《状況を改めて確認する》
ローター音が響く機内にて指揮官の声が各々の通信機越しにはっきりと聴こえる。
《つい先ほど、エーアデントに向けヴァリャーグからオープン回線にて宣戦布告を受けた》
宣戦布告、しかもヴァリャーグが。字面だけ見れば異常事態であり先方の本気度が伺える。
なんせエーアデントは一部では難攻不落の要塞と揶揄される程度には戦力が充実しており、搦手も通用しないとされるくらいには鉄壁なのだから。
そこに対してオープン回線による宣戦布告、普通ならば警戒に警戒を重ねる必要なのだが……
「宣戦布告って言って良いんですのアレ」
「本人らは宣戦布告のつもりだから合わせてるだけよ」
機内に緊張感はまるでない。もはや敵と認識すらしてないのではと言う雰囲気だが決して慢心しているなどではない。
ではどういうことかとなれば、その〝宣戦布告〟が問題であり原因なのだがこちらが声明文だ。
【生骸の巣に対する艦砲射撃で俺たちの基地が吹き飛んだし文句言いに行ったら明らかに自分らが知らない陸上戦艦により部隊が壊滅した、あれテメェらが改造した奴だろふざけんなぶっ殺してやる】
「どう考えても宣戦布告じゃなくて八つ当たりだよなぁ」
「八つ当たりだとしても相手の戦力はちょっと無視できないのも事実、なのよね指揮官?」
《あぁ、奴ら当初は本気でエルモ号を落とそうとしてたらしく、ヴァリャーグにしては兵器などが充実してる》
もし声明を無視していた場合、負けはないがそれなりの被害は出ていたかもしれない。なので向こうから態々声を掛けてきたのでならばとこちらから先手を打つことに。
作戦としては至極単純、先制でヴァリャーグが集結してる地点を爆撃、残党を戦術人形組で叩き壊すという流れ、その爆撃というのはエーアデントからのドローンで決行することになっておりそこがエーアデントの強さである。
《こちらエーアデント工房、ハヤブサは全機、既に発進させてる。あと1分もありゃ目標地点の爆撃準備は整うぞ、嬢ちゃんの方はどうだ?》
「いつでも出せますよ。ふふん、まさか【ハヤブサ零式】がこんなに早く出番が来るとは思いませんでしたよ」
「コストはハヤブサの倍だけど全ての性能は倍以上で武装も豊富、文句なしの完成品」
「ねぇ待って、そんなの開発してるって聞いてないんだけど、あとなにその装備」
『我らの道』
現在、88式とステアーは何故かフルフェイスヘルメットに機動力が確保されたアーマー、背中にはジェットパックを装備しており式自の指摘に二人は右手を左肩を叩くポーズを取ってから上記のように答える。
なんだそれは、あとその装備についても後で詳しく聞くからなと式自が口元を引くつかせているとベクターさんが思い出したかのように
「そう言えばこの前、二人は映画を見てたわね」
「はぁ、要は再現装備を勝手に開発したってことでしょ。それよりもそろそろよ、準備しな」
「私はいつでもって状態ですわ、っとあれが爆撃編隊でしょうか?」
機内から見える範囲で相当数のマルチロール型戦術ドローンことハヤブサの編隊にこれだけで勝負決まるんじゃなかろうかと写真を取りながら思うMDR。
その背後では88式とステアーが左の腕甲に備え付けられた端末を操作すればヘリから二機の戦術ドローン【ハヤブサ零式】が飛び去る。
《これより戦術ドローン部隊による爆撃を開始、その後に残党を制圧してくれ。残存がどの程度になるかは分からない、油断だけはするなよ》
「爆撃開始まであと10秒!」
「ふふっ、吹っ飛んじゃって下さい!」
「エーアデント爆撃編隊の総火力、食らうが良い」
「セリフが悪役ですわ……」
爆撃開始まで3秒前、エーアデントを襲撃せんと八つ当たりの為に集結していたヴァリャーグ達が見たのはちょっと冗談にならない数の戦術ドローンの編隊。
後に奇跡的のこの攻撃を生き残ったヴァリャーグの一人が語る。エルモ号を魔改造できる奴らがそれ以上の力を持ってないわけ無いよなと。
