムルが途中で
色々な偶然が重なり合って掴んだ勝利。きっと私一人だったら覚醒する前にやられてた。
「疲れたねー、リムル」
「あぁ、そうだな。大苦戦だったよ。カミアがいてくれて良かった」
「……っ!リムル!さっさと食べなよ!冷めたらお行儀悪いよ!」
「照れ隠し?」
「うっさい!!」
分かられている。その事実に羞恥心を感じ、そっぽを向く。
なんで分かられてるの!出会ってそんなに時間経ってないのに!
私がわかりやす過ぎるのかな……。
「……っ!リムル!」
リムルの異様なオーラの高まり。先ほどの魔素量と比べると三倍ほどにまで膨れ上がっている。
リムルの肉体に何が……!?
「心配するなカミア。ただ、進化しただけだ」
肉体の背丈は少し伸び、瞳の金眼からは深みを感じる。
でも、今回はその比じゃない。身体能力の向上もそうだけど、存在の格が上げられたような進化。
「お前もそろそろだろ。あんな化け物を倒したんだ。進化が訪れる」
〈報告。膨大な魔素の吸収を確認。許容量の突破……身体にダメージが入っています。妖魔再生で修復します。……修復スピードが間に合いません。体を強制的に進化させます。ゴーストを倒したことで獲得したテンペストコインを回します……
うぅ、もう意識が……。
〈
リムル=テンペスト
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