ポムニを愛したい男   作:ポムニに脳を壊された男

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 アメデジ二次創作増えろ、マジで


魂……みたいなもの?

 

 

 

 新サーバーの基礎的な接続試験から、数日が過ぎていた。

 

 エイドリアンは片手に携帯端末を持ち、自宅の階段を上っていた。

 

 端末のカメラは起動したままになっており、地下工作室の隔離中継設備を経由して、サーカス内部の観測画面へ映像を送っている。

 

「ここが、新旧のサーバーを最終的に設置する候補。二階の空き部屋だ」

 

 エイドリアンがドアを開ける。

 

 長い間物置として使っていた室内には、段ボール箱や古い研究機材、分厚い設計図の束が積み重なっていた。壁際の棚にも用途の分からない部品が詰め込まれ、床が見えている場所の方が少ない。

 

『空き部屋というより、物置じゃない』

 

『というか、あの大きな箱を二つも置く場所なんてないでしょ』

 

「だから今日は、使える場所か確認するついでに片づける」

 

 エイドリアンは室内へ入り、端末をゆっくりと窓の方へ向けた。

 

 正面の家々の屋根越しに、その先の森と広い空が見える。

 

『わあ……地下のカメラより、ずっと遠くまで見えるね』

 

 ガングルの声が少し明るくなる。

 

『景色は悪くないわね』

 

 ズーブルも先ほどよりは好意的な調子で付け加えた。

 

『設置場所として考えるなら、景色より先に確認すべきことがあるんじゃないかな』

 

 キンガーの声に、エイドリアンはカメラを床へ向けた。

 

『床の耐荷重だ。サーバーラックそのものの重量に、冷却設備と非常用電源も加わる。稼働時の振動も無視できないね』

 

「分かってる。床下の構造は後で調べる。必要なら補強するつもりだ」

 

『火災対策も忘れないでほしいな』

 

「専用の消火設備を入れる。電源系統も、この部屋だけ分離する予定だ」

 

『ずいぶん本格的な部屋になりそうだね』

 

 ケインが楽しそうに室内を眺める。

 

『せっかくなら、天井に星を――』

 

 そこまで言ってから、ステッキを持ち上げたまま動きを止めた。

 

『……いや、内装を決めるのは、まず部屋が使えると分かってからだね』

 

「よく自制したな」

 

『私だって学習はするとも』

 

 エイドリアンは窓際から壁、天井、廊下へ続く配線経路を順番に撮影し、必要な工事を端末へ記録していった。

 

 新しい電源線をどこから引くか。

 

 冷却用の配管をどう通すか。

 

 窓からの直射日光をどのように遮るか。

 

 機材を搬入する際、階段をそのまま使えるか。

 

 一通り確認したところで、端末を棚の上へ固定する。

 

「まずは、ラックを置けるだけの場所を作るか」

 

 袖をまくり、手近な箱から移動させ始めた。

 

 住人たちはしばらく作業を眺めていたが、古い機材が画面へ映るたび、時折質問を投げかけてきた。

 

『その紙、何の設計図?』

 

 ガングルが、箱からはみ出していた大判の図面に気づく。

 

「試作型の作業用アームだ。今使ってる物より二世代くらい前の設計だな」

 

『捨てないの?』

 

「参考になる部分が残ってる」

 

『それ、さっきから全部そう言ってない?』

 

 ズーブルの指摘に、エイドリアンの手が一瞬止まる。

 

「……使える物を捨てる必要はないだろ」

 

『それでこの有様になってるのよ』

 

 反論できず、エイドリアンは無言で図面を別の箱へ移した。

 

 その後も、半ば呆れたズーブルの声を聞き流しながら片づけを進めていると、ポムニが画面の端に映った物へ気づいた。

 

『ちょっと待って。奥にある大きな機械、あれは何?』

 

「奥?」

 

『その布を被ってるやつ』

 

 振り返ると、壁際に背の低い大型装置が置かれていた。

 

