あれおかしいな、人員が増えたんじゃなかったっけか此処。MDRはキーボードを叩きながら思った、いや、増えたはずだよね? だって互いに自己紹介した記憶あるし。
だが居ない、この場に居ない、居ないから絶賛MDRはいつもと変わらない修羅場を迎えている、だが人員は増えている。その証拠に広報に使いネタだけは大量にストックが有るのだから。
「……どこ行きやがったんだ、シプカ、ストーム」
なお、各自の席には一枚の書き置きがそれぞれあるが内容は共通して〝ネタ集めに行ってきます〟これにはMDRは嘆いた、二人で、しかも個別で行く必要ないだろうと。
何が厄介かとなれば二人ともサボってはいないと言う点だろうか。MDRからすれば取材に出て記事制作に携わってないのはある意味でサボりだろと文句は言いたいが。
「んがぁ! コレじゃ結局何も変わってないじゃんか~、いや、取材にでてネタを集める時間がこっちに回せるようになったのは大きいけど」
そうだけどそうじゃないんだよ! 頭を抱え叫びたい衝動に駆られるがそんな時間すらも惜しいので堪えて記事の作成を急ぐ、内心では指揮官と副官も人選が甘いよなぁなどと思いつつ。
実際問題、二人はちょっと抜けている部分もあるし能力が良ければ的な部分も存在する。広報部としても情報を仕入れてくる能力の高さからシプカとPx4ストームが選ばれたのだろうが性格が自由すぎた。
「でも情報の質は私が集めるよりも確かなんだよなぁムカつくけど」
しかもとレポートの一部を取り出して読んで見れば、少なくても自分では収集出来ないタイプの情報であり能力の高さは本物なので彼女自身もあまり強く文句は言えない状態になっている。
しかもきちんと分別もされてるのでMDRがちょっと本気で記事の作成を始めれば一日二日で完成する、それもエーアデント向きの記事とエーアデント外への記事、そして……
「指揮官への分もしっかりと集めてきてるのヤバいだろ、いつの間に外に行ったんだあの二人……いや、それともそれ専用の情報源でも持ってんのか?」
エーアデントから長期離れるならMDRの耳にも入るのでそう考える方が自然だろう。彼女も独自の情報網を持ってないわけではないが流石にロ連などの情報というものを簡単に手に入れるほどではない。
しかも詳細もしっかりしているのを見るに確かな情報源なのだろうということも分かる、だがそれはそれとして。
「記事を作るやつがもう一人欲しいんだけどなぁ!!」
「あら、困りごと?」
「ひょあ!? って、ふ、副官か、驚かさないでよ~」
「あらごめんなさい、ノックしたけど返事がなかったから」
ふふっと笑う副官にMDRはこの人っていつもこうだよなと苦笑する。ふらっと現れては適当な雑談をしつつ、そしてふらっと消える、このベクターさんについてはMDRも様々な情報を仕入れているがそのどれもが不確かでしかないというのも彼女的には不思議な人形だよなぁと言う感想を抱かせていたりする。
曰くIOPのテストドールだとか、曰く何度メンタルリセットしても直らない個体が故に放置されたとか、曰く裏組織で作られたVectorを素体にして生み出された存在をグリフィンが保護しただとか。ざっと簡単に上げるだけでもコレくらいの信憑性が不明な情報が出回っている。
「んで、なんの用ですか。見ての通りすっごい忙しいんですけど、あとあの二人取材に出たっきり帰ってこないんですけど」
「それに関してはごめんなさいね、二人には後で叱っておくわ。そうね、もう一人くらい、それも記事の作成も手伝ってくれそうな娘を探してみるわ、一旦それで手を打ってくれないかしら?」
「ちゃんとやってくれるなら私は文句は言いませんよ。いや、まぁ、今の二人も取材という点においてじゃ普通に優秀なんでそこは文句ないんですけど」
「そう言えば確かに上がってくる情報の質が更に良くなったって指揮官も言ってたわね。あっ、〝質〟が良いと相手に投げる〝質〟問の選定にも困らないから助かってるわ……ふふっ」
ただ分かるとすればこの人形ことベクターさんはちょっとおかしい電脳をしてるというのは確かだろう、MDRは極力悟られないようにしつつそんな事を思う。
何をどう考えても唐突にギャグをぶっ込んでくるのが正常な人形だとは思えない、場面を選んでるとは言え、だ。
「副官って本当に不思議な人形ッスよね」
「ミステリアスな人形って素敵よね」
「ミステリアスって意味は正しいかもしれないけど、副官がそれを言うと本当にミステリアスを売りにしてる人形に怒られるっすよ」
絶対にベクターさんがそれを売りにしてはいけない、彼女のはミステリアスではなく普通のカオスなのだから。なお、言われた当人は割りと真面目にそうかしらと首を傾げる模様、傾げられても困るというのがMDRの言葉となる。
「はい、これが今回集められた外部組織の情報よ。分かってはいたけど、ここってあまり良い目で見られてないわね」
「完全中立というわけでもない第三勢力扱いだからな。そりゃ、印象は良くないだろうさ」
場面変わって執務室、そこでは指揮官とPx4ストームの姿がありどうやらストームが集めてきた情報を指揮官に話しているらしい。
内容としては普段通りの物であり、外部組織についてのあれこれが殆どを占めている。ここ、エーアデントはグリフィンやロ連等といった外部組織と上手くやっているとは言え、決して仲良しこよしというわけではない。
「エルモ号とエーアデント、どっちも元々はグリフィン所属だって言うのに今じゃ第三勢力と言っても差し支えないくらいには独立した存在、ヴァリャーグや生骸、鉄血を相手にしてるけどその矛先がいつ自分たちに向くか分からないってなったら怖いのは確かでしょうね」
「んなつもりはないんだけどなぁ俺達も。そりゃ、吹っ掛けられたらやり返すがさ」
「そこが怖いってことよ。組織だって一枚岩じゃないんだから、それじゃ私は広報部に戻って先輩の手伝いをしてくるわ」
「ありがと、ってそうだMDRが怒ってたらしいぞ。二人がフィールドワークばっかりで記事の作成の手伝いをしてくれないって」
「分かってるわよ、ただちょっと席に座ってあれこれが好まなくてね」
好まなくてもやってくれないかと指揮官が言うが彼女は分かってる分かってるとばかりに手を降って執務室から出ていく、それを見送ってから指揮官は改めて資料を確認。
そこに書かれているエーアデントに対する外部組織から評価にだろうなと思うしかない。そもそもにしてここエーアデントは元々は逸れ者の集まりであり流刑地とも言える組織だったのが一大勢力になったのだから。
(連中からすりゃ、面白くないわなそりゃ。クルーガー社長とかアンジェ、エルモ号と関係結べて無かったら面倒になってただろうなここも)
黄昏れながら指揮官は執務室から流れていく雲と風景を窓から眺める。今日もまた平和な一日だった、さて明日も無事に過ごせればいいが、なんてことを思いつつ。
なお、広報部に人が増えるかどうかは不明な模様、頑張れMDR