ベクターさんの華麗なる日々~甘口~   作:鮪薙

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時間的には前話の朝食後辺り


〝パトロールとベクターさん〟

 エーアデント、と言うよりもこの作品の世界線はかなり人類は逞しく何だかんだで法が生きてたりすることもザラでありここも同じく普通に法はあるし警察もある。

 

 それとは別に自警団も存在すれば、基地からのパトロールも行われているのでまぁまぁ治安は良い街でもありなのでパトロールとは銘打っているが実情は地域との付き合いを増やしているという側面のほうが強い。

 

 実際、ベクターさんなんかはパトロールと言っておきながら住人との会話や頼み事を聞いたりというのが大半だったり、カラビーナに至っては本人は真面目にパトロールのつもりだが老人たちから孫娘みたいに可愛がられたりしてる場面の方が圧倒的な多かったりする。

 

「お、副官さん、旦那は一緒じゃないのかい?」

 

「今は仕事中だからね、それよりも何か困りごとあったりはしないかしら?」

 

「こっちは特にだな。平和なもんだ、この間みたいにヴァリャーグが来てくれてもいいくらいだぜ」

 

 豪快に笑いながらそんな事を言っているがこの老人、何を隠そうエーアデント自警団の団長であり、例のアーマー一式を完璧に扱えるくらいの実力者である。

 

 そして末恐ろしい事に彼の団員も非常に優秀でありベクターさんに言わせれば、私たち精鋭部隊と真正面からやりあえる程度には普通に強いというレベルである、なんでこんな所にいるのだろうか。

 

 とは言え別段、戦闘狂というわけでもなく日常と平和をこよなく愛する老人である。ただちょっと暇を弄んでいると気にそういった発言があるだけで、いや、それは戦闘狂なのではなかろうか?

 

「あ、そう言えばあそこに寄っておかないと」

 

 団長の老人とは別れパトロールを再開したベクターさんだったが歩き出して数分後、ふと思い出したとばかりにそんな事を呟いた。

 

 確かあれを頼んでのは一週間前、期間的にはそろそろ終わってる頃だろうと。ベクターさんがパトロールしつつ向かったのはエーアデントの自動車整備工場、唯一というわけではないがエーアデントの自動車整備工場と言えば即座に名前が上がるほどには有名な場所。

 

 ベクターさんが向かった時間帯でも忙しいというのがよく分かるほどに騒がしさを感じつつ入口付近に向かったところで一人の少女がベクターさんに気付いて駆け寄ってきてから。

 

「おはようございます、ベクターさん!」

 

「おはよう、アリア。預けた例の件、確認してきたんだけど」

 

「『ドライストレーガー』のことですね、整備は完了してます! はぁ、いつ見ても良いバイクですよねあれは……」

 

 うっとりした表情を浮かべる自動車整備工場【ラヴィアンローズ】の整備長『アリア』にベクターさんは相変わらずねと言った感じの表情を浮かべてから彼女の案内で工場奥の整備室へと向かう。

 

 向かった先にあったのは一台のバイク、見た目はスーパースポーツと呼ばれる種類物であり色は青を主体に金のラインが控えめにあしらわれ、素人目に見てもこれが非常に高級車なのだろうということを感じさせる出来。

 

 また中身の方もカスタマイズされており、はっきり言えばベクターさん以外ではこのバイクの性能を全て引き出すことはできないだろうと言われるモンスターバイクとなっている。

 

「今回もいつもの整備ですが所々でパーツも摩耗が見られたので交換もしておきました、異常はないと思いますが確認しておきますか?」

 

「えぇ、それじょちょっと失礼するわね」

 

 ドライストレーガーに跨りグリップを捻れば軽快なエンジン音が辺りに響く、この音だけでも分かるモンスターっぷりなのだがアリアはこのエンジン音を聴いただけではぁと恍惚な表情を浮かべる。

 

 ここまで書けば分かると思われるがこの少女、ベクターさんが愛車を任せるほどに腕は確かなのだが、バイクや車が好きすぎて他が何もかも要らないと言い切ってしまうほどにちょっとネジが飛んでるのである。

 

 エンジン音だけでご飯を食べられます、車体整備ってエッチですよね、内部機関とか弄るって最高ですよね等など見た目麗しい少女から出てくるべきではない言葉の数々によってこの街に住んでいる男性たちはそういう目で彼女を見ることはなくなっている。

 

 などという余談はおいていき、何度かエンジンを吹かし異常がないことを確認したベクターさんはバイクから降り、バイクを押しながらラヴィアンローズ入口にて跨りつつアリアに礼を一つすれば

 

「いえいえ、副官さん達にはこちらもお世話になってますから。それにドライストレーガーを整備できるならタダでも喜んでやっちゃいますよ!」

 

「タダは流石に私が怒られるし職人が技術をそうやって売るのは駄目よ。支払いはいつものでいいわね」

 

「はい、それで構いませんよ! それではまた何かありましたら連絡をください、いの一番に整備や修理しちゃいますから」

 

「ありがと、じゃ行ってくるわ。改めて整備感謝するわね」

 

 ヘルメットを被ってからエンジンを吹かし一気に加速し去っていくベクターさんをアリアは良い加速だなぁと見送ってから彼女は次の仕事へと取り掛かる。

 

 ラヴィアンローズにてドライストレーガーを受け取ったベクターさん、そのまま乗り回しつつパトロールをしていると通信機に着信、一旦停車してから出てみれば

 

《こちらネゲブ。Vector、アンタ今暇?》

 

「えぇまぁ、今さっきラヴィアンローズで整備に出してた愛車を受け取って乗りながらパトロールしてるけど?」

 

《なら丁度良かった、買い出しに付き合いなさい。洗剤の在庫が怪しいのよ》

 

 はて、今私はパトロール中だと告げたはずなのだがとベクターさん。だがネゲブさんからすればバイクに乗りながら出来るならつまり今日も平和で暇だってことだという認識だし実際その通りなのだ。

 

 また絶対的オカンであるネゲブからの言葉にNOと言える訳もなく、ベクターさんは了解の一言でネゲブさんの元へと向かうのだが道中、そう言えばそろそろお昼だなということで一つ。

 

「ネゲブ、お昼は?」

 

《考えてないと言うか、あぁもうそんな時間でもあったか》

 

「そう、なら蕎麦でもどう? 【買い出し】に温【かい出汁】の蕎麦なんて」

 

《温かいのを食べる前に私を冷やそうとしてくれる気遣いには感謝するべきかしら?》

 

 無論、皮肉であるがベクターさんはあえてそうとは受け取らず、なら決まりねとドライストレーガーを走らせるのであった。

 

 なお二人が食べた蕎麦は非常に美味しいものだったということを最後に記しておく。




なんかまた新キャラとか生えた

『アリア』
整備工場『ラヴィアンローズ』の整備長の少女、車やバイクに限らず兵器だろうと飛行機だろうと何でも整備や修理が可能という万能っぷりを誇り、非常に美少女でもあるのだが本編で書かれたように残念少女すぎるので男の気配は欠片もない。

『ドライストレーガー』
ベクターさんの愛車であり、彼女以外では乗り回せないモンスターバイク。
名前の元ネタはスパロボ30の母艦
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