 複数のセンサーと演算部、記録装置を組み合わせた無骨な機械で、現在使っている設備と比べると、外装や端子の規格もかなり古い。

 

「ああ、これか」

 

 エイドリアンは積まれていた箱を横へ避け、装置に掛かっていた布を取り払った。

 

「昔作った観測装置だ。魂が本当に存在するのか、調べるためのな」

 

 通信の向こうが静かになった。

 

『……今、魂って言った?』

 

 ポムニが確認する。

 

「ああ」

 

『なんで機械で魂を調べようなんて発想になるのよ』

 

 ズーブルの疑問に、エイドリアンは装置の表面に積もった埃を払いながら答えた。

 

「前世の記憶があったもんでな。魂があるのか気になって作った」

 

 再び沈黙が落ちる。

 

 今度は先ほどよりも長かった。

 

『……前世?』

 

 ポムニがゆっくり聞き返す。

 

「ああ」

 

『別の人生を生きてた時の記憶がある、って意味?』

 

「そういう意味だ」

 

『それ、初めて聞いたんだけど』

 

「言ってなかったか?」

 

『言ってないわよ』

 

 ズーブルが即座に返した。

 

 その声へ重なるように、ラガタが戸惑いながら尋ねる。

 

『生まれた時から、前の人生を覚えていたの?』

 

「物心がついた頃にはな。別に隠していたわけじゃない。ただ、話題にする機会がなかっただけだ」

 

『普通は、機会がなくても一度くらい話すものじゃない?』

 

 ポムニのもっともな指摘に、エイドリアンは少し考える。

 

「そういうものか」

 

『そういうものよ』

 

 ポムニとズーブルの声が、ほとんど同時に返ってきた。

 

 ケインは目を瞬かせながら、そのやり取りを見ていた。

 

『君は私たちが思っていた以上に、変わった経歴を持っていたんだね』

 

「前世について詳しく話すつもりはないぞ」

 

『今すぐ無理に聞くつもりはないよ。ただ、初耳だったから驚いただけさ』

 

 ケインの口調は落ち着いていたが、興味を隠しているわけでもなかった。

 

 キンガーは装置を眺めたまま、静かに口を開く。

 

『以前の人生の記憶が残っているなら、何がそれを現在の肉体へ持ち越したのか気になるのは自然だね』

 

「ああ。記憶が脳にだけ保存されているなら、別の肉体に生まれた俺が覚えている理由を説明できない」

 

 エイドリアンは装置の外部電源端子を確認し、保管用の電源ユニットを接続した。

 

「それで、肉体と人格を繋いでいる別の何かが存在するのか調べた」

 

『それで、何か見つかったの?』

 

 ポムニの問いに、エイドリアンは少しだけ手を止めた。

 

「正体までは分からなかった。ただ、説明のつかない反応は見つけた」

 

 古い装置を起動する。

 

 内部で低い駆動音が鳴り、しばらくして側面のモニターへ過去の観測記録が表示された。

 

 エイドリアンは携帯端末を持ち上げ、住人たちにもグラフが見える位置へカメラを移動させる。

 

「最初から魂を見つける前提で作った機械じゃない。生者と死者を比較した時に、既知の生命活動では説明できない差が存在するか調べるための装置だ」

 

 画面には、複数の観測記録が並んでいた。

 

 覚醒中。

 

 睡眠中。

 

 全身麻酔中。

 

 意識不明状態。

 

 心停止後。

 

 脳活動停止後。

 

 死亡確認後。

 

 そして、死亡から一定時間が経過した後。

 

『……ちょっと待って』

 

 ズーブルが、並んだ項目を見て眉を寄せた。

 

『睡眠や麻酔はともかく、死亡後の記録まであるのはどういうこと?』

 

 エイドリアンが顔を上げる。

 

『まさか、その機械のために誰かを――』

 

「違う。そこは誤解するな」

 

 エイドリアンは即座に否定した。

 

「俺が誰かを死なせたわけでも、死期を早めたわけでもない。この装置も、対象へ何かを照射したり、肉体へ干渉したりするものじゃない。離れた場所から反応を記録するだけだ」

