……困った。あの肉造兵器の攻撃も効かないなら何も効かない。
フィジカルも高いし、このまま戦っても負けるのは私。体力的にも魔素、魔力の消費的にも敵わない。
「アカン!アカン!アカン!」
金棒による叩きつけを避けた先には煉獄の妖術。致命的なダメージにはなっていないけど、新たに攻撃を作らせる隙にはなる。
煉獄で怯んだタイミングで金棒を叩きつけられる。
圧倒的な重さによる叩きつけは肉体を抉る。天魔再生で体は治せるけど、勝機は改善できないみたい。
あぁ!リムルの超進化再生が欲しい!
再生するたびに身体能力が青天井に上昇する再生能力ってズルでしょ!私にちょうだいよ!今私が一番必要としてるからさ!
〈解答。ありません。あれは個体名リンダをも捕食する雑食性を持つ個体名リムルだったからこそ成し得た
じゃあ無理じゃん!私が赤鬼に勝つの。
諦めたくないけど、もう諦めるしか……ん?待って、まだ全然勝率あるかもしれない!
もちろん赤鬼の試練は継続したまま。
あの試練は戦う意志さえ維持していれば試練は継続されるの。だから世界移動をしたとしてもノープログラムってわけ!
で、そんな状況で何をするのかっていうと……ガチャするよ!
みまわり鬼を大妖魔覇気で倒した際に得たオニコインが私にはある。それも321枚。
これなら赤鬼を倒せる一手になりうる妖怪が出現してくれるのは分かりきった事実!完全なる勝利の方程式!
〈承知。オニコインを回します。
せいでん鬼×3(9凸)
雷電操作が
あせっか鬼×92(368凸)
へこ鬼神×8(16凸)
ぎしんあん鬼×35(175凸)
たこやっ鬼×19(95凸)
百鬼姫(1凸)
みまわり鬼×163(2420凸)
各種鬼能力が強化されます〉
〈獲得した妖怪が300匹を突破しました。妖怪権能[百鬼夜行]が解放されます〉
〈獲得したSランク妖怪が3匹を突破しました。妖怪権能[
だいたい半分がみまわり鬼なのは目を瞑ってあげる。瞑ってあげなかったらボコボココースなので感謝してほしい。
……今回引いた妖怪の中で一番の大当たりはあせっか鬼かな。
あせっか鬼は防御と邪魔が優秀な妖怪。本編ゲームではサークルを回しにくくしたり、とりつきでダメージ減らしたり、タンクとなったり。
対戦でも採用確率の高い優秀な妖怪とされている。
そして、防御が高いという面は表裏一体でフィジカルが高いのイコール。Cランクの鬼妖怪が92体。数で言うと368凸。
これなら赤鬼ともある程度は戦える。この戦略をとって正解だったかな?
強化された肉体で異空間ゲートを潜り、到達するは黒白世界の鬼之試練。
私を探し回る赤鬼の背後から、321体引いた鬼妖怪の身体能力で殴りつける。
鬼強化も守護之御力も使用していない完全素の打撃。けれど、その一撃は過去を打ち壊す。
赤鬼の防御を貫き、体力面に影響を与える。前と同じく些細なダメージ量であり、自己再生で完結する範囲。
「……アカ」
「どうしたのかなぁ、赤鬼ちゃん。そんなにビビってちゃ罰せないでしょ?」
赤鬼はその状況を感じ取り、危機感を抱く。
私はその状況に笑みを浮かべる。
せいでん鬼を獲得した際に得た
ビリビリと稲妻が駆け回る体から発せられる速度はまさに雷光。先ほどとは一転変わる速度で近づき、肉に杖が触れる。
「アガァァン!!」
戦法は同じ。近距離まで迫ったときは煉獄の妖術を発動し、敵を遠ざける。普通に厄介だったけどさ、
「生温いんだよ!!私の大元は炎で世界を照らす
炎属性の完全攻撃耐性……言わば、炎属性無効の耐性を獲得した私に炎は相性不利すぎるんだよね!!
「アカァァン!」
杖で腹を打たれ、少々吹き飛ばされた赤鬼が構えるのは魔法とも言い難い魔素の直接攻撃。
魔法ほど構築された術式はない。だが、今所持しているどの魔法よりも攻撃力を保有している……か。
いいね、全力で乗ってあげるよ!
百鬼姫を得たことで新たに獲得した妖怪権能、
「唸れ暗黒!」
この世界のどんなモノよりも深い闇を思い浮かべるの。
「鎮まれ時刻!」
時計の針がゆっくりと遅くなっていく、けれど止まることはないイメージで。
「重なれ暗刻!」
二つのイメージが溶けて、融合して、新たな物質に生まれ変わる。どの世界にもあり得ない暗刻の物質がこの世に生まれる。
闇と純粋。高めあったエネルギーをぶつける風情も何もない争い。
その果てで勝ちを勝ち取ったのは無。相殺され、爆発し、この勝負に勝者はない。
けど、その果ての果ての勝負は今決まる。
膨れ上がった肉体から溢れ出る血流をもって近接戦が大妖怪たちの手で彩られる。
杖と金棒。高なる金属音、膨れ上がる重さ、すり減る魔素。
体が重たい。最初の頃と比べると半端ではないほどの身体能力の低下……いや、圧倒的集中力が齎した精神的疲労だ。
それでもと思い、衝突を繰り返すのは何故だろう。
……あぁ、分かってるよ。そんなの、分かってるよ。
恋焦がれる若き乙女のように、熱望してしまうんだよ。会いたくて、会いたくて、会いたくて仕方がない…
「
私が武器を払うのはリムルのため。けど、その武器を得る過程は私だけのもの。
だから、命賭ける戦場を所望したっていいでしょ?
「赤鬼!貴方の力はそんなものじゃないでしょ!もっと、もっと、もっと!!私を恍惚させるような力を!」
私にとっても、赤鬼にとっても。再生が追いつかない初めての猛攻。
その現実に。
試練も何もかも、捨てても良いと思えるほどに心地よい。心地良すぎて命を燃やしてしまいたい。
でも……それはできない。赤鬼は制限があって、私には帰らなきゃいけない場所がある。
だから命を賭けれない。
「まあ、貴方の必殺技ぐらいは受けてもいいよ?」
制限中であっても強力と言っても過言ではない赤鬼の身体能力から繰り出される物理技の必殺技。
死んでしまうかもしれない。けど、その一撃を受けきってこそ私は私のことを認められる。
だからさ。ちょうだいよ、とびっきりの必殺技を。
赤鬼が手のひらで金棒をなぞる。全力で魔素を注入し、最高の強化度合いを施す。
あまりにも含有エネルギーが高すぎるがあまり、空間に歪みが発生している。その域に達せられるのはいつになるのか、分からない。
【悪魔の金棒】
鬼強化、守護之御力、
今可能な強化を防御に振り切っても腕が悲鳴をあげる。耐えきれないと叫んでいるけれど、もう少しの間耐えて欲しい。
もう少しで、……
「
たこやっ鬼から獲得した
たかが1割。けれど、されど1割。
制限をかけられているのに加え、疲労が重なっている赤鬼ならば、膝をつかせるのも可能なんだよね。
「アカ…」
〈報告。赤鬼から認められました。Sランクの鬼妖怪が配下に加わりました。各種身体能力、各種
ようやく……ようやく試練終わったぁ〜!もうちょっと楽に終わると思ったんだけどなぁ。
まさか世界移動からの強化剤入手をしなければいけないほどの難易度だったとはね……。今度から試練に挑むときには注意しなくちゃ。
「さーてと。私もそろそろ行こうかな、リムルのところへ」