エーアデントのオカン、ネゲブさんの朝は早朝、彼女は自室で目覚めるところから始まる。
ぐっと伸びをしベッドから降りつつ身体を軽く解しながら本日の予定を電脳内で参照、タスクの優先順位を決めつつ着替え自室を出た彼女がまず向かうは食堂。
用事は単純に朝食の準備である。冷蔵庫を開け食材の在庫を確認してから作るものを決定、手際よく材料を取り出してから調理を始める。
(そういや、あのバカ二人昨日は夕食食べてないわよね)
開発が乗ってるときなどはよくあることなので自業自得だと感じつつも、少し多めに作っておくかと追加で材料を出しておく。
何だかんだで仕事をするのでネゲブさんは二人には割りと甘い、言っても認めないししつこく言うと無言でぶん殴られるのだが。
「……」
幸いにしてこの基地の人員は多くもなく、なんだったら街の食事処などもあるので基地で全員が食事を取るということはあまり無い。
大体が指揮官とベクターさん、それとスチェッキンにカラビーナとメカニック二人と会計二人、MDRに医療班……いや、多いなこれとネゲブさん。
(かと言って人員を増やしてと言うほどでもないのよね)
慣れたというのもあれば一度の食事量がさほどでもないというのもある、なんだったら先程のメカニック二人の話をしたように食べないなんてザラであり時折余ったからと炊き出しに提供することもある。
それに彼女自身、家事が嫌いというわけでもないしスペシャリストとして手を抜くつもりもないので苦にも思ってないのもあると言えばあるらしい。
故に今日も手慣れた感じに調理を進め、とりあえずこれだけ用意しておけば足りるだろうという種類のおかずといつでも焼き立てが出せるように準備されたトースト、何故か当たり前のように栽培され輸入されている白米の準備が整う。
(時間通り、指揮官とVectorが起きてくるにはまだ時間があるし洗濯物でも片付けておくか)
料理に関しては完成させて並べておけば、後はバイキング方式で適当に各自が確保して持っていくので最悪ネゲブはその場に居なくても問題ない。
なので彼女は使った調理器具の後片付けを終えてから適当な立札だけを置いておき、食堂から洗濯場まで移動。そこにはメカニック組に注文して作らせオートメーション化されており言ってしまえば各自が洗濯物を放り込めば勝手に洗い畳まれた状態で纏めておいてくれる。
故にネゲブがやることと言えばそれを持ち主ごとや部署ごとに仕分けし、運んでおく程度のこと。このように基地各所ではネゲブにだけ負担をかけないようにとオートメーション化されている部分は非常に多い。
「おはようございますわ、ネゲブさん! 手伝いましょうか?」
「おはようカラビーナ、アンタが起きてるってことは指揮官とVectorも起きてると見るべきか。別に大丈夫よ、それよりも朝ごはんを食べに行ったら?」
「この程度でしたら、問題ありませんわ。それに何でもかんでもネゲブさんに任せっきりが恥ですわ!」
「ふふっ、だったら頼むわ」
お任せ下さいませと胸を張り、畳まれた洗濯物の束を持つカラビーナ。ネゲブとしてはどういうわけでここまで慕ってくれるのだろうかという感情があるが悪い気はしないので気にしないでいる。
という事でカラビーナの手伝いもあったことで想定よりも早く作業は終わり、食堂へと戻れば既に何名かが利用しているのが確認できた。その中で指揮官とベクターさんが二人に気付けば
「おはよう、ネゲブとカラビーナ」
「洗濯物をしてたの? 言ってくれれば手伝ったのに」
「ふふん、私が手伝ってましたので必要ありませんわ」
「ま、そういうこと。メカニックのバカ二人は来てる?」
「ん? あぁそこに居るがどうした?」
見れば食堂の一角で二人前にしては多めの料理が並んでいるテーブルがあり、そこには88式とステアーが一心不乱に食事をしている光景が。
どうやらネゲブの予想通り、夕食を食べなかったが故に空腹が限界を突破してたらしい。あの様子では朝食後に動けないと思われるがそこらは自己管理の範疇なのでネゲブさんは気にしない。
なんだったら用意した朝食分が無くなるからそれはそれで後片付けが楽だから構わないとすら思っている。なので彼女は自分も朝ご飯は食べておくかと適当に料理を取って席に座り一口。
「……ま、感想は無いわね」
「美味しいですわ~」
「本当ね、私もこれくらい出来るようになりたいんだけど」
「まぁまぁVectorだって腕は着実に上ってるんだから焦らなくても平気さ」
などと言っているがベクターさんがネゲブさんクラスになるには非常に長い時間が必要である。いや、無慈悲に言えば良くてカラビーナがまぁ食べれますわというレベルが限界なのだが。
そんな雑談を交わしつつネゲブさんは手早く食べ終えてから調理場に戻りこの後の予定を組み立てる。食材の在庫はまだ問題ない、最悪スチェッキンに頼めばその日の内に大量に仕入れることも可能。
ならばと他に思い浮かべるのは各種洗剤、洗濯場をオートメーションにしたとは言え洗剤は逐一補充しなければならないのでこれが足りないという事態は避けなければならない。
更に連鎖して掃除に使うあれこれもそろそろ気にしたほうが良かったかもしれないと思い出す、ともすれば今日中にでも街の雑貨屋などに発注をしておくかと予定を並べる。
(確か今日はVectorがパトロールに出るとか言ってたわね、私も便乗しておくか)
どうせ買い出しに行くのならばその方が合理的だしと決め、だが先ずは片付けだなと立ち上がって備え付けられた食器洗い機を起動、これもまたメカニック組に作らせた代物であり入れておけば自動で洗い更には棚に戻してくれるというスグレモノ。
とは言え食べ終わったそれをそのままでは宜しくない。無論、食べ終わったものは各自で水洗いだけでもしろとネゲブさんがお達しを出しているが各々性格というものがあり大雑把なものもあるにはあるので彼女が仕上げをしているのだ。
「ぐへぇ、た、食べすぎました」
「お昼は要らない……」
「はいはい、だから夕食は食べておけって言ってるのよ」
特に食べ過ぎで死にそうな奴の水洗いなぞ当てにならんとばかりにネゲブさんはテキパキと水洗いを済ませて食器洗い機に放り込んでおく。
これで後は適当な時間に完了しているか確認すれば良い、なんとも便利な道具を作ってくれたと何度思ったか分からないことを思いつつ調理場から出てぐっと伸びをしてから
「買い出し、出るか」
どうやらベクターさんもカラビーナ達も既にパトロールにでも出てしまったようでその場にいないがいつものことなので気にせずにネゲブさんも街に出るのであった。
これがエーアデント基地の朝の一幕、なんてことない平和な光景なのだ。
当初は一日を書こうとしました、あれポンコツ指揮官書いてる時も似たようなことして朝の一幕で終わってたなこの作者?