「た、退避だ、逃げろ!!!」
「間に合わねぇよ!! 対空攻撃だ、戦車砲でもなんでも良いから撃ち落とせ!!」
統率の取れていない言い合いによる散発的な対空射撃で止められるわけもなくハヤブサ及びハヤブサ零式によるミサイルと爆弾による波状攻撃は敢行されこの時点でヴァリャーグの戦力は約7割が消失。
勝負ありだろこれとなりそうだがそこにエーアデント精鋭部隊であるベクターさん小隊を乗せたヘリが上空に到着と同時に飛び降りるように全員出撃、混乱に陥っているヴァリャーグの一人に向けベクターさんの投げナイフが無慈悲に命を刈り取る。
続けてネゲブさんのマシンガンによる弾幕、それに合わせるようにMDRと式自が地上に降り制圧を開始。88式とステアーはと言うとジェットパックで着地後に両腕の腕甲をヴァリャーグの集団に向けたと思えば烈火とも言える火炎放射が彼らを襲う。
「燃えちゃって下さい! 新燃料の火炎放射は多分、火葬もやってくれますから」
「汚物は消毒、慈悲はない」
「な、なんなんだコイツラ!? くそ、アーマー硬いなおい!!!」
因みにこれは余談と言えるか微妙だが彼女らが装備している一式に使われている合金は新素材らしく、これを手引きしたのは街工房組である。更に言えばこの装備は人間でも扱えるということでエーアデント自警団に正式装備になったと後に指揮官達は知り、式自は倒れることになるが置いておこう。
「狙撃手が前に出てきてんなら詰めればこっちのもんだ!」
「だから悪役ですわ、あの二人がやってることがっと!」
最後にカラビーナだが彼女は降りたと同時に狙撃で味方をサポートしている所をあの地獄を抜けてきた一人のヴァリャーグに接敵される。
だが彼女が今更そんな事で慌てることもなく冷静に攻撃を受け流し隙だらけの膝を蹴り壊し、悶えながら姿勢を低くしたヴァリャーグの頭部に向けて銃身側を握り力の限りでフルスイングをブチかます。
どうなったかなどは聞くまでもないだろう、ヴァリャーグの頭部は千切れて弾け飛び、放物線を描いて別のヴァリャーグに直撃することになった。
「ナイスショット、飛距離伸びたんじゃないかしら?」
「やってしまいましたわ……うぅ、汚れとか整備とかが面倒になりますのに」
「元々頑丈にしてあるんだから大丈夫でしょ」
気分の問題ですわと言いたくなるカラビーナだったがその視線の先にベクターさんがヴァリャーグの内蔵を腕で貫き引き抜いている光景を見せられれば、まだマシですわねと黙るしかなくなる。
実際はどっちもどっちであり、なんだったらカラビーナの方がグロいのだが彼女はこの辺りの感性は麻痺してしまっているのだ。さて、戦いの結果はエーアデントの勝利、あの状況でヴァリャーグ側もわずかに撤退に成功した辺りはこの世界に順応している存在なのだろう。
《それじゃ、全員撤収してくれ。G36C、今回の戦闘によって発生した経費などを纏めておいてくれ》
《了解です、ところでメカニック二人のは入れて良いんですか?》
「え、入らないと困るんですけど……?」
「はぁ、街工房も関わってるならそこに詰めるしか無いわね」
「やった、実はもう予算無いから助かる」
こうしてヴァリャーグ迎撃戦は無事に終了を迎える。迎えるのだがその道中でカラビーナがふとあることに気付いてベクターさんに問い掛けた。
「そう言えば今日はいつもの悪癖は出ませんでしたわね」
「いつもは流石の私もやらないわよ。あ、寂しくなっちゃったかしら、だったらすぐにでも考えるわよ」
「要りませんわ」
無慈悲な一言にベクターさんはちょっと傷ついたとかなんとか。
メカニックと街工房の職人が自由すぎる……
『ハヤブサ零式』
ハヤブサの改良型、コストは倍増、でも性能面は武装込みで倍以上に良くなったとか。
『我らの道もといアーマー一式』
言うまでもなくマンダロリアンのあれ、火炎放射もウィップコードランチャーもホイッスリングバードもちゃんとある。我らの道