《やぁやぁ、元気かいエーアデントのお二人さん》
さて、どう通信を切るべきだろうかと真面目に考える指揮官にベクターさんはまぁまぁと声を掛ける。
本社から通信が来てるということで繋げてみれば、出てきたのは目に隈がない日は存在しないともっぱら噂の我らがマッドサイエンティストにしてエーアデントの管理人に近い存在であるペルシカリアことペルシカさん。
管理人とは言ったがレイモンドの上司と言うのが正しいかもしれない。そんな人物からの通信となれば面倒ごとの類だろうかと指揮官が何の用ですかと聞けば
《用って程じゃないんだけどね。そろそろ定期連絡の一つでもやって報告書を纏めないとヘリアンとカリーナにすこぶる怒られるからさ》
「そんな話、今初めて知ったんですが?」
《うん、今初めて話したからね》
この人、なんで俺の上司でラボの主任やれてんだろうか。真面目に疑問に思うしかないいい加減っぷりにベクターさんも苦笑をするしかない。
「マズくないですかと言うか今まではどうしてたんですか」
《でっち上げてた》
「よくそれで今までは通ってたわね……」
あっけらかんとした表情で出てきた事実を聞いて遂にベクターさんに呆れが生まれた。
駄目でしょ、それはとなるが今の今までお咎めがなかったのを見るに何から何まででっち上げではなく事実もちゃんと混ぜられてはいたのだろう。
《この間、遂にバレてね。そりゃもうこっ酷く叱られたよ》
「そりゃそうでしょうよ」
《全く酷い話よね。そもそもエーアデントの管理人って立場も押し付けられてるだけなのにさ》
「押し付けなきゃ仕事もしないでラボに籠るからじゃないんですかね」
世界が誇る科学者の一人、ペルシカさんは基本的にインドア絶対主義の人間、なんで外に出る必要が? と真顔で宣うし引き摺り出そうとしても徹底抗戦する程度には出たがらない。
故にエーアデントの管理人と言う肩書きも少しでも動けという意味合いも込められている。単刀直入に言えば健康を本気で危惧されてるとも。
《さて、とにかくそういうことだから報告書を纏めるの手伝ってくれる?》
「それは構いませんけど、何を報告するつもりで?」
《うーん、ここ最近のエーアデントとか?」
「日記かしら?」
だって思い付かないしとペルシカは口にするし指揮官はそれを聞いてはぁとため息を吐き出す。吐き出したが彼自身も報告書を纏めろと言われても困るというのが本音だったりもする。
そもそもエーアデントの日常業務をしているだけであり、此処になにか特殊なあれそれがあるという……無いというわけでもないがそれでもこんな形で纏めるような代物じゃない。
「ここ最近のエーアデントって言えば、エルモ号の件とか? あとは新装備の数々とか」
「エルモ号、そうだな、エルモ号の件でそっちに迷惑かけたってのは確かにあるが……」
《エルモ号? ……あぁあれか、聞いたけど私としては必要な改修だと思うけどね。流石に主砲載っけたのは笑ったけど》
しかもレールガンとかではなく火薬式のロストテクノロジーだと断言できる45口径46cm3連装砲塔だと彼女が聞いた際にはそれはもう大爆笑し、笑い死ぬかもしれないとカリーナに思わせた光景だったとか。
最もその後の改修代金でヘリアンとクルーガー社長が数日間ほど頭を抱えていたと言う話を聞けば指揮官は一言。
「カリーナは大丈夫だと言っていたんだが、やはり問題だったんじゃないのか?」
「聞く限りだとそうよね。ペルシカ、どうなのその辺りは?」
《どうって聞かれてもね、私はあまり興味無かったから知らないとしか。でもカリーナが言ったんなら大丈夫なんじゃない? それに頭を抱えてただけでなんとかなってるみたいだし》
当時はラボに篭っていたのでなんか外が騒がしいなぁくらいの認識だったらしく、偶にひょこっとラボを出た時に見た二人がそんな感じだったくらいの話しか知らないとのこと。
実際は支払いに頭を抱えていたのではなく、急に姿をくらました一部の上層部の代わりを用意するのに頭を抱えていたというのが事実なのだがカリーナの語らないので闇の中に葬られるので割愛しておこう。
《ところで新装備の数々とかの方はどんなのだい? どうせエーアデント工房とか君たちの所のメカニックの作品だ、普通のじゃないんだろ?》
「全く持ってその通りよ、今データを送るわ。ただ社外秘ではあるから扱いには気をつけてちょうだい」
《研究成果を粗雑に扱うつもりはないんだけどなぁっと……ふむふむ、これは中々に面白い》
「と言うと?」
《どれも目を引くけど、ブラスターかな。数種類の技術を合わせて作っただけあって安定性も火力もある、ねぇグリフィンに技術売ってくれない? かなりいい値段出してくれるよ》
魅力的な提案ではあるがメカニックと工房がこれはエーアデント独自で発展させるものだからと前に聞いていたのでそれは出来ないと断ればペルシカは露骨に残念がる。
彼女としてはアーマー一式の方もと考えていたらしいがブラスターでその言葉が出てくるということはこっちも無理だろうと悟ってしまったのだ。
《くっ、ロマンを追い求めてるくせに変なところでセキュリティ意識が高いな》
「迂闊に流したらマズイ技術くらいは分かってるってことだから俺としては嬉しい限りだがな」
「あとは式自やスチェッキンが許さないっていうのもあるでしょうね」
『やれやれ、もうこうなったら私もラボをそっちに移そうかしら……》
とんでもないことを言い出したペルシカに是非とも止めてもらいたいと即答する指揮官、唯でさえ下手しなくても面倒な立ち位置のエーアデントを更に混沌とするつもりかこの人はと。
ベクターさんとしても今くらいの関係が丁度いいと思っているので彼に同意する。されればペルシカも分かってるとコーヒーを一口飲んでからそもそもにしてと続ける。
《機材や人材をそっちに向かうのが面倒だしリスクが高すぎるからヘリアンなんかが絶対に許可下ろさないって》
「それはそう。それでだ、報告書を纏められそうですかね、ペルシカさん」
《……あっ》
「やれやれ、これは〝付き〟っきりで手伝わないと時間が〝尽き〟ちゃいそうね……うーん、ちょっとうまくないわねこれは」
《通信越しに人の体感温度を下げないでもらえるかな、副官さん》
ペルシカ曰く、ベクターさんのバグは彼女でもよく分からんとのこと。そんな話は置いておき結局、報告書が纏ったのはそれから数時間後の話だった。
『ペルシカさん』
この世界でも絶好調にマッドサイエンティストしてる博士。AR小隊も抱えてるけど、自由にさせてるので今何処に居るのか偶に分からなくなるとか。