 

『なら、どうやって人が死ぬところまで測ったのよ』

 

「医療機関に研究協力を依頼した」

 

 エイドリアンは記録に付随していた研究概要を表示する。

 

「覚醒中と睡眠中の基準記録は、健康な協力者から取った。全身麻酔中のものは、予定手術を受ける患者本人の同意を得て、通常の医療機器と一緒に測定した」

 

『手術には影響しなかったの?』

 

 ラガタが尋ねる。

 

「非接触の観測装置だから、治療や手術へは一切干渉しない。医師が問題ないと判断した環境でしか使っていない」

 

 次に、意識不明状態の記録を示す。

 

「こちらは、既に治療を受けていた患者のものだ。本人が事前に研究利用を認めていた場合か、医療側の規定に従って代理の許可が得られた場合だけ測定している」

 

 そして、死亡前後の観測記録へ表示を切り替えた。

 

「死亡前後の記録は、終末期医療を受けていた人たちから得た」

 

 住人たちの空気が静まる。

 

「回復の見込みがなく、既に看取りの段階へ入っていた人たちだ。自分が亡くなるまでの記録と、その後の肉体を研究へ役立てたいと、生前に本人が同意していた」

 

『死ぬのを待って観察してた、ってこと?』

 

 ポムニが複雑そうに尋ねる。

 

「俺は観測装置を設置しただけだ。治療方針や緩和処置を決めたのは担当の医療従事者で、俺が口を出したことはない」

 

 画面へ、観測に関する条件を表示する。

 

「測定のために治療を遅らせたことも、薬の量を変えたことも、苦痛を長引かせたこともない。観測を中止する必要があれば、医療側の判断が最優先だった」

 

『本人が途中で嫌だと言った場合は?』

 

「その時点で終了だ。家族や医療側から中止を求められた場合も同じだ」

 

 死後の測定についても、生前に同意を得た時間と範囲に限って行っていた。

 

 観測が終われば、それ以上は機器を作動させず、通常の手順へ戻している。

 

『……倫理審査みたいなものは通したの?』

 

 ズーブルはまだ険しい顔をしている。

 

「当然だ。医療機関側の審査と、外部の倫理委員会を通している。俺一人の判断で患者へ装置を向けたわけじゃない」

 

 エイドリアンは少し間を置く。

 

「もっとも、最初に装置を作った時は、自分で自分を測るところから始めたがな」

 

『だったら最初からそこまで説明しなさいよ』

 

「全部説明すると長くなるだろ」

 

『今のは長くても必要なところよ』

 

「それはそうだな」

 

 素直に認め、エイドリアンは改めて観測記録へ視線を戻した。

 

「それぞれの項目が、全て同じ一人から得た記録というわけじゃない。健康な協力者、手術を受ける患者、治療中の患者、終末期の協力者。それぞれ別の対象から得た記録も含まれている」

 

 そのうえで、生前から死後まで継続して観測できた終末期の協力者については、共通する変化が見られた。

 

「生きている人間からは、脳波や心拍、代謝、通常の電磁場のどれにも当てはまらない固有反応が観測された」

 

 エイドリアンは波形の一つを拡大する。

 

「この反応は個体ごとに形が違う。睡眠や麻酔では消えない。意識を失っても維持され、肉体の状態が変化しても同じ個体として識別できる」

 

『意識がない状態でも残るなら、思考そのものの反応ではないんだね』

 

 ケインが画面を見ながら言う。

 

「少なくとも、脳が通常どおり活動している時だけ出る反応ではない」

 

 次に、終末期の協力者から得られた死亡前後の記録を表示する。

 

 心拍と脳活動を示す線は先に停止している。

 

 しかし、別の色で表示された固有反応だけは、その後もしばらく残っていた。

 

『この線だけ、消えていない』

 

 ポムニが呟く。

 

「死亡が確認された直後も、一定時間は肉体に留まっていた」

 

 時間軸を進める。

 

 残っていた波形が、ある地点で途切れる。

 

