《なぁ聞いてくれ、娘が突然出来たって言ったら驚くか?》
「そりゃ驚くしおめでとうって言うし、じゃあ通信切るから頑張れ」
《待ってくれ、本当に》
個人用の通信機器にエルモ号から通信が来たと思えばそんな事を聞かされる俺の身にもなって欲しいとはレイモンドの言葉である。
どうやらレイモンドにしては困惑しているという感じの声を聞くに本気で事情が分からないといった感じだろう、実際そんな事言われてもこちらとしては困るというのも分からなくはないが。
「とりあえず詳細を聞かせてくれ、流石に要点だけで話されてもどうしようもない」
《グリフィンから俺宛に依頼がって話が来てな……》
曰くカリーナから話を通され、ヘリアンとペルシカがGOサインを出したらしい〝箱〟の輸送を頼まれたらしくエルモ号の指揮官の彼も報酬も良いのでと受託、依頼物を受け取って運搬してたらしい。
その道中で〝箱〟の正体は何なのかと人形たちとメイリンの間で疑問になり、指揮官も詳細は聞いてなかったなと何気なく〝箱〟に〝触れた〟そしたら
《〝箱〟が展開して中から子供が出てきたって流れなんだが。一応、カリーナ達にも聞いてみたんだが逆に驚かれたから向こうは知らなかったのは確かだ》
「その子供ってのは人間なのか?」
《エルモ号で検査したが人間らしい、感情もある、その御蔭で検査するのにかなり苦労したがな》
どうやら検査という言葉に対して防衛反応のようなものを見せたらしく、この事から彼女は元々は何処かの研究施設に居たのではというのがエルモ号の見解とのこと。
しかも検査結果、なんと彼女はELIDに対する完全な免疫体質を持っているという衝撃的な事実も発覚、ペルシカに報告を上げればちょっと暫くエルモ号に匿っておいてくれと返される事からなんか巻き込まれたのではとなってるらしい。
が、本題はそこじゃない。正直、匿うのも問題なければ何かに巻き込まれるのも慣れているので気にしてない、問題は〝箱〟の少女こと自身で『ヘレナ』と名乗った少女がどういう訳か指揮官に懐き、それを見たメイリンの一言、【親子みたいですね】の一言だった。
《グローザ達が自分を母親と呼んでもいいと言い出してな、今エルモ号は一触即発に近い状態になってるんだ》
「大変だな」
《他人事だと思ってないか?》
「実際、他人事だろ……」
寧ろ話を聞いてるだけでもありがたいと思って欲しい、とは思いつつも口にしないのは彼の人の良さかもしれない。
とりあえずすぐに思いつく解決策だけでも伝えてみるかとダメ元で伝えてみることに。
「とりあえず、あれだ。一人を決めて妻にしてみるのはどうだ、確実に問題は解決するぞ」
《その解決はエルモ号が吹っ飛んだ挙句、俺の人権ってやつが根こそぎ奪われることを指してるか?》
「コラテラル・ダメージってやつだ、腹を括れ」
《無茶苦茶を言ってくれるな……》
だが事態を早急に解決するとなればこれが一番であるのは確かである。あるがエルモ号が吹っ飛ぶのは宜しく無いということで無かったことにされた。
指揮官の人権云々に関しては今更なので考えないことにされている。彼一人を捧げれば大多数の人形たちを大人しく出来るのならばグリフィンは喜んで彼を犠牲にするのだ。
「所でそのヘレナって娘は今どうしてるんだ?」
《とりあえずメイリンの側を浮きながら俺を見てる》
「なんて?」
浮いてるって言ったか今? 急に出された新たな事実にレイモンドは相当に厄介なことに巻き込まれたっぽいなコイツと若干の同情の念を送り始める。
まぁ冷静に考えれば〝箱〟から出てきた少女が普通なわけがないので完全免疫体質までは驚くこそあったがエルモ号に頼むよねという感情はあった。
だが宙を浮くとなると話は変わる、本当に人間の少女でカウントして良いんですかその娘というレベルで。
《唯の子供だよ、ちょっと色々と特別な、な》
「そういう所だぞお前。それで現状の解決策だが悪いが俺じゃ浮かばん、少なくともその子供の教育には悪いってのが分かるくらいだ」
《あ~、うん、だよな》
話を聞く限り無知な少女らしいので、そんな子供にドロドロエルモ号を見せるのは絶対に駄目だろうとは誰もが断言できるが、じゃあ何か代案や解決策があるわけでもないのがレイモンドとしては歯痒い所でもある。
そもそもなんで他人の事で此処まで頭を悩ましているんだとなりそうだが、流石に子供が巻き込まれているとなると彼の善性が無視を決め込むのを許さなかったらしい。
「ってことなんだが、Vector、ネゲブ、なにか案があったりしないか?」
「んな突然呼び出された出るわけ無いでしょうが」
「そうねぇ、やっぱり向こうの指揮官が相手を一人に絞るのが一番じゃないかしら」
《夫婦揃って同じこと提案してくるのは止めてくれないか?》
男の頭で考えても堂々巡りになりそうだということでベクターさんとネゲブさんを呼んで事情を話してみたが上記の反応である。それはそうだろう、すぐに浮かぶのならばレイモンドとエルモ号で解決されていることなのだから。
「そっちの指揮官が誰かとくっつくのは論外な解決策として、次善になるとエルモ号全体でその娘を見ていくってのになるわね。つまりは現状維持ってやつ、そもそも依頼の内容はどうなってるの」
《〝箱〟を目的地まで運ぶってことだったんだが、事情が変わってるからな。今はカリーナの指示待ち状態だ》
「依頼主も気になるわね、まぁそこは私たちが気にしても仕方がないけど」
エルモ号を陥れるための罠だった可能性も浮上してきたがだとしたらグリフィン、と言うかカリーナが黙ってないだろうから違うかと話を打ち切りヘレナについてに戻す。
もっともネゲブさんが言ったように現状維持をしつつ子供の教育に悪そうなことは見える範囲でやるなと言う彼女らしい忠告を出し程度でしか無いのだが。
「正直、エーアデントに居ない相手のアレコレを口に出せる立場じゃないしなオレたちも」
《そうだよな、いや、すまん、正直なこと言うと頼れそうなのがお前しか居なくてな》
「エルモ号、結構敵が多いし関わりたくないっていうのが大半だものね」
「そりゃそうでしょうよ、何処つついても爆発する不発弾何だからアンタ達」
結局、現状維持が採用されつつ何かあったら相談位は乗ってやるからということで収まった。その後、エルモ号ではヘレナと指揮官にバレないように水面下での正妻戦争が始まるらしいがそこはまたいつかの話としておこう。
エルモ号は今日も平和です。
お知らせ
多分、どこかで日刊途切れますねこれは……(ネタ切れ)