〈
体がふわふわと浮かぶような、不思議な感覚。
ずっとこの感覚を体験していたいけど、早く起きなければいけないという焦りも生まれる。
意味がわからない。どうして私は焦っているの?
〈
〈固有能力を新たに獲得します。[天空之大帝]、[大妖魔覇気]、[天魔再生]、[聖属性吸収]、[妖魔統合]、[妖魔復活]、[妖魔進化]、[循環魔素]を獲得しました〉
〈妖怪存在値が伍へと上昇。
〈
〈倒した魔物からの魔素奪取とコイン獲得が強化されます。魔素奪取は奪取と共にスキルの変化を促します。コイン獲得ではEランクから6段階凸、Dランクでは5段階凸、Cランクでは4段階凸、Bランクでは3段階凸、Aランクでは2段階凸、Sランクでは1段階凸が可能です〉
〈既に獲得している
〈凸により、
〈以上で進化を終了します〉
***
「おっ、やっと起きたか寝坊助ちゃん」
「りむる……?」
「おう、リムルさんだぞ。悪かったな、お前に無茶ばっかりさせて」
「私、リムルのためなら無茶するよ?」
「ダメだ。それは俺が許さない。お前が俺のことが大事なのと同時に、俺もお前のことが大事なんだ。だから、頼むよ」
心の底から訴えかけるような視線。
断られたら寂しさを抱え込んで砕け散ってしまうかもしれない。そんな憂いさを感じずにはいられない。
分かってるくせに。リムルにそんな顔されたら、私は断ることができない。
あぁ、そうか。だからリムルはこんな顔で私に頼み込んでるのか。
それが作り物の表情でないから余計に断り辛い。
「…本当に大事なの?」
「大事だ」
「だったら唇にキスしてよ。相棒の可愛い唇にさ」
断れないのは分かってた。だからちょびっと悪戯しようと思って。
「なーんて、じょうだ……」
「するよ。すれば良いんだろ?カミアの唇に」
リムルの親指が私の唇に触れる。指先で楽しむようにゆっくりとなぞる感覚がむず痒くて、でも少し気持ちくて。
思考がぽやぽやと緩くなっていくのが自分でも分かる。
自分で唇触るだけじゃ気持ち良くないのに、どうしてこうも他人だと違うんだろう。
指だけで気持ちよくなるのに唇だとどうなるのか。想定できない。予想できない。
断らないとまずいことになる。そう分かっているのに、口が動かない。動かせてはくれない。親指を口の中に入れられてうまく喋れない。
「しないと分かってもらえなさそうだしな。俺がカミアのことをどんなに大事に思っているのか。心身に叩き込んでやるよ」
「りむ、ふ……!じょう、らん!」
「冗談?俺にとっちゃあマジだよ。そうでもしないと分かってくれないだろ。これだけ口弱いんだから拒否りたい気持ちも分かるけどな。100%腰砕けなるだろうし」
むむぅ!ムカつく!なんで私がヘナヘナになるのが確定なの!
どちらかと言うと私が腰砕けにさせる方なんですけど!!
あまり力のこもっていない腕で親指を口から抜き、体を起こす。
「リムルが?できないでしょ!私はそう簡単に腰砕けにならないから!」
「へえ……じゃあキスするのか?」
「するよ!してあげる!私が圧倒的に強いってのを教えてあげる!」
自信満々、そう評するのが一番似合ってる。
そうさ!この自信は薄っぺらいものじゃなくて、確信と分かりきった結果から判断されるもの!
私が腰砕けになることなんてないの!
「ぇ、あ、へ?」
リムルの唇が触れた。現実としてはたったそれだけのことなのに、頭に広がった感覚はそれだけのことで終わっていない。
頭に電流を押し当てられたかのような衝撃。でも、絶対にこの気持ちよさは電流じゃ味わえない。
頭部を起点に体全体に快楽が流れ出し、自分を占める全てがふにゃふにゃになっていくのを感じる。
これが腰砕けじゃなかったら何が腰砕けなのか。そう思えるほどに体の力が抜けていく。
「またこうなりたくなかったら自分のことは犠牲にしない。何かあったら俺を頼る。いいな?」
「ひゃ、ひゃい……」
答えようとしたけど、呂律が回っていない。ふにゃっふにゃの滑舌から出てきたのは可愛い声。
でも、それが出た経緯はまったく可愛くない!
「んじゃ、そろそろ行くぞ。外の日差しもみたいしな」
「まって、りむる!わたし、まだ……」
即堕ちすぎる事実を口にするのは憚れて、ちょびっとちょびっとしか口に出来ないのもまた恥ずかしい。
「ぇ、本当に腰砕けになったのか?」
「……ぅん」
「いや、それは、ごめんなさい。反省してます」
「私が悪いから良いんだけど、少し、待って……」
ちょっとした悪戯心がここまで発展するなんて思ってもみなかった。
生半可な覚悟で悪戯はするものじゃないね。うん、加減しよう。
そうして腰砕けが治るまで約1時間。
本当に調子に乗って煽るものじゃない。
「おぉ!久しぶりの日差しだ!」
「私にとっては初めましてだけど」
「ぁ、悪い」
「リムルが気にする内容じゃないよ。それにさ、リムルが楽しんでるのを見てると私も楽しくなるの。だから、思いっきり楽しんで」
初めては、怖い。外に出るのも怖かった。
でも、リムルがいるなら。いてくれるなら。私はどこまでも一緒にいける。
……まあ、そんなリムルは透明化の
どんな使い道を考えてるんだか。まったく!けしからんですよっ!
「リムル…。透明化の
「それは、そういうことでしょうか……」
「リムルがそう思いたいなら、そういうことでも良いよ……?」
記憶喪失の私でも分かる。これは単なる友人には言ってはならない言葉だ。
それでも、口は走った。
あのゴースト種を倒してからどうにも様子がおかしい。
心臓がうるさくても。羞恥心で頭を抱えたくても。口が走ってしまうのだ。
「ア、アノ!強キ者タチヨ!ココカラ先ニ何カ用デショウカ!」
初めての原住民にあった。
「リムル、ごめん。私はいなくなります」
「待て待て待て!!いなくなるな!恥ずかしいのは分かるけどな!んで、そこの
「グ……アマリニモ強力ナオーラヲ出シテイラッシャッタノデ…」
オーラ……?そんなに出してたのかな。
〈肯定。進化したことでオーラ量が増えたことにより、制御ができていません。これ以上長くオーラが漏れ出ていると
あらお恥ずかしい。完璧に制御できていたつもりだったんだけどな。
ちょっと抑えて……と。これで放出魔素は完全に鎮まったね。
溢れる魔素を鬼玉に還元してたんだけど……ちょっと生産スピード上げた方がいいかも。
アレやり過ぎると頭が痛くなるから嫌なんだけどなぁ。
〈解答。並列妖怪に鬼玉作成を行わせるのが最適かと思われます〉
へぇ。そんなことできるんだ。今度からそっちのやり方やってみよ!
「デハ、ゴ案内シマス」
いつの間にか
ちょっとー!リムル!ちゃんと私に確認とってよね!