 弱まりながら消えたのではない。

 

 直前まで形を保っていた反応が、突然観測できなくなっている。

 

『機械が反応を見失っただけではないのかな?』

 

 キンガーが尋ねた。

 

「俺も最初はそう考えた。複数の観測機器を使い、測定方法も変えた。別の対象でも同じ傾向が出たが、反応が消えた後を追跡することはできなかった」

 

『つまり、死んだ後にどこへ行ったのかは分からないのね』

 

 ズーブルが言う。

 

「ああ。消滅したのか、装置で観測できない状態になったのか、それすら判断できない」

 

 エイドリアンは記録を閉じず、そのまま表示しておいた。

 

「俺はこれを便宜上、魂と呼んでいる。生者には存在し、死亡後には肉体から失われる個体固有の反応。それ以上のことは分かっていない」

 

 魂と名づけてはいても、装置ができることは限られている。

 

 固有反応が存在するか。

 

 どの対象へ結びついているか。

 

 過去に観測したものと同一か。

 

 反応が安定しているか。

 

 確認できるのは、その程度だ。

 

 人格や記憶の内容を読み取ることはできない。

 

 新しく作ることも、複製することも、対象から取り出すこともできなかった。

 

『じゃあ、本当にただ見るだけなのね』

 

 ズーブルが念を押す。

 

「そうだ。心の中を読める機械じゃない」

 

『それなら、まだマシね』

 

 ズーブルは完全に警戒を解いたわけではなさそうだったが、それ以上は追及しなかった。

 

 エイドリアンは過去の観測記録を閉じようとして、手を止めた。

 

 モニターの端には、先日作成した新旧サーバー間の移行計画が表示されている。

 

 人格データ。

 

 記憶領域。

 

 サーカス環境。

 

 ケインの管理機能。

 

 それらを新サーバーへ移した際、同一性をどう確認するか。

 

 これまでは、データの一致と本人たちの主観的な確認を基準にする予定だった。

 

「……待てよ」

 

『どうしたの?』

 

 ポムニが反応する。

 

 エイドリアンは過去の観測記録と、移行計画の画面を交互に見た。

 

「この装置、新サーバーへの移行に使えるかもしれない」

 

『魂を測る機械を?』

 

「ああ」

 

 エイドリアンは移行計画の画面を開く。

 

「人格や記憶のデータが完全に一致していても、それだけでは、同じ本人が移ったと証明しきれない。精密な複製が作られただけだという可能性が残る」

 

 住人たちの声が静まる。

 

 それは、新サーバーの話を始めた当初から、誰もが少なからず抱いていた疑問だった。

 

「だが、君たちにもこの固有反応が存在するなら、移行前後で比較できる」

 

 画面上に簡単な図を描く。

 

「移行前に反応を記録する。データの移動中も可能な限り追跡する。移行後、同じ固有反応が新サーバー側へ結びついていることを確認する」

 

『旧サーバー側に同じ反応が残っていないことも確認するのね』

 

 ポムニが言う。

 

「そうだ。新しい方にあるのが同じ反応で、古い方には残っていない。それが確認できれば、少なくともデータだけを複製した場合とは区別できる」

 

『……本当に、本人そのものが移ったか確かめられるかもしれない』

 

 ポムニは画面に描かれた図を見つめた。

 

「あくまで、君たちにも同じ種類の反応があるなら、だがな」

 

 その言葉で、ポムニの表情が少し強張る。

 

『もし、なかったら?』

 

「現段階では何も分からない。そもそも、この装置がデジタル空間に存在する君たちを正しく測れるかどうかも未確認だ」

 

『でも、測って何も出なかったら……私たちには魂がないってことになるの?』

 

 近くにいたガングルが、不安そうに仮面の端へ手を添えた。

 

『それだけで決めるのは早いんじゃないかしら』

 

 ラガタがすぐに口を挟む。

 

『装置がこちらへ対応できていない可能性もあるんでしょう?』

 

「ああ。反応が出なかったとしても、魂がないという証明にはならない。測定方法が間違っている可能性の方を先に疑う」

 

