「あ!リムルー!やっほー!」
「鍛錬終わったのか?」
「うんうん!終わったよ!赤鬼に認めてもらったんだよ。やっぱ天才かなぁ私!」
「……エネルギーが格段に上がってるな。それに比例して操作能力や身体能力も上がっている」
「それを言うならリムルもじゃない?」
魔素量で言うなら私に劣るけど、肉体強度の面ではリムルが勝る。赤鬼に認められて肉体強度が上がったはずなのに負けてる…。
超進化再生の影響かな。自分が消滅しない限り、魔素がなくならない限り無限に強くなれるのが超進化再生。
私だってリムルに負けない強いスキルは持っているし、リムルが所有している強化術よりも多くの強化術を持っている。
だけどまあ、それで安心できるはずなんてない。
リムルの成長速度は正に異次元。大賢者ちゃんが成長を補助してくれているって言っても、その度合いは本人に由来する。
末恐ろしいというか、なんというか……。
…隣に立っているだけで必死に並び立たなきゃ行けないと思わせてくる。
一緒の歩幅で歩けないようなら。常に一歩先を行かれるような研鑽なら。
リムル=テンペストの隣で歩く資格はないと思わせてくる脅迫にも近しい圧倒的な存在感。
この存在感は記憶があるから?異世界の転生者だから?
全部違う。
きっとリムルは本当の優しさを知っているから。だから仲間を追い詰めようとしない。
とびっきりの優しさを抱えているんだ。
そんな優しさが含んでいる輝きに当てられ、甘えてしまったら。
その景色は居心地が最高だろうけど、心核まで蝕んでいく環境。
知っているから、感じているから。
蝕まれないために努力を続ける。名付けをもらって進化をした狼たちや
……はぁ、平和の社会に居るからってあそこまでを出せるものかな。
「リムル」
「おう、どうした?」
「寂しい」
名付けによって[
リムルが村の設備を何とかするため、都会に交渉に行く話を。
事の運びや流れ的には仕方ないと思うけど……思うんだけど、どうにも胸の中で不安感が募る。
リムルが仲間にしたフシマの元となった魔人……アレに対する嫌な予感が鳴ってやまない。
多くの妖を束ねる故に獲得した妖怪権能の百鬼夜行が危険と告げる。
鬼の中ではトップレベルの潜在力を持つ赤鬼に認められたことで獲得した
もしかしたら二度と帰ってこないかもしれない。そんな懸念点が心の中いっぱいに広がり、感情を上手く処理できない。
「…大丈夫だよ、俺は生きて帰る」
「……っ、またそんなこと!ドラちゃんレベルの敵に遭遇したら?一方的に殺されちゃうんだよっ!」
「それでも大丈夫だ。死んでも、カミアの目の前に現れるために生きて帰る」
喉の奥まで出かかった「めちゃくちゃだ……」という言葉。
それを飲み込み、リムルの胸に顔を擦り付ける。
言葉は本気だった。瞳も本気だった。死んでも死なない、生き返ってみせる。そんな執念を感じさせる。
きっとリムルなら成し遂げてしまう。
でも、不安だから。このぐらいのお守りは許してね…?
「んっ……これは?」
「超オニ魂。新しく手に入った妖怪権能の
「リムルなら、できるよね?」
超オニ魂は他の妖怪魂よりも本人の特性が強く浮き彫りになる。
リムルにはどんな能力が出るか分からないけど、デメリットが強すぎるという若手じゃないから大丈夫だと思う。
ただ……ある程度体が強かったり耐性ないとピーキーな性能になっちゃうけど。
「ありがとう。絶対に生きて帰ってくるよ」
「約束だからね!」
「あぁ、約束だ」
***
リムルたちを見送ったのち、目を追うのは一つの
妖魔関係の能力に間違いはないと思う。
……そして、私が出会ってきたどんな妖怪や魔物よりも多いオーラが内包されている。
厄介ごとだって分かっているのに、
[『_______・____』に触れたことで妖怪権能[超本気]を獲得。また、本人の妖怪存在値の向上促すために世界移動を開始します]
景色が変わる。
眩い白い光が視界を包み、次の瞬間には街の光景。
どうやら、私が知っている世界の街じゃあ無いみたい…。
どちらかと言うと鬼時間の世界に近しい気がする。
〈解答。常時鬼時間の世界、第三世界はこの世界をベースに作られています〉
なるほどね。なら似るのも当然か。
それで?私にこの世界でして欲しいことが何かあるの?
〈解答。
三又……って、もしかしてアレ?私の下にいるやつ?
