「また巣が近所に出来たらしい」
その報告を聞いたベクターさんは静かにまたかという感じのため息を吐き、それを見た指揮官は分かるよと頷く。
〝巣〟所謂、動物の住処という意味の単語だがこの世界では動物だけとは限らない、ヴァリャーグの集まりも巣だし鉄血の簡易拠点も面倒だから巣でいいよねといか言われる。
とは言え今回、指揮官が巣と呼んだそれは上記のものではなくちゃんと動物の住処、最も動物と言ってもただの野生動物ではなく〝生骸〟の巣なのだが。
「今月で何度目だったかしら」
「さて、5より先は数えてないな……冗談だ、確か10度目だっか?」
「えぇ10件目よ、こうも接敵率が高いとこの辺りは駆除が追いついてなかったのかしらね」
「あり得ん話でもないだろうな、俺達は戦力が充実してるが他はそうでもないし仮に充実してても迎撃だけで事足りるなら態々出向くこともないだろうからな」
元が野生動物が故に戦術をしてこないので迎撃は容易、だが殲滅となると数が数、或いはボスクラスが出張る可能性が高いが故に難しい、それが生骸という存在。
人類からしてみれば厄介この上ない、幸いなのは奴らはヴァリャーグにも鉄血にも平等に襲いかかることだろう、全くもって何も幸いではない。
「……発見は
「えぇ、相変わらず優秀なレーダーのお陰で」
「了解、ならこっちから動かない理由はなくなったわけだ」
そんな厄介な巣だが周りに被害が無いなら放置したいが、今回はそれは出来ない。
理由はエーアデントが第一発見者だから。見つけてしまったからには駆除に動かなくてはならない、詳細は今は語らないがエーアデントは生骸の巣を殲滅すると言う業務があるとだけ覚えてほしい。
「もしエーアデントが見つけたのに〝駆除〟しなかったら後で〝苦情〟が来ちゃうものね」
「困った話だが仕方ない。こちらレイモンド、駆除チーム聴こえるか?」
数分後、駆除チーム及び第1主力部隊ことベクターさんチームは発見された生骸の巣が観測できる位置にて待機していたが式自さんはちょっと真面目に目眩を覚え始めてた。
おかしいわね、駆除チームの装備ってこんなのだっけ? と。と言うかこの間のヴァリャーグ迎撃戦でそこの二人が着込んだ装備と全く同じように見えるぞと。
「あら、量産したのそのアーマー」
「前々からエーアデントに来てた依頼の解消の際に実働部隊の報告を元に全てのチーム及び部隊に所属している人間の標準装備とすることが決まりましたからね!」
「待って聞いてない」
「そりゃ基地の事じゃないんですから報告してないですよ?」
「でもあんたら関わってるわよね? ていうかエーアデントに関することなら報告上げなさい」
「関わってる、当然です。そもそも設計図を書いたのは私たちだから」
あっけらかんとしたステアーの言葉を聞いて遂に限界が来たらしく〝あ、ごめんちょっと倒れるわ〟と言うのが早いか式自がぶっ倒れそうになるのをカラビーナが慌てて支える。いつだって現実は会計係に優しくないのだ、この件について基地の会計が関係あるのかとなるが基地所属のメカニック二人が馬鹿やらかしてるので大いにあるので余計に倒れたくなる理由になる。
「この件については後日にするとして思ったよりも規模は大きめね。指揮官、ドローンによる偵察は?」
《上空からで分かる範囲だと中規模といった感じだ。ただ形状的に地下に続いてる可能性が高いとのことだ》
「地下、か。ちょっと厄介ね……」
地上にあるだけならば最悪、ドローン部隊による波状爆撃でどうにでもなる。だが地下となれば爆撃が使えない、ともすれば攻め入って潰す他ないのだが生骸相手に近接戦や遭遇戦は不利とまでは言わないが簡単ではない。
向こうとて本能レベルで陣形は組んでくるので被害が出ることは避けられない、さてどうしたものかと思っているとメカニック二人から任せてくれと伝えられる。
「このアーマーには内蔵火器として火炎放射があります。駆除チーム全員による放射で地下を蒸し焼きにしちゃって炙り出してみせます!」
「耐性がある生骸でも無傷じゃ済まない火力なのは実証済み、だから副官達は待ち構えてくれると助かる」
「そう言えばヴァリャーグの時も使ってたわね……指揮官?」
《ならそれで行こう、被害を抑えられるならそれ以上のことはない。こちらもドローン部隊による支援攻撃準備を整えておく》
指示を受けると同時にメカニックチームと駆除チームが行動を開始、生骸に悟られないように慎重に巣の周りに展開、地下への入口と思われる場所に数人ずつ配置についたのを通信で駆除チームのリーダーが確認、そして。
「各員へ、一斉に放射を開始するぞ。88式とステアーも良いな」
「いつでも」
「合図は任せる」
「よし行くぞ、3、2、1……燃やし尽くせ!!!」
号令と同時に全員の火炎放射による巣の焼却作戦が実行、見てるだけでも暑さで汗が流れそうな光景ではあるがヘルメットに備え付けられた簡易レーダー及びサーモグラフィー機能がそれを告げた。
この業火の中、生きてるやつが慌てて出てこようとしていると、故にリーダーの次の指示は早かった。
「ちっ、コレで終わりとはならねぇみたいだ。各員、巣の入口から放射を維持したまま距離を離せ! 副官さん達、巣の生き残りが飛び出てくる、準備を!!」
「了解、カラビーナ、ネゲブ、式自、MDR、構え」
言われずともと各自が銃を構え、直後に巣の方面が慌ただしくなったと思えば燃え盛りながら出てくる生骸、その数は巣の規模からしたら少数と言えるほどであり恐らく殆どは初手で燃え死んだのだろう。
最も手加減する必要などは一切ないので飛び出てきたのをベクターさん達が冷静に処理を開始、駆除チームとメカニックチームも接敵されるや火炎放射だけではなく携帯していた銃器やナイフ、腕甲に内蔵されたホイッスリングバードと言う小型追尾ミサイルなどを利用して迎撃を開始。
「待って、あの銃器なに!?」
「レーザー銃みたいな感じね、鉄血の技術を使ったかしら」
「ブラスターってやつじゃないかしら、あのアーマーが出る映画に写ってたの見たわよ」
見たのはそれっぽい形から繰り出される赤い光線、なんで作ったとかなんで作れたとか、その設計図と制作予算は工房なのか基地のバカ二人なのか式自は生骸を倒しながら頭を悩ます。
「あ、ライフルっぽいのから電撃が放たれてるわよ。なんでもありねもう」
「……困りましたわ、あれちょっと欲しいとか思ってしまいますわね」
「やめてカラビーナ、本当に」
なお、生骸の巣は無事に殲滅及び残党の駆除は完了。被害は出ておらず、万々歳な結果となった、いや、被害はある意味で1名にだけ出ているが……
「だ、大丈夫ですか、式自先輩」
「大丈夫に見えるなら医務室に送ってあげるわよ……」
「でもほら、指揮官も今回の件で正式採用にして基地の負担だけじゃなくなったわけですし」
「あの二人があれだけで済むと?」
式自は確信していた、絶対に他にもメカニック二人は黙って作ってる新兵器とかあるだろと。困ったことに彼女の勘は正しいと判明してしまうのはまだもう少しだけ未来の話になるのだが。
我らの道
『ブラスター各種』
曰く、IOPと鉄血とロ連軍とか正規軍とかの技術をアレコレしたらなんか作れた代物、作れちゃマズイだろとは式自の言葉。
なお、エーアデント最高機密武器として無事に認定されたとのこと。