『それに、反応があるかどうかで、わたしたちが今ここにいることまで変わるわけじゃないでしょう』

 

 ラガタがガングルへ向けて続ける。

 

 ガングルはまだ不安そうだったが、小さく頷いた。

 

『測定するとして、こちらの人格データや記憶に触れる必要はあるの?』

 

 ズーブルが尋ねる。

 

「ない。この装置は対象から出ている反応を観測するだけだ。ただし、通信経路越しに使えるよう改修する必要はある」

 

『観測誤差の基準も取り直した方がいいだろうね』

 

 キンガーが言う。

 

『生身の人間を前提に作られた装置なら、デジタル空間へ接続した時点で別のノイズが加わる可能性がある』

 

「その通りだ。まず俺自身を測って動作を確認する。その後、反応が出ないと分かっている単純なプログラムや、人格を模したダミーデータとも比較する」

 

『それが終わるまで、私たちは測らないのね』

 

「測らない。それに、実際に測定する時も本人の同意を取る」

 

 ポムニは考え込んでいたが、やがて装置へ視線を戻した。

 

『……今すぐは無理なの?』

 

「無理だ。この装置は古すぎる。現在の通信規格にも対応していないし、デジタル空間を遠隔測定したこともない」

 

 エイドリアンは背面の端子を確認する。

 

「新サーバーの観測系へ接続できるよう、かなり手を入れる必要があるな」

 

 魂観測装置についての話が一段落したところで、エイドリアンは本来の目的へ戻った。

 

 二階の部屋は設置場所として利用できそうだが、そのまま機材を運び込める状態ではない。

 

 床の補強。

 

 専用電源の引き込み。

 

 冷却配管。

 

 防火区画。

 

 振動対策。

 

 窓から入る直射日光を遮る設備。

 

 非常用電源の設置。

 

 必要な工事を端末へ記録していく。

 

「部屋の調査は、ひとまずこんなところだな。工事費と日数を計算してから、地下に置いたままにする場合とも比較する」

 

『二階の景色は捨てがたいけど、安全が優先ね』

 

 ポムニが窓の外を映す画面を見ながら言う。

 

「カメラだけなら、サーバーを置かなくても設置できる」

 

『……それは先に言ってよ』

 

「聞かれなかったからな」

 

『またそれ?』

 

 ポムニの呆れた声に、張り詰めていた空気が僅かに緩んだ。

 

 エイドリアンは魂観測装置を処分予定の機材から外し、一度地下工作室へ戻すことにした。

 

 一人で持ち上げるには重いため、小型の運搬機を呼び出し、その上へ装置を固定する。

 

 部屋の確認を終えた住人たちは、それぞれ中央区域から離れていった。

 

 地下工作室へ戻った頃には、通信画面に残っているのはケインだけになっていた。

 

 エイドリアンは観測装置を作業台へ移し、古びた外装を開く。

 

 内部部品は旧式だが、基礎設計そのものは現在でも使える。

 

 新しい演算装置と接続すれば、観測精度も以前より上げられるはずだった。

 

『……エイドリアン』

 

 静かになった通信画面から、ケインが声をかける。

 

「何だ?」

 

『君は、私たちにもその反応があると思うかい?』

 

 先ほどまで住人たちの前では口にしなかった疑問だった。

 

 ケインの目は、作業台の上に置かれた装置へ向けられている。

 

「分からない」

 

 エイドリアンは即答した。

 

 ケインは僅かに視線を下げる。

 

「だから調べるんだ」

 

 エイドリアンは椅子へ座り、保管していた当時の設計データを開いた。

 

 旧式の観測装置。

 

 新サーバーの通信規格。

 

 サーカス側との隔離回線。

 

 それぞれを繋ぐために必要な変更点を、画面へ並べていく。

 

【個体固有反応観測装置】

 

【内部診断:開始】

 

【新サーバー接続用改修計画を作成】

 

 規則的なファンの音が響く中、エイドリアンは古い研究装置の改修を始めた。

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