〈肯定〉
そーゆーことね。完全に理解したよ。
あんまり強く無いと嬉しいんだけど……どうかな。
「ねえ、君。加勢に入った方がいい?」
「えっと、君は?」
「私はカグラ。そうだね……天狗の変異種的な感じ?」
「天狗の変異種……?」
「あぁ、そっか。妖怪には変異種って概念がないのか。それに近しい妖怪って覚えてもらえたら良いよ。君の名前を教えてくれる?」
「あ!俺はケータ!手伝ってくれるならお願いできる?皆が少しボロボロになってるから…!」
ミツマタノヅチがケータのツレ妖怪に吐き出した炎を風の元素魔法で押し返す。
赤鬼には大して効かなかった魔法だけど、ミツマタノヅチの妖術を押し返すぐらいだったら出来る。
自分の炎でダメージを受けてそうなミツマタノヅチを背景に発動させるは神聖魔法。
鍛錬していたら
「にゃにゃっ!?治ったにゃ!」
「うぃすぅっ!?妖術複数持ちでうぃすか!?」
「さぁて、どうでしょう」
ケータのツレ妖怪はジバニャン、セミ丸、ホトトギス、ゆきおんな、ムリカベ、イガイガグリ。
幸い、高ランクの妖怪がいないから神聖魔法で治す魔力はそんなに消費しなかった。
ミツマタノヅチは赤鬼ほどの敵じゃないけど、色々と面倒くさそうな敵ではあるしね。
色々なことで消費してから挑みたい敵じゃないんだよね。
「お前、何者ギョロ?」
「さぁ?私もあんまり分かってないんだよね。でも、一つ分かることとしては……世界一格好いいスライムの相棒かな?」
浮かび上がらせるは煉獄。色々な魔法や能力を習得したり獲得してきたけど、やっぱり使い慣れてるのは炎。
目が覚めたときに宿っていた力だから、私が所有している中で一番引き出せる力が多い。
ミツマタノヅチは同じ火属性だから効きにくいかもしれないけど、そんなのどうでも良い。
だってさ、耐性も何もかも壊せばいいだけなんだから。
「なんて妖力…!?ここまで至るまでいったいどれ程の研鑽を…!」
「ねえウイスパー、カグラのってそこまで凄いの?」
「……凄いなんてもんじゃありゃあせん。ポテンシャルの塊とも言い換えても良いSランク妖怪たちが数百年が鍛錬を行ってようやくたどり着ける域でうぃっす」
うぅ……後ろですごく褒められてる…。能力を利用した上での到達点だからあんまり嬉しくないかも。
「唸れ暗黒!鎮まれ時刻!重なれ暗刻!」
赤鬼のときに使用した暗刻は膨大な魔素を使用したエネルギー弾。
だけど、今回のは違う。エネルギーを攻撃方面から拘束方面へと移行する技。
黒い時計が地面に現れ、ミツマタノヅチを縛り付ける。
「ジバニャンちゃん!必殺技!」
「にゃっ!?分かったにゃー!くらえ、百烈肉球!」
圧倒的なエネルギーで開かせた目にジバニャンちゃんの肉球攻撃を叩き込ませる。
弱点が露わになり、抵抗も何もできない状態で必殺技を全弾目玉に打ち込んでいる。
「ギョ、ギャローン……」
「ふふっ!終わったね、ケータ!いえーい!」
「いえーい!」
声をあげてハイタッチを求めたら簡単に応じてくれた。
やっぱり時代はノリがいい小学生だよね〜!ウンウン!
「……少し、聞いても良いでしょうか。アナタ、何者でうぃすか」
「何者だと思う?ウイスパーちゃん」
私を疑う懸命に仕事を行っている白い執事には、とびっきりの笑顔を浮かべる。
きっと今までの表情と違って胡散臭く、信じるに値しないものだ。
それでも、私はその笑みを浮かべる。信じられなくても、私が私の存在証明を果たす機会だと考えて。
「私は
「世界の異物……でうぃすか?」
「うん。そうだね。私は世界の異物だよ。ケータには言ったと思うけど、私は天狗の変異種のようなものって言ったよね」
「う、うん」
妖怪と妖怪を統合して新しい妖怪にするというのはあるけど、私のは全く違う。
他の妖怪はできない、私だけの力。
「妖怪は妖怪なんだけど、別の妖怪というか……まあ、この世界とは違う世界に住む妖怪と思ってくれて良いかな」
「別の世界の?」
「うん。そうだよ。色々と凄い子たちがいる……あ、そろそろ時間切れみたい。また機会があったら会おうね